読書ノート「幸せのメカニズム」を読んで〜若いころは、大いに利己的に自己実現を目指すべきかもしれないという最後のメッセージに共感 [2017年01月09日(Mon)]
慶応大学 前野隆司教授の「幸せのメカニズム」。前野教授は、もともとロボット・脳科学の研究者ですが、ロボット工学や脳科学の視点を活かして「幸福学」「イノベーション教育」など、チームによるイノベーションと幸福の関係性を研究されいます。もともとはキャノンで超能力の研究をされていたとか。
今まで「人を幸せにする教育」「人を幸せにする製品やサービスの開発」という視点があまり研究されてきませんでした。前野教授の研究は、研究を研究で終わらせるのではなく、具体的な産業として、企業のサービスや製品開発につなげることを目的としている点が特徴です。 もともと、「日本は資源に乏しい国」と言われて育ち、「良い製品を作り、豊かな国にしたい」とキャノンのエンジニアに就職。しかし、経済発展に貢献できればみんな幸せになれると思っていた中で、経済が発展していなかった頃と現在の豊かな日本人の幸福度は変わっていないという事実を知り、大変ショックを受けられたとのことでした。 私たちは案外「自分がどうすれば幸せになれるか」を知らないものです。また、幸せの基準において、間違った判断をしてしまいがちでもあります。ついつい「幸せの幻想」にとらわれ、本当の幸せに気づけなかったりします。 本書では、「なぜ、幸福の研究が必要なのか」という視点から、幸福のメカニズムについて論じられています。 【気づき@】幸福は「目指す」のではなく「メカニズムを理解」すべきもの 本書では、幸福は目指すべきものではなく、ダイエットのようにメカニズムを理解すべきものだと述べられています。メカニズムを知ることで、意識して目指さなくても脳が自然と目指すようになるということです。だから、幸せの研究が必要なのだという筆者の主張は、なるほどと思いました。 【気づきA】ビーク・エンドの法則 ピーク・エンドの法則とは、人は苦痛・快楽の評価は「ピーク(絶頂)」と「終わったときの程度」で決まるのであって、「どのくらいの期間が続いたか」は無視されるというものです。恋愛、受験勉強、いろいろなことがあった中で思い出すのはピークかエンド。長い苦労も最後がよければ幸福度はあがり、逆に楽しい時間が長くても最後が悪ければ台無しになる。「終わりよければすべて良し」ということわざは、なるほどです。だから、仕事もプライベートも成功するまであきらめないという姿勢は、結果的に幸福度が上がるということになりますね。 【気づきB】長続きする幸せと長続きしない幸せ 幸せには、長続きする幸せと長続きしない幸せとがあるようです。「長続きする幸せ」は心的な要因による幸せで、他人と比べられないものになるそうです。筆者は、これを四つの因子として説明しています。 「自己実現と成長」 「つながりと感謝」 「前向きと楽観」 「独立とマイペース」 この因子を満たしている人が幸せな人で、一方、長続きしない幸せは、「地位財」といって、金銭欲、物欲、名誉欲だと筆者は説明しています。 むつかしいのは、この長続きしない幸せを目指すループに入ってしまうとそこから抜け出しにくいという点。ここには、あるものを「断ち切る」判断が必要で、それが出来ないと、短期的な幸せを追い求めることを繰り返し、刹那的な生き方、人の目を気にしたり、その結果孤独になってしまうというものです。 ■まとめ これだけ聞くと、「人生はやっぱり社会に貢献し、人とのつながりをもって・・」と思いがちですが、筆者は最後に「若いころは、大いに利己的に自己実現を目指すべきかもしれません」と述べています。これは私も賛成で、最初から仏様のような人なんて、なんかつまらない。近寄りがたいしですし、自分とは違うところにいる人だって他人事になっちゃうような気がします。金銭欲や名誉欲を追いかけるというのは、自分にエンジンをかける力になり、力をつけるというプロセスにおいて大事な部分もあるかと思います。エンジンと力がなければ、社会によいことをしようとしても、大きな影響力は発揮できないのではないでしょうか。 最後に、最近幸せになるために「つながる」という言葉が多用されていますが、個人的にはつながりすぎず、「和して同ぜず」を大事に生きていきたいと思います。 幸せのメカニズム https://www.amazon.co.jp/dp/B00J4G0QP0/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1 |