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シニア社会学会大会シンポジウム「分断社会を越えて」にパネリストとして登壇させていただきました! [2017年06月28日(Wed)]
2017年6月18日はシニア社会学会大会シンポジウム「分断社会を越えて」にパネリストとして登壇させていただきました。

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財政社会学という視点からこのテーマに取り組まれている慶応大学教授 井手 英策 さんの基調講演をうけてのパネルディスカッションでしたが、井手さんの講演『分断社会を超えて〜「頼り合える社会」の構想」はとても面白かったです。

ide.jpg印象に残ったのは、

●頼り合える社会とは?
・「逃げられる場所」「助けを求められる場所」がある、ということに幸せを感じている人が少ないのではないかという視点。
→これは、「分断されそう・している人」こそ必要な場所だと思うが、そういう方こそ自ら助けを求めることがむつかしい空気があると思う。だから、こちらから歩みよるアウトリーチが重要だと感じた。
・自分だけの力ではできないけれど望むものがあるとき、「人に頼る前に諦める」人が日本には多いのではないか。
→例えば障害を持ったことにより出来なくなったことを、人に頼ることができずに諦める人が圧倒的に多いのではないか。それは、障害だけでなく、高齢者の問題、引きこもり、貧困問題も同じことが言えると思う。「人様に迷惑をかけたくない」が、過剰すぎるのが日本社会ではないか。
→根本的に、人が希望を持ったり、可能性を伸ばしていくことの弊害になると思う。

●「貯蓄前提」という自己責任が破綻している
・これまで、日本では自分で貯蓄して、子どもの教育費や老後の生活を安定させるということが前提にある社会だった。
・しかし、現在は世帯収入300万円以下が34%。世帯収入はこの20年で2割近くまで低下。
→「あなたはどの所得階層?」という問いに対して<下>と答えた人は4.8%。<中>と答えた人は47%
★弱者が弱者へバッシングをする理由の一つの要因ではないか。
・貯蓄率は1995年には10%だったのが、2011年には1.3%。日本で可処分所得が一番高かったのは1997年。
★既に、子ども2〜3人を育て大学まで行かせるのは無理、といいたくなる時代になっている。

●日本の自殺者の傾向
・1997年から1998年のたった一年の間に、自殺者が8000人増加。ほとんどが40〜60代の男性。
→自己責任が果たせず命を絶った男性労働者。現在は自殺率は減っているが若者の自殺率が増えている。
じゃあ、どうしたらよいのかというのが「全員にライフサイクルに必要な支援を「サービス」というかたちで提供」するという視点。消費税を1%あげることで実現可能ということに驚き。一方、国が主導でおこなう消費税アップは5%中4%が財政再建(借金返済)で1%が経済困窮者への支援とあるが、その認識・チェックすら国民ができていないのに政治に信頼できないと文句ばかり言う国民に問題提起をされているということも勉強になりました。このあたりは、まだまだ理解不足なので、これから勉強します。

また、お昼を食べながらお聞きしたベーシックインカム反対のお話も興味深かったです。

パネルディスカッションでご一緒させていただいた、立教大学の庄司先生、ワーカーズコープちばの菊地 謙 さんの貧困問題の現場の問題もとても勉強になりました。
みなさんと話し足りなかったので、また続きをお話したいです〜!
今回お声がけいただきました 中村 昌子 さん、本当にありがとうございました!
中国の「流動児童」問題 [2016年02月06日(Sat)]
4000万人を超える中国の「流動児童」問題。中国が直面している社会課題であり、中国の経済発展・都市化から生まれた社会課題。おそらく、日本の貧困問題同様、他の社会問題と絡み合い、より複雑化していくのではないかと感じる。

「流動児童」とは、農民工(農村出身の出稼ぎ労働者)の親に連れられて住む場所を転々とすることを余儀なくされる子どもたちのことを指す。なぜ、「流動」と呼ばれるかというと、子どもたちは、戸籍がある地域を離れ、正式な転出入の手続きなしに移動し続けるため、「流動」「暫定」などと呼ばれる。そのため、正規の学校に通えなかったり、十分な教育・医療サービスを受けられず、劣悪な環境と差別の中で生活している。半年単位で転校する子どもおり、それが子どもの心を不安定にし、ゆがんだ人格形成につながりやすい。

