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日本社会では人権、ジェンダーを含めて多様性への寛容さが求められている[2023年09月30日(Sat)]
 毎日新聞2023年6月20日付け「高校野球で急速に「脱丸刈り」 5年で2000校超減 高野連調査」から、高校野球で「脱丸刈り」が近年、急速に進んだことが分かった。日本高校野球連盟などは19日、加盟3818校を対象に行った5年に1度の実態調査の結果を発表した。3788校が回答し、部員の髪形を「丸刈り」と決めているのは1000校で、5年前の前回調査から2000校以上減った。約4分の3の加盟校は部員に丸刈りを求めず、スポーツ刈りや長髪を認めるなど球児の髪形の「自由化」が進んだ。  
実態調査の「部員の頭髪の扱いは野球部ではどのように取り決めていますか」という質問に対し、「丸刈り」が26・4%(1000校)、「スポーツ刈りも可」が14%(532校)、「特に取り決めず、長髪も可」が59・3%(2246校)と回答した。2018年度の前回調査では76・8%(3025校)が「丸刈り」と回答し、「長髪も可」としたのは14・2%(559校)だった。  かつては高校球児の象徴でもあった丸刈りは時代によって変遷してきた。最初の1993年度の調査では「丸刈り」との回答は51・1%だった。  
しかし、丸刈りの強制などが人権擁護の立場から非難されるようになり、髪形のルールを緩和したチームが次第に多くなった。98年度は30・9%、03年度は46・4%だった。その後は増加に転じ、13年度には過去最多の79・4%に上った。短髪の流行をはじめ、指導者が求めなくても、部員たちが抵抗感なく自主的に丸刈りにするケースもあった。  
名古屋大大学院の内田良教授(教育社会学)は「脱丸刈り」が再び進んだことについて、「遅すぎるとはいえ、ようやく文明開化したようなもの」と語る。特に、17年に大阪府立高校で地毛が茶色なのに髪を黒く染めるように強要されたとして女子生徒(当時)が府に損害賠償を求めて大阪地裁に提訴し、社会問題化した事案の影響の大きさを指摘する。「野球部の指導者も丸刈りを強制することに対して、合理性があるかと問われた時に答えられなくなったということだと思う」と説明した。  
日本高野連の井本亘事務局長は「宝馨会長ともこの件で話をしたが、やはり多様性。考えをこの一つだけと決めない世の中になったということではないか」と分析した。  
今春のセンバツ大会の出場校では東北(宮城)や慶応(神奈川)など髪を伸ばしている選手たちの姿が見られ、強豪校でも「脱丸刈り」が進んでいることがうかがえる。20220510_185915.jpg

 日本高校野球連盟などは19日、加盟3818校を対象に行った5年に1度の実態調査の結果を発表した。3788校が回答し、部員の髪形を「丸刈り」と決めているのは1000校で、5年前の前回調査から2000校以上減った。約4分の3の加盟校は部員に丸刈りを求めず、スポーツ刈りや長髪を認めるなど球児の髪形の「自由化」が進んだ。当然の流れでしょう。確かに野球を含めてスポーツをする際には丸刈りにするとサッパリして余計なことに気にしなくて済むかもしれませんが、捉え方はそれぞれで強制することではないでしょう。「脱丸刈り」が再び進んだことについて、「遅すぎるとはいえ、ようやく文明開化したようなもの」と語る。特に、17年に大阪府立高校で地毛が茶色なのに髪を黒く染めるように強要されたとして女子生徒(当時)が府に損害賠償を求めて大阪地裁に提訴し、社会問題化した事案の影響の大きさを指摘する。「野球部の指導者も丸刈りを強制することに対して、合理性があるかと問われた時に答えられなくなったということだと思う」その通りでしょう。強制して生徒たちがそれに従っているうちは良かったかもしれませんが、無理やりの強制に対して合理的な説明ができなければ共感を得ることはできないでしょう。「やはり多様性。考えをこの一つだけと決めない世の中になったということではないか」多くの人たちが安心して幸せに生活できる社会になるためには多様性に関して寛容でなければならないのでしょう。人権感覚、ジェンダーに対する受け止めからなど日本は世界の先進国の中で相当遅れてしまっているというか異なっているのではないでしょうか。IMG20211002132137.jpg
日本は劣化しているのでしょうか[2023年09月29日(Fri)]
 DIAMOND online2023年6月20日付け「「日本はますます劣化」「先進国の中では二等国」英国在住の作家が語る“失われた30年”」から、ロンドン在住の経済小説家・黒木亮氏(以下敬称略)。バブル期に邦銀金融マンとしてヨーロッパや中東を駆け回り、1988年から30年以上英国で暮らす黒木は、海の向こうから日本の「失われた30年」を見つめてきた。特にこの3年はコロナ禍という世界共通の課題があり、どうしても英国と日本を比較してしまうと話す。今の日本は先進国の中では二等国、と厳しい評価を下す黒木が、祖国に向けるまなざしとは。
大手銀行で国際金融を担当、 30歳でロンドンへ赴任  
大学時代はランナーとして箱根駅伝に2回出場、卒業後は日系バンカーを経て作家へ。2000年『トップ・レフト』でデビュー以来、国際金融市場での経験を生かしたリアリティーある作風で熱狂的なファンを持つ経済小説の名手・黒木亮は、自身の“前史”を明かす新刊『メイク・バンカブル!』を手に、新人バンカー時代を振り返った。  
「ロンドンに赴任したのは30歳、1988年のことです。新卒で大手銀行へ入行し、カイロ・アメリカン大学への留学から帰国してからも国内支店の営業を経験したけれど、ずっと国際金融畑への憧れがあった。人事部への直談判でもぎ取った金融街・シティでのキャリアは6年。中東とアフリカを担当し、シンジケートローン(国際協調融資)案件をたくさんこなしましたね」  
シンジケートローンとは、複数の金融機関が協調融資団を組成し、各金融機関が共通の融資契約書に基づき同一条件で融資を行う、大規模な資金調達の手法だ。  
中東とアフリカを任されたのは、黒木がカイロ・アメリカン大学で1年10カ月の留学生活を送り、中東研究の修士号を手にしていたことにもよる。  
「僕が銀行に入った1980年っていうのは、オイルマネーが国際金融市場を席巻していた。だから中東関係をやれば一生食いっぱぐれがないかなというのもあったし、ダイナミックにいろんなことが動いていて、面白かったんです。それから、ミミズののたくったようなアラビア文字を読めたら素晴らしいなと、好奇心的な興味があったんですよね。そう真面目に考えて志望したんだけど、当時はやっぱり変わったヤツだと思われたようです(笑)」  
紳士然とした黒木はそう言ってほほ笑んだ。
カイロ・アメリカン大学へ留学し 中東・アフリカを担当  
当時はニッチに映ったかもしれないが、中東を専門にするという戦略は実に正しかったとしか言いようがない。黒木はバブル絶頂期の日系銀行のプレーヤーとして、目覚めつつあった中東とアフリカへ投資マネーが注ぎ込まれるユーロ市場のダイナミズムの中へ、飛び込んでいく。  
「あの頃、中東アフリカを専門に、真面目にファイナンスに取り組む人は少なかったから、僕のキャリアは日本人としては若干特殊かもしれないですね。中東は当時から製油所、発電所、淡水化プラントなどのプロジェクトファイナンスが盛んだったから、やることはいっぱいあった。だけど当時でも大きくて数億ドル規模。今じゃ10倍のサイズでしょう、ゼロが一つ少ない時代です」  
『メイク・バンカブル!』にも、黒木が融資団の主幹事役を務めた航空機ファイナンスの顛末(てんまつ)が収められているが、宗教的な事情や国民性の違いなど、読み手もしびれるようなリアルさ、臨場感だ。  
サウジアラビア航空が1億500万ドルの貨物用ジェット機を1機調達するシンジケートローンに、邦銀6行、中東の銀行が4行参加。仕事の話しかできないアジア人を見下すような教養主義の英国人、野心家で戦略に長けた米国人、国内のポジションもプライドも高いアラブ人の間を縫うように、邦銀バンカーが奔走する。のみ込みが早く、シンジケートローン案件のマンデートを次々と取りにいくヤングバンカー・黒木の姿は、時代と才覚の追い風を受けた小気味よい疾走感で描かれている。
アラブ人、トルコ人、インド人…… 優れたバンカーに出会う  
世界中の資本と野心が吸い寄せられ、いまや高々とした巨大建設が次々と建ち上がっていく中東。だが80〜90年代の中東は、今以上のハイリスク・ハイリターンを地で行く不安定ぶりでもあった。  
バーレーンからオマーンの首都マスカットへ向かうべく乗った、ガルフ・エアー機。ところが着陸まであと10分というところで技術的問題が起き、目的地が急遽アラブ首長国連邦のアブダビへ変更される。胴体着陸を覚悟してアラブ版“水杯”まで交わしたクルーや乗客たちが無事の着陸を喜び合う光景の活写などは、当時の生の息吹を知る黒木ならではだ。  ※水杯(みずさかずき)…二度と会えないかもしれない別れのときなどに、杯に酒の代わりに水をついで飲み交わすこと。  
そんな日々の中で、若き日の黒木は優れたバンカーたちに出会い、プライベートでも親交を築いた。  
「インド人やトルコ人、アラブ人バンカーは親しみやすかったですね。僕がカイロ・アメリカン大学を出ていることで、クウェートやバーレーンへ出稼ぎしているようなエジプト人も親しみを持ってくれました。エジプト系アメリカ人のバンカー、ムラード・メガッリとはとても仲が良かった。二卵生双生児のモナというシスターがいて、家内を含めて4人とも同い年だから、家族ぐるみの付き合いでした。ムラードは元シティバンク、僕が知り合った頃は金融コンサルのパンゲア・パートナーズ・リミテッドのパートナー、その後はチェース・マンハッタン銀行の中央アジア・トルコ・中東地区のCEOになった」  
「彼と話をすると、まるで真空に向かってひとりで話しているように感じるんですよ。電話の向こうで、黙って相手の話を聞いて、明晰な答えを端的に返す。僕のデビュー作『トップ・レフト』がトルコ語に翻訳されて、地元の新聞に2ページのインタビューが掲載されたんだけど、トルコ人の出版エージェントがなかなか掲載紙を送ってこない。ムラードに話したら、なんだそんなことは俺に言えよと。あっという間に入手して、2〜3日後には空輸で数部をロンドンへ送ってくれた。仕事のできるトップクラスのインベストメントバンカーとは、こういう頭の良さと実行力を持つ人なんだと感心しましたね」
ロンドン爆破テロ事件に遭遇、 今も腕には傷痕が残る  
金融街シティで過ごした6年の間に、黒木はロンドン爆破テロに遭っている。1992年4月10日、金融街シティの路上でIRAがバンに載せた500kgほどの爆弾を爆発させ、黒木のいた23階建てのビルはその衝撃で倒れかけた。粉々に砕け散った分厚い窓ガラスの破片で数十人が負傷、「しばらく、道にバンが止まっていると怖かった。いまだにそのときの傷痕が右手首や左肘に残っていますよ」と、黒木は傷痕を見せてくれた。  
医師が上手に縫ってくれたという左肘の傷に比べ、比較的大きく凹凸が残っている手首の傷を見せながら、「縫合の経験がない医学生の実習台になったんですよ。でもまあ、英国は医療が原則無料(NHSという国民保健サービスによる)だからこんなものかな」と笑う。多数の死傷者を出したテロで、病院も人員が足りず、医学生を投入して対応に当たった。被害規模と混乱の大きさが感じられるエピソードだ。  
ふと、黒木は英国の医療制度に触れた。「とはいえ英国の医療は、NHSなんてやってて原則無料でも、結構クオリティーが高いですよ。日本とはだいぶ効率が違うよね」。
コロナ禍によって世界各国は 「同じ課題で力を試された」  
コロナ禍の間、英国在住の黒木は日本への帰国もままならなかった。今回の一時帰国(5月上旬)は、コロナ禍明けでは2度目。「去年の10月に帰国したときは、まだ日本はコロナ対応の真っ最中で、空港からのリムジンバスも大幅減便。面食らいました」と、すでに昨年5月にはコロナ規制を全廃し、マスク着用義務などもとうに過去の話である英国暮らしとの違和感を語る。  
黒木が海の向こうから見たコロナ禍の日本は、すっかりナンセンスに映ったようだ。  「日本ではみんなマスクをして、満員電車ですし詰めになっている。狭い街のあちらこちらに行列ができて混んでいるし、これは大変なところだなと。今回の帰国で、ようやく日本もマスクを外し始めているけれど、経済を正常化したいと言いながら日本のコロナ対策はもう全て後手後手で、どうしようもないと思いましたけどね。国家のリーダーシップが失われている。コロナ禍というのは世界各国が『同じ課題で力を試された』んだと思います」  
「イギリスは見事でしたよ。ワクチンがまだ開発されないうちに、『マイルストーン・ペイメント』などベンチャーキャピタルの手法で開発費を支援して、完成したらワクチンを優先的にもらうという戦略を取った。開発と同時並行で接種計画を策定して、ロジスティクスも全て整え、注射打ちのボランティアも1万人ぐらい養成しました。医療資格のない18〜69歳の素人を訓練して注射打ちにしたのは、救命救急のNPOに所属する16歳の若者でした。そして先進国で一番早く、2020年の12月からワクチンの接種を始めた。片や日本は、接種は自治体と職域に丸投げ。マスクだけ一生懸命して、いくらか感染は抑えられたのかもしれないけれども、それほど素晴らしい結果を出したとも思えない」  
