BBCNews2021年5月15日付け「なぜ日本政府は東京五輪を中止しないのか 事態は簡単ではなく」から、東京オリンピック・パラリンピックの中止について、政府からの発言はない。医療関係者も世論も、大多数は予定通りの開催に反対しているのだが。最近の国内世論調査では、70%近い人が、7月23日からの予定通りの開催を望んでいない。しかし、国際オリンピック委員会(IOC)は依然として、大会は実施すると強い姿勢を堅持している。IOCと開催都市・東京都の契約(日本語版はこちら)は、明確だ。開催契約を解除し、開催を中止する権利はIOCのみにある。開催都市側に、その規定はない。なぜかというと、オリンピック大会はIOCの「独占的財産」だからだと、国際スポーツ法を専門とするアレクサンドル・ミゲル・メストレ弁護士は、BBCに説明した。オリンピックの「所有者」として、開催契約を解除できるのはIOCなのだという。 契約解除、つまり開催中止の正当な事由としては、戦争や内乱などのほか、「IOCがその単独の裁量で、本大会参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合」という項目が記載されている。パンデミックはこの、深刻な脅威に相当するのではないかという主張もあり得る。「この開催都市契約の様々な取り決めのもと、もし日本が一方的に契約を解除する場合、それによるリスクや損失はもっぱら地元の組織委員会のものとなる」と、豪メルボルン大学のジャック・アンダーソン教授(スポーツ法)はBBCに話した。「オリンピックは最大のスポーツイベントで、日本とIOCにとっては放送権とスポンサーシップという意味で数十億ドル規模がかかっている。巨大イベントなだけに、全ての当事者に巨大な契約上の義務が伴う」 「もしも東京五輪が中止になるなら、こうした大会に関わる保険金支払いの案件として、おそらく過去最大規模のものになるはずだ。紛れもなく」と、アンダーソン教授は言う。
保険金は大会主催者側の経費実費は補償する。しかし、五輪開催を期待して日本国内で行われた数々な関連投資はほとんど補償されない。たとえば、海外から観客が押し寄せると期待して各地のホテルやレストランが投資した改修費などは、取り戻せない。究極的に、大会を実施すべきかどうかの議論は、実際に実施されるかどうかとは別の話になる。近代五輪の歴史で、オリンピックが中止されたのは過去3回のみ。1916年と1940年と1944年の大会中止はいずれも、世界大戦がその理由だった。それだけに、どれだけ逆風が高まろうとも、IOCが中止を検討さえしようとしない姿勢から、五輪に詳しい人の多くは東京大会は予定通り7月23日に始まるだろうと見ている。それがどういう形での開催になるのかは、まだ不透明だ。
フジテレビ2021年5月15日付け「東京五輪開催は「自殺行為」 楽天グループ・三木谷氏」から、CNNのインタビューで、三木谷氏は、東京オリンピック開催について、「リスクが高すぎる。反対だ」と述べたうえで、「正直言って自殺行為のようだ」と指摘した。大会開催をめぐっては、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長も、アメリカメディアの取材に、「非常に恐れている」と答えている。
日刊ゲンダイ2021年5月15日付け「都医師会長の五輪開催基準「感染1日100人以下」は“蜜月”小池知事への返上アシスト」から、京都医師会の尾崎治夫会長が厳しい目標に言及し始めた。尾崎氏が「100人以下」を打ち出したのは11日の定例会見。開催中の海外メディア、スポンサーゲストらの感染対策について「今のところ、まったく情報がない」と問題視し、「オリンピック関係者だけ、しっかり対策を練れば大丈夫だという政府関係者は間違っている」と批判した。元日弁連会長の宇都宮健児氏が呼びかけた五輪中止を求めるオンライン署名は約35万筆に達し、茨城県の大井川知事に続き、千葉県の熊谷知事も五輪選手の専用病床の確保要請を拒否する方針だ。派遣国からの「選手の安全面への懸念」を理由にした事前合宿のキャンセルも相次いでいる。
日刊ゲンダイ2021年5月15日付け「五輪選手らを選手村と会場に“閉じ込める”政府案の浅はかさ 長野五輪では深夜まで街でドンチャン騒ぎ」から、深夜まで繁華街が外国人で溢れた長野五輪。そもそも突然浮上してきた監視員とは、一体どんな権限を持ち、その指示にはどこまで強制力があるのか。従わない選手は即、参加資格を剥奪されてしまうのか。分からないことだらけ。またぞろ、監視員業務を請け負うかもしれない人材派遣会社へ巨額予算を流すための“仕掛け”ではないか……と、うがった見方が出てきても不思議ではないだろう。政府や五輪組織委などが策定した規則では、選手やコーチらは選手村と競技会場、練習会場などに行動範囲を制限する――としているが、日本人のように「ハイ分かりました」とおとなしく従う国民ばかりではない。