その結果、流動児童は孤立し、社会に反感を抱く傾向が強く、中国の未成年犯罪の54%を農民工の子どもたちが占めているという、とても深刻な問題である。

今朝のニュースで、ある農民工の父子家庭の様子が放送されていたが、ひとり親で子どもを育て上げることの大変さを感じた。子どもだけを家に残して働きに行くこと、子どもあてもなく街で時間をつぶしていること、「子育てに時間がとれず大人の話が聞けない子どもになってしまった。一番心配なのは子供の今後だ」と話す父親からは、劣悪な環境に置かれているのは子どもだけでなく親も大変な状況であることが窺えた。

この問題の背景には、中国の急速な経済成長がある。経済成長を支えてきたのが、農民工であったが、近年、子どもを都市部に連れて来て一緒に暮らす人が急増し、流動児童も急増した。

日本も、高度経済成長と豊かな社会を確立していく過程に、日雇や臨時工と呼ばれる方の大きな貢献があった。しかし、彼らの労働と生活の困難さが注目されることはほとんどなく、そして、「寄せ場」という、日本の労働力の調整弁となる隔絶された場が生まれた。そこには、一時的な失業を避けられない労働者の支え合いの人間関係が生まれていく一方、豊かな社会に生きている人々からは、差別と偏見のまなざしが向けられた。そして、1990年代バブル崩壊後、非正規労働の需要が拡大し、この寄せ場を維持することができなくなり、都市部にホームレスとなって現れた。

高度経済成長を支えてくれていた人が路上で生活しているなんておかしい、と思ったことがホームレス問題に関心をもったきっかけだったことを、このニュースを見て思いだした。
早朝の駅前とホームレス [2016年01月18日(Mon)]
この数週間、早朝(6時くらい)に駅前を通ることが多かったのだけど、夜には見かけないホームレス状態の方が、朝の時間帯に多かったことに驚いた。若い女性がキャラクターのレジャーシートをひいて、バッグを3つくらいもって座っているのを二回くらい見かけ、次見かけたら声かけてみようと路上脱出ガイドをもっていったら、もういなかった。いなくなっていたのが、いいことなのかはわからない。
こういう寒い日に外に長くいると、ホームレス状態で生活するというのが、どれだけ過酷なことかと、想像する。
2016年1月2日 石川ゼミ 甘酒炊き出し活動!! [2016年01月02日(Sat)]
2016年1月2日 石川ゼミ 甘酒炊き出し活動。15名で3時間かけて約400名分の甘酒を作りました〜。ゼミ11年目の取り組みで、私は2年目。いつもの炊き出しと違って、受け取った方から、笑顔がチラホラ、「甘いね〜」「おいしいよ」という声が。

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一般の甘酒より、濃くて甘〜いのです。寒い冬を外で暮らしているかもしれないと考えると、この濃さと甘さが喜ばれるだろうと。味の好みは自分が育ってきた環境に大きく影響されます。だから、自分の好みで決めず、相手の置かれている状況から好みを想像することを教わりました。

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※炊き出しの撮影は、原則厳禁です。これはお礼状作成のために許可を得ていることと、写っているのは関係者のボランティアのみです。
講演会「ハウジングファーストと社会デザイン―フランスと日本の実践から」の感想〜まず広義のホームレスの実態調査を! [2015年11月15日(Sun)]
11月14日は、立教大学院 21世紀社会デザイン研究科 稲葉剛先生主催の「ハウジングファーストと社会デザイン―フランスと日本の実践から」に参加。

■日本でハウジングファーストを導入するには
@ホームレス予備軍への支援は莫大な医療コストの抑制となる。
A我が国において、広義の意味でのホームレスの人数は把握されていない
※把握されてないということは、対策も打てないということである。ホームレス予備軍も含め、実態を把握することが早急に求められている。
B今必要なもの
(1)実態の調査(リサーチ力)
(2)ホームレスの定義を問い直す
(3)問題解決への本気度


■ハウジングファーストとは
ハウジングファーストとは、住まいを失った人への支援において、安心して暮らせる住まいを確保することを最優先とする考え方のこと。欧米では一般的になりつつある一方、日本においては、住まいの確保よりも生活訓練や就労支援等を優先するという考え方が根強い。しかし、暮らしの立て直しをする中で、安定した住まいが無い状況で、いくら生活訓練や就労支援をしても、当然のことながら成果にはつながりにくい。

今回紹介されたフランスでの研究結果によると、安定した住まいを確保したあとに、福祉サービス(生活訓練)や就労支援をすることで、たったの6か月で既存支援と比べ、成果が出たことをが証明された。(生活の質の改善、医療コスト削減など)。