黒木は、日本がリーダーシップを失ったと繰り返した。  
「ウクライナ支援でも同じことです。ボリス・ジョンソンがウクライナに特殊部隊を派遣し、イギリスが最初に動いた。日本は政治家が萎縮しています。マスコミにばかにされたたかれたくないから、決断せずに選挙だけやり過ごす。すると現場が頑張るしかないから、日本は現場の仕事熱心さはピカイチ。でもリーダーシップがない。昔は、日本は金権政治であったとはいえ、リーダーシップはそれなりにあったんでしょうね。けれど政治家の資質が下がって、小泉・安倍政権で官僚の力もそがれてしまった。国家財政も借金を膨らませ、どうしようもないところまで来てしまった」  
その理由は、人材の劣化だという。
 「日本の政治家が劣化したから、その相手をする官僚も劣化した。今、優秀な人材は官僚にはならないでしょう。メディアがしっかりして、日本の問題点をきちんと指摘しなきゃいけないのに、その役割を放棄している」  
「政治の劣化は国民の責任でもありますよ。選挙が人気投票になってしまうのは自然の成り行きなので、イギリスでは各政党が候補者選抜をしっかりやって、おかしな人が出てこないようにしている。しかし日本では、自民も維新もタレント候補を連れてきて、有権者をばかにしているでしょう。なのにそれを選んでしまう有権者も愚かです。タレント候補に頼っているような政党はろくなことがない。トランプが大統領に選ばれたとき、パトリック・ハーランさんが『恥ずかしくてアメリカ国民をやめようと思った』と発言していたけれど、僕も今の日本の政治家を見ていて日本国民をやめたくなりますね」
「今の日本は、 先進国の中では二等国です」  
日本の「劣化」は、英国在住の黒木にとって肌で感じるものだという。  
「国民年金なんて、日本の支給額は年間せいぜい70万円ですが、イギリスは年間180万円が支給されます。今回の帰国フライトでも、欧州からの便に乗っている客は95%欧米人。インバウンドが復活しているのは、日本の物価が異様に安いからで、例えば欧州でもギリシャやポルトガルを見ても分かるように、世界的に物価が安いのは“貧しい国”である証しです」  黒木が海外へ出た1988年、日本はバブル経済の絶頂期だった。  
「当時、日本はエコノミックアニマルなんて呼ばれていたけれど、その後、日本文化や観光資源の豊かさ、日本人のきれい好きや治安の良さというのは世界に広く知られてきて、リスペクトを受けるようになったのはすごくいいことだったと思います。外銀のバンカーが東京駐在の辞令をもらったりすると、昔は『なんで日本なんか行くんだ?』なんて言われたのが、2000年代になるとうらやましがられたという話もあるくらいです」  
そして黒木は、厳しいひと言を発した。「でも、今の日本は先進国の中では二等国ですよ。清潔で勤勉な国民性ではある。でも円が弱くなり、国力としてはすごく衰えて、インバウンドの隆盛以外、いいことは何にもないような気がします」。  
それは、ロンドンで邦銀金融マンをやめて専業作家になると決め、ロンドンに不動産を購入して以来29年、海の向こうから作家として故郷日本を、日本の「失われた30年」を見つめてきた、黒木ならではの重い言葉だった。  
国力が明らかに衰えている、その中で若い世代にできることはなんだろう。  
「日本はまだ国際的に学力は高くて、今はむしろ若者にとってチャンス。本人次第かな。やっぱり自分がその仕事の場で可能な限りの、一番大きくて自分好みの絵を描くように努力したらいくらでもチャンスはありますよ。やっぱり、夢がない仕事って面白くないですね。夢は自分で持つものだと思うし」  
「今、日本は子どもを競争させないような教育をしているでしょう。順位を付けないなんて、おかしいですよ。競争に耐え得る人間にしないと、生き残れない。生きるって、競争ですよ。動物だって、懸命に自分を魅力的にして異性を引きつけて、自分の遺伝子を残そうとするでしょう。本来の動物のあり方を否定するような教育、おかしいんじゃないかな。子どもの能力をそぐような結果になっています。それは教育といえるんですかね」
書き続ける元学生駅伝走者 「長くずっと努力するのは得意なんです」  
黒木だからこそ見えるものがある。伝えられるものがある。  
「欧米メディアは政治家に対して追及が厳しいですよ。特に新聞は『社会の木鐸たれ』と言われるのに、日本のメディアは記者クラブによってがんじがらめにされていて、政治家に対して弱腰。政治家に敢然と物を言うのはフリーのジャーナリストたちで、既存の大手マスコミはメディアとしての役割を放棄している。財務相の次官の女性記者に対するセクハラ疑惑みたいなものには妙に厳しいけれど、そんなものは多少極論すればどうでもいい問題であって、もっと大きな問題はたくさんあるでしょう」  
「海外にいると、日本で起こっていることが客観的に見えるんです。日本にいると日本のことしか見えないから当たり前と思ってしまって、批判的な目線で見られない。コロナ対策にしても、感染拡大当時から日本のウェブメディアに寄稿し、僕の考えを発信してきました。それが僕の役目だと思ったので」  
かつては箱根駅伝を走った長距離ランナーだったが、その頃の経験は作家としての執筆活動にも大きな影響を与えているという。「どんな書き手もみんな同じように努力してるし、やっぱり並の努力じゃ抜きん出ることはできないです。自分よりも工夫や努力をしている選手に勝てなかった、と長距離でちょっと後悔した部分もあって、だから作家になってからはそういう後悔がないようにしたいと思ってきました」  
専業作家としてのキャリアは20年だが、黒木亮といえば多作な作家とのイメージがある。「長距離ランナーとしてもそうだったのですが、爆発的な瞬発力はないんですけれども、集中力を持続して力を抜かずにずっと長くやっていくことができるので、そういうスタイルで今もやってますね。力を抜いたら終わりだ、と自分では思ってるんで」。学生時代の長距離走とヤングバンカー時代の粘りと機転、それら全てが黒木亮という作家をこの場所まで連れてきたのだろう。20221020_091102.jpg

 コロナ禍の日本は、すっかりナンセンスに映ったようだ。「日本ではみんなマスクをして、満員電車ですし詰めになっている。狭い街のあちらこちらに行列ができて混んでいるし、これは大変なところだなと。今回の帰国で、ようやく日本もマスクを外し始めているけれど、経済を正常化したいと言いながら日本のコロナ対策はもう全て後手後手で、どうしようもないと思いましたけどね。国家のリーダーシップが失われている。コロナ禍というのは世界各国が『同じ課題で力を試された』んだと思います」海外から第3者として見る日本はそのように映るのでしょう。「イギリスは見事でしたよ。ワクチンがまだ開発されないうちに、『マイルストーン・ペイメント』などベンチャーキャピタルの手法で開発費を支援して、完成したらワクチンを優先的にもらうという戦略を取った。開発と同時並行で接種計画を策定して、ロジスティクスも全て整え、注射打ちのボランティアも1万人ぐらい養成しました。医療資格のない18〜69歳の素人を訓練して注射打ちにしたのは、救命救急のNPOに所属する16歳の若者でした。そして先進国で一番早く、2020年の12月からワクチンの接種を始めた。片や日本は、接種は自治体と職域に丸投げ。マスクだけ一生懸命して、いくらか感染は抑えられたのかもしれないけれども、それほど素晴らしい結果を出したとも思えない」素早く判断をして何をどのように行うのかはっきりさせているのですね。日本が判断、決定、実行に時間がかかり過ぎるのは責任問題が絡んでいるかもしれません。責任問題を回避したいのが日本でしょう。要するには責任を負いたくないということでしょうか。「ウクライナ支援でも同じことです。ボリス・ジョンソンがウクライナに特殊部隊を派遣し、イギリスが最初に動いた。日本は政治家が萎縮しています。マスコミにばかにされたたかれたくないから、決断せずに選挙だけやり過ごす。すると現場が頑張るしかないから、日本は現場の仕事熱心さはピカイチ。でもリーダーシップがない。昔は、日本は金権政治であったとはいえ、リーダーシップはそれなりにあったんでしょうね。けれど政治家の資質が下がって、小泉・安倍政権で官僚の力もそがれてしまった。国家財政も借金を膨らませ、どうしようもないところまで来てしまった」「日本の政治家が劣化したから、その相手をする官僚も劣化した。今、優秀な人材は官僚にはならないでしょう。メディアがしっかりして、日本の問題点をきちんと指摘しなきゃいけないのに、その役割を放棄している」政治家、官僚ともに思い切った判断ができないのでしょうか。しないようにしているのでしょう。責任問題になるからでしょうか。「政治の劣化は国民の責任でもありますよ。選挙が人気投票になってしまうのは自然の成り行きなので、イギリスでは各政党が候補者選抜をしっかりやって、おかしな人が出てこないようにしている。しかし日本では、自民も維新もタレント候補を連れてきて、有権者をばかにしているでしょう。なのにそれを選んでしまう有権者も愚かです。タレント候補に頼っているような政党はろくなことがない。トランプが大統領に選ばれたとき、パトリック・ハーランさんが『恥ずかしくてアメリカ国民をやめようと思った』と発言していたけれど、僕も今の日本の政治家を見ていて日本国民をやめたくなりますね」そうですね。確かに国民の責任も大きいでしょう。政治家を選んでいるのが国民である以上は国民に相当の責任があるということになるでしょう。「国民年金なんて、日本の支給額は年間せいぜい70万円ですが、イギリスは年間180万円が支給されます。今回の帰国フライトでも、欧州からの便に乗っている客は95%欧米人。インバウンドが復活しているのは、日本の物価が異様に安いからで、例えば欧州でもギリシャやポルトガルを見ても分かるように、世界的に物価が安いのは“貧しい国”である証しです」 1988年、日本はバブル経済の絶頂期だった。「でも、今の日本は先進国の中では二等国ですよ。清潔で勤勉な国民性ではある。でも円が弱くなり、国力としてはすごく衰えて、インバウンドの隆盛以外、いいことは何にもないような気がします」「日本はまだ国際的に学力は高くて、今はむしろ若者にとってチャンス。本人次第かな。やっぱり自分がその仕事の場で可能な限りの、一番大きくて自分好みの絵を描くように努力したらいくらでもチャンスはありますよ。やっぱり、夢がない仕事って面白くないですね。夢は自分で持つものだと思うし」「今、日本は子どもを競争させないような教育をしているでしょう。順位を付けないなんて、おかしいですよ。競争に耐え得る人間にしないと、生き残れない。生きるって、競争ですよ。動物だって、懸命に自分を魅力的にして異性を引きつけて、自分の遺伝子を残そうとするでしょう。本来の動物のあり方を否定するような教育、おかしいんじゃないかな。子どもの能力をそぐような結果になっています。それは教育といえるんですかね」次世代の子どもたちに投資しない日本は劣化していく可能性があるでしょう。今こそ教育に最大限の投資をすべきでしょう。そのようなリーダーが生まれなければ厳しい状況に陥るかもしれません。20221019_094218.jpg
次世代にマシな社会を残すために被選挙権年齢を引き下げる[2023年09月28日(Thu)]
 弁護士ドットコムニュース2023年6月19日付け「25歳以下を政界に...「次世代にマシな社会を残す」被選挙権年齢引き下げを訴える意味」から、若者の政治参加を目指すNO YOUTH NO JAPANの代表を務める能條桃子さん(25歳)。立候補できる年齢(被選挙権年齢)が30歳である神奈川県知事選に、あえて立候補届を出して不受理になったことが話題になりました。
この取り組みは、満30歳もしくは満25歳である被選挙権年齢の引き下げを求めて裁判を起こすためのものでした。「立候補年齢を引き下げるためのプロジェクト」で10〜20代の7人とともに近く提訴します。
これまで議員へのロビー活動など立法に向けて働きかけてきたことに加えて、能條さんが司法の場で戦う意味とは。
身近な悩みも政治とつながっている
なぜ被選挙権年齢の引き下げを訴える運動をしているのでしょうか。
子供含め、若い人が政治的な問題を個人の問題として捉えてしまっている現状を変えたいし、変えるべきだと思っているからです。
例えば、気候変動問題を考える時、節電のために電気を消しましょうと言われます。本来はエネルギー問題として政治的な議論に結びつけることが必要なのに、身の回りで解決できることで話がおわってしまっています。
若者にとって政治が遠くなっている。
政治をより身近にするため、できるだけ年齢が近くて若い候補者を世の中に出しやすい土壌を耕すことが大切だと感じています。
行政を相手取って政策を問う「公共裁判」という手法をとったのはなぜですか?
