CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
« 2015年11月 | Main | 2016年01月»
日本の子どもの性の商品化という問題。子どもたちを性的搾取から守るためにー人身取引被害者サポートセンターライトハウスとアフターケア相談所ゆずりはの事例から [2015年12月19日(Sat)]
今週は、ライトハウス主催のセミナー「一人ひとりが子どもに寄り添うスペシャリストに」に参加してきました。
内容は、日本の人身取引被害(性的搾取)の現状と、子どもたちを守るために市民ができることは何かという議論でした。

<講師>
・日本で唯一、人身取引被害者(JKビジネス、援助交際等)の救済を専門に行う、「人身取引被害者サポートセンター ライトハウス」代表の藤原志帆子さん。
・児童養護施設退所者が直面する孤立と困難をサポートする「アフターケア相談所ゆずりは」代表の高橋亜美さん。
・働きたいけど働けない若者を、500名強の市民ボランティアで伴走型支援をしている、NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡理事長の津富宏さん


■増加する人身取引被害者

ライトハウスが、2004年に団体を立ち上げたときは、被害者の多くは外国籍の方だったようですが、今は9割が日本人で、子どもの性的搾取被害は、年間5千件以上にも上るそうです。
また、12歳以下の児童ポルノの75%が、強制の手段で製造されています。(警視庁資料2014年版)児童ポルノは、2014年に被害児童数が1828人と過去最多

では、どのようにして、子どもたちは被害に遭うのでしょうか。

●児童ポルノに関しては、チャット型アプリが加害者との接点になったり、流通になったりしているケースも少なくないそうです。

●昔からある「アイドルになれる」という手口は今もあり、さらに巧妙化している。入口は、パーツモデルやジュニアアイドル募集、麻布の寮に住めるという誘い文句。


加害者は、断れない子を選別し、「恥ずかしくて被害を訴えにくい」「お金をもらっているということで、声を出せずにいる」のに乗じて、抵抗感を奪っていく。

恥ずかしい写真を撮られ、20歳の誕生日に呼び出される。写真と身分証明書を出され、AV出演の契約をしろと脅される。ある子は、契約を決心するまで軟禁されたり、何時間も抵抗したそうだが、最後は押し切られる。

泣く泣く出演した作品は大々的に販売され、知人や家族にも知られる。このような被害は訴え出ることで作品に注目されてしまうため、訴えることがむつかしい。

ライトハウスでは、被害者のケアをするだけでなく、「どう巻き込まれないように予防していくか」や、弁護士を立ててAV販売を差し止めたり「被害を最小限にする」という取り組みもされているそうです。しかし、相談件数は倍増しており、今年は昨年の2倍のペースで相談がきており、専門団体だけで解決することはむつかしい状況です。

※なぜ加害者は子どもや女性の性を売るのか
ローリスクハイリターン、絶え間ない需要、参入が容易、資本が不要、特別な知識が不要、etc…
目的はビジネスの人もいれば、猥褻目的の人もいて、それが混在しているところが、問題を複雑にさせている。


P1290350.JPG

■児童養護施設退所者を性的搾取から守る

次に、児童養護施設退所者と性被害の関係性について、ゆずりはの高橋さんからお話がありました。
児童養護施設に入所する子どもの大半は、虐待を受けてきた子どもたちです。虐待の中には性被害も含まれます。この20年間で、虐待件数は、なんと50倍にもなっています。少子化なのに、虐待件数は右肩上がりです。

ゆずりはの高橋さんは、13年間この活動をされてきた中で、児童養護施設退所者の女性には、性産業へ従事する方も少なくないとおっしゃっていました。

児童養護施設退所者が性産業に誘導されてしまう背景には、

@就労状況の不定、生活苦から
・学歴資格が問われない
・即金、日払い、前払い
・住居提供、保育設備の完備
最低限の生活が即完備される

A虐待などのトラウマから
自己肯定感の低さ
・初めて大切にされたという実感


性産業が、彼女たちのセーフティーネットになってしまう現状。そして、性の切り売りをするということは、その分、背負うものがあります。その結果、

・更に過酷な性産業に従事する
・のぞまない妊娠
・精神を患う
・薬物依存、アルコール依存
・自殺企図、自殺
・入院
・生活保護


という状況に陥ってしまうこともあります。
その結果、性的被害に遭い、望まない妊娠となることも少なくないそうです。このような環境の中で、安心して出産できるでしょうか?子どもを健全に育てていくことができるでしょうか?

