救世軍における年次報告書の電子化とNPOのコスト意識の改善 [2011年02月28日(Mon)]
救世軍(Salvation Army)では、2009年から年次報告を印刷された紙媒体から電子媒体へと変更しています。
変更の理由は、約7,000の現地事務所へ送付されている年次報告書(28,800部)のうち、約半分が読まれていないという事実を認識したことにあります。現在では、ビデオによる活動紹介、財務と統計データ、代表者のビデオメッセージを含む、電子版の年次報告書へと様変わりしています。特にビデオについては、テレビや各種プレゼンテーションでも活用できるなど、用途も多様で汎用性があります。 救世軍では、こういった電子化への取り組みにより、2009年には25,000ドルを、2010年にはその倍にあたる50,000ドルを削減することに成功しています。 さらには、直接的なコスト削減だけでなく、紙媒体と違って表現力の豊かなビデオ映像で団体の活動を伝えることにより、受け手の感性にも訴求することができるようになったというメリットも生まれました。結果として、紙媒体よりも電子媒体を受け入れやすい若い人たちにリーチを拡大することができるようになったようです。 もちろん、何でもかんでも電子化すれば良いというわけではありませんね。自団体のステークホルダー(利害関係者)によっては、特に高齢者が多い場合はこういった電子化が不適切なケースもあるでしょう。また、電子版に移行するにしても、一気にではなく徐々にというやり方もあるでしょうし、紙と電子版の両方を併用するというやり方もあるでしょう。 特に最近は、NPOセクター全体としてファンドレジング、つまりお金を集める側面ばかりが注目される風潮にありますが、出ていくお金をいかに削減するかという、コスト意識がNPOには欠けているような気がします。組織のお金は、“出”と“入り”に2分されますが、“出”を抑え“入り”を増やすという方程式のうち、“入り”ばかりに気を取られていないでしょうか。実は、日々の組織運営における工夫で効果を出しやすいのは、“出”の方ですね。そこで削減したコストをファンドレイジングに回すというのが正しいお金の捉え方だと思います。 【2011/02/20 THE CHRONICLE OF PHILANTHROPY記事参照】 Tweet マネジメントの記事一覧へ≫≫≫ NPO|ファンドレイジング|ボランティア|寄付|社会的起業|CSR|ソーシャル・マーケティング|マネジメント|パートナーシップ|教育|メディア|まちづくり|公共政策 |