国会議員や地方議員にも被選挙権年齢の引き下げを訴えてきましたが、声が届きにくかったです。
国会議員も地方議員も高齢男性が多いのです。2021(令和3)年7月1日現在の全国市議会議長会・全国町村議会議町会のデータによると、地方議員の56%が60代以上の男性なんです。20代・30代女性は1%未満です。若年層の議員が意思決定の場にいないというのは若者のための政治にはなっていかないですよね。
「若者のための政治がなされず、漠然とした不安が広がっている」と話しても「今の人たちは恵まれてるよ」と言われただけ。いくら言葉を尽くしても伝わらないというもどかしさがありました。 ただ、中高年を排除したいということではなく、議会に多様性がもたらされてほしいということです。
公共裁判に期待することは何でしょうか。
司法の役割は、少数派の利益を代弁するもの。被選挙権年齢という問題があることが広く知れ渡るというのは大きな意味を持ちます。 正直、違憲判決の獲得は難しいと言われています。それでも、議論の整理につながると思います。国側から、現在の年齢でキープしたい合理的な理由や主張が出てくるでしょう。これから私たちの主張の道筋を立てる上で大きな一歩になると思います。
国に対して裁判を起こすことによる個人への影響もありました。こども家庭庁に設置された「こども家庭審議会」の委員に内定していたのですが、取り消しになったのです。市民として持っている権利を行使しただけなのに…との複雑な思いはあります。
もし被選挙権年齢の引き下げがかなっても、立候補者が増えるとは限らないのでは?
若い年代の立候補者が増える「仕組み」を作ることが大切だと思っています。若い年代も議会に参加できる「権利」があることを伝えたいです。
「権利」がない時は、その必要性に気づかないけれども、当たり前になって初めて必要だったとわかることが多いと思うのです。
女性参政権がいい例です。導入される前は、女性の中にも政治家になりたいという人が多かったわけではない。でも今は権利として存在していて、市民も女性議員もそれを当然のように享受しています。だからこそ、若者の被選挙権もまずは仕組みを整えていくことに価値があると考えています。
声を上げることのできる社会に
他に仕組みとして足りないことはありますか。
有権者としての教育や施策が少ないことでしょうか。日本は労働者や消費者としての人材を立派に育てる傾向は強いですが、18歳までに民主主義の担い手や有権者として教育しようというビジョンは弱いと思います。
人権を大切にしようとか民主主義的な土壌を耕そうという意欲も薄いですね。 18歳までは選挙活動の禁止という罰則規定がありますが、18歳になったらいきなり選挙に行こうと言われ、党員としての門戸も開きます。急に言われても何をしたらいいのかわからない。子供の頃から政治に関わる機会を増やすべきです。私が留学していたデンマークでは10歳の子が政党に入ったりもしていました。
日常で感じる不満や不具合を身の回りに相談し、変えていける環境・仕組みを整えることも大切でしょう。
今は誰に相談すれば良いかわからない状況になってしまっています。例えば「学校の給食をより美味しいものに変えたい」と思っても「難しい、仕方ない」と個人的なわがままだったと考えてしまえば、思考も議論も止まってしまいます。
本来なら担任の先生に言ってみる、校長先生に言ってみる...もし変わらなかったら署名を集めて教育委員会に電話してみるなど政治的な問題として相談にのってくれる人や環境が近くにあったらいい。
最後に、能條さんはどういう社会を目指しますか。
声を上げたらちゃんと変わると思える社会が健全だと思うんです。そのために、まずは仕組みづくりをする。昔の人たちは当時の社会より、より良い状態で社会を私たちの世代に引き渡してくれました。私もそれを受け継いで少しでも社会をマシな状態にして次世代に渡したいです。
【プロフィール】能條桃子(のうじょう・ももこ) 1998年生まれ。2019年、若者の投票率が80%を超えるデンマークに留学し、若い世代の政治参加を促進するNO YOUTH NO JAPANを設立。Instagramで選挙や政治、社会の発信活動(現在フォロワー約10万人)をはじめ、若者が声を届けその声が響く社会を目指して、アドボカシー活動、自治体・企業・シンクタンクとの協働などを展開中。2022年、政治分野のジェンダーギャップ解消を目指し20代・30代の地方選挙への立候補を呼びかけ一緒に支援するムーブメントFIFTYS PROJECTを行う一般社団法人NewSceneを設立。慶應義塾大学院経済学研究科修士卒。TIME誌の次世代の100人 #TIME100NEXT 2022選出。20230121_104957.jpg

 子供含め、若い人が政治的な問題を個人の問題として捉えてしまっている現状を変えたいし、変えるべきだと思っているからです。気候変動問題を考える時、節電のために電気を消しましょうと言われます。本来はエネルギー問題として政治的な議論に結びつけることが必要なのに、身の回りで解決できることで話がおわってしまっています。政治をより身近にするため、できるだけ年齢が近くて若い候補者を世の中に出しやすい土壌を耕すことが大切だと感じています。若い人たちが政治に関心を持つことは大事でしょう。次世代を担うのは若い人たちと子どもたちです。現在議員をしている人たちに任せっきりではなく、自分事して考えなければならないでしょう。国会議員も地方議員も高齢男性が多いのです。2021(令和3)年7月1日現在の全国市議会議長会・全国町村議会議町会のデータによると、地方議員の56%が60代以上の男性なんです。20代・30代女性は1%未満です。若年層の議員が意思決定の場にいないというのは若者のための政治にはなっていかないですよね。 「若者のための政治がなされず、漠然とした不安が広がっている」と話しても「今の人たちは恵まれてるよ」と言われただけ。いくら言葉を尽くしても伝わらないというもどかしさがありました。 ただ、中高年を排除したいということではなく、議会に多様性がもたらされてほしいということです。中高年男性中心の政治ではこれからの日本の政治を変えることは容易ではないでしょう。若い人たちの出番です。有権者としての教育や施策が少ないことでしょうか。日本は労働者や消費者としての人材を立派に育てる傾向は強いですが、18歳までに民主主義の担い手や有権者として教育しようというビジョンは弱いと思います。人権を大切にしようとか民主主義的な土壌を耕そうという意欲も薄いですね。 18歳までは選挙活動の禁止という罰則規定がありますが、18歳になったらいきなり選挙に行こうと言われ、党員としての門戸も開きます。急に言われても何をしたらいいのかわからない。子供の頃から政治に関わる機会を増やすべきです。私が留学していたデンマークでは10歳の子が政党に入ったりもしていました。日常で感じる不満や不具合を身の回りに相談し、変えていける環境・仕組みを整えることも大切でしょう。選挙に関する規制を取り除き若い人たちが自由に政治の話しができ、お金のかからない制度を確立して選挙に立候補できるようにすべきでしょう。声を上げたらちゃんと変わると思える社会が健全だと思うんです。そのために、まずは仕組みづくりをする。昔の人たちは当時の社会より、より良い状態で社会を私たちの世代に引き渡してくれました。私もそれを受け継いで少しでも社会をマシな状態にして次世代に渡したいです。日本人は声を上げることを避ける傾向にありますが、それがいい訳ではないでしょう。マシな社会にして次世代に渡すことができればいいと思います。20221020_091700.jpg
スウェーデンがたばこのない国をめざしている[2023年09月27日(Wed)]
 ELEMINIST2023年6月19日付け「スウェーデンがヨーロッパ初の「たばこのない国」へ 喫煙率は5.6%と最低水準」から、20年間で喫煙率が20%から5.6%まで減少
スウェーデンが、ヨーロッパ初の「禁煙国」に近づいている。同国は、EUに加盟する27か国のなかでもとりわけ喫煙率が低い。
世界保健機関(WHO)は、「スモークフリー(禁煙)」について、「日常的に喫煙する人の割合が5%未満」と定義している。
欧州連合統計局によると、スウェーデンで2019年に毎日喫煙する15歳以上の成人は6.4%。EU内では最低水準で、27カ国の平均18.5%を大きく下回った。さらに、スウェーデン公衆衛生局の統計によると、2022年は5.6%に達した。そのため、「スモークフリー・カントリー(禁煙国)」宣言が近いと言われている。
スウェーデンの喫煙率が低いのは、数十年にわたる禁煙キャンペーンやたばこの広告禁止、禁煙希望者への支援策など、複数の施策よるものであると、多くの専門家が認めている。
その結果、20年前の喫煙率は約20%と、当時の時点でも世界的に見ても低い水準であったが、そこからさらに喫煙率が低下。その後、レストラン等の公共の場における喫煙を禁止するといった対策により、ヨーロッパ全土でも喫煙率が低下している。
このようにたばこの撲滅に注力してきた結果、肺がんの発生率が比較的低いなど、さまざまな健康上の利点がもたらされている。スウェーデンがん協会の事務局長ウルリカ・オーレヘド氏は、以下のように述べている。
「私たちは早い時期から公共の場での喫煙を制限してきた。最初は学校の校庭や学童保育所から、続いてレストラン、屋外カフェ、バス停などでも喫煙を制限してきた。同時に、たばこへの課税、これらの製品の販売に対する厳しい規制も重要な役割を果たしている」
「スモークフリー」な世界の実現に向けて
現在、世界には約12億人の喫煙者がおり、EUでは毎日約1億人が喫煙しているという。ちなみに日本の喫煙率は、2019年時点で男性27.1%、女性7.6%、男女計16.7%だ。スウェーデンが間もなく達成するとみられる喫煙率5%という数字は、国際的にも非常に低いレベルと言える。
一方で、紙たばこの代替品としてスウェーデンで普及している無煙たばこの「スヌース」について、EUの他の地域では禁止されていることから、指摘する声がある。スヌースにも、依存性や健康リスクがあることを忘れてはならない。
ニュージーランドでは2009年以降に生まれた人のたばこ禁止措置が始まっている。たばこのない社会の実現に向けて、広告の規制のほか公共の場での禁煙などが、世界の潮流となるだろう。049.jpg

 残念ながら日本では禁煙の意識も機運も低いでしょう。政治家は禁煙を推進する人が多くはないのでしょう。地方では喫煙が当たり前という風潮が残ってどこでもまわりを気にしないで吸う人が少なくないでしょう。受動喫煙で健康を害する人がいることを真剣に受け止め禁煙を推進しようという機運が高まらないのはなぜでしょう。ヨーロッパの先進国と比べて恥ずかしいような状況ではないでしょうか。スウェーデンが、ヨーロッパ初の「禁煙国」に近づいている。同国は、EUに加盟する27か国のなかでもとりわけ喫煙率が低い。世界保健機関(WHO)は、「スモークフリー(禁煙)」について、「日常的に喫煙する人の割合が5%未満」と定義している。欧州連合統計局によると、スウェーデンで2019年に毎日喫煙する15歳以上の成人は6.4%。EU内では最低水準で、27カ国の平均18.5%を大きく下回った。さらに、スウェーデン公衆衛生局の統計によると、2022年は5.6%に達した。そのため、「スモークフリー・カントリー(禁煙国)」宣言が近いと言われている。スウェーデンの喫煙率が低いのは、数十年にわたる禁煙キャンペーンやたばこの広告禁止、禁煙希望者への支援策など、複数の施策よるものであると、多くの専門家が認めている。その結果、20年前の喫煙率は約20%と、当時の時点でも世界的に見ても低い水準であったが、そこからさらに喫煙率が低下。その後、レストラン等の公共の場における喫煙を禁止するといった対策により、ヨーロッパ全土でも喫煙率が低下している。このようにたばこの撲滅に注力してきた結果、肺がんの発生率が比較的低いなど、さまざまな健康上の利点がもたらされている。「私たちは早い時期から公共の場での喫煙を制限してきた。最初は学校の校庭や学童保育所から、続いてレストラン、屋外カフェ、バス停などでも喫煙を制限してきた。同時に、たばこへの課税、これらの製品の販売に対する厳しい規制も重要な役割を果たしている」素晴らしい取り組みが成果を上げてきているのですね。日本は見習うことができないでしょうか。ニュージーランドでは2009年以降に生まれた人のたばこ禁止措置が始まっている。たばこのない社会の実現に向けて、広告の規制のほか公共の場での禁煙などが、世界の潮流となるだろう。喫煙先進国の取り組みを範として日本も国民の健康のことを真剣に考える必要があるのではないでしょうか。20230121_110232.jpg
本当にやらなければならないことを見極め実現すべきでは[2023年09月26日(Tue)]
 FNNプライムオンライン2023年6月18日付け「「少子化対策はすでに敗北」…今、本当にすべきことは“正規・非正規の社会保障格差”なくしと“高等教育の無償化”」から、岸田首相が異次元の少子化対策について「ラストチャンス」と強調、2024年10月から児童手当を拡充する意向を示した。そもそも「なんで結婚する人が増えないのか?」。「婚活」や「パラサイト・シングル」などの言葉の生みの親で家族社会学が専門の中央大学・山田昌弘教授に話を聞いた。
 「少子化対策すでに敗北 試合終了のゴングは鳴った…」
一般的に少子化対策というと、児童手当などの子育て対策に焦点が当たりがちだが、実はそもそも結婚する人が減っているという問題がある。
山田教授は少子化問題について「少子化対策 すでに敗北 試合終了のゴングは鳴った…」とみている。衝撃的な言葉だ。
中央大学 山田昌弘教授: 少子化が初めて話題になったのが1990年なんです。1992年には当時の経済企画庁が国民生活白書で「少子化対策をしなければ、今後社会は大変だ」と言っていたのにもかかわらず、結果的に30年間放置してしまったということなんです。
私もいろんなところで、政府の委員等も務めましたので言ってるんですけども、なかなか本格的にやってくれなかったということがあります。
中央大学 山田昌弘教授: 2010年代までに、つまり1970年代前半生まれのいわゆる“団塊ジュニア”たちが40歳を超えるまでに本格的な対策を打っていれば、ここまで少子化にならなかったんじゃないかなと思っています。すでに大変な状況なんですけれども、何もやらなければもっともっと悪くなるはずで、大きく対策を打ってもらって、多少なりとも回復していただかないと日本社会は大変なことになると思っています 結婚する人が増えていない現状を、どうにかしないといけないですよね?
