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珈琲ブレイクF《ロッキード事件・その末端で》[2012年07月13日(Fri)]
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1976年12月31日、フジテレビのスタジオで


ロッキード事件は1976年2月、米国上院の多国籍企業小委員会(チャーチ委員会)で明るみに出た。航空機の売り込みに際して、米国ロッキード社が右翼の大物や商社を介して日本の政界トップらに賄賂を贈った大疑獄事件。“総理の犯罪”にまで発展し、日本中が大騒ぎとなったが、大阪本社から異動してきたばかりの記者5年目の私は、指示された「張り番」や「関係者の追っかけ」など事件の末端部分ではいずり回り、喚(わめ)き、オロオロするばかりだった。

「大久保利春を追え」。米国の公聴会から帰国した丸紅専務(当時)の大久保氏を羽田空港で待ち構えた。タラップから空港ターミナルに向かうバスに同乗したが、他社の連中も詰めていてビッシリ満員。身動きできず、出口付近にいた彼の声も聞こえず(もっとも彼は一言も発しなかったそうだ)。ターミナルに着いた彼は、無言のまま迎えの車に。すぐ後ろを丸紅社員の車が続いた。その2台を追うマスコミ車は10数台、いや20数台がアリの列のように連なった。

首都高速の飯倉インターから一般道へ。その先は六本木方向。ところが2台目の社員の車が、一般道に降りる取り付け道路の途中で停車し、先頭車を逃がすために“通せんぼ”した。取り付け道路は1車線で、追い越しは無理。
マスコミ車が激しくクラクションを鳴らす。10数台以上が一斉に鳴らすから喧騒はかなりのもの。それでも社員車はびくとも動かない。10分も経ったろうか、ようやく走り出した時には、もはや先頭車は追いかけようもなかった。(これを教訓にして今は、マスコミが誰かを追っかける際にはオートバイが主体になったという)。

その足で、丸紅本社の広報室に苦情を言いに行った。
「ひどいじゃないですか」
「我々も必死に考えたのですよ。うまくいきましたね」
笑いながら、こんな言葉が返ってきた。
そうか、警察や役所など相手が公共機関なら“ケンカ”の仕様もあるが、民間会社には新聞社に便宜を図る(?)義務はないという訳か。社の幹部を守るのは当然、という自信に満ちた態度だった。その後に突き付けるつもりだった「どこに匿っているの?」の言葉は、小さな声になった。案の定、せせら笑いしか返ってこなかった。
ちなみに大久保氏は、「明治維新三傑」の1人にあげられる大久保利通の孫で、このあと逮捕、起訴され有罪となった。

             ◇
ロッキード事件のフィクサー・児玉誉士夫氏(故人)宅に24時間張り付く“児玉番記者”を発生直後から担当した。その様子をラジオの生放送で伝えたい、とニッポン放送から依頼があり、3人の番記者の中でその日―6月25日に非番だった私にお鉢が回ってきた。半年近くも続けている日課を語るだけ…ラジオといえどもそんなに不安はなかった。
午前7時に電話がかかってくる。6畳の部屋の片隅にある受話器の前に待機、対角線上には録音準備を完了したカミサンが、面白そうな目をして笑いかけている。

「リリリン」。受話器を上げる。パーソナリティの明るい声。「今朝、河野洋平さんらが自民党を飛び出し、新自由クラブを結成しました、どう思われますか?」。
エッ! 話が違うじゃない、政治部じゃない、オレ児玉番だよ…。

児玉宅は、事件が展開してもほとんど動きがなかった。毎日、ぼんやり時間を過ごす日々。「政局が動いて、張り番の周辺にも変化で現れることを期待したいですね」。こんな内容のことを、要領の得ない言葉でしゃべったと思う。「大きな恥はかいてないわよ」とカミサンが慰めてくれたのを覚えている。

ちなみにその年の大晦日。フジテレビの「小川宏ショー」に他社の児玉番記者とともに出演した。この1年を振り返る番組。社宅近くまで局差し回しの車が来てくれて、当時は新宿・河田町にあったテレビ局へ。私は“正月用”を兼ねてカミサンが選んだ派手なブレザー姿。他社は新聞記者らしい地味な背広姿。1人“浮いた”格好。警視庁記者クラブに戻ると、「ピエロか、歌番組の司会者みたい」と冷たい視線を浴びた。
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