AERA2021年5月15日付け「錦織圭、楽天の三木谷会長…五輪開催に疑問を呈する著名人が続々 菅政権「想定外の誤算」」から、世界各国のメディアに大々的に報じられたのは、プロテニスプレイヤー・錦織圭の発言だった。記者会見で東京五輪について質問されると、「出ないという選択肢は、なかなか難しいです」とアスリートとして出場を望む気持ちがあるとコメント。一方で、「死人が出てまでも行われることではないと思うので。究極的には1人もコロナの患者が出ない時にやるべきかなとは思います」とコロナの収束が見えない状況で五輪が開催されることに疑問を呈した。「五輪への出場が有力視される選手たちが開催に懐疑的な見方を示すと菅政権は思ってもいなかった。ただ、錦織選手の一連の発言は正直な気持ちで共感したアスリートも多いと思います。アスリートたちは国民に応援されることが大きなモチベーションになり、心の支えになる。その前提が崩れて開催に反対の声が高まると、出場に複雑な思いを抱くのは当然でしょう」(政治部記者)SNSやネット上では錦織を称賛するコメントが目立つ。「普通なら黙っているのも騒ぎを広めないためにはいいかもしれないが、今回は選手も一般の日本人も命の問題になる。黙るよりは、意見を言うことも歓迎すべき段階。意見が出てこないと、判断できない。錦織選手の勇気に感謝」「これは錦織さんの勇気ある発言。議論しないままのオリンピックは政府以外の誰も望んでない。錦織さんみたいに思っていても声にできないアスリートは沢山いると思う。そうゆう声を拾い上げるのが政治家じゃないの?」
日刊ゲンダイ2021年5月15日付け「インド株の市中感染を初確認!7月に全国蔓延で五輪もはや絶望」から、第4波の主体となった英国株は全国で9割を占めるまでになったが、それを上回る威力が懸念されるインド株の市中感染も初確認。感染スピードは英国株の1.6倍との指摘もあり、収束へ向けた出口は全く見えない。16日から9都道府県が宣言下、重点措置も10県に拡大する。14日の会見で菅首相は「新規感染者数は大阪では減少に転じてます」とか言っていたが、変異ウイルスを甘く見過ぎているのではないか。英国株が従来株と置き換わる一方、二重変異ウイルスのインド株も流行の兆しを見せている。ベルギーのルーベン・カトリック大教授のトム・ウェンセラーズ氏(生物学)はSNSなどで「英国株の感染スピードは従来株の1.5倍、インド株は英国株の1.6倍」と指摘。国際的なウイルス遺伝子データベース「GISAID」の情報を基に推定したという。英国株が国内で初めて確認され、全国的な蔓延まで要した期間は約140日。インド株の初確認は先月26日ごろで、英国株の1.6倍速で感染を広げるとすれば90日足らずになる計算で7月中旬には国内で主流になる。東京五輪開催はどう考えても絶望的である。
東スポ2021年5月22日付け「舛添要一氏が五輪費用不足時の対応について指摘「最後は国民が税金で補填することになっている」」から、21日の定例会見で、小池百合子東京都知事は、東京五輪・パラリンピックの費用について「想定外の事象が生じた場合は、改めてIOCや政府、大会組織委員会を含めて協議が必要になると理解している」と述べた。五輪大会招致時の立候補ファイルでは、IOCが資金不足となった際は都が負担し、最終的には国が負担すると記載されている。舛添氏は「東京五輪の費用、組織委が支払えないときは、東京都が、それでも足りないときは日本国が出す。これが契約内容だ。いずれにしても、最後は国民が税金で補填することになっている」とツイート。
日刊ゲンダイ2021年5月26日付け「東京五輪の来賓セレブ「おもてなし」に43億円も!巨額ムダ出費に批判噴出」から、大会関係者からも「簡略化すべき」と声が上がるが、その理由はカネの使途がヒドすぎるからだ。24日付のアエラドットによると、「空港に要人が来た時のVIPルーム」や「赤じゅうたんを敷く」ことなどに使われるというから、あまりにもバカバカしい。このコロナ禍に赤じゅうたんまで敷く必要があるのか。超豪華な「おもてなし」を受けるのは各国首脳だけじゃない。“ぼったくり男爵”こと、バッハ会長が君臨するIOC(国際オリンピック委員会)もスゴい接遇を受ける。立候補ファイルによると、大会期間中、東京都はIOC関係者用に「ANAインターコンチネンタル」「グランドハイアット東京」など一流ホテルの部屋を提供する。IOC関係者は格安で利用できるという。 「1泊100万円を超えるような部屋でも、IOC委員や関係者は数万円の負担で宿泊可能と伝えられている。差額は大会組織委員会が負担することになっているようです」(大会関係者)コロナ禍のさなか、国民や都民は、菅首相や小池知事から「外食するな」「酒を飲むな」「夜は電気を消せ」と徹底的に自粛しろと迫られている。収入が激減したのに協力金を受け取れない業者もいる。なのに、セレブへの「おもてなし」に巨額のカネを突っ込むのは、おかしいのではないか。他に手当てすべきことがあるはずだ。「今回のような無駄遣いは、コロナ禍だからこそ問題視され、あぶり出されたのです。コロナがなければ、数十億円もの接待費は粛々と使われていたことでしょう。当然ながら、優先すべきはVIP接待ではなく、コロナ対策。無駄な事業に浪費することは許されません」