中央大学 山田昌弘教授: 結婚というのは、まず好きな人と一緒に暮らすというのもありますけれど、日本社会においてはやっぱり結婚して2人の生活を始めるわけですから“経済問題”なんです。非正規雇用など経済的に不安定な人たちが結婚できないというのは、もう30年前から言われてきたことなんです。現実には若者の間で非正規雇用や、フリーランス、アルバイトで生活する人が増えてきてしまった。その対策を打ってなかったことが、大きな失敗の原因なんです 非正規雇用で「結婚が難しい」と考えている方には、どのような厳しい現実があるのだろうか。
中央大学 山田昌弘教授: 昔も若い人は給料が少なかったんですけれども、ほとんどの人が正社員だったので、今少なくても将来どんどん上がっていく期待が持てたわけです。でも今は、ずっと少ないままかもしれないし、いつ仕事がなくなるかもしれない。社会保障においても育児休業とかあるのは基本正社員だけなんです。
「男性育休」といっても、非正規雇用の人は取れないですよね。収入的にも補填されませんし、社会保障においても大きな差があるんです。
 「非正規雇用」の男性が結婚できない現実
非正規雇用の男性が結婚しない・できない、ということを裏付けるデータがある。雇用形態別の有配偶率をみると、男性の正規雇用の場合の有配偶率59.0%に対し、非正規雇用の場合は22.3%とかなり低いことが分かる。
関西テレビ 加藤さゆりデスク: 結婚には収入が直接関わってくるのかと思います。最近の話を伺うと、若い人、男女ともに相手に経済力を求める傾向があるそうなんです。いわゆる“婚活”をしようと思っても、自分の収入が低かったりすると、もうその時点で「選ばれないな」と思ってやめてしまう。本来なら婚活市場に参入したであろう人も、“スペック”といわれる、経済力・財力によって諦めてしまう傾向があるのかと思いますね。
中央大学 山田昌弘教授: 結局、子供を育てている時にお金が足りなくなったら困るっていうのが、結婚そして子育てを控える最大の理由です。単に若者の収入を上げるというより、将来安定して収入が得られるような仕組みっていうものを保証していく必要がありますよね 政府の“異次元の少子化対策”。結婚する人を増やすための効果的な対策はあるのだろうか。
政府案では、 ・育児休業制度の強化 ・希望する非正規雇用者の正規化 ・保育所の整備や手続き等の簡素化 などがあげられている。 政府もなんとか結婚する人を増やそうと、さまざまな対策を打ち出している。
中央大学 山田昌弘教授: 育休と保育所は従来の政策の延長なんですけれども、主に正社員の人を対象にした政策なんですよね。実は東京23区の子供の数は減っていないんです。むしろ20年で増えているんです。男女ともに正社員で子供を育てているカップルが、東京では多いんです。育児休業とか保育所整備すれば、そういう人たちは経済的な心配がないですから、子供がどんどん生まれてくるということで、東京23区さらには多分大阪などの大都市部で子供の数はそれほど減ってないんです。
中央大学 山田昌弘教授: 地方に行くと男性でも非正規社員は多いですし、正社員でも年収200万円といった人たちにインタビュー調査をしたことがあります。地方での子供の減り方というのは急激なんです。いわゆる今の若者の状況は、多様化してるんですよ。昔30〜40年前は、男性は全部正社員、女性は一般職というところで政策をやっていればよかったのですけれども、今は男性も女性も、正社員もいれば、フリーランスも非正規雇用もいる。多様化している人たちにきめの細かい対策を本当はしなきゃいけないんです 政府は効果的な対策を打ってこなかったのだろうか?
中央大学 山田昌弘教授: 東京などの正社員同士の共働きカップルに対しては、正しい政策をしてきたわけです。当時の政府としては、これから男女とも正社員のカップルが増えるだろうと思ったんでしょうね。現実には正社員カップルがほとんど増えていません。非正規雇用の人が思った以上に増えてしまったために、この少子化が起きているわけです。
 効果的な対策は「雇用形態による社会保障格差をなくす」
山田教授が考える最も効果的な少子化対策は、 ・正規雇用と非正規雇用の社会保障の格差をなくす ・大学、専門学校など高等教育の無償化 ということだ。
中央大学 山田昌弘教授: 結婚することと、子供を生むことをセットで考える人が、日本では多いわけです。そして子供が生まれた時に、その子が大きくなって大学に行きたいとか専門学校に行きたいと言った時、お金を払ってあげられるよと言ってあげたいですよね。子供につらい思いをさせたくないので、子供の数を控えるわけです。ですから、何人でも行きたければ好きに行っていいよと思えれば、2人、3人生むという人も増えるんじゃないでしょうか 視聴者からこんな質問が届いた。
結婚にはネガティブなイメージが多いから、みんなしないのでは?
中央大学 山田昌弘教授: そうですね。私も色々インタビュー調査をしている中で、恋愛結婚したはずの親があんまり仲良くなくて、楽しそうじゃないと。子育て費用を稼ぐために一生懸命働いているのを見るのは忍びない。経済的にも情緒的にも、子育てしている親があんまり楽しそうでもないし、お金を稼ぐのに大変そうだっていうところはあると思いますね もう1つ質問です。
息子の奨学金返済は38歳までかかる。これで結婚できるんでしょうか?
中央大学 山田昌弘教授: そこで私も色々提言しているんですけれど、今後大学の費用を無償化するだけではなくて、奨学金の返済をどういう形であれ軽減できないかと言っています。私のインタビュー調査の中で、「付き合っているんだけど、2人とも奨学金の返済をしているので、なかなか結婚できない」という人たちが何人もいました。そういう意味で、今現在の大学費用の無償化もですけど、 もう大学を出た人の奨学金という名の借金の軽減というのも、ぜひ入れてほしいですね 政府が異次元の少子化対策を打ち出していますが、大前提として、まず結婚というステップを踏むことが少子化対策を考える上で大事なことだと思います。006.jpg

 1970年代前半生まれのいわゆる“団塊ジュニア”たちが40歳を超えるまでに本格的な対策を打っていれば、ここまで少子化にならなかったんじゃないかなと思っています。選挙で投票してくれる中高年層に対する政策を中心に推進してきたのでしょう。国会議員は選挙で当選し続けることば考えているのでしょう。日本社会においてはやっぱり結婚して2人の生活を始めるわけですから“経済問題”なんです。非正規雇用など経済的に不安定な人たちが結婚できないというのは、もう30年前から言われてきたことなんです。現実には若者の間で非正規雇用や、フリーランス、アルバイトで生活する人が増えてきてしまった。その対策を打ってなかったことが、大きな失敗の原因なんです 非正規雇用で「結婚が難しい」と考えている方には、どのような厳しい現実があるのだろうか。非正規雇用の男性が結婚しない・できない、ということを裏付けるデータがある。雇用形態別の有配偶率をみると、男性の正規雇用の場合の有配偶率59.0%に対し、非正規雇用の場合は22.3%とかなり低いことが分かる。結婚には収入が直接関わってくるのかと思います。最近の話を伺うと、若い人、男女ともに相手に経済力を求める傾向があるそうなんです。いわゆる“婚活”をしようと思っても、自分の収入が低かったりすると、もうその時点で「選ばれないな」と思ってやめてしまう。本来なら婚活市場に参入したであろう人も、“スペック”といわれる、経済力・財力によって諦めてしまう傾向があるのかと思いますね。非正規者が4割を占める状況を解消する努力をしてこなかったことが大きいのでしょう。地方での子供の減り方というのは急激なんです。いわゆる今の若者の状況は、多様化してるんですよ。昔30〜40年前は、男性は全部正社員、女性は一般職というところで政策をやっていればよかったのですけれども、今は男性も女性も、正社員もいれば、フリーランスも非正規雇用もいる。多様化している人たちにきめの細かい対策を本当はしなきゃいけないんです 政府は効果的な対策を打ってこなかったのだろうか? 政府は将来の日本のあるべき展望をどのように描いているのでしょうか。今後大学の費用を無償化するだけではなくて、奨学金の返済をどういう形であれ軽減できないかと言っています。私のインタビュー調査の中で、「付き合っているんだけど、2人とも奨学金の返済をしているので、なかなか結婚できない」という人たちが何人もいました。そういう意味で、今現在の大学費用の無償化もですけど、 もう大学を出た人の奨学金という名の借金の軽減というのも、ぜひ入れてほしいですね 政府が異次元の少子化対策を打ち出していますが、大前提として、まず結婚というステップを踏むことが少子化対策を考える上で大事なことだと思います。大学までの教育費を無償化する政策は最も求められているのではないでしょうか。少子化対策にも大変有効でしょう。明るい未来を展望するために予算の組み換えを真剣に考えて実現してほしいものです。tanada2.jpg
「田舎は手伝いにかりだされる」「行事が強制参加」そう言われればそうですね[2023年09月25日(Mon)]
 ラジトピ(ラジオ関西トピックス)2023年6月18日付け「将来的に暮らすなら“都会派”が71.4% 理由は「田舎は手伝いにかりだされる」「行事が強制参加」」から、吉本興業のお笑いコンビ・からし蓮根が、水曜にパーソナリティーを務める番組『Clip』(ラジオ関西、月−木午後2時30分〜)のなかで、「将来的に暮らすなら都会か田舎か」について話した。
 「熊本県の小国町という田舎町出身やから田舎がいい」と話す青空に対し、伊織は「でも車の免許持ってないでしょ?」と素早くコメント。さらに、「田舎暮らしは車がないと無理やし、ご近所付き合いができないといけないから青空には絶対無理」とバッサリ。
「福岡あたりがほどよく都会でちょうどよさそう」と話すのは、青空と同じ熊本県出身の伊織。さらに「九州はおすすめかも。宮崎は野球のキャンプ地があるし、鹿児島は時間がゆったりしてるし」と分析しながら、「佐賀は……、なにもないか」と行き詰まった。これに対し、青空は「吉野ケ里遺跡があるわ!」とあわてて訂正した。  
田舎に住みたいというリスナーから寄せられたメッセージには「都会とちがって買い物するにも高くないですし、自給自足の生活をしてみたいと思う僕にはピッタリだと思うから」と、その理由がつづられていた。現在住んでいる場所もどちらかというと田舎だそうで、“できるだけ生活を変えたくない”というのも理由のひとつだという。  
同じく田舎派のリスナーは、もともと田舎出身なのだそう。リスナーいわく、兄が実家近くの別荘を安く購入して移住したそうで、夫婦でスローライフを満喫しているのがうらやましく感じたという。このメールを読み上げた青空は、「出身の町やったら勝手がわかってるしいい」と賛同した。  
一方、都会派のリスナーからは田舎に住んでいたときのエピソードが寄せられ、お葬式や近所の人が議員に立候補した際にお手伝いにかりだされるのがしんどかった、と切実な思いが記されていた。
「田舎は祭りに強制的に出ないといけないため都会がいい」という声もあり、都会派の理由には田舎の文化や風習が影響していることがうかがえた。  
