先程、NHKスペシャル
『ドキドキ・ヒヤリで子どもは育つ〜遊具プロジェクトの挑戦〜』を見ました。
最近NHKさんは私のモチベーションを高めようとして頂いているのかと錯覚するほど、私のテーマに迫ってきます。
一年に数回、公園の遊具に関する事故が発生して、全国的な話題となります。報道されるのは、ほとんどの場合公園の管理者である自治体の管理責任を問うものです。
そして、そうした事例を受けて、全国各地で事故と同種の遊具が一斉に撤去されていきます。まだまだ使えるものでも、『事故が起きたら責任を問われる』というだけで撤去するのです。
この結果、遊ばない子供が増え、やる気がない、イライラする、学校が楽しくないという子供を増やすことにつながっているとのこと。
そこで、今回の『ドキドキ・ヒヤリ〜』で紹介された遊具プロジェクトでは、専門家と市民がプロジェクトに参加し、子供が『ドキドキ・ヒヤリ』で子供自身が危険を感じながら、安全に遊ぶことができる遊具を開発しようとするものでした。
先般研修でお世話になった、NPO法人プレイグラウンド・セーフティ・ネットワークの代表の大坪龍太氏もそのメンバーの一人として出演されていました。
そして、我が丸亀市でも同様の現象は起こっています。国の通達により、ここ10年で危険だと判断された遊具は撤去されました。また、財政状況が悪いため、積極的な遊具設置は相当前から控えられています。この結果、遊具のない公園もあり、子供が公園で遊ぶ姿を見たことがない公園もあります。
昨年11月頃の出来事です。これ、私の仕事上の話ですが、個人情報とか守秘義務が必要な内容でないと思いますのでお話しします。
とある小さな公園のすべりだいが老朽化により遊ぶと怪我をする恐れがあり、簡単な修理では対応できないと判断したので、現場を確認してからすぐ使用禁止にしたのです。
その公園は団地の一角にあるのですが、かなり高齢化が進み、子供もそんなに遊んだ様子がないと思い込んでいたので、すべりだいは撤去して新しい遊具は設置しないつもりだったのです。
その数日後、もう一度現場を訪れ撤去する段取りをしようとしていた時のことです。
私がすべりだいの寸法を測っていたら、4歳
と2歳
が興味深そうにトコトコとやってきて、私のやっていることをジーッと見ているのです。
思わず、
「僕、歳いくつ?兄弟か?」と聞くと、
「ぼくは4さいでとこのこはいもうとで2さいです。」間髪を入れず、
「おっちゃん。こののすべりだいこわれてつかえんようになってしもた。こわれてもすててしまわんといてなぁ。ぼくはもうおおきいきん、すべりだいでなんかいもすべってあそんだけど、このこはまだちいさいきん、いっかいもすべってないんやぁ。まだひとりでうえあがるんはこわいんやぁ。おっちゃん。なおしにきてくれたん?いつあそべるようになるん?」私は一瞬答えることができませんでした。私は市内の公園の状況はよく分かっているつもりでいたけれど、市役所の中で座っていてこの公園で遊んでいる子供がいないと思い込んでいたけれど、子供の中ではこんなに素晴らしい世界があったのだと、そして兄弟の強いつながりが公園で育っているのだということを改めて思い知ったのです。
私自身こういった世界にいるので、まだまだ子供心や好奇心は満ち足りていると思っていたけれど、全然ダメでした。
そういえば、自分の子供にも「危ないからやめなさい。」とよく叱っていることに気付きました。
まさかこの二人の子供の前で
「上司と相談してから決めます。年度内設置に向け前向きに検討します。」とはいえません。
へんこつ魂に点火
「よっしゃぁ。おっちゃんに任せとけ。おっちゃんが何とかして今より綺麗なすべりだいにしてあげる。それまではちょっと辛抱してくれや。新しいのがついたら、今度はみんなで大事に仲良く使ってや。」ほどなく様子を見にやってきた子供のお母さんと近所の奥様。
「もうこのすべりだい撤去するんでしょう?市に予算がないってみんなが言うから諦めてるんです。ここの公園は大きな子と小さな子が一緒になって遊べる場所やけど、すべりだいがなくなったらみんな遊ばんようになるなぁ。」「そんなに遊んでいるんですか?すみません認識不足で。今この二人に約束したので、今の安全基準に適合した新しいすべりだいをつけることにします。今のすべりだいよりは少し小さくなりますけど、安心して遊べると思います。」役所の仕事です。当然全体を見て優先順位をつけて、上司と協議して決定するのが本来です。しかし、あのまっすぐな綺麗な瞳で訴えてくる子供たちの大切な遊び場、将来を担う子供がこの公園で育っていくのだと思うと、ダメ出しを喰らってでも上司を説得しようと心に決めて現場で即決したのです。
事務所に帰りこの話をチョロッとしたところ、こちらが気にするほどの様子もなく、予算範囲だったらOKということになりました。
今工事の準備中です。3月初め頃にはあの子供たちの目が輝くような新しいすべりだいが設置されます。
今回のようなケースは稀ですが、現場でのユーザーから直接じっくりとお話しを伺うこと。基本中の基本ですが、我々行政は非常に苦手なのです。私のテーマである相互理解&合意形成の第一歩はまず直接お会いしてお話しをお伺いすること。今日のテレビの中からもたくさんのヒントを頂きました。日々勉強です。