航海報告1_皆さん、はじめまして
[2009年07月31日(Fri)]
HADEEP特任研究員(ポストドク)が1名、7月8日より、ベーリング海へ研究航海に出ています。
船上の彼から、航海の様子を知らせるメールがまいりました。
順次、アップしてまいります。
どうぞお楽しみください。
第1回 掘削航海の研究目的について
<はじめに>
JOIDES resolution(ジョイデス レゾリューション)号
皆さん初めまして
私は、HADEEP特任研究員の朝日と言います。
私は今、「統合国際掘削計画(IODP)」で、JOIDES resolution(ジョイデスレゾリューション)という船で、ベーリング海の過去510万年間の環境変動を解明する研究航海に参加しています。
この航海は、世界中の研究者、約30名が集まって行われる国際的なプロジェクトです。今回のブログを通じて、国際的なプロジェクトに参加する楽しさ、興奮を少しでも分かち合えたらと思っています。
今回を含め、最初の3回はJOIDES resolutionでの研究生活について簡単に説明します。
今日のブログは、研究目的について長々と書いているので、難しいことは嫌だなと思ったら読み飛ばしてください。こまごまとしたことについては、どのみち追々触れますので。
<研究目的について>
ベーリング海は、太平洋の北部に位置している、世界最大級の縁辺海の一つです。この海は、地球の気候変動を左右する海洋深層水循環の終着地点としても知られています。本航海では、地球全体の気候システムを考える上で重要な役割を果たすベーリング海の過去の環境変遷から、主に下記の3つを研究目的としています。
1) 北半球氷床発達史
2) ベーリング海峡の解放による北太平洋・北極海のつながりの始まり
3) 高緯度域における気候変動周期の変化時期の推定
現在からは想像つかないかもしれませんが、過去の北半球には氷の無かった時代があったと考えられています。高緯度域における氷床の発達は、地球全体の熱循環を制御するので、この氷の無かった時代から、現在のような季節的に氷の張る海になった時期を正確に知ることで、現在の気候システムの成り立ちの始まった時期を知ることが出来ます。
氷の発達とも関連しますが、現在のベーリング海は、ベーリング海峡を通じて、北極海と接しています。過去には、この海況が閉じており、北極海と太平洋の間には海水の交換が無かったことが知られています。海況が開いた時期を正確に知り、そのときにベーリング海の環境変化を知ることで、地球全体の海洋を通じた赤道から北極への熱循環のシステムを知ることが出来ます。
現在の地球は、約10万年周期の氷期間氷期サイクルにあるとされています。この10万年の周期は、太陽と地球の軌道要素の変化によってもとらされていると考えられています。しかし過去の地球ではこの周期が、約4万年ほどであった時期があったと考えられています。この氷期間氷期サイクルの周期の変化が高緯度域でいつ始まったのかは正確には解っていません。
長々とした説明になりましたが、それくらい、ベーリング海の環境変遷の歴史を知ることは、地球の環境変遷を知る上でとても重要知識を与えてくれます。(次につづく)