ゆずりはへは、のぞまない妊娠による中絶などの相談が多いようです。

「妊娠したが子どもを育てられず、中絶費用も払えない」
「市役所に中絶費用を相談しに行ったが、家族や彼に先ず相談しなさいと帰された。それができれば、市役所なんて行かないのに」
「誰にも相談できなくて、お腹だけが大きくなってどうしたらいいかわからない。」


ゆずりはが、家族の代わりになって、市役所や病院へ付き添うことも多いようです。

P1290351.JPG

■被害にあった子どもが社会に戻るということ

ライトハウスの藤原さんのお話によると、どのような子どもが性の商品化という被害にに遭っているかというと、「自分は大丈夫という自信」があり、援助交際をしている子を馬鹿にしているような子が、一枚も二枚も上手の大人に騙されてしまっていることが少なくないようです。

また、性搾取は女性だけでなく、男性にもあり、男性の商品の方が高く売れたり、男性被害者は女性被害者よりも声を上げにくいという現状があるそうです。

子どもたちが犯罪にどう巻き込まれないようにしていくか。巻きこまれ、被害を受けたあとに、どう社会に戻っていくか。大変むつかしい課題ですが、確かなのは、専門団体だけでなく、市民ひとりひとりが寄り添うことです。

しかし、現状は、寄り添うどころか、被害を受けた子どもたちを襲う「二次被害」というものがあります。

「彼に撮らせたあなたが悪い」
「お金が欲しかったんじゃないの?」
「自分でやったんだから」


という無理解や自己責任論が、さらに被害者を孤立に追い込んでいき、被害を大きくしている現状があります。この二次被害で、多くの子どもたちが、希望を持てず、社会に戻ることをあきらめてしまっているのではないでしょうか。

仮に何もできなくても、少なくとも、二次被害だけは出さないように心がける、それだけでも大分違うのかもしれません。

■感想

日本では性虐待は2%前後だと言われていますが、性被害・虐待というのは、安心して開示でき・ケアされる環境が整っていても開示できないものだと思うので、本当に社会の中に潜ってしまう問題だと思いました。

ゆずりはの高橋さんは、「社会問題は多くあり、優先順位を付けられることではないが、性被害を受け続けるというのは魂を奪われることだ」とおっしゃっていました。元気に見えても、何度も被害を受け続けたという傷やトラウマは、一般の人が理解できるようなレベルでは無いだろうということと、見た目では、その深刻さはわかりません

高橋さんのもとには、「リストカットをした」「死にたい」等の連絡も入ってくるそうですが、多くが生活保護を受けている女性なのだそうです。「生活保護を受けていれば、必要最低限の住まいや食べ物はあるはずなのに、なぜ?」と思うかもしれませんが、人は社会の中での役割(仕事)を持つことが、生きがいになるのだと思います。

彼女たちのような社会で生き抜く上での大きなハンディキャップを背負っている人は、フルタイムで働き続けることは難しく、毎日仕事をするというのもむつかしいであろうと、私も思います。中間的就労という言葉が適切ではないかもしれませんが、「働く」ということが画一的な社会であるため、もっと、多様な働き方が認められるようになったらいいなと思います。「働きたいけど働けない人」は、この女性たちだけでなく、若者や高齢者にも置き換えられる話だと思います。

高橋さんは、支援とは、

「その人が抱えている背景に思いを馳せる。指導するのではなく、寄り添った上で、必要な知識を与えていく。相手は大人を信じていないから、自分に攻撃的であることもある。でも、歩み寄りの一歩は私たちから。」

とおっしゃっていました。

地域のひとりひとりが、歩み寄り、寄り添っていく社会にするにはどうしたらいいか。

それは、津富さんの「静岡方式」が大変勉強になりました。今、「静岡方式で行こう!」を読んでいるので、津富さんのお話は、別途書きたいと思います。
東京都立砂川高校通信制の開かれた学校〜地域に開放する高校内居場所カフェと高校内無料託児所〜 [2015年12月18日(Fri)]
東京都立砂川高校通信制の地域に開放する高校内カフェ「砂川カフェing」に見学に行ってきました。ここは、若者支援者や地域住民がカフェ運営のボランティアとして高校内に入り、学生と交流する場です。若者支援者が顔なじみのカフェの店員となることで、学生が「大人に相談する」ハードルを下げていることが特徴です。無料ドリンクをつくり、学生たちに手渡しながら交流していきます。

