「毎日新聞」は、「新 教育の森」という特集記事で、教育のいまを特集しています。7月4日付の紙面に、井上俊樹記者の署名入り記事が掲載され、特別支援教育が取り上げられました。紙面の3分の2を使った充実したレポートです。
「発達障害の子供が落ち着き取り戻す―特別新教育のいま…個々のニーズに応じて」という見出し。
長野市の市立三本柳小学校の通級教室がとりあげられ、コミュニケーションにとれない子どもに対して少人数グループによる指導で対人関係を形成していく狙いで行われている実践を紹介しています。また、きめ細かい学習指導で、子どもたちが授業に集中できるようにり、学校全体も落ち着いてきた変化をレポートしています。
特集記事は、大阪市で6月21日に開かれた「全国LD親の会公開フォーラム」での専門家の発言を紹介するという形で、現状の特別支援教育の制度上の不備や問題点を紹介しています。
●通級教室の設置が遅れている 上野一彦・日本LD学会理事長は、通級指導教室の設置の遅れを指摘しています。文部省の調査では、2008年5月1日現在、通級指導を受けている児童生徒は4万9685人(小学生4万6956人、中学生2729人)。このうち、自分の学校内にある通級教室に通っているのが38.4%で、58.8%が他校通級でした。対象者は小中学校合わせて毎年4,000人以上のペースで増えているにもかかわらず、国の2008年度予算に盛り込まれた通級指導のための人員増は300人にすぎません。
●教員の専門性の向上を 柘植雅義・兵庫教育大大学院教授は、教員の専門性に関して指摘しています。英米では、日本の特別支援教育コーディネーターにあたる人材の大半が大学院で専門教育を受けているのに対して、日本では4%程度にとどまるというデータを示し、「特別支援教育の中核となる人材がこれでいいのか」と、問題提起しました。
●大幅に立ち遅れている高校の支援、通級教室と特別支援学級を都道府県の判断で実施を 文科省の2008年度の調査では、生徒への個別指導計画を作成している高校は10.9%にすぎず、小学校(82.3%)、中学校(71.2%)との差は歴然としています。制度上、高校には通級指導教室がなく、特別支援学級の設置例もほとんどありません。特集記事は、柘植教授が「個におうじた指導を充実させるには高校でも通級指導が必要。国が行わないのならば都道府県が独自予算を付けてでも実施すべきだ」と訴えたことを紹介しています。