現代ビジネス2021年5月27日付け「東京五輪、「疑惑をかけられた偉い人」が全員“逃げ続けている”日本のメチャクチャさ」から、国立競技場近くの住民を取材したのはもう5年以上前だ。今では、マンションの前に、超巨大な新しい競技場がそびえ立っている。それは、47都道府県すべての木材を軒や庇(ひさし)に使用していると自信満々に「杜のスタジアム」などと打ち出している。しかし同時に、マレーシアやインドネシアの熱帯林を伐採した合板が型枠に使用されている。こんな事実も語られない。かつて、国立競技場の隣にあった明治公園や霞ヶ丘アパートは取り壊された。追い出された霞ヶ丘アパート住民が東京都へ提出した要望書には、「私たちは移転の可否について、都から一度も相談を受けていません。住民の気持ちを顧みない東京都の手続きからは、私たちがひとりの『人として』尊重されていると感じることはできません」今年2月、森喜朗大会組織委員会会長の女性蔑視発言が問題視され、たちまち辞任に追い込まれた後、五輪招致時の中心人物がこれで全員いなくなりましたねと、4人横並びの写真が注目された。その4人とは、竹田恒和、猪瀬直樹、安倍晋三、森喜朗である。この4人の共通項もまた「偉い人ほどすぐ逃げる」だった。それぞれの逃げ方をおさらいしておきたい。
AERA2021年5月28日付け「「本気で東京五輪を開催する気?」欧米で疑問報道が相次ぐ」から、「USOPCは立場上、五輪を中止にするとは言えないでしょう。常識的に考えれば、渡航中止の勧告が出ている国で2カ月後に五輪を開催するなど考えられない。政府も後に引けない状況で、答弁が苦しくなっている」米国では大手メディアが次々、五輪開催に異を唱えている。ワシントン・ポスト(電子版)も5日のコラムで、日本政府に対し東京五輪を中止するよう促している。コラムでは。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長を「ぼったくり男爵」と痛烈批判。五輪開催の目的は「カネ」と断じ、日本は「五輪中止で損切り」をすべき」と訴えた。また、ロサンゼルス・タイムズ電子版も18日、今夏の東京オリンピックについて「中止しなければならない」とする記事を掲載した。菅義偉首相は4月20日の衆院本会議で、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして(東京五輪を)実現する決意に何ら変わりはない」と述べたが、打ち勝ったと証明できないのが現状だ。十分な説明責任を果たさず国民が不安を抱いたまま、このまま五輪開催に突き進んでよいのだろうか。
現代ビジネス2021年5月28日付け「世界的知性が続々苦言「なぜ日本人は、東京五輪を中止できないのか」」から、コロナ抑え込みに失敗し、ワクチンが遅々として行き渡らない日本。国民も世界の人々も、このまま五輪なんて到底ムリだと言っている。それなのになぜ、権力者たちは暴走を止めようとしないのか。「ドイツをはじめとした欧米各国では、国民の半数近くがコロナワクチンの接種を1度は受けています。接種が完了した人には外出制限を緩めたり、マスクを外しても構わないという動きも出ている。しかし翻って日本は、ワクチンに関して信じがたいほど遅れをとっています。きわめて困難な状況に陥っているにもかかわらず、東京五輪を強行しようとしているのは、日本人の高いプライドのなせる業なのでしょうか」「日本政府のワクチン政策は、大失敗と言わざるを得ません。世界ですでに何百万、何千万人が接種を済ませているワクチンの認可に何ヵ月も手間取った。迅速で効果的な接種プログラムを作ることも実行することもできなかった。これらの事実は、すでに日本の国際的な評判に大ダメージを与えています」米有力紙ワシントン・ポストは5月5日、「なぜ日本は、これほどワクチン接種で大失敗を喫しているのか」との記事を掲載し、こう評した。
〈世界最高の物流能力で名高い日本が、富裕国クラブであるOECD加盟37ヵ国の中でぶっちぎりの最下位を走っている〉〈日本は根本的に変われるか否かの瀬戸際にいるのだ〉
いまや世界中が、日本が「コロナ敗戦」を喫しつつあることに驚き、失望し、そして懸念を表明している。それはほかでもない、開会式まで残り2ヵ月を切った東京五輪を、開催するか否か――その決断の時が、ついに迫っているからだ。本誌は、冒頭で紹介したガブリエル氏をはじめ、世界的知性と呼ばれる海外の研究者やノーベル賞受賞者、さらにジャーナリスト、スポーツ関係者や医療従事者に日本のコロナ対策の現状をどう評するか、そして東京五輪の開催可否をどう見るかについて訊いた。 すると誰もが、口を揃えて「東京五輪開催はありえない」と語った。「日本のワクチン接種の異常な遅れは、とても先進国とは思えないレベルです」 こう断じるのは、ハーバード大学教授で世界的心理学者のスティーブン・ピンカー氏だ。しかし日本の現状を見ていると、とてもそんなことが言える状況ではない。
五輪という一大イベントが待ち受けていることを知っていながら、なぜ日本人はこれほど後手に回ってしまったのでしょうか。日本政府は本当に真剣に取り組んでいるのか。 菅総理は何度も『責任は私がとる』『心からお詫びする』と言っていますが、結果が伴っていないのだから、それも空虚な言葉です。(菅総理は)無能と言われても仕方がないでしょう」 さらにノーベル経済学賞受賞者で、ニューヨーク市立大学教授のポール・クルーグマン氏もこう指摘する。「日本政府もIOCも、どんな犠牲を払うことになっても、断固として東京五輪を開催しようと考えているようです。しかし開催するとなれば、たとえ無観客であっても、9万人もの選手や大会スタッフ、メディア関係者が日本にやってきます。その中に感染者が一人もいないはずがありません。