NPO法人育て上げネット井村さんが高校に働きかけ、2年前にカフェが出来たそうです。最初は反対していた先生も多かったようですが、今はこのカフェの意義を理解してくれるようになり、先生と支援者との役割分担が出来ているとのことです。

■砂川カフェの特徴

@地域住民と学生との交流の場
カフェブース.JPG
※「支援者と学生とのコミュニケーションはドリンクを渡す時」というやり方が周知されている
※カフェの店員さんは、若者支援の専門家や身元が明らかで、生徒たちに有益な対応をお願いできる人々地域住民。

Aオープンな居場所
P1280562.JPG
※左手がカフェとなるフリースペース。玄関の前のスペースを使っているため、「誰もが通り過ぎる場」であり、自然と周知されている。
※砂川カフェが出来る前は、このスペースは、騒がしく、おとなしい生徒が寄り付かない場所であった。

B部活動の発表の場となることで、生徒や先生の張り合いに。
部活動の発表の場.JPG
※部活動の発表や、英語のスピーチコンテスト等の練習の場など、個人の活動の発表の場にもなっている。

C定時制の学生には、別の居場所も提供
張り紙2.JPG
※砂川カフェ以外の学校内居場所もある。校長室と談話室の開放。

D学校でサポートしきれない部分を地域が担う
P1280556.JPG
※地域の支援機関と繋がっており、カフェに貼紙などをして、地域の居場所と繋げている。

■地域の子育てネットワークを活用した託児所の開設

砂川高校には、2015年6月から無料の託児所が開設されました。きっかけは、試験のときに、学生夫婦が、1歳の子どもを抱えて、交代でスクーリングを受けていたのを見たことだったそうです。それから、門馬副校長が、学校内に託児所を開設するための勉強をし、具体的な開設に向けて動き出されたとのこと。しかし、いざ開設しようとしても、「保育士不足」という大きな課題があったそうです。そこで、砂川カフェの地域ボランティアさんに保育士の相談をしたところ、地域の子育てネットワークを紹介してもらい、地域の子育てネットワークを使って、7名の保育士さんにご協力いただけることになったとのことです。

年間の託児室の費用は年間の保険料のみで、1歳から5歳までのお子さんを預かることにしているそうです学校に通うための保育費用をねん出するのも大変なことだと思うので、この託児所は、勉強したい学生を就学から遠ざけないためにも、大事なサポートだと思います。

また、学校内で、1歳〜5歳の子どもが遊んでいるというのは、学校の雰囲気もほっこりさせるようです。たまに、子どもが校庭を走っている光景などもあるそうです。

P1280563.JPG

■地域が送り出す卒業式

今回の訪問により、公立通信制高校を卒業するということが、どれだけ大変かを知りました。にもかかわらず、卒業式の来賓や保護者がとても少なく、井村さんが最初に出席したときは、来賓がたったの二人だったそうです。それが、今は、砂川カフェのボランティアさんや地域の方等がどんどん出席するようになり、昨年の来賓数は定時制の卒業式の来賓数を超えたそうです。

卒業式では、代表の生徒が、自分の置かれた環境や卒業への思いをスピーチしますが、それが、毎年、とても心に響くものなのだそうです。私なんて、何の苦労もなく卒業し、将来も楽観的に考えていたので、卒業式で泣いたことも特別な思い入れがあったこともありません。だからこそ、自らを管理し、主体的に学んで卒業される学生に会ってみたいと思いました。先生も涙の卒業式で、井村さんが「卒業式に出て、こういう学校が必要なんだと思った」とおっしゃっていたのが印象に残っています。

多くの地域の人が学生たちを送り出すことで、「自分をこれだけの大人が見ていてくれた」と、これから社会に出ていくことへの勇気や希望につながっているのが素晴らしいと思いました。3月は、私も出席させていただきたいと思いますexclamation
東京都立砂川高校通信制の教育活動@〜公立通信制高校に通う学生たちが置かれている環境とは〜 [2015年12月17日(Thu)]
12月12日に、東京都立砂川高校を訪問してきました。NPO法人育て上げネット井村さんのご紹介で訪問することができたのですが、井村さんが7年前にこちらの高校にノックをし、4年前に高校内に入ることができ、そして、2年前に、高校内を地域に開放する居場所カフェ「砂川カフェing」が出来たとのこと。参加者は、議員、教育庁 NPO関係者、学生など多様なメンバーでした。