また、この研究のポイントは、ホームレスの中でも、もっとも助けにくい層を対象にしているという点。ホームレスの中でももっとも困難な人を助ける手法を見つけることができれば、それは確かな力となり、他の人にも応用ができる。

そして、改めて思うのは、「住まいは人権」であるということ。ホームレス問題だけでなく、川崎の簡易宿泊所が高齢の生活保護利用者が多かったこと、被災地での仮設住宅、若者のネットカフェ生活。一方、増え続ける空き家。安定した住まいを確保することで、その人の人生が変わるのだと思った。

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ひとり親支援から思うこと [2015年10月26日(Mon)]
「ひとり親を救え!プロジェクト」の一連の議論を見て思ったことを、女性の立場として、書きました。私は結婚してないし子どももいないけれど、私の大事な友人にもシングルマザーは少なくなくないです。その中で思ったこと。

■離婚という選択肢がやっと出てきた

日本は、そもそも、女性は経済的な問題から離婚できなかった。それが、少しずつ、女性が活躍するようになり、離婚・シングルマザーという選択をする人が出てきた。それは、とても困難な道であっても、自分の生き方を選ぼうと、または子どものために不利を承知で選んだ人もいる。私は、同じ女性として、このような話を聞くたびに、その決断に敬意の気持ちを抱いた。

■決断に至った想いを丁寧にあつかえているか

私の知るシングルマザーの多くは誇りを持って生きている。また、誇りをもって生きていきたいと思っている。それを、「かわいそうだから支援しよう」というのは、(善意であっても)彼女たちに対して失礼であるし、その決断に至った想いを踏みにじっているようにも感じる。

シングルマザーが抱えている本質的な困難さは、女性が誰もが潜在的に抱えている不安と同じである。つまり、シングルマザーが活躍できる環境こそ、真に女性が活躍できる社会なのではないか。前に一歩踏み出した女性が、「離婚したら生きていけない」と思うような社会、結局男性に頼って生きることを選択せざるを得ない社会は、絶望的であり、女性にとって自由の無い社会である。彼女たちの目線から社会を問い直すことが、多くの女性が活躍でき、安心して出産の準備ができる社会ではないだろうか。

■シングルマザーが抱える不安は女性共通のもの

3人に1人が離婚し(シングルマザーはマイノリティーと言えるだろうか?)、シングルマザーの2人に1人が生活が困窮しているというのは、事実である。その状況を戦略的にアピールすることは社会変革のためにも必要かもしれないが、一歩間違えると、「私はこんな風にはなりたくない。子どもを産むなんてリスクが大きすぎる。とりあえず、まだやめておこう」とならないだろうか。

@ シングルマザーの多くは自分の選択に誇りを持っている。
A 彼女たちの抱える困難さは、本質的に【女性誰もが】潜在的に感じている不安である。


それを、一歩一歩解決していくことが、女性が真に活躍し、安心して出産できる社会という、少子化対策にもつながるのではないだろうか。

■当事者の気持ちに気づくことのむつかしさ

この件については、私は当事者ではない。

東日本大震災のボランティアのとき「可哀そうがらないで欲しい。自分がみじめになるから。」と現地のお母さんから言われたこと。元ホームレスの方から「支援という言葉は差別だ」と言われたこと。夜回りで路上生活者におにぎりを渡そうとしたら怒られたこと。

これらは、みんな共通していて、当事者ではない私が良かれと思った、些細な行為や言葉が相手を傷つけていたということである。自分が無意識に持っている価値観を押し付けていた。でも、言ってくださったことに本当に感謝している。言われなかったら、当事者じゃない私は気づけない。だから、自分の考えは間違っているかもしれないと常に考え、ちゃんと「声」を聞く姿勢をもつことが大事なんだと思う。

そして、社会的に弱者か否かは関係なく、それぞれが自分の生き方があり、誇りを持っている。その気持ちは、尊重されなければならないと強く思う。

「市民後見人の現状と今後の課題」〜多摩南部成年後見センター小林有紀子さんのお話から〜 [2015年07月26日(Sun)]
昨日のゼミの議論テーマは、「市民後見人の現状と今後の課題」について。ゲストとして、当研究科OGであり、多摩南部成年後見センターで成年後見人をされている小林有紀子さんをお招きし、現場の状況をお話いただきました。