変異ウイルスも猛威を振るっている中、いくら検査を徹底しても100%の安全はあり得ない。もし大会期間中に感染拡大が起きてしまえば、日本人のみならず世界中の人から『それ見たことか』と言われるでしょう。国家の威信を地に落としかねない危険なバクチを、日本がなぜここまでして続けようとするのか。私には理解不能です」日本政府、そして五輪を取り仕切るIOCの首脳たちは決して「中止」を口にしようとはしない。その最たる理由が「大損をするから」だ。5月11日、米最大手紙のニューヨーク・タイムズに「五輪を中止せよ」と題する歯に衣着せぬ論考が掲載され、世界中で話題となった。〈科学的思考にもとづいて、この危険な茶番を止める時が来た。東京五輪は中止すべきだ〉〈だがそれでも、五輪という暴走機関車は止まらない。三つの大きな理由は、カネ、カネ、そしてカネだ〉全87ヵ条にも及ぶ契約書を読むと、重要事項は軒並み「開催都市や開催国の組織委員会が、IOCに対して義務を果たす」という形式になっている。たとえば、第1条には「IOCは、本契約にて、開催都市およびNOC(開催国の五輪委員会)に、本大会の計画、組織、資金調達および運営を委任し、開催都市およびNOCは、オリンピック憲章および本契約の規定を遵守してその義務を履行することを約束する」と書かれている。 その一方で、第41条には「(五輪に関する)あらゆる種類および性質の権利、権原、利権が、全世界を通じて永久にIOCの独占的な財産であること」も定められている。要するにこれは、IOCが絶対的な権限を振るい、開催国や開催都市に過大な負担を強いる「不平等条約」なのだ。中でも前出のクルーグマン氏が注目するのが、医療に関する条文である。「第24条では、『開催都市は大会中、関係者に発生したあらゆる症状について、無料で医療サービスを提供する義務がある』という旨が記されています。コロナ禍の中でこの要求を満たそうとすれば、日本は莫大な数の医療従事者を動員しなければなりません。ただでさえ日本の病床は逼迫していると聞きますが、IOCのこんな無茶苦茶な要求を受け入れるキャパシティが残っているのでしょうか。これほど一方的な契約は見たことがありません」もし日本側がこれらの契約を破る―つまり五輪を中止すれば、IOCは開催都市、すなわち東京都に「違約金を支払え」と迫るのではないか、とも囁かれる。五輪が中止となれば東京都、ひいては日本がカネの埋め合わせをさせられるわけだ。ここで問題になってくるのが、五輪の莫大なテレビ放映権料である。実は4年間で6000億円を超えるIOCの収入のうち、およそ3分の1がアメリカ三大テレビネットワークの一角、NBCが支払う放映権料で賄われている。全米の五輪中継を独占するNBCは、人気競技の開始時刻をアメリカのゴールデンタイムに変更させたり、開会式の選手行進の順番を変えさせたりするほどの影響力を誇る。詳細は非公開だが、全世界からの放映権料を合わせれば、IOCは収入の7割超、約4500億円をテレビ業界から得ていると推定される。IOCにとって、この金ヅルを失うことは破滅を意味する。東京五輪の情勢をウォッチし続けている、ドイツ最大手紙「南ドイツ新聞」のトーマス・ハーン東京特派員が言う。「IOCの幹部や日本政府の首脳が、日本国民や世界の一般市民からみて常識外れとしか思えない言動を続けているのは、ひとえに、この放映権料を失うと大変な事態になるからなのです」すでに五輪のために1兆6400億円を費やしているのに、さらに数千億円の賠償金まで背負わされれば、日本国民の怒りは爆発するだろう。「ワシントン・ポスト紙はコラムでバッハ会長のことを『ぼったくり男爵』とあだ名し、ちょっとした流行語になっています。彼が選手ファーストでも、開催国ファーストでもなく、おカネファーストでものを考えているのは明らか。巨大なリスクを負って開催すれば、日本は感染拡大に怯えなければならず、国際的な批判にもさらされる。中止したいと申し出れば、巨額の賠償金を払わされる。どう転んでも得をするのはIOC、損をするのは日本です」(前出・クルーグマン氏) 日本人はいま、究極の選択を迫られている。東京五輪を強行して、もし大規模なクラスターが発生したり、あるいは「東京株」とでも言うべき変異株が生まれてしまったら、東京五輪は日本の汚点になる。「こうなることはわかっていたのに、なぜやったのだ」と、全世界から批判が殺到することは避けられない。一方で中止に踏み切れば、日本はただでさえコロナ対策で身の丈に合わない支出を垂れ流しているのに、さらに大きな金銭的負担を背負わされるかもしれない。どちらを選んでも、待ち受けるのは茨の道だ。だがそれでも、カネは人命には代えられない。米名門医科大学のジョンズ・ホプキンス大学で准教授を務める、疫学者のデイヴィッド・ダウディー氏が言う。中止した場合に、失われるのはカネだけだ。出場するアスリートにとって、4年に一度の晴れ舞台を逸することは悔やんでも悔やみ切れないだろう。しかし、人命とカネを天秤にかけて後者を取れば、IOCの「ぼったくり男爵」たちと同じになってしまう。テニスの錦織圭選手も、(五輪は)『死人が出てまで行われることではない』と発言していて、私は共感しました。
