チャリティ・イベントによる寄付金額の減少とイベントの多様化 [2015年04月09日(Thu)]
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これから気候が暖かくなっていくに連れて、屋外でのチャリティ・イベントが増えてきます。そのバリエーションも、歩く(walk)、走る(run)、自転車に乗る(bike)、泳ぐ(swim)など様々で、一般的に、“●●thon”(例:Walkathonなど)と呼ばれ、NPOにとって大きな資金源となってきました。ところが米国では、こうしたチャリティ・イベントによる寄付金額が減少してきているようです。 チャリティ・イベントのプロフェッショナルを支援する、Peer-to-Peer Professional Forumの調査結果によると、2014年、規模の大きなトップ30のイベント合計で16.2億ドルの寄付金を集めていますが、2013年と比べて41百万ドル(2.47%)ほど減少しています。この中には、米国がん協会(American Cancer Society)が運営する国内最大規模のチャリティ・イベント『Relay for Life』などが含まれていますが、2014年、同イベントで獲得した寄付金額は、前年2013年の380百万円から45百万ドル減少(11.84%)となる335百万ドルとなっています。また、妊婦と乳児の健康増進に取り組むマーチ・オブ・ダイムス(March of Dimes)の『March for Babies』も、前年比で3.5百万ドル(3.48%)減少し、設立以来、初めて100百万ドルを下回る結果となりました。 このようにチャリティ・イベントで集める寄付金が減少している主な理由として、個人の寄付者がより自由に、自分の裁量で寄付をするようになったことが指摘されています。つまり、決められた日に時間を確保してわざわざ出向かなければならないイベントではなく、より自由に、柔軟に寄付をする方法を模索するようになってきたということです。 中でも、インターネットを活用した寄付の機会が拡大していることが大きな影響を及ぼしているようです。昨年、世間を賑わした『Ice Bucket Challenge』は、記憶に新しい事例といえるでしょう。筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の研究を支援するため、バケツに入った氷水を頭からかぶるか、米国ALS協会(ALS Association)に寄付をするという運動ですが、インターネットを通じて、米国発で全世界に情報が拡散されたことにより、短期間で多額の寄付が集まりました。この他にも、子どものがんに対する研究を支援するために頭を剃ったり、男性特有の病気の認知度や健康意識を高めるためにヒゲを生やすといったイベントも急速に世間の支持を得るようになってきました。 こうした新しいタイプのチャリティ・イベントの登場に対して、従来型のイベントへの梃入れも行われています。例えば、 若年性糖尿病の撲滅に取り組む、若年性糖尿病研究財団(Juvenile Diabetes Research Foundation)では、以前から実施している、複数の”歩く“チャリティ・イベントを統合し、『One Walk』というブランド名称に統一しました。これにより、人々が同財団の活動内容やその重要性について理解しやすくなり、“1型糖尿病“(type 1 diabetes)のための資金調達をしていることがすぐに分かるようにしています。 同様に、3歳以上18歳未満の難病と闘う子どもたちの夢をかなえるという支援を行うメイク・ア・ウィッシュ財団(Make A Wish Foundation)では、各地域の支部に対するサポートを強化するため、チャリティ・イベントの参加者が更にファンドレイザーとして活躍してもらえるように、家族や友人に対する寄付依頼方法を共有するなどの支援を行っています。 日本では、チャリティ・イベント自体がようやく社会に浸透し始めたように思います。東京マラソンに見るように、寄付金額10万円以上を払って「チャリティ・ランナー」として参加する人もいます。その一方で、Japan Givingなどのように、個人単位の小さなチャリティ・イベントが簡単に始められるようになりました。ファンドレイジングを行うNPOとしては、ターゲットの特性やトレンドの変化を見極めながら、潜在的な寄付者との接点を拡大し、調達する寄付金額を最大化していかなければなりません。 【2015/04/01 npr記事参照】 長浜洋二 著 Tweet ![]() ![]() ![]() ファンドレイジングの記事一覧へ≫≫≫ NPO|ファンドレイジング|ボランティア|寄付|社会的起業|CSR|ソーシャル・マーケティング|マネジメント|パートナーシップ|教育|メディア|まちづくり|公共政策 |