青空の地元も祭りの参加は当たり前のことだったようで、神輿(みこし)もみんなで力を合わせて木から作っていたという。さらに、近所の人たちが集まって花見をするというイベントもあったそうで、小さいころにそのイベントでおばちゃんに肩をつかまれて「あんたは小国町の宝ばい!」と言われたことを明かした。「確かに地元には子どもが少なかった」と認めつつ、「でっかい看板を背負わされた」と苦笑いをこぼした。  
陶芸職人のリスナーからは、「田舎と答えたいところですが、街中で作品を作って売りたい。都会の方が絶対に生活しやすいです!」という意見が寄せられた。  
ほかに、「コンビニ、スマホに毒された今の私が田舎でタフに過ごせる気が1ミリもしない」「田舎にはマクドナルドとピザ屋がない。熊本のおじいちゃんの家に行ったときには、ピザ屋に行くのに20キロも車を走らせた」というメールも寄せられ、全体の意見を集計すると将来的に暮らすなら都会派は71.4%、田舎派は28.6%となった。test.jpg

 のんびり田舎暮らしをしたい人たちにとっては強制されることが多いかもしれません。「でも車の免許持ってないでしょ?」と素早くコメント。さらに、「田舎暮らしは車がないと無理やし、ご近所付き合いができないといけないから青空には絶対無理」とバッサリ。車を持っていないと田舎で生活するのは容易ではありません。公共交通がはっきり言って機能していないので行動が制限され家に閉じこもってしまうことになるかもしれません。自給自足をしてまわりの付き合いも程々にと考えても付き合いはもちろんですが、集落の慣習、強制的に参加しなければならないことがあり疲れてしまうかもしれません。「都会とちがって買い物するにも高くないですし、自給自足の生活をしてみたいと思う僕にはピッタリだと思うから」もともと田舎出身なのだそう。兄が実家近くの別荘を安く購入して移住したそうで、夫婦でスローライフを満喫しているのがうらやましく感じたという。確かにその通りでしょう。都会派のリスナーからは田舎に住んでいたときのエピソードが寄せられ、お葬式や近所の人が議員に立候補した際にお手伝いにかりだされるのがしんどかった、と切実な思いが記されていた。「田舎は祭りに強制的に出ないといけないため都会がいい」という声もあり、都会派の理由には田舎の文化や風習が影響していることがうかがえた。青空の地元も祭りの参加は当たり前のことだったようで、神輿(みこし)もみんなで力を合わせて木から作っていたという。さらに、近所の人たちが集まって花見をするというイベントもあったそうで、小さいころにそのイベントでおばちゃんに肩をつかまれて「あんたは小国町の宝ばい!」と言われたことを明かした。「確かに地元には子どもが少なかった」と認めつつ、「でっかい看板を背負わされた」と苦笑いをこぼした。田舎の文化や風習に慣れるのは簡単ではないでしょう。苦労が多いかもしれません。移住するには人生をかけることもあり相当の覚悟が必要になるでしょう。移住に失敗してもリセットが聞くと考える余裕のある人はいいかもしれませんが、一大決心で決断するとすれば慎重に判断する必要があるかもしれません。003.jpg
幸せな森の国から理想の国づくりのブータンを見習えないでしょうか[2023年09月24日(Sun)]
 Newsweek2023年6月16日付け「首相が語る、「世界一幸せな国」ブータンが「カーボン・ネガティブ」で進む道」から、<中印という人口大国に囲まれた「幸せな森の国」ブータン。医師でもある首相が語った「理想の国」の導き方とは?>
「温室効果ガスにもビザとパスポートが必要ならいいのに」と、標高平均が世界一高い国ブータンのロテ・ツェリン首相は嘆く。
山がちで深い森林に覆われたブータンは、二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスの排出量が吸収量を下回るカーボン・ネガティブを世界で最初に達成した国とされてきた。だがヒマラヤ山中に位置しているため、他の国々が排出する温暖化ガスによる気候変動の影響を受けやすい。
標高の低い国々は海面上昇によって気候変動の被害を真っ先に受けるとみられがちだが、ブータンでは氷河湖の融解が加速していることが問題だ。
解け出した水によって湖が決壊して鉄砲水が発生し、国民や農業にとって大惨事となりかねない。標高平均が3300メートル近い国の急斜面は豪雨による地滑りが起きやすく、そうした不安定さに地震が拍車をかける恐れがある。
ブータンが直面している難題は自然の要素だけではない。南隣にインド、北隣に中国と、世界で最も人口が多くライバル関係が拡大している2カ国に挟まれ、世界でも特に複雑な地政学的綱渡りを迫られている。
インドは友好国で輸出入の80%を占める一方、中国とは国境画定交渉を進めている。中国は、人口約80万とシアトルをわずかに上回るブータンの一画について、領有権を主張している。アメリカとは、国交はないものの関係は良好だ。
ツェリンは常に外交的な配慮を欠かさない。
「ブータンは非常に平和で、そういう社会はブータンだけでは実現できない。近隣国の力添えがあったからこそだ。彼らの協力で変わらないままでいることができる。今のブータンがあるのは近隣国の善意のおかげだ」と、彼は言う。
仏教国ブータンの元首は、国王としては世界一若い43歳のジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク。54歳のツェリンは政権運営の傍ら、今も週末には医師として首都ティンプーのジグミ・ドルジ・ワンチュク国立病院で手術を行う。
こうした献身的な働き方は、カトリックの修道女で慈善活動に生涯をささげ2016年にカトリック教会の聖人に列せられた故マザー・テレサから影響を受けた部分もあるという。ツェリンの妻もやはり医師だ。 患者の問題だけでなくブータンの制度的問題も解決したいと、ツェリンは国立病院の医師になるためにかかった巨額の研修費用を自己弁済して国立病院の職を辞し、13年に政界入り。医師としてテレビの医療番組に出演していたこともあって知名度は高く、5年後の18年、総選挙に勝利して首相に選出された。
さまざまな難題はあるものの、ブータンは長年GDPよりもGNH(国民総幸福量)を優先している。本誌アジア版編集ディレクターのダニシュ・マンズール・バットがツェリンに話を聞いた。
ブータンと、インド、アメリカ、中国との関係をどう定義するか。
国というものは他国に依存せずにはいられない、隣国の存在を忘れるわけにはいかないと思う。ブータンは物理的にはインドと中国に挟まれている。わが国は両国から多くのメリットを得ており、両国は世界で最も人口が多く、経済も前例のない急成長を遂げている。挟まれていることは、実に光栄であり楽しみだ。
アメリカも世界の主要経済国であり、私たちはアメリカ国民と政府および指導者に非常に好意を持っている。従ってどの国にとってもプラスになるウィンウィン状態で、3カ国のうち1つを選ぶのは至難の業だ。
ブータンは陸地に囲まれ、インドおよび中国と国境を接していながら、どうやってトラブルを回避できているのか。
それはケース・バイ・ケースだ。自分がどのくらい背が高いかは隣人や友人がどのくらい背が低いかによる。自分がどのくらい背が低いかは彼らがどのくらい背が高いかによる。
それと同じで、ブータンがどのくらい平和かは自国の力だけで築き上げられるものではない。近隣国が手を貸してくれたおかげだ。
近隣国の協力でトラブルを回避できていて、彼らの善意で今のブータンがある。陸に囲まれていることは不利にも有利にもなり得る。ありがたいことにブータンにとっては非常に有利で、しかもわが国は世界で最も急成長している2つの経済に挟まれている。
インドと中国との関係
インドとは友好関係にあるが、中国はブータンの領土の10%近くについて領有権を主張している。
インドとは歴史的にも地理的にも非常に良好な関係だ。インドのナレンドラ・モディ首相が就任後初の外遊先にブータンを選んだことは実に喜ばしく、その返礼として私も首相就任後真っ先にインドの首都ニューデリーを訪れた。こうした関係はいつまでも続くはずだ。
中国とも友好関係にある。国境画定交渉は順調に進んでおり、今年は既に政府の代表団を中国に派遣し、進捗状況は非常に良好だった。 次の段階は中国の技術チームがティンプーを訪れ、中国で合意したタイムラインを整理することだ(編集部注:交渉は5月下旬に開催された)。それから両国の国境を物理的に定める。国境画定をこれほど迅速に解決している国はほかにないだろう。
ブータンをめぐる最大の話題は常に気候変動だ。本質的にカーボン・ネガティブな国から世界に向けたメッセージは?
世界が2050年までにカーボン・ニュートラル(CO2の排出量と吸収量を相殺してCO2排出量を実質ゼロにすること)を目指しているなかでブータンが本質的にカーボン・ネガティブであることに私は注目してきた。世界の多くの国はカーボン・ネガティブになるのは不可能だが、ブータンは実現している。
これは歴代の首相や国王のおかげだ。ブータンの憲法は国土に占める森林面積を少なくとも60%に保つよう明記している。
こうしたビジョンのある憲法は世界にどのくらいあるだろうか。私たちは手付かずの環境を何世代にもわたって守ってきた。 世界中の国々が工業化を進めたが、ブータンは工業化しなかった、いや、できなかった。他の国々のように工業化していたら、カーボン・ネガティブを達成できただろうか。そうは思えない。工業化しなかった、いや、できなかったのは幸いだった。ブータンは他国よりも少しだけ長く貧しいままだったが、今ではほかの国にはない豊かさがある。森林が国土の72%を占めているのだ。
今後どうするか? わが国は既に国連などの気候変動対策の機関に参加し、今後もずっと緑豊かな国土を保つと誓っている。森林に覆われた72%の国土は国立公園、緑の回廊、生物多様性ホットスポットとしてさらに保護されている。半永久的に保護するための法整備も進んだ。場所によっては住民に犠牲を強いなくてはならない。
農村部の一部には先祖代々そこで暮らしてきた人たちがいて、彼らには多少の不自由を強いることになる。彼らを支援し、可能なら移住を勧めている。ブータンだけでなく、全世界に貢献するために。 温室効果ガスが国境を越えられなければ、どんなにいいだろう。そうはいかないから他国が排出したガスがブータンに影響を及ぼしている。
わが国がカーボン・ネガティブを維持できなくなるとすれば、その最大の元凶は自動車だ。私たちは電気自動車(EV)の普及を目指して国家計画を策定した。EVの保有台数を60〜70%増やし、ガソリンやディーゼル車を減らしたい。水素エネルギーにも関心を寄せている。研究開発が急速に進んでいるからだ。有望であれば重点的に投資したい。 カーボン・ネガティブの維持は外部から押し付けられた義務ではなく、自主的な目標だ。
ブータンについて世界が注目するのは、もっぱらGNH、すなわち国民総幸福量という指標だが。
ブータンはGNHの概念を提唱した国として世界中に知られている。私たちは平和な地に暮らす、とても幸せな国民であることを世界に示している。だが私たちが世界に伝える以上に大事なのは、世界が私たちから何を学びたがっているかだ。教える側がいくら熱心でも、相手に耳を傾ける意思がなければ意味がない。
近い将来における国家としてのブータンの優先課題は?