現代ビジネス2021年5月28日付け「東京五輪、偉い人が誰も「やめよう」と言い出せない「無責任すぎる構造」」から、選手に対しては1日2回のPCR検査を行うということだが、そもそも検査リソースや医療体制が確保されているのかもわからない。選手村でクラスタ−が発生したらどうなるのか。ボランティアが感染したらどうなるのか。そういった対策すら立てられているようには思えない。観客を入れるのか無観客なのかさえも、開催まで2ヶ月の現在において、いまだ定かではない。高齢者のワクチン接種は、自治体から悲鳴が上がる中、政府は「とにかく7月末までに終わらせろ」という大号令だけをかけている。櫛の歯が欠けたように選手が辞退し、クラスタ−発生により選手村で欠場者が出て、対応に追われる。そして、そのために医療リソースが大量に動員される。そんなことになってしまえば、「開かれなかった」フェスティバルよりも、よほど罪深い。オリンピックが開かれないことは問題ではない。問題は、どうやら開かれてしまいそうだ、ということである。
スポニチ2021年5月29日付け「IOC 五輪選手らに“コロナで死亡は自己責任”同意書義務付け、唐突ぶりに不満噴出」から、国際オリンピック委員会(IOC)が東京五輪の参加選手らに対し、新型コロナウイルスや猛暑による「健康被害」のリスクは自己責任とする同意書の提出を義務付けていることが28日、分かった。同意書は五輪憲章や反ドーピングなどのルール順守を署名付きで誓約させる書類。東京五輪については(1)コロナやその他の感染症、猛暑により健康被害や死亡に至る可能性がある(2)リスクを軽減する具体的な対策を取る、などに同意を求めた。IOCのハダッド最高執行責任者は改訂の事実を明かし「どの政府も保健当局も感染症について保証はできない。我々全員が負うべきリスク」と自己責任を強調した。
スポーチ報知2021年5月29日付け「五輪パラ選手村で酒類持ち込みが可能と判明「選手同士の交流の場」規制せず」から、新型コロナ下での実施を目指す今夏の東京五輪・パラリンピック大会で、滞在中の選手らに徹底した感染防止対策と、厳しい行動管理が課される東京・中央区晴海の「選手村」に、アルコール類の持ち込みが禁止されていないことが28日、判明した。テロ防止の観点などから酒類を禁止した12年ロンドン大会などの例もあり、ルールは大会ごとに異なるが、今大会はコロナ禍という非常事態。外出禁止などの厳しい行動管理が敷かれ、違反者は資格剥奪(はくだつ)など厳罰が下される見込み。選手村への入村は出場する競技開始5日前からで、競技終了後2日後までに退去。入国から出国までバブル方式で選手を守る措置が講じられる。「村内で飲酒するには出発前に荷物に詰め、自国から持ち込む以外に方法はない」という。一定の距離も守らなければならない中、物理的な距離がさらに縮まりかねない。コンドームも今大会は15万個が用意された。担当者は「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染予防の啓発活動を目的に置くもので、村内で使うためのものではない。母国に持ち帰り啓発をしていただくためのもの」と強調した。
NEWSポストセブン2021年6月1日付け「舛添要一氏「五輪中止唱えるのがタブーな状況を作ったのは安倍さん」」から、五輪開幕まで2か月を切り、菅義偉・首相の苦渋の表情が目に付く一方で、存在感を示しているのが安倍晋三・前首相だ。月刊誌『Hanada』7月号のインタビューで、ポスト菅について“子飼い”とも言える4人の名前を挙げ、政権への影響力を誇示した。
しかし安倍氏は、「桜を見る会」の検察捜査こそ乗り切ったものの、東京五輪の1年延期、選挙買収事件の河井克行・案里夫妻に対する1億5000万円提供疑惑など、問題は山積。森友問題に端を発した赤木ファイル問題は安倍氏が原因をつくった。菅首相が迷走を続けているのは、そうした安倍政権の「負の遺産」に足を取られて身動きできないという面が大きい。
そもそも五輪の開催が危ぶまれている原因は、安倍氏にある。安倍氏は昨年3月24日、国際オリンピック委員会のバッハ会長に「1年延期」を伝える直前、組織委員会会長だった森喜朗・元首相と首相官邸で会談した。森氏が朝日新聞(昨年4月2日付)でこんなやりとりを明かしている。 森氏「2年に(延期)しておいた方がいいのではないですか」 安倍氏「ワクチンの開発はできる。日本の技術は落ちていない。大丈夫」 “オレの任期中に五輪をやる。次の総理の晴れ舞台にはさせない”──という安倍氏の思いが透けて見えるやり取りだが、安倍氏はその半年後に退陣し、国産ワクチンも、国産治療薬も未だできていない。菅首相は前任者の「延期は1年まで」に縛られることになった。
さらに安倍氏は菅続投支持を表明したBS番組で五輪について「オールジャパンで対応すれば何とか開催できる」と“五輪開催が支持の条件”であることを匂わせ、菅首相に“予定通りやれ”と念押しした。五輪準備に携わってきた舛添要一・前東京都知事が指摘する。 「安倍さんは1年延期を決めるにあたって『完全な形で実施する』と言った。現実は海外からの訪日客は入れないし、国内の入場者も減らすことが検討されている。完全な形で開催できないのだから、菅さんはそれを理由に五輪を中止するのが正当な判断だと思う。
私は昨年まで、ワクチン接種がうまくいけば是非五輪を開催してほしいと思っていましたが、今のこの状況では開催を強行すべきではない。しかし、五輪中止を唱えることがタブーとする状況を安倍さんがつくってしまった。このコロナ禍で開催を強行するならその一番の責任は安倍さんにあります」
