国会議員で構成している「発達障害の支援を考える議員連盟」は8月8日、「発達障害の被害者に対する大阪地裁判決について」考える緊急集会を開催しました。
大阪地裁が7月30日、姉を包丁で突き刺して死亡させた42歳の男性被告人に対して、懲役16年の求刑は軽すぎるとして、殺人罪の有期刑の上限である懲役20年の判決を言い渡しました。
この判決には、障害を理由に罪を重くするという差別があるのではないか、発達障害を正しく理解していないのではないか、矯正と社会復帰に関する認識不足があるのではないか、などのさまざまな疑問が投げかけられています。
また、この裁判が裁判員裁判であったことから、日本児童青年精神医学会は、裁判員に対する正確な医学的知見と社会福祉に関わる情報が適切になされたのかどうかを問いかける「緊急声明」を発しています。
ヨーロッパのマスコミから「考えられない判決」と論評され、矯正施設退所者に対する受け皿が日本にほとんど存在していないことに対する驚きの声が上がっています。
そこで緊急集会には、厚生労働省から、6月20日に成立した「地域社会における共生の実現に向けて、新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」の概要資料が提出されました。この法律にもとづく実効ある施策が待たれます。
また緊急集会には、法務省と厚生労働省が連携して行っている矯正施設退所者に対する地域生活定着支援事業に関する資料が提出されました。誤りを犯してしまった人の理解と社会復帰について、なんの努力も行われていないわけではありませんが、非常に不足しています。
そして、矯正の「受け皿がない」という認識から、刑務所への長期収容を主張した根本的に誤った判決からは、障害特性が正しく理解されておらず、そもそも人権感覚が希薄な現実が浮かび上がってきます。
不幸で残念な事件・判決ですが、真摯に検討する努力の中から、日本社会の進むべき方向を浮かび上がらせたいものです。
日本自閉症協会、日本発達障害ネットワークの代表が行った意見表明を添付ファイルで紹介します。
日本発達障害ネットワークの意見表明はこちら→
120808_a.pdf 日本自閉症協会の意見表明はこちら→
120808_b.pdf