私たちは独自の歴史、伝統、文化、環境を大切にしてきた。その結果、(世界で初の)カーボン・ネガティブの国となった。独自の制度のおかげで、GNHの原則と哲学を世界に伝えることができる。
他国にはない独自の特徴があるのだから、その独自性に根差して豊かになること、技術立国を目指すこと、苦境に耐え得る強固な経済を築くことを優先すべきだろう。ブータンの経済発展は他国とは全く異なる形を取るはずだ。
ブータンには独自の特徴があると言ったが、「教育と医療」もその1つ。今の国王も代々の王たちも社会的平等を実現するにはまず全ての国民に教育と医療を保障する必要があると考えてきた。
国家が費用を負担する。子供の教育費や自分が病気になったときのことを心配せずに済む。それが豊かさの大前提だ。
教育といえば、世界の変化や技術の進歩に対応できる人的資源を確保するための新たな取り組みは? 技術教育と職業訓練の必要性を痛感している。
(従来は識字率の意味で使われていた)リテラシーの定義が変わりつつあり、デジタル知識が求められていることも......。
そこで私たちは教育全体のICT(情報通信技術)化を進めようとしている。カリキュラムも変え、教師にICT教育をしなければならない。教育インフラをデジタル化し、教師と学生・生徒の意識を変えなければ。
ブータンは2年前から全ての学校でプログラミング言語教育を行っている。正規の教育は5歳から始まる。今は就学準備段階からプログラミング言語を教えている。子供たちは(ゲームだと思って学習とは)気付いていないかもしれないが......。
国王が私費を投じ全ての学校で(ゲームを通じてプログラミング言語を学べる)「コード・モンキー」を利用できるようにした。奥地の学校にはICTラボを設置している。
全ての子供に信頼性の高いインターネット接続を提供したいが、現状では難しい。それでもそうなりつつある。既にほぼ全ての学校が光ファイバーでネットにつながっている。生徒たちが活用できるよう、教育コンテンツのデジタル化も進めたい。
外国に留学し高度な知識や技術を身に付けてもブータンに戻らない若者も多い。頭脳流出は問題か。
これは今に始まった現象ではない。一部の国々は何十年も前から人材の流出を嘆いてきた。グローバル化も流出に拍車をかけている。若者はよりよいチャンスがある国に行く。 もちろん、頭脳流出はわが国にとって問題だ。考え方を根本的に変えないと大変なことになる。
目下、国王が陣頭指揮を執って大規模な改革を進めている。改革は全ての公共部門に及ぶ。行政機関から金融機関、中央銀行、司法機関も。高等教育を受けた若いブータン人の期待に応えられるよう、あらゆる部門が変わりつつある。
若者が国内でチャンスを見いだせるようになれば、頭脳流出に歯止めがかかるだろう。なぜならブータンを嫌って出ていく若者は1人もいないから。彼らの期待に添うような活躍の場がないから、家族を残して国を後にするのだ。
今後拡大させたい、もしくは外国の支援を求めたい重点部門は?
ブータンは再生可能エネルギーである水力発電に可能な限り、あらゆるレベルで投資を誘致している。
さらに今は水力以上に太陽光と風力発電に注力しつつある。目標は再生可能なエネルギー源で(近隣諸国に輸出できる)余剰電力を生むことだ。
農業部門にも力を入れたい。その土台は先端技術だ。教育もそう。STEM(科学、技術、工学、数学)と呼ばれる理系教育に重点を置くつもりだ。人文科学も必要だが、人文科学ばかりに力を入れていたら、ブータンは未来を切り開けない。004.jpg

 山がちで深い森林に覆われたブータンは、二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスの排出量が吸収量を下回るカーボン・ネガティブを世界で最初に達成した国とされてきた。だがヒマラヤ山中に位置しているため、他の国々が排出する温暖化ガスによる気候変動の影響を受けやすい。ブータンを通じて豊かさとは何かを考えることができるでしょう。標高の低い国々は海面上昇によって気候変動の被害を真っ先に受けるとみられがちだが、ブータンでは氷河湖の融解が加速していることが問題だ。解け出した水によって湖が決壊して鉄砲水が発生し、国民や農業にとって大惨事となりかねない。標高平均が3300メートル近い国の急斜面は豪雨による地滑りが起きやすく、そうした不安定さに地震が拍車をかける恐れがある。ブータンが直面している難題は自然の要素だけではない。南隣にインド、北隣に中国と、世界で最も人口が多くライバル関係が拡大している2カ国に挟まれ、世界でも特に複雑な地政学的綱渡りを迫られている。ブータンがどのくらい平和かは自国の力だけで築き上げられるものではない。近隣国が手を貸してくれたおかげだ。近隣国の協力でトラブルを回避できていて、彼らの善意で今のブータンがある。陸に囲まれていることは不利にも有利にもなり得る。ありがたいことにブータンにとっては非常に有利で、しかもわが国は世界で最も急成長している2つの経済に挟まれている。自然環境ばかりでなくまわりの国々との関係でも厳しい状況に置かれていますが、生き抜いているのは素晴らしいですね。ブータンをめぐる最大の話題は常に気候変動だ。本質的にカーボン・ネガティブな国から世界に向けたメッセージは?世界が2050年までにカーボン・ニュートラル(CO2の排出量と吸収量を相殺してCO2排出量を実質ゼロにすること)を目指しているなかでブータンが本質的にカーボン・ネガティブであることに私は注目してきた。世界の多くの国はカーボン・ネガティブになるのは不可能だが、ブータンは実現している。世界の中でカーボン・ネガティブで頑張っているのがブータンなのです。評価されて然るべきではないでしょうか。ブータンには独自の特徴があると言ったが、「教育と医療」もその1つ。今の国王も代々の王たちも社会的平等を実現するにはまず全ての国民に教育と医療を保障する必要があると考えてきた。国家が費用を負担する。子供の教育費や自分が病気になったときのことを心配せずに済む。それが豊かさの大前提だ。教育といえば、世界の変化や技術の進歩に対応できる人的資源を確保するための新たな取り組みは? 技術教育と職業訓練の必要性を痛感している。(従来は識字率の意味で使われていた)リテラシーの定義が変わりつつあり、デジタル知識が求められていることも。そこで私たちは教育全体のICT(情報通信技術)化を進めようとしている。カリキュラムも変え、教師にICT教育をしなければならない。教育インフラをデジタル化し、教師と学生・生徒の意識を変えなければ。ブータンは2年前から全ての学校でプログラミング言語教育を行っている。正規の教育は5歳から始まる。今は就学準備段階からプログラミング言語を教えている。子供たちは(ゲームだと思って学習とは)気付いていないかもしれないが。医療と教育に関して国家の費用を使って心配せずに生活できることが豊かさにつながっているのでしょう。ブータンは再生可能エネルギーである水力発電に可能な限り、あらゆるレベルで投資を誘致している。さらに今は水力以上に太陽光と風力発電に注力しつつある。目標は再生可能なエネルギー源で(近隣諸国に輸出できる)余剰電力を生むことだ。農業部門にも力を入れたい。その土台は先端技術だ。教育もそう。STEM(科学、技術、工学、数学)と呼ばれる理系教育に重点を置くつもりだ。人文科学も必要だが、人文科学ばかりに力を入れていたら、ブータンは未来を切り開けない。ブータンができることをしっかり考え明るい未来を創造しようと努力しているから豊かさを実感できるようになるのではないでしょうか。国民が豊かさを感じるようにするために日本も見習うことができないでしょうか。110.jpg
田舎に行ってストレスのない生活を送ることが大事では[2023年09月23日(Sat)]
 日刊ゲンダイ2023年6月16日付け「養老孟司&名越康文が提唱 加速するIT化への不安解消法は「田舎への参勤交代」」から、インターネット上につくられた仮想空間で服を試着したり、いろいろな訓練をしたり。人工知能に問いかけると、自然な文章が生み出される。ネットの技術革新がとてつもない速さで進む一方、少子化や宗教対立など社会や国際的な問題も横たわっていて、大地震発生も秒読み段階という。大変な時代を生き抜くには、どうするか。
 人間のように対話しながら違和感のない文章を作るツールは、対話型人工知能「チャットGPT」と呼ばれる。東京都の小池百合子知事は今月13日、全部局で文書やQ&Aの作成にチャットGPTの導入を決定。4月に全国の自治体で初めて全庁で試験導入した神奈川県横須賀市は5日、その試験結果を公表し、アンケート回答者のうち8割は「仕事の効率が上がる」「利用を継続したい」と答えたという。  
一方、ネット上に構築された仮想空間は、メタバースという。クレジットカード大手のJCBは今月中にもメタバース事業をスタート。学校向けに簡単にメタバースを作成できるシステムを提供し、未成年ができない金融や商品取引を疑似体験してもらい、第1号として和洋九段女子中高が授業などに取り入れるという。  
チャットGPTもメタバースも、全国の自治体や企業、教育機関などで導入が相次ぐ。急速なIT化の流れは止めようがない。それに順応できる人はいいが、新しいことに不安を覚える人にはつらいだろう。
「メタバースは将来に向かって残す空間」
 そんな不安を払拭するような考え方やヒントはないものか。解剖学者の養老孟司氏は昨年3月、メタバース推進協議会の設立とともに代表理事に就任。今年86歳になる知の巨人は、世界が注目する仮想空間のメタバースについて意外な視点を持っている。精神科医の名越康文氏との対談をまとめた「ニホンという病」(発売・講談社)には、こんなことを語っている。
「皆さんメタバースというと新しい世界、空間ができると受け取られているでしょうが、僕は後ろ向きに考えているんですよ。将来に向かって残すということです。現状を。だから特に、ラオスの森とかそういう自然ですね。実際に行かなくても行った感じになれる。そのデータを取っていくと、100年たっても『100年前はこうだったんだよ』ということが分かる」  
虫捕りをライフワークとする解剖学者ならではの視点だが、なるほど、そんな使い方は十分ありうる。変わりゆく地球を丸ごとパッケージで残す仕組みで、“後ろ向きの発想”がまったく違う空間に暮らす未来の人にとっては“新しい発見”になるだろう。  
養老氏も指摘する「実際に行かなくても行った感じになれる」という疑似体験は、企業や組織が力を入れる分野だ。前述した試着や訓練などはその応用で、売り上げやスムーズな仕事の引き継ぎなどに結びつける使い方といえる。その疑似体験についても、意外なことを紹介している。
「よく子ども連れの虫捕りの会なんかやっているんですけど、親が一生懸命なんですよ。つまり、今の小学生の親の世代というのは、あまりそういうものに触れていない。自然体験が足りないんですね。足りないのは子どもより親なんですよ」  
毎年、島根県で行われる虫捕りの会には、日本中から子ども連れが集まる。その中には、祖母と一緒に訪れる子どももいるそうだ。「おばあちゃんは僕の世代ですから、(幼いころの自然体験があるので)虫は捕らなくてもいい。子どもを外に出して遊ばせてやれば。虫は大義名分になっている」と自然体験の世代格差に触れる。  
その点に着目すると、メタバースで疑似的な自然体験が必要なのは、子どもより親世代ということになる。これも、盲点かもしれない。
 居場所探しの極意は無意識にできること
 一方、企業では、働き方改革が進む。コロナ禍の影響もあり、テレワークが定着し、副業を認める企業は珍しくない。そうやって本業とは違う仕事を見いだした人は、早期退職制度を利用して新たな道を歩み出す。不安定な働き方で、うまく波にのれるといいが、そうでないと相当なストレスだろう。  
今年63歳の名越康文氏は38歳直前で大阪府立中宮病院を退職し、思春期の患者の診療に集中する。自分の目標に突っ走る中、体の異変に気づいたそうだ。名越氏が言う。
「いま振り返ると、病院を辞めて4、5年が過ぎたころは、毎日30人くらいの患者さんを診させていただき、かなり無理していました。精神科医として恥ずかしながら、自律神経失調症のような状態で、夜中に目が覚めると、寝汗がひどい。毎晩2回、Tシャツを着替えていたほどです。でも、そんなストレスが慢性化した状態はある意味“いつもの自分”ですから、状態の悪さに気づきません。そんな中、思春期の患者さんを相手にするには、自分が気持ちのいいところに身を置かなくてはダメだと思ったのですが、それが分かりませんでした。それで、診療所の行き帰りに20〜30分ほど歩くようになったのです」  
そんな“居場所探し”は、5年かかったという。
「あるとき、通勤の途中にある難波宮跡のベンチに座ると、なぜかホッとすることに気づいたのです。難波宮跡の気持ちよさに気づいてからは、体がとても楽です。そんな毎日を重ねた結果、いまでは初めての場所でも、自分にとって気持ちのいい場所がすぐに分かるようになりました」  
その経験から、名越氏は気持ちのいい場所や気持ちのいい生活を重要視する。どうやって見つけるか?