誰かが決断しなければ──その日は着実に近付いているのだ。
ABEMA TIMES2021年6月3日付け「「五輪開催に伴って国内の感染あるいは医療に必ず何らかの影響を及ぼす」「政府に言ってもIOCに届かなければ意味がない」 分科会・尾身会長」から、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は3日の参議院・厚生労働委員会で、感染拡大下での開催が懸念されている東京オリンピック・パラリンピックについて、「開催すれば国内の感染あるいは医療の状況に必ず何らかの影響を起こす」との見方を示した。
「国内の流行対策と東京オリ・パラ開催の影響の両方を議論する場がない。厚生労働省アドバイザリーボードで国内の感染、分科会でオリ・パラと国内外への感染の発生についてリスク評価を行うことが妥当と考えられる」ことへの考えを問われた尾身会長は、「アドバイザリーボードあるいは分科会でオリンピックを開くかどうかを我々が判断する立場にもないし、権限もない」とした上で、「この一年以上ずっと国内の感染について政府にアドバイスをする立場できている。オリンピックを開催すれば、それに伴って国内の感染あるいは医療の状況に必ず何らかの影響を及ぼす。こうした役割を担ってきた専門家としては、仮にオリンピック開催を決定した場合には、感染のリスクや医療ひっ迫への影響について評価するのは我々の責任だと思っている」と述べた。
一方で、分科会としての意見には限界もあるとし、「政府に言ってもIOCに届かなければ意味がないということで、どこに我々の考えを述べたらいいのかというのは検討している」「オリンピック開催に伴う人々の流れが起きる可能性は極めて高いので、成功させるためにはオリンピック委員会の方にも最大限の努力をしてもらう。それが開催する人の責任だと思う。本来パンデミックの中で開催することは普通でない、それをやろうとするのであればかなり厳しい責任をオリンピック委員会も政府も負わないと、一般の市民はついてこないのではないか」とした。
日刊ゲンダイ2021年6月3日付け「五輪開催「普通はない」発言は尾身流の危機管理…分科会“再反乱”に慌てる菅首相」から、政府分科会の“反乱”再びか――。
何が何でも東京五輪開催で突っ走る菅首相が、新型コロナ対策における自らのアドバイザー集団の切り捨てに走っている。1日の参院厚労委員会で野党から五輪開催の可否について分科会に諮問すべきとただされると、菅首相は「東京都と大会組織委員会などとの調整会議に感染症の専門家2人が参加し意見を伺っている」と答弁。分科会に諮問せず、“外す”考えを示唆したのだ。先月14日に、やりたくなかった緊急事態宣言の地域拡大を押し切られたことが、よほど腹に据えかねたのか。
「このパンデミックで普通は開催はない」
しかし、分科会の尾身会長はすぐに反撃に出た。2日、参考人として呼ばれた参院内閣委員会や参院厚労委で持論を大展開。
東京五輪について「今の状況で普通は(開催は)ない。このパンデミックで」と言い放ち、「そういう状況でやるなら、主催者の責任として開催規模をできるだけ小さくして、管理体制を強化するのが義務だ」と苦言を呈した。さらには「そもそも五輪を、こういう状況の中で何のためにやるのか。それがないと一般の人は協力しようとしない」「(専門家としての評価を)何らかの形で伝えるのがプロフェッショナルの責務だ」とまで言ってのけた。
この発言が報じられると、ツイッターで「尾身会長」がトレンド入り。<1万回いいねを押したい。まさに専門家の鏡たる発言><専門家は100人中100人がそう言っていたが、尾身までもが><尾身さん、責任問題になった時のために備えているようだな>などのコメントで一時沸いた。
一部報道によれば、分科会の有志が、五輪開催のリスク評価をまとめた上で公表することを検討しているという。分科会メンバーのうち、感染症や経済の専門家の多くは、「ステージ4での開催は困難」との意見で一致。ステージ3でも、期間中か終了後に感染拡大する恐れがあると評価し、開催するとしても無観客や規模縮小の工夫が必要との認識だという。まさに、参院での尾身発言と重なる。
世論のムード盛り上げを狙う菅首相とスポンサーの意向を最優先する大会組織委のことだから、「完全な形」に近い有観客を強行しかねない。分科会の専門家としては、警鐘を鳴らした形でメンツを立てたい思惑もあるのだろう。
「菅首相は五輪を止める気はなく、官邸も結論ありきで動いている。開催が縛られるようなことは聞きたくないので分科会に諮問しない。一方で尾身さんは、これまでは政府や厚労省に気を使ってきたものの、五輪についてはどうあがいても止められそうにないため、ならば学者としての筋を通した方が得策と考えたのでしょう。万が一、開催によって感染が拡大した時の責任回避という尾身さんなりの危機管理もある」(ジャーナリスト・山田惠資氏)
尾身氏の反撃に慌てた菅首相は2日夜、官邸ホールで報道陣のぶら下がり取材に応じ、この感染状況でも五輪を開催する意義について、こう答えた。 「五輪はまさに平和の祭典だ。一流のアスリートが東京に集まり、スポーツの力を世界に発信していく」 これで納得する一般の人がどれだけいるだろうか?