12316129_971413626270778_5362888490053043064_n[1].jpg
都立砂川高校の校門

■砂川高校の3部制普通科+通信制とは

東京都立砂川高校は、平成17年度から、全日制課程より昼夜間定時制課程・通信制課程に学科改編しています。当初は、東京都多摩地区で唯一の通信制課程の公立学校としてスタートしたそうですが、当時は何かを行いたくても、できない現状があり、改善できるきっかけを求めて、もがいている状況だったそうです。

それが、平成24年度に野中校長と門馬副校長が着任し、通信制課程の全教員の考えや意見を聞き、「この学校として生徒にできることは何か」を問い続けたそうです。そして、同年に「学校に来させる工夫」「居させる工夫」を考える委員会を発足し、「3つのつながりをもたせる学校」としての、新しい教育活動が始まったそうです。

◇3つのつながり◇
@学びとのつながり(学習指導)
A人とのつながり(生活指導)
B世の中とのつながり(進路指導)
Cその他の改革「開かれた学校」
★砂川カフェing

12400937_974329515979189_4608871662244274998_n[1].jpg
学生に配っている「進路だより」

また、この取り組みを始めてから変わったことは何かというと

◇学校の変化◇
@生徒が多くの大人と触れ合う機会を得た
A校内で勉強する生徒の姿が増えた
B進路決定率が上がった
C教員が自信をもって穏やかに生徒対応をするようになった


生徒だけでなく、教員もイキイキと仕事をするようになったというのが、印象的でした。かつて、キリキリしていた先生は、地域の人が学校内にいると、「誰が来てるの?」と厳しい目を向けていたそうです。それが、今は、自分たちの手が届かないところをやってもらえる人なんだということを認識し、現状の改善ができず、難渋していた先生も、情熱的に仕事をするようになったそうです。これも、きっと、学生ひいては地域社会に良い影響を与えているのではないかと思いました。

12369059_971846026227538_5161243764008601992_n[1].jpg
野中校長からのご挨拶

■自分で勉強するということのむつかしさ

当日は、門馬副校長から、お話をお聞きしました。門馬副校長は、4年前にこちらに赴任となったそうですが、今までは、全日制高校の教員だったそうです。それが、突然通信制高校の副校長となり、当初は戸惑ったそうです。

通信制高校には、私立と公立がありますが、特に、公立通信制高校は自学自習が基本で、3年間での高卒資格取得には強い意志と自己管理力が求められます。自分で勉強するというのは、本来あるべき学び方ですが、受け身の勉強に慣れてしまっている人や自分で学習を進めることが苦手な学生には向いていないとも言えるのだと思います。前もって自分で勉強し、それを踏まえ、スクーリングで確認する。今注目されている、反転授業やアクティブラーニングの要素を、昔から実践しているという側面もあるのだと思いました。

また、人とのコミュニケーションが苦手な学生も多く、そのため、スクーリングでは、かつては、学生が学校に来なくなることを恐れて、「当ててはいけない」という決まりになっていたそうです。しかし、今は、学生たちに「30秒考えて」と当てているそうです。人付き合いが苦手だから、「させない」のではなく、「一個だけでもさせよう。完璧は無理だけど、少ししよう」という方向に転換されたのだそうです。

したがって、「学校に行けないから通信制」ということでもなく、「週1回通えばいいから楽」ということではもなく、一般の学校で卒業することよりも、よほど大変で、卒業のハードルは高い学校なのだと思いました。私も今大学院に通っていますが、ひとりで計画し、計画通りに勉強や研究を進めるというのは、大人でもとてもむつかしいことです。実際、都立砂川高校通信制も、卒業する学生はは、半分程度のようです。

※公立と私立の通信制高校の違い
@学費(1単位あたり)
公立:平均300円〜700円
私立:7000円〜10000円

Aサポート校との連携
公立通信制高校にはサポート校(学習や生活を支援してくれる学校)との連携はない。私立で、サポート校を利用している生徒の9割以上が3年間で高校卒業資格の取得に成功している。