小林さんは、その中でも、低所得のため後見報酬を支払う資力のない方や、複雑な事情を抱えている方(虐待、多問題家族、犯罪歴)を担当されており、お話を聞いていて、本当に頭が下がる思いでした。今まで、延べ34名の方の成年後見人としてご活動されているそうです。

また、東日本大震災の時には、きっと身よりを亡くした方や認知症の方ので困っている方が多いのではと、居ても立っても居られなくなり「いわて後見支援ネット」を立ち上げられたそうです。9年間のご活動の中でもたれている問題意識は、深く考えさせられるものでした。

本当に制度の利用が必要な人に結び付いていない、想いのある成年後見人が玉石混合している現状、弁護士や身内の後見人の横領や不正、後見人への過度な期待。

制度から少し離れて考えてみると、自分が認知症になった時、誰に、自分の財産などの判断をしてもらいたいでしょうか?みんなそうだと思いますが、元気だった頃の自分を知っている人にやって欲しいと思いますよね。(あの人だったら、きっとこう考えるだろう、という予測ができる人)。
でも、その人選を個人が判断することには、大きなリスクがある。法定後見人と任意後見人。理想は後者ですが、そこには大きなリスクがあるという現実。

ゼミの現役メンバーで、同じ問題意識をお持ちの方がいるので、先生の呼びかけで、今後はプロジェクトにしていこうというお話にも。

とても、勉強になりました!

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認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい設立14周年・こもれび荘11周年の記念パー ティーに参加してきました! [2015年06月23日(Tue)]
6月20日(土)に、認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい(http://www.npomoyai.or.jp/)の設立14周年・こもれび荘11周年の記念パー ティーに参加してきました!

自立生活サポートセンター・もやいは、14年前に稲葉剛さんと湯浅誠さんが立ち上げられた団体で、14年も前か ら日本の貧困の現場で取り組まれてきた団体です。また、現場での支援だけでな く、生活保護や社会保障削減などの社会問題について、当事者の代弁者として現場の声を発信したり、調査報告、政策提言などもされています。

最初の取り組みは、ホームレス状態の方などが自立に向かって前に進もうとした ときに、「アパートに入居するための連帯保証人が見つからない」という問題を 知り、もやいさんが連帯保証人を引き受ると共に、共通の課題を抱える当事者同 士の交流の場をつくり、社会的な孤立状態の解消を目指されてきたという歴史があるそうです。

左から、理事長の大西連さん、初代理事長の稲葉剛さん。稲葉剛さんは、立教大学院 21世紀社会デザイン研究科の特任准教授でもあります
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こちらのこもれび荘は、路上生活から抜け出した人たちなど、さまざまな体験を 経てきた人々が相談に訪れる場所なのだそうです。「こもれび」という名前は、 これまでの紆余曲折の人生の中で、ここにたどり着いた人々がかすかな光を見出 して欲しいという気持ちを込めて名づけられたとのこと。

最近、「貧困問題」に関連した記事やニュースを目にすることが増えてきました が、CSR48でも、もやいさんが発行されている、「これで研修・授業・講座がで きる! 貧困問題レクチャーマニュアル」(http://www.npomoyai.or.jp/download#manu)を使って、勉強会も開催いたしました。

私も、手作りの焼豚を差し入れしました。もやいさん、これからも、よろしくお願いします!
何が貧困問題を見えなくしているのか〜子どもの貧困は助けようとすのに、なぜ、ホームレス状態の方の貧困には声があがらないのか。貧困問題へのまなざしの転換 [2015年04月07日(Tue)]
昨日は、自立生活サポートセンター・もやい稲葉剛さんとNPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク理事長栗林知絵子さんの「貧困をなくし、助けあいの経済と社会のしくみをつくる―地域での住まいと子ども支援の実践現場から」(http://inabatsuyoshi.net/2015/03/24/1625)に参加してきました。

このトークセッションは、前半は稲葉さんからホームレス問題など【住まいの貧困×生活困窮者支援の現場から】というテーマで、後半は栗林さんから【子どもの孤立×貧困と地域の支援ネットワーク】、その後質疑応答という内容でした。

どちらも大変聞きたかったテーマで、勉強になる内容でした。同時に、ちょっともやもやした気持ちもありました。

■支援される層とバッシングを受ける層とに分かれている

最近、「子どもの貧困」という文字をよく見かけるようになりました。「子どもの貧困」や「勉強意欲があるのに学費を払うことができない若者」等には共感される方が増えてきたと感じる一方、ホームレス状態の方、ひきこもり状態の方、性風俗産業に従事する方の貧困問題については、取り上げられることも共感の声も、格段に少ないと思います。シングルマザーも、最近でこそ理解されるようになってきたと思いますが、一昔前では、「勝手に離婚した人。子どもの幸せよりも自分の幸せを優先した人」と、何も知らない人が平気で言っていたことも少なくなかったと思います。