6割が「五輪中止」の世論は、菅首相より分科会にエールを送るだろう。それでも菅首相は自爆するのか。
中日スポーツ2021年6月5日付け「東国原英夫さん尾身会長を心配「政府は、今、何かスキャンダルを血眼になって探しているのでは無いか」」から、前宮崎県知事でタレントの東国原英夫さん(63)が5日、東京五輪の開催に伴う感染リスクを訴え続ける政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長(71)について、自身のツイッターで「尾身会長は覚悟したな。もう御用学者とは言わせない覚悟」と解説した。
東国原さんは「分科会の尾身会長。政府に諮問されなくても独自の見解を示すらしい」とした上で「専門化としての最後の矜持。何なら職を辞す覚悟。政府は尾身会長のことをオリパラは所管外であると疎ましく思っているのでは無いか」と分析した。
さらに東国原さんは「政府は、今、尾身会長の何かスキャンダルを血眼になって探っているのでは無いか。あそこの世界はそういう世界である」と自らの政治体験を踏まえ、尾身会長への影響を心配した。
デイリー2021年6月5日付け「尾身氏の五輪警告を批判する「政府高官・自民幹部」誰? ネット「国民の前で言え」」から、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、国会答弁で、東京五輪・パラリンピックについて「今の状況で(大会開催を)やるのは普通はない」「何のために開催するのか」と、開催リスクや危険性を警告したことに、「政府高官」や「自民幹部」が不快感を示したと伝える報道が続いている。
政府高官が「尾身氏は判断する立場にはない」、自民幹部が「言葉過ぎる」「やると言っている」となどと発言したと報じられているが、やたらと匿名が目立つ。
ネット上には「自民幹部って誰?一体何様?」「自民幹部が誰なのか教えてほしい」「自民党幹部や政府高官というのは誰?氏名を公開しなさい」と指摘する投稿が相次いでいる。
「尾身会長さんへ不満があるのなら表に出てきて国民の前で話すべき」「国民の前で堂々と非難して欲しい」「国民の前で堂々と言え!」と求めている。
田村憲久厚生労働相は、尾身氏が近く出すとしている五輪開催による感染状況への影響や対策などに関する独自提言に対して「自主的な研究成果の発表だと受け止める」と述べている。
東スポ2021年6月5日付け「【東京五輪】開催強行なら大規模なサイバーテロの恐れ 英メディアが警鐘報道」から、今夏の東京五輪が強行されれば大規模なサイバーテロに見舞われそうだ。
富士通の情報共有ツールに外部から不正アクセスがあり外務省や国土交通省などの個人情報が流出した問題で、東京五輪・パラリンピック組織委員会の個人情報も漏れていたことが判明。富士通側は丸川珠代五輪相に対して経緯を説明したうえで謝罪した。
今回新たに流出が確認されたのは、内閣官房の内閣サイバーセキュリティセンターが東京五輪開催中のサイバー攻撃に備えて実施した情報共有訓練の参加者の所属先や役職、名前などとみられる。
これまでも五輪などの国際大会はサイバーテロの標的となってきたが、今回の東京五輪は新型コロナ禍で運営に混乱が生じている中、非常に深刻な危険が迫っている。
英メディア「サイバースクープ」は「国家にリンクしたハッカーが繰り返しスポーツイベントに関心を示しているため、サイバーセキュリティー対策は五輪主催者にとって必須のものになっている」と指摘したうえで、調査会社フォレスターのメリット・マキシム副社長による警告を報じた。
「今回の最新の事件は憂慮すべきことだ。大規模なスポーツイベントを保護するために、継続的なサイバー警戒が必要である」とマキシム氏。そして「スパイ、そしてサイバーの脅威がある。ランサムウェア(コンピューターウイルスの一種)の犯罪者が、オリンピックに関与する組織や関係者に対して恐喝する機が熟していると見なしている可能性がある」と五輪関係者を標的にした大規模なサイバーテロが起きる可能性が高いと強く警鐘を鳴らした。
新型コロナ禍が深刻化する中で多くの国民の生命を危険にさらそうとしている東京五輪。このまま強行すれば、命だけでなく様々な面で甚大な被害が出てしまいそうだ。
日刊ゲンダイ2021年6月8日付け「菅官邸が恐れる“コロナ対策の顔”尾身会長の「辞任爆弾」 五輪強行で深まる対立」から、先週来、五輪開催を強行する政府の姿勢に強い言葉で警告を発し続けている新型コロナ対策分科会の尾身茂会長。官邸側は尾身氏の“暴発”を警戒しているという。
7日の参院決算委でも菅政権による“尾身外し”が見られた。野党から「五輪開催について尾身氏に諮問しないのか」と聞かれると、西村コロナ担当相は「分科会は五輪開催の可否などを審議する場所ではなく、そういう権限はない」と却下。続いて菅首相も「西村大臣が答弁したような形のさまざまな角度から相談している」と言うだけで、正式な諮問については否定的だった。尾身氏と菅官邸の対立は一段と深まっているように見える。
発端は、2日の衆院厚労委で尾身氏が「今の状況で(オリンピックを)やるのは、普通はない」と断言したことだ。「こういう状況の中で、いったい何のためにやるのか目的が明らかになっていない」と政府の説明不足を批判した。
3日の参院厚労委でも「五輪で人の流れが生まれる。スタジアム内の感染対策だけしても意味がない」と指摘。続く4日の衆院厚労委では、「緊急事態宣言の中での五輪なんていうことを絶対に避けるということ」と言い、「やるのなら強い覚悟でやってもらう必要がある」と厳しい言葉を投げかけた。菅を筆頭とする開催強行派にクギを刺したのだ。