B入学時期
公立:4月。前の学校を退学せざるを得ない子は、入学までの期間がブランクとなる。
私立:都度(毎月)入学可能


経済的な問題など、私立の通信制高校より、より困難な環境の学生が多いのだろうと思いました。

■通信生高校に通う学生たちが置かれている環境

通信制高校に通っている学生たちは、どのような環境に置かれているのでしょうか。
お話を聞いていた中でもった印象は、

・一般の人がイメージする勤労少年は少ない

・子どもというよりかは、社会人とみなしている。「中卒のための学校」であって、高校ではないという説明

困難を抱えた環境の中、なんとか、ここに辿りついた子たち

「限られた情報」の中でモノを判断している子が多い。
進路などにしても、教員が「これでいいんだよ」って言っても、外部の余計な言葉が入り、決断できなくなる。「彼らが信じているものは何なのか?」、がつかめない

・世の中に振り回されている子が多い
アルバイトなど、世の中に振り回される(うまく使われる)子どももいる。アルバイト先には、学業を学生の権利として認めてもらいたい。アルバイト先は、子どもたちが中卒なので安く使うが、子どもにとっては、学校の先生よりも身近な店長の発言力が高い。

「子どもたちに、良い情報が入っていない。能力が低いわけじゃないのに、情報の少なさ・質の悪さが原因で、悪循環に陥りやすく、そのため、能力を社会で活かせていない。

学生たちに、社会とのつながりを持たせる学校を目指す。たとえ、学校(卒業)がだめになっても、若者支援者のような相談できるつながりをもてれば、そこから再出発をもできる。そのような、きっかけを作れる学校を目指している」


という趣旨のお話をされていた門馬副校長。今も、その情熱的な言葉が心に残っています。

11205566_971845922894215_6665031070831410043_n[1].jpg
門馬副校長がまとめた、砂川高校通信制の教育活動についての資料
NPO法人パノラマ「ぴっかりカフェ」の1周年記念パーティーに参加しました!ー支援って何だろうー [2015年12月08日(Tue)]
12月6日は、NPO法人パノラマが運営する高校内図書室での居場所カフェ事業「ぴっかりカフェ」の1周年記念パーティーでした。前半がトークショー、後半が懇親会。トークショー出演者は、

・石井正宏さん(代表理事/シェアするココロ)
・鈴木晶子さん(理事/インクルージョンネットかながわ 代表理事)
・松田ユリ子さん(理事/田奈高校学校司書)
・黒川祥子さん(監事/ノンフィクション・ライター)


という豪華メンバーでした。

この「ぴっかりカフェ」は、若者支援の専門家であるNPO法人パノラマ代表石井さんと神奈川県立田奈高校の連携による、高校の図書館をカフェにし、そこに支援者が常駐するという交流相談事業です。

この取り組みの良さを伝えるのは、なかなか難しいのですが、私の視点で説明すると

「出入り自由な高校内図書館カフェという形式をとることで、学生たちに自然なかたちでアプローチができる。困っていない時から顔見知りとなることで、日常の中で信頼関係を築くことができ、本当に困った時に相談できる相手となる。学生たちは、その時初めて、ギター好きのカフェマスターが、信頼厚い専門家であることを知る。」

でしょうか。これって、すごいことだと思います。

集合写真.jpg
すべての人をフレームイン!

■将来に対して複線的ななキャリアイメージをもてる

このぴっかりカフェには、他にも副次的な効果があると思います。
高校生にとっての将来は、塾にいって大学へいくことだけじゃないですよね。でも、具体的に、他にどんな選択肢があるのか、身の回りに、そのような大人は余りいないでしょうから、なかなかイメージがつきにくいかと思います。

ぴっかりカフェには、卒業生のボランティアや地域のボランティアが参加します。それも、相談とか支援をするために来ているわけじゃなく、ウエイター・ウエイトレス的に、そこに居ることから始まります。そこで、学生たちと一緒に話す人、話さない人など、その時々で違うようですが、自然なかたちで、年齢の近い卒業生や、親以上に年の離れた地域の方などとのコミュニケーションから、世の中には、いろいろな職業があるということを知れるのではないかと思います。

また、ぴっかりカフェが部活動の交流の場にもなっているようです。たとえば、日本文化を学ぶ茶道部は、それまであまり注目を浴びていなかったようですが、ぴっかりカフェで茶道を教えることで、学生から見た茶道部の印象が変わったり、日本文化に興味をもつ機会になるという効果もあるそうです。こういうのも、視野が広がりますよね。