「気持ちのいい場所や気持ちのいい生活は、それが目的になりません。たとえば、気持ちのいい場所には、無理なく楽しめるから体が無意識のうちに動いていきます。無意識にできるようになることが理想で、『〜のために』と目的化された行動はよくありません。目的が義務感となって、ストレスになります。そうはいっても私がそんな場所を見つけるまで5年かかったように、すぐに見つけるのは難しい。最初のうちは、『健康のために5000歩歩こう』といった目標を立ててもいいので、その行動を続けながら、その中に気持ちよさや楽しさを見つけるようにすることです」  
養老氏も対談本の中でこう語っている。
「現代人にとって一番大きな健康問題は、自分がどういう状態だったら気持ちがいいか分からないことです」  
確かに健康診断の結果をなるべく「A」にしようと、“見せかけの健康”にこだわる人は珍しくない。それが快適なら構わないが、“健康”にとらわれ過ぎて生活が窮屈になるのは、決して気持ちのいいことではないだろう。医師免許を持つ2人が口をそろえる「気持ちのよさ」とは、体の内側から湧いてくる快適さだ。  
体の声に耳を傾ける行動の一つが散歩だが、都会では難しいかもしれない。そこで、名越氏は自然に返ることを勧めているのだ。
「周りからの身体的な虐待ではなく、自然からの隔離が生命を虐げているということです。50歳を過ぎてから、ある仕事をキッカケに森に入ってから、森にいるときの気持ちよさに気づきました。それに気づいてからは、月に1回は森に入らないと気が済まない。大阪に帰ると、吉野や熊野、六甲などの森に必ず行きます。行かないと、呼吸が浅くなるのが分かるんです。そうなるのは、やっぱり人間の欲求だと思います。田舎への参勤交代をやってみるといいですよ」  
山で自然に触れると、周りが気にならなくなる。それはすなわちストレスからの解放だ。そんな気持ちのいい空間で生まれた人づき合いは、都会のそれと違って、負担にならない。「田舎への参勤交代」は、現代人のリフレッシュには欠かせないことだろう。
IT化にウンザリして疲れている人は、賢人2人の言葉に耳を傾けてはいかが?004.jpg

 チャットGPTもメタバースも、全国の自治体や企業、教育機関などで導入が相次ぐ。急速なIT化の流れは止めようがない。それに順応できる人はいいが、新しいことに不安を覚える人にはつらいだろう。時代の流れに乗り遅れてしまう人たちはどうなるのでしょうか。今年63歳の名越康文氏は38歳直前で大阪府立中宮病院を退職し、思春期の患者の診療に集中する。自分の目標に突っ走る中、体の異変に気づいたそうだ。名越氏が言う。「いま振り返ると、病院を辞めて4、5年が過ぎたころは、毎日30人くらいの患者さんを診させていただき、かなり無理していました。精神科医として恥ずかしながら、自律神経失調症のような状態で、夜中に目が覚めると、寝汗がひどい。毎晩2回、Tシャツを着替えていたほどです。でも、そんなストレスが慢性化した状態はある意味“いつもの自分”ですから、状態の悪さに気づきません。そんな中、思春期の患者さんを相手にするには、自分が気持ちのいいところに身を置かなくてはダメだと思ったのですが、それが分かりませんでした。それで、診療所の行き帰りに20〜30分ほど歩くようになったのです」「あるとき、通勤の途中にある難波宮跡のベンチに座ると、なぜかホッとすることに気づいたのです。難波宮跡の気持ちよさに気づいてからは、体がとても楽です。そんな毎日を重ねた結果、いまでは初めての場所でも、自分にとって気持ちのいい場所がすぐに分かるようになりました」ちょっとした取り組みでよい変化が起きる可能性があるのですね。「気持ちのいい場所や気持ちのいい生活は、それが目的になりません。たとえば、気持ちのいい場所には、無理なく楽しめるから体が無意識のうちに動いていきます。無意識にできるようになることが理想で、『〜のために』と目的化された行動はよくありません。目的が義務感となって、ストレスになります。そうはいっても私がそんな場所を見つけるまで5年かかったように、すぐに見つけるのは難しい。最初のうちは、『健康のために5000歩歩こう』といった目標を立ててもいいので、その行動を続けながら、その中に気持ちよさや楽しさを見つけるようにすることです」継続して実践することで気持ちが良くなっていくのですね。体の声に耳を傾ける行動の一つが散歩だが、都会では難しいかもしれない。「周りからの身体的な虐待ではなく、自然からの隔離が生命を虐げているということです。50歳を過ぎてから、ある仕事をキッカケに森に入ってから、森にいるときの気持ちよさに気づきました。それに気づいてからは、月に1回は森に入らないと気が済まない。大阪に帰ると、吉野や熊野、六甲などの森に必ず行きます。行かないと、呼吸が浅くなるのが分かるんです。そうなるのは、やっぱり人間の欲求だと思います。田舎への参勤交代をやってみるといいですよ」山で自然に触れると、周りが気にならなくなる。それはすなわちストレスからの解放だ。そんな気持ちのいい空間で生まれた人づき合いは、都会のそれと違って、負担にならない。「田舎への参勤交代」は、現代人のリフレッシュには欠かせないことだろう。森に入ると五感をすべて使って気持ちよくなるような気がします。リラックスできるということはストレス発散につながるのでしょう。「田舎への参勤交代」は大変いい考え方ではないでしょうか。002.jpg
忖度だらけの日本のマスコミはチェック機能を果たしていないでしょう[2023年09月22日(Fri)]
 FLASH2023年6月15日付け「忖度するテレビはもはや報道機関やない!“建前マスコミ” に騙されるな【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第6回】」から、ジャニーズ事務所の「性加害問題」が、なかなか収まりません。6月5日には、『news zero』(日本テレビ系)で、嵐の櫻井翔くんがこの問題に関し、初めて発言したことも耳目を集めています。
そもそも、この問題は「週刊文春」が1999年に報じて裁判にまでなったのに、英BBCが今年3月に取り上げるまでは、日本の大手マスコミは腫れ物にふれるような感じで、黙殺を続けてきました。  
今回のジャニーズ問題は、今のマスコミが抱える悪弊の典型やと思うから、見過ごすわけにはいかんでしょう。  
じつは、私はマスコミと縁が深い。大学を出て、最初に入ったのがNHKで、その後テレビ朝日でも仕事をしました。20代のころは、マスコミセミナーの専任講師をしていて、当時の教え子の多くが新聞、テレビ、出版業界に入っています。だからこそ、マスコミへの期待は大きいし、そのぶん、失望も大きい。  
マスコミにいちばん言いたいのは、どっち向いて仕事しとんねん、ということ。マスコミとは広告、テレビ、新聞、出版の4部門で、最近はネットも加わります。  
まず、広告業界。電通や博報堂です。広告業界は、言ってしまえばカネで動く。だから、そのカネを持っている権力者のほうを向く。  
たとえば、オリンピックや万博という巨大イベントに参画して、イメージ戦略で国民の賛同を集めながら、巨額のカネを稼いでいます。  
カネ儲けは悪いことだとは思いませんが、東京オリンピックでは談合事件で逮捕者まで出た。それも、カネばかり見ている業界の体質の表われやと思うんです。  
続いてテレビ。テレビはNHKと民放に分かれ、それぞれ違う方向を見ています。NHKは、本来は受信料を支払っている国民のほうに目を向けなあかんはず。私がNHKに入った当時は、新人研修でそう教えられました。研修では受信料の徴収もやらされ、視聴者の家を一軒一軒回って、大相撲や大河ドラマの話をしながら、「こういう視聴者に支えられているんや」と実感したもんです。  
ところが、今のNHKは視聴者よりも、放送法を司る政府のほうばかり見ている。それを見透かした国民のなかからは「なんやねん、もう受信料は払わん」という視聴者も出てくるんです。  
民放が顔を向けているのは、明らかにスポンサー。力関係でいえば、もはや完全に「スポンサー様々」となっている。背景には経営難があると思います。  
もっと景気がよくて広告収入が多かったころは、テレビ局のほうが力があり、スポンサーを選ぶような状態でしたが、今やスポンサーが番組内容まで差配している。そして、ついに報道番組までがスポンサーの意向を気にするようになった。  
テレビ局では、大きく分けて報道分野とドラマやバラエティの制作分野があり、経営が厳しくなると、報道が弱くなる。すると視聴率稼ぎのために、報道でもジャニーズのタレントを使ったりする。結果、ジャニーズへの批判がタブー化する。  
さらに、最近は電波を握っている総務省にも気を遣うようになった。今の民放は、スポンサーと政府のダブルの影響を受けています。  
本来、タブーに斬り込むのが報道なんやから、自らがタブーを作るのは言語道断。忖度報道なんて言葉は自己矛盾で、そんなことをするテレビは報道機関やない。  
一方、同じ放送業界でも、ラジオは比較的まし。ラジオは制作費が安いし、スポンサーの影響を受けにくい。そのぶん、自由度が高いと感じます。歯に衣着せぬ発言をする私は、テレビ局からは出演依頼がないのに、同じ系列のラジオ局からはけっこう声がかかるんですよ。  
続いて新聞。新聞は購読料で支えられているから、当然、お金を払ってくれる読者のほうを向いていなければならない。かつての新聞はプライドが高くて、「社会の木鐸」と胸を張っているイメージがあった。じつは、私は大学時代、入社するならNHKか新聞かで迷ったくらいです。  
ところが、この10年で坂道を転げ落ちるように購読者が減ってしまい、広告に依存せざるを得なくなった。「朝日」なんて、不動産業で食っているのが実態。収益構造が変わってきて、もはやメディア本来の姿ではない。  
もっとも危機的な状況にあるのが新聞業界といえます。最近は、購読料を値上げするという悪循環にも陥っていて、このままではもっと読者を減らすでしょう。すると広告への依存度がさらに高まり、読者よりもスポンサーを見ざるを得なくなる。悲しいことやけど、「貧すれば鈍する」ということでしょうか。  
今の日本のマスコミは、「建前マスコミ」と「本音マスコミ」に大きく分かれると実感します。  
明石市長時代、全国紙やテレビのキー局とは “バトル” もしてきましたが、そもそも私に対して懐疑的で、なかなか取り上げてくれなかった。反面、地方紙や地方局は好意的に私の発言や政策を報じてくれた。きれいに割れてます。これは、きれいごとばかり扱う「建前マスコミ」と、国民の真の興味に応える「本音マスコミ」の違いでしょう。
「本音マスコミ」の代表がネットやと思います。ネットは、閲覧に付随する広告収入を得ている。そのためには閲覧数を稼がなあかんから、より多くの国民に読まれることを目指す。とにかく記事をクリックしてもらうために、読者の心に突き刺さるような見出しや文章を書かなあかん。  
結果的に読者、国民のほうを向いた仕事をしているんです。記事の分量に制限がないから、かなりまとまった内容で発信できる強みもある。だから、私のようなキャラクターは、やたらネット媒体から取材依頼が多い。  
じつは、私がいちばん期待しているのは雑誌などの出版。出版には、“ジャーナリスト魂” が残っていると思う。  
その大きな理由は、読者に買うてもらわなあかんから。「FLASH」にしても、政府が買うてくれるわけやないし、スポンサーを気にするほど広告収入が大きいわけでもない。だから、お金を出して買ってくれる読者を見る。  
とくに、私にオファーしてくるのは、「FLASH」を始め、女性の水着写真が載っているような週刊誌が多い。もちろん、ありがたいこと。  
ただ、週刊誌はネット記事も含めて読者にアピールしようとするあまり、内容から離れた見出しになる傾向がある。私が言ってないことを見出しにされると困るから、それはやめてくれと担当者に物申したことはある。  
でも、一人でも多くの読者の目に留まらな始まらんから、なかなか難しいところやろうね。ともあれ、今後も「本音マスコミ」として、「FLASH」には大いに期待しています。032.jpg