週刊誌「AERA」の電子版は4日、政府関係者のこんな発言を報じた。
<「(菅首相は尾身氏に対し)『黙らせろ。専門家の立場を踏み越え勘違いしている。首相にでもなったつもりなんじゃないか』などと怒りを爆発させています。尾身会長を菅首相が最近、ひどく疎んじているのは間違いありません」>
これまで政府の方針を追認してお墨付きを与えてきた尾身氏が突然、反旗を翻したことが許せないのだろう。
尾身氏は五輪開催に伴うリスクなどについて、専門家としての提言を20日までに公表する意向を明らかにしているが、田村厚労相は「自主的な研究成果の発表」と切り捨てた。菅官邸の怒りに追随するかのように、政府や自民党内からは尾身氏に対する不満の声が上がる一方だ。今後、官邸と尾身氏の“バトル”はどうなるのか。
「もし、尾身さんから五輪開催について提言を出されても総理は相手にする気はありませんが、あまりに無視して怒らせ、暴走されても困る。これまで総理会見にも同席させてきた尾身会長は、いわば菅政権のコロナ対策の“顔”です。ケツをまくって辞められたら、科学者の意見を無視する首相というイメージが固まり、世論から見放されかねません」(官邸関係者)
実際、尾身氏が三くだり半を叩きつければ、世論は支持するはずだ。菅首相は完全に悪者となり、政権は持たない。それを尾身氏も分かっているから、強気の発言を繰り返すのかもしれない。
「最近の尾身会長の発言は、もしも五輪が中止になった場合に責任を取らされないためのアリバイづくりでしょう。ああ見えて意外と権力闘争にたけた人だから、予算獲得や権限拡大など、何か別の狙いがあって首相に揺さぶりをかけているのかもしれない。抗議の辞任なんて何のメリットもないことをする人ではないと信じたいですが……」(前出の官邸関係者)
尾身氏の本気度にも注目が集まっている。
ABEMA TIMES2021年6月8日付け「乙武洋匡氏「パラリンピックの開催について議論されないことに腹が立つ」」から、開会式まで50日を切る中、東京オリンピックの開催をめぐり、連日様々な議論が繰り広げられている。一方、8月には東京パラリンピックの開催も控えている。スポーツライターとしても活動してきた作家の乙武氏は「パラリンピックについて議題に上がってこないことに本当に腹が立っている」と話す。
西日本新聞2021年6月11日付け「5000人超も視野、政府が描く有観客シナリオ 高官「五輪危ないは感情論」から、開幕まで50日を切った東京五輪・パラリンピック。政府は、国内のスポーツイベントに準じる形を取ることで、あくまで有観客開催とするシナリオを描く。来週後半にも開く新型コロナウイルスの基本的対処方針分科会に、7月以降の国内イベントの観客上限数などを諮り、専門家の了承を得てそのまま東京大会にも適用したい考えだ。ただ、人の動きが活発化することによる感染再拡大のリスク対策は示されておらず、懸念の声も強い。
「プロ野球だって全国から人が集まる。五輪と一体、何が違うのか」。6月に入り、官邸関係者の間には国内のスポーツイベントと五輪を同列視する発言が急に目立つようになった。つまり、東京大会だけを縛るような特別な観客規制は必要ないことを意味する。
現在、プロ野球やJリーグなどの観客数は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域で「上限5千人か、収容定員の50%以内の少ない方」などとなっている。これらの規制は、宣言発出地域などでは6月20日などその期限まで、それ以外の地域は6月末までで切れる。
そこで、最近の全国的な新規感染者数の減少やワクチン接種の加速、宣言解除の方向性といった有利な材料を前提に、世論と専門家の理解を得ながら、東京大会期間中を含む7月以降の有観客規制を決めようというのが政府の戦略だ。ウイルス「第4波」が猛威を振るっていた時期には「五輪の無観客開催」に相当傾いた政府だが、現状は「5千人はいける。もっと入れることも検討中」(官邸筋)とのムードとされる。
ただ、専門家の間には、社会的注目度が極めて高い五輪・パラリンピックは、国内イベントとは全く異なる規模で人の流れの増加を生み、全国的な感染リバウンド(再拡大)につながりかねないとの危機感がある。
分科会の尾身茂会長は「さらに感染の機会が増加するということなので、本当にやるのであればかなり注意してやる必要がある」と政府に慎重判断を要請。五輪期間中は国民が移動する夏休みの真っ最中であり、西浦博京都大教授(感染症疫学)の推計によると、五輪の要素をなくしたケースでも8月前半には、東京都の感染状況が緊急事態宣言が必要な数値まで悪化してしまう結果も出たという。
東京大会について、首相は党首討論などで「国民の命と健康を守ることが開催の大前提」と繰り返し、政府高官は「観客上限も決まっていないのに、どのような根拠やデータを基に『危ない』と言えるのか。感情論にすぎない」と専門家をたしなめる。最終決断の時が近づく中、「(五輪の)雰囲気なんて勝手にできあがるもんなんですよ」(官邸筋)との声もある。
政府高官は「観客上限も決まっていないのに、どのような根拠やデータを基に『危ない』と言えるのか。感情論にすぎない」と専門家をたしなめる。政治家が医療専門家などをたしなめるということでいいのでしょうか。専門的な知見を伝えても政治的な判断で考慮されないということが大きな問題にならなければいいのですが、どうでしょうか。命・医療・健康、経済、オリンピック・パラリンピックを天秤にかけるのでしょうか。政