そういえば、被災地でも、いろいろな大人・学生ボランティアが入ってきたことで、「こんな人生があるんだ」という職業の選択肢の多さ、それに気づいた子が多かったそうです。大学生や大人と出逢ったことが刺激になり、進路の選択肢が広がった。また、特に、もともと大学進学を視野に入れてなかった子に対して、刺激になっていたそうです。また、大学生と触れ合うことで、逆に大学に行きたいと思う子も出てきたと聞きました。

ぴっかりカフェにも、同じような効果があるのではと思います。

■「支援」って何だろう

トークセッションの中で、「支援をしたがる人は、居場所形式のぴっかりカフェの支援者には向いていないのではないか」という問いかけがありました。支援したがる人は、知らず知らずのうちに、支援者としての自己実現や支援を押し付けてしまっているというものでした。支援者は確かにそういうものかと思う一方、地域ボランティアは、様々な人がいて、ボランティアさんにそこまで求めるべきなのかどうか、はむつかしい課題だと思いました。「支援とは何か」というのは、考えれば考えるほど、わからなくなります。

話はそれますが、先日参加した被災地・子ども教育白書のセミナーでお聞きした被災地の高校生の話を思い出しました。東京の企業から被災地の高校に、就職支援(就職マッチング)というものが、結構あったそうです。そして、高校の先生が、そこに多くの学生を送ったそうですが、なんと、半年で半分の学生が地元に帰ってきてしまったということでした。東京に進路を決めた子が半分戻ってきたことは始めてだったことで、先生も困惑してしまったというものでした。

学生たちは、なぜ戻ってきたのか。東京で何を感じたのか。

東京では、みんな親切で、手厚いサポートがあったそうです。それに、学生たちは、ちやほやされることに違和感を感じた。親切だったけれど、それはなぜかを考えてしまったのではないか。また、東京の人は、震災のことなんて忘れていて、自分のトラウマとのギャップが違和感だったのかもしれない。自分だけ家族から隔離されたようにも感じてしまう。支援という名目でやったことをどう思うか

「就職など「結果の支援」をする前に、学生たちが喪失体験を自分の中でどう意味づけし、再構築していくか。その視点がないと、支援は本人にとって違和感のあるもの、より孤独にさせるものなのかもしれない。大企業から声をかけたことは、弱い者としてみなされている、上から目線の支援と感じるかもしれない。それは、逆に彼らの自尊心を下げたのかもしれない。支援とは、彼らの喪失体験を自分の人生の一部と認めつつ、自尊心を再現する機会をどうつくっていくか、ではないか」

という趣旨のお話でした。

自分自身で、現状を受け入れて、自分の価値を見出すことができるかどうか。現状を自分のものにできるかどうか。そのうえで、自己価値・自尊心を再現する機会をどうつくっていくか。特に、貧困家庭など困難を抱えた子どもたちは、そういう機会をつくりづらい。それを、支援者だけでなく社会はどのように創出していくか、という視点は、もしかしたら、田奈高校の学生を応援する人にも共通する部分があるのではないかと思いました。

■感想

ぴっかりカフェを始めて1年が経ち、課題のひとつとして、石井さんが日々のカフェ業務に追われてしまって、本来の交流相談に時間が割けていなく、今後は具体的な支援に結び付けていきたいとおっしゃってしました。

でも、この課題の背景には、カフェの認知が高まり予想以上に来店する生徒が多かったことや、石井さんの交流相談の質へのこだわり(目の前の1人の学生に集中したい)と対応可能人数の限界のジレンマがあるのだと思いました。今後は、コアメンバーとなるボランティアさんが増えてくることで、本来の目的が達成されてくるのではと思います。

また、質疑応答の中で、「いじめなど、ぴっかりカフェに会いたくない人がいる子は、図書館に行けないのではないか。そういう子へのフォローはあるのか」という、若者支援者の方からの質問がありました。たぶん、その方は「ぴっかりカフェは万能ではない」ということが言いたかったんじゃないかと思いました。

大人もそうですが、人間って「ひとり」にこだわってしまうものだと思います。「あの人」がいるからあそこに行きたい、「あの人」がいるからあそこには行きたくない。

私は、ぴっかりカフェというのは、既存の居場所をなくして出来たものではなく、選択肢として増えたという位置付けであれば、例えば、保健室や空き教室なども、ぴっかりカフェに行けない学生のための学校内居場所として、もっと積極的に改善されていてもいいのかな〜と思いました。