これは、どうしてなのでしょうか。問題の根っこは繋がっているはずなのに、属性で割り切られてしまう。前者には、今後、寄付も支援者も増えてくるだろうと思います。しかし、後者については、一歩間違えれば、支援どころか【バッシング】が始まります。


■貧困は自己責任ではない。不運な状況は社会がつくりだしたもの

多くの人が貧困を直視することを避ける理由は何でしょうか。昨日の稲葉さんのお話から、私は以下のように受け取りました。

<多くの人が貧困を直視することを避ける理由>

@貧困に対しての偏見(自己責任論)

先述したように、シングルマザーも、路上で生活している人も、引きこもりも派遣労働者も、【自分で好きで選んだ道だから自分の責任】という偏見が根強いのだと思います。

A不運な人だという報道(社会問題ではなく個人の問題)

その人の置かれている困窮した状況をリアリティを持って報道することは大切だと思いますが、同時に、背景や本質的な原因を追及することをメインテーマにする必要があると思います。なぜ、【貧困状態に陥ったのか】という点が弱いため、社会構造の問題ではなく、個人の不運な人の問題という印象が与えられているのではないでしょうか。

また、

『かわいそうな人は助けてあげる、というのは、かわいそうに見えない人は助けなくてもいいということと表裏一体で危険』

と稲葉さんがおっしゃっていました。本当にその通りで、かわいそうに見える人は不運であることを理解され支援を受けやすいかもしれないです。しかし、一方、かわいそうに見えづらい人は、不運であることもスルーされ、助けなくてもいいという風潮になる傾向があるのだと思います。それが、ホームレス・引きこもり状態の方、性風俗産業に従事する方へのまなざしでもあると思いました。


■貧困問題へのまなざしの転換が求められている

偏見や個人の問題にされがちな貧困問題には、貧困問題へのまなざしの転換が求められている、というお話がありました。

<貧困問題への偏見とは>

標準的なライフコースを逸脱した人という偏見。標準家庭をもてなかった人、自分でそれを選んだ人という偏見。

例)路上生活者、引きこもり状態の方、DV被害者、中年単身者、派遣労働者、シングルマザー、性風俗産業従事者、LGBTなど。該当者がとても多い気がします。

・貧困問題を生活保護制度利用者の問題にすりかえる風潮

私は、なんとなくですが、このような偏見をなくす突破口をつくれるのは、当事者の方ではないと思っています。もちろん、当事者の方のリアリティのあるお話で変わる人は多くいらっしゃるかと思います。

私のような第三者ができることは何でしょうか。普段、無関心層が多い中で生活しているからこそ、出来ることがあるのではと思いました。

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児童養護施設退所者とホームレス問題〜女性のホームレスがいないのはなぜか。女性の人権について〜 [2015年03月31日(Tue)]
昨日参加した「自立生活サポートセンター・もやい」稲葉剛さんと、「児童養護施設退所者のアフターケア相談所 ゆずりは」所長の高橋亜美さんとの、若者の貧困の実態、居住や生活支援の状況についてのトークショーから。配布された資料の中に、「児童養護施設退所後に風俗で働く女性たち(高橋亜美)」があり、こちらがとてもショックな内容でした。

4/22(水)夜にCSR48で貧困問題について勉強会を開催しますが、企業・ソーシャルセクターで働く社会貢献に関心がある女性グループとして、やはり、女性の人権に深く関わるこの問題について共有し、企業 or 他業界NPOが出来ること、個人ができることについて議論できたらなと思っています。(これを機に新規入会もWelcomeです)


■女性のホームレスがなぜいないか。「男はホームレスになれる」

18〜20歳でホームレス状態の方のほとんどは、児童養護施設退所者であり、児童養護施設退所後の女性で、水商売・性産業に従事している方が多いという現状。

「男はホームレスになれる」。女性がホームレスになるということは、性被害のの恐怖が必ずありますよね。そのような暴力の恐怖に日々怯えるよりかは、「援助交際してお金をもらう方がいい」「好きじゃなくても家に住まわせてくれる男の方がまだいい」と思うのは普通なのかもしれません。