 「週刊文春」が1999年に報じて裁判にまでなったのに、英BBCが今年3月に取り上げるまでは、日本の大手マスコミは腫れ物にふれるような感じで、黙殺を続けてきました。  今回のジャニーズ問題は、今のマスコミが抱える悪弊の典型やと思うから、見過ごすわけにはいかんでしょう。忖度しなければならない業界、政治勢力、巨大な力を有する組織が日本には存在するのでしょう。マスコミにいちばん言いたいのは、どっち向いて仕事しとんねん、ということ。マスコミとは広告、テレビ、新聞、出版の4部門で、最近はネットも加わります。まず、広告業界。電通や博報堂です。広告業界は、言ってしまえばカネで動く。だから、そのカネを持っている権力者のほうを向く。たとえば、オリンピックや万博という巨大イベントに参画して、イメージ戦略で国民の賛同を集めながら、巨額のカネを稼いでいます。  カネ儲けは悪いことだとは思いませんが、東京オリンピックでは談合事件で逮捕者まで出た。それも、カネばかり見ている業界の体質の表われやと思うんです。続いてテレビ。テレビはNHKと民放に分かれ、それぞれ違う方向を見ています。NHKは、本来は受信料を支払っている国民のほうに目を向けなあかんはず。私がNHKに入った当時は、新人研修でそう教えられました。研修では受信料の徴収もやらされ、視聴者の家を一軒一軒回って、大相撲や大河ドラマの話をしながら、「こういう視聴者に支えられているんや」と実感したもんです。広告代理店大手、NHKは国民に目が向いているのでしょうか。権力者の方を見ているのではないでしょうか。民放が顔を向けているのは、明らかにスポンサー。力関係でいえば、もはや完全に「スポンサー様々」となっている。背景には経営難があると思います。もっと景気がよくて広告収入が多かったころは、テレビ局のほうが力があり、スポンサーを選ぶような状態でしたが、今やスポンサーが番組内容まで差配している。そして、ついに報道番組までがスポンサーの意向を気にするようになった。テレビ局では、大きく分けて報道分野とドラマやバラエティの制作分野があり、経営が厳しくなると、報道が弱くなる。すると視聴率稼ぎのために、報道でもジャニーズのタレントを使ったりする。結果、ジャニーズへの批判がタブー化する。タブーに斬り込むのが報道なんやから、自らがタブーを作るのは言語道断。忖度報道なんて言葉は自己矛盾で、そんなことをするテレビは報道機関やない。タブーに切り込まずチェック機能を失ったテレビ局は国民の信用を得られるでしょうか。もっとも危機的な状況にあるのが新聞業界といえます。最近は、購読料を値上げするという悪循環にも陥っていて、このままではもっと読者を減らすでしょう。すると広告への依存度がさらに高まり、読者よりもスポンサーを見ざるを得なくなる。悲しいことやけど、「貧すれば鈍する」ということでしょうか。今の日本のマスコミは、「建前マスコミ」と「本音マスコミ」に大きく分かれると実感します。新聞はネット、デジタル化が進み存在感を失いかけてきているのではないでしょうか。広告収入を確保するために厳しいチェック機能が働かなければ危機的状況に陥り生き残るのは容易ではないかもしれません。「本音マスコミ」の代表がネットやと思います。ネットは、閲覧に付随する広告収入を得ている。そのためには閲覧数を稼がなあかんから、より多くの国民に読まれることを目指す。とにかく記事をクリックしてもらうために、読者の心に突き刺さるような見出しや文章を書かなあかん。結果的に読者、国民のほうを向いた仕事をしているんです。記事の分量に制限がないから、かなりまとまった内容で発信できる強みもある。だから、私のようなキャラクターは、やたらネット媒体から取材依頼が多い。政権はもちろんですが、忖度せずに本音で厳しき切り込んでチャックするメディアが必要なのではないでしょうか。garounotaki.jpg

日本は移民をどうして受け入れないか真剣に考える必要があるのでは[2023年09月21日(Thu)]
 BUSINESS INSIDER2023年6月12日付け「日本は「魅力的な移住先にはなりにくい」。日本に暮らす外国人が語る日本の住みにくさ」から、コロナも落ち着き、2023年4月の訪日外国人数はコロナ前の約7割まで回復、都内の観光地は外国人でごった返していると聞く。
外国人から見れば、日本は「生活コストが安くて、親切な国」。しかし「日本に移住したいですか?」と聞けば、話はまったく変わってくるのではないだろうか。
私はベルギーに留学中だが、ベルギーにこのまま住み続けることも視野に入れはじめている。その理由は、ベルギーに住んでいると、「移民と共に新しい社会を作っていく姿勢」を強く感じるからだ。
一方で、日本に暮らす外国人たちは、日本をどうみているのだろうか。 日本に住む友人たちに取材してみると、悩みながらも日本で生活する彼らの苦悩が浮き彫りになった。
亡命者から年商20億円の経営者に
「英語も通じないし、外国人への理解も少ない。日本を魅力的な移住先にするにはさらなる努力が必要だ」
2006年から日本に住む、パキスタン国籍のアシフさんはそう話す。
アシフさんとは記者時代の取材で知り合った。彼は中古車販売を軸に、IT分野にビジネスを拡大したサフラングループ(Saffran Group)の経営者で、最高年商20億円程度にまで成長させた。最近では中古車業界をDX化するためのスタートアップに注力している。
アシフさんが来日を決めた当時、パキスタンは独裁的な政治によって身の安全に不安を抱いたアシフさんは妻と一緒に日本に亡命申請をした。結果的に在留特別許可を得て、日本に滞在することになった。
アシフさんはロシアでMBAを取得し、言語も日本語を含めて5カ国語を話す努力家。『みんなの日本語初級』(スリーエーネットワーク)を使い、毎日16時間勉強したという。
そんなアシフさんでも、3年に1回のビザの更新手続きの際には、専門用語ばかりの膨大な紙の書類に今でも悩まされている。少しでも遅延があると、ビザは「ダウングレード」されてしまうという。数年前、手続きのトラブルがあり結果的に期間が短縮され、9カ月間になってしまったことがあった。 
「私が日本に来た2006年から、世界は大きく変わりました。例えば最近のパキスタンの優秀な若者は、自国でドルを稼ぎ、王様のような生活をしています。日本は欧米など、英語が通じ、移民しやすい他の選択肢と比較すると永住権をとりにくく、移民への理解も少ない。魅力的な移住先にはなりにくいでしょう」
彼は最近、米国のスタートアップビザを入手した。
日本は「父母両系血統主義」を採用しているので、日本で生まれ育った3人の娘はいまだに日本国籍を持つことはできていない。
ビザを「ダウングレード」された時の不安はとても大きかったといい、日本以外に住む道も探し始めている。
日本では「目立ってはいけない」
「これまでに3度職務質問されました。『外国人の雰囲気』が出ていたんだと思う」 米国・ボストン出身の友人Kさんは、私の最初の言語学習のパートナーだ。 当時高校生だった私たちは、インターネットの掲示板で出会い、スカイプを使ってお互いの英語と日本語を教えあった。彼はその後、上智大学に交換留学生として来日。いったんアメリカに帰国したが、2015年に英会話教室で働くために日本に戻ってきた。
彼は「日本の生活で困っていることはない」と語るが、日本人の中で「目立たない」ための地道な努力が過去にはあった。
「外国人として特別扱いされたくなかった。だから、徹底的に日本人の仕草を観察したんだ。ジェスチャーを控え、日本人の歩き方をまね、話すときに相手の目をジッとみないようにした。徹底的に外国人の雰囲気をなくしていくことで、警察に職務質問をされることもなくなったよ」
Kさんの年収は300万円程度だが、米国の大学に返済する奨学金が年間72万円弱ある。しかも円安で、支払う価格はあがった。
それでも、「贅沢をしなければ生きていけるし、母国より日本のほうが国民性が自分に合っている」と感じているという。
2022年、Kさんは日本人と結婚し、日本の滞在もそろそろ10年になるので、永住ビザの申請を検討しているようだ。
彼の話を聞きながら、私はベルギーに引っ越しをした日を思い出していた。
引っ越しをすると、新しい住民を確認するために警察が訪ねてくる。しかし私がフランス語を話せないことを伝えると、「ここは英語が通じるから、何かあったらここに連絡しなさい」とガイドブックを渡してくれた。
もちろん、外国人だからといって疑われたり、身分を証明させられることはなかった。 Kさんの話を聞き、日本に馴染もうとここまでの努力をしていたことを知って、私は驚くと同時になんだか悲しくなった。
ベルギー「違いは当たり前」の精神
私が住むベルギーには、数多くの移民がいる。
公用語も3つあり、フランデレン地域ではオランダ語が、ワロン地域ではフランス語が、東部地域ではドイツ語が主要な言語として使用されている。首都であるブリュッセルは国際的な都市であり、フランス語とオランダ語が並立して使用され、英語も広く使われる。
多言語のコミュニケーションは一般的であり、多くの人々が複数の言語を話し、必要に応じて言語を切り替えてコミュニケーションする。
私が住んでいるワロン地域のアジア人は非常に少ないが、じろじろ見られることや、フランス語が話せなくて差別を受けることはない。「みんな違っていて当たり前」という精神が、文化に根付いている気がする。
ベルギーは住みやすく、この国の魅力に触れるなかで、住み続けることを視野にいれはじめた。
例えば教育費が安い。過去の記事「大企業を辞めて留学、円安が直撃。高い光熱費…ベルギーでの節約生活」にも書いたが、私の大学院の学費ですら年間約4000ユーロ、つまり約60万円程度なのだ。
しかもEU市民やアフリカなど一部の途上国出身だと、たった800ユーロ(約12万円)。選考費用や入学金はない。ちなみに東京大学の大学院の学費は、入学金をいれて81万7800円かかる。
当然、補っているものはベルギー国民の税金だ。所得税は平均して40〜45%と高額だが、その分学費や医療に還元されており、同世代の若者は将来に対して日本ほど不安を感じていないと感じる。
消費税しか支払っていない外国人の私にも、自国の日本より安く、素晴らしい学びを提供してくれるこの国の発展に、貢献したいと思うようになった。005.jpg

 外国人から見れば、日本は「生活コストが安くて、親切な国」。しかし「日本に移住したいですか?」と聞けば、話はまったく変わってくるのではないだろうか。私はベルギーに留学中だが、ベルギーにこのまま住み続けることも視野に入れはじめている。その理由は、ベルギーに住んでいると、「移民と共に新しい社会を作っていく姿勢」を強く感じるからだ。一方で、日本に暮らす外国人たちは、日本をどうみているのだろうか。日本に住む友人たちに取材してみると、悩みながらも日本で生活する彼らの苦悩が浮き彫りになった。「英語も通じないし、外国人への理解も少ない。日本を魅力的な移住先にするにはさらなる努力が必要だ」3年に1回のビザの更新手続きの際には、専門用語ばかりの膨大な紙の書類に今でも悩まされている。少しでも遅延があると、ビザは「ダウングレード」されてしまうという。数年前、手続きのトラブルがあり結果的に期間が短縮され、9カ月間になってしまったことがあった。「私が日本に来た2006年から、世界は大きく変わりました。例えば最近のパキスタンの優秀な若者は、自国でドルを稼ぎ、王様のような生活をしています。日本は欧米など、英語が通じ、移民しやすい他の選択肢と比較すると永住権をとりにくく、移民への理解も少ない。魅力的な移住先にはなりにくいでしょう」硬くないに日本の法制度に従って厳格に審査し続けることが必要なのでしょうか。日本を理解して日本い住み続けたい人たちに柔軟に門戸を開くことを考える必要がないのでしょうか。日本は「父母両系血統主義」を採用しているので、日本で生まれ育った3人の娘はいまだに日本国籍を持つことはできていない。ビザを「ダウングレード」された時の不安はとても大きかったといい、日本以外に住む道も探し始めている。なぜ受け入れる政策を行わないのでしょうか。公用語も3つあり、フランデレン地域ではオランダ語が、ワロン地域ではフランス語が、東部地域ではドイツ語が主要な言語として使用されている。首都であるブリュッセルは国際的な都市であり、フランス語とオランダ語が並立して使用され、英語も広く使われる。多言語のコミュニケーションは一般的であり、多くの人々が複数の言語を話し、必要に応じて言語を切り替えてコミュニケーションする。私が住んでいるワロン地域のアジア人は非常に少ないが、じろじろ見られることや、フランス語が話せなくて差別を受けることはない。「みんな違っていて当たり前」という精神が、文化に根付いている気がする。多言語のコミュニケーションができるかどうかというのは確かに大きな問題だと思います。しかしそれだけではないでしょう。「みんな違っていて当たり前」という精神が、文化に根付いていることが大きいでしょう。EU市民やアフリカなど一部の途上国出身だと、たった800ユーロ(約12万円)。選考費用や入学金はない。ちなみに東京大学の大学院の学費は、入学金をいれて81万7800円かかる。当然、補っているものはベルギー国民の税金だ。所得税は平均して40〜45%と高額だが、その分学費や医療に還元されており、同世代の若者は将来に対して日本ほど不安を感じていないと感じる。法制度、税金、政策などを見直して国民はもちろんですが、海外からの移住者も住み易い社会を構築することを考えるべきでしょう。001.jpg
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