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特別支援教育の理念とそのは何か、その運用を考えさせられる裁判所の決定 [2009年06月28日(Sun)]

 特別支援教育について、考えさせられる裁判所の決定が26日に奈良県からのニュースでありました。

<時事通信の配信記事> 
 奈良県下市町立中学校への入学を希望していた身体に障害を持つ谷口明花さん(12)=同町=と両親が、町教育委員会を相手に、入学を認めるよう求めた訴訟で、奈良地裁(一谷好文裁判長)は26日、同校への入学を義務付ける仮決定を出した。代理人弁護士によると、中学校入学での仮決定は珍しいという。
 決定によると、校舎には手すり付きトイレが設置されているなど、設備などに不都合はないと指摘。「中学校教育の期間はわずか3年間しかないのに、提訴してから既に3カ月近くが経過しており、緊急の必要性がある」と、同日からの女子生徒の入学を認めた。
 訴状などによると、明花さんは両足と右腕が不自由で、3月に町立小学校を卒業。下市中への進学を希望したが、同校は施設未整備などを理由に、入学通知を出さず、特別支援学校への進学を要請していた。

<毎日新聞に掲載された記事>
 奈良県下市町の町立下市中への進学を希望したのに、設備の不備などを理由に町教委が進学を認めなかったとして、車椅子生活を送る谷口明花さん(12)=同町在住=が入学を求めて起こした訴訟で、奈良地裁(一谷好文裁判長)は26日、町教委に対し、同校への入学を義務付ける仮決定を出した。谷口さん側の弁護士によると、中学入学を巡る仮決定は異例という。正式な入学を求めた訴訟は続いており、判決までの措置となる。
 一谷裁判長は「町教委の判断は著しく妥当性を欠き、特別支援教育の理念を没却する」と述べた。
 地裁の決定などによると、谷口さんは脳性まひのため、両足と右腕が不自由。手押しの車椅子で日常生活をしているが、字を書いたり、会話することに支障はなく、今年3月まで介助員2人の付き添いを受けて地元の小学校に通っていた。
 同級生と一緒に町立下市中へ進学することを希望したが、町教委は「成長期で体重が増えるため、階段が多い下市中では、本人と介助員の命の保障ができない」などと入学を認めなかった。
 谷口さんと両親は今年4月、同中学への進学を求めて奈良地裁に提訴し、判決が出るまでの間、仮通学ができるよう求めていた。谷口さん宅へは県立明日香養護学校(同県明日香村)の教員が訪問して学習指導している。
 地裁は現地調査をして障害の程度や同中学の設備などを検討。「移動介助が著しく困難とは考えられず、現状でも就学は可能。バリアフリー化には国庫補助もあり、可能な範囲でスロープを設置するなど工夫を試みる余地はある」と判断した。
 下市町の堀光博教育長は「内容を精査したうえで対応を検討していきたい」と話した。

<考えさせられたこと>
1、教育行政への指摘に関すること
 下市中学校は、相当な傾斜地に建っている学校のようです。裁判所が現地調査をしたうえで判断したのは、当然のことだと思われます。そのうえで裁判所は、『設備などに不都合はない』『バリアフリー化には国庫補助もあり、可能な範囲でスロープを設置するなど工夫を試みる余地はある』と、下市町教委が谷口さんに明日香養護への進学を勧めた理由を否定しています。
 町教委は、下市町の財政は逼迫しておりエレベーター・スロープ等必要な施設改修を行うことは困難だと、主張していました。
 裁判所の指摘通りに、現状の設備に不都合はなく、国庫補助を受けて施設改修が可能であるならば、町教委は怠慢のそしりを免れません。必要な教育条件を準備できない、今の教育行政と財政制度の点検し、改善が求められます。

2、教育関係者からの論議、「特別支援教育の理念」について
 逆に、町教委の主張通りで、谷口さんの移動を安全に介助するには施設改修が不可欠であるにもかかわらず、そのための財政支援が困難な状況なら、現実から乖離した不当な決定として町教委は争わざるをえないと思われます。
  裁判所の判断が妥当だったかどうか、その評価は総合的になされるべきことなので、情報が必要です。今後の県・国の対応、推移を見守りたいと思います。

 裁判所は、「町教委の判断は著しく妥当性を欠き、特別支援教育の理念を没却する」と判事したのですが、「特別支援教育の理念」の解釈は、教育関係者の論議をよんでいます。
 「中学校への入学を認めない」ことがただちに『特別支援教育の理念を没却する』というのであれば、肢体不自由特別支援学校の存在意義を否定することになるからです。また、「本人・保護者の“希望”通りの進学を認めない」ことがただちに『特別支援教育の理念を没却する』ことになるというのであれば、「合理的配慮」を否定することになり、教育行政の権限を極めて狭く解釈した判決と評価されるからです。
 特別支援教育は、障害のある全ての子どもたちが生涯を通じて一貫した適切な指導・支援を受けられる体制を目指すものです。“全ての子どもたちを小中学校で教育する”という狭義のインテグレーション(統合教育)とは異なるものです。インクルージョン教育の考え方は、支援の必要度が大きい子どもたちに対応するために日本における特別支援学級や特別支援学校のような場を設置することを否定していません。
 仮決定の全文がまだ入手できないのですが、この判決が何をもって『特別支援教育の理念を没却する』と断じたのかポイントのように思われます。

 当事者・保護者の訴えが認められたことを、まずは喜びたいと思います。
 同時に、当事者・保護者と行政の対立は、教育でも児童福祉でも、毎日生起しています。なぜ裁判にまで至ってしまったのかと思います。
 特別支援教育に関わる文部科学省のガイドラインでは、学校と保護者の連携により新しい特別支援教育を創造することが打ち出され、注目しました。しかし、信頼できる教師がたくさんいる一方で、残念な事実もまだ数多くあるのが現実です。
 連携による成功事例を一つひとつ積み上げていくことの重要性、論議を続けることの大切さを痛感します。
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