一方、男性の施設退所者たちは「女はホームレスにならなくてすむ。それだけで十分だ」「女だったら収入を得る手段が確実にある」と言うそうです。


■女性が「住まい」を失ったら

女性が住まいを失ったら、路上で生活をすることはできないということになります。では、どうなるのか。

・「今日の恋人」を見つけに行く。本人は「恋人なんだから、援助交際ではない」と言う。

・当日から入居できる「寮を完備」している風俗店で働く
  
      

その結果、望まない妊娠をすることが少なくないそうです。また、相談相手がいないため、中絶できなくなるまで黙っていることで、望まない出産となり、また、同じ環境(社会的擁護の中)で育つ子どもが生まれるという連鎖につながります。


■社会で安定した収入を得ることの難しさ(施設退所者のハンディ)

18歳になると、わずかなお金をもち、施設退所となり自立を余儀なくされる。頼れる家族がいない中で、一人暮らしと就労を突然始めることとなります。

<施設退所者の特徴>

・大学への進学者は約3割(低学歴となってしまう)

・虐待で受けたようなトラウマを抱えながら、頼れる人がいない(精神的に不安定)


安定した雇用に就ける率は極めて低いそうです。また、個人的には、雇用に就けても、継続することがとても困難なのではと思いました。

また、個人的には
・家族貯金がない(失敗した時にお金を貸してくれるような人がいない)

・頼れる友人がいない(施設で過ごしていると出逢いが少ないのでは)


があるのではと思っています。誰でも、社会に出たばかりの時は「やってしまった」ことはあると思うし、その時家族などが、経済的にも精神的にも助けてくれたことで、今がある人は多いのではないだでしょうか。

このような状況の中で、どうなるかというと、一般家庭で育った人よりも不安定な状況にも関わらず【失敗できない】ということになります。転職や給与が下がることは、住まいを失うことに直結しやすいからです。じゃあ、安定させるために、仕事をがんばって経験をつければいいじゃないかと思うかもしれませんが、チャレンジやスキルアップするためには、経済的にも余裕が必要ですし、精神的にも自己肯定感が育まれているなど、余裕があって出来ることだと思います。

そのようなぎりぎりの社会人生活を送っていた結果、体を壊したり、精神を病んでしまい、長期に休んだり、フルタイムの仕事がむつかしくなることもあると思います。そうなった時、女性には性産業以外の職場で、生活できるだけの給与をもらえる仕事というのが、少ないのです。

(抜粋)
「今日住む場所がない状況におちいってしまった場合、親や親戚には頼れず、相談できる友達もいなく、どんな相談支援機関に行っていいかわからなかった場合、手持ちのお金もなく、連帯保証人もなしでアパートを提供し、働く場を与えてくれる職場は、風俗などの性産業しかないだろう。 」


■感想

児童養護施設退所者とホームレス問題は、とても深く繋がっているにも関わらず、支援団体同士の連携が、今までとれていなかったそうです。

現場の支援者は昔から繋がっていることは気づいていたそうですが、ホームレスや児童養護施設退所者ということに、偏見や差別があるため、その繋がりを言うことが、当事者を傷つけてしまうということがあるそうです。

偏見や差別が、あるべき支援の実現を妨害している、ということでしょうか。

また、以前から疑問だったのが、施設退所者は「施設の職員を頼ることはできないのか?」ということでした。それが、施設職員は退所者と関わってはいけないという規則になっているそうです。これは、なぜなのでしょうか。理由を知りたいです。

また、参加されていた方が、

「自立支援・自立援助という言葉を使えば使うほど、どんどん彼らは孤立していく。」

というお話をされていたのが印象的でした。
自立を余儀なくされることに対しての大きな不安・憤りを感じている人に、「自立支援」という言葉を使うのは適切なのでしょうか。自己責任を追及しているように、受け止められるのではないでしょうか。

社会的に孤立するということが、どれだけ苦しいことか。これは、児童養護施設退所者の方だけでなく、社会的排除にあっている方々全てだと思いますが、大事なことは、他人ごとではなく、私たちの生活、また私たちの家族・未来の家族の延長線上にあるともいえると思います。だからこそ、みんなで考えなければならない問題なのです。

ゆずりは.jpg
ゆずりはの「ゆるやかに労働できる支援」で出来た「おいしい唐辛子」を買いました。
デザインもとても素敵です。瓶詰めが1本完成すると利用者の方のお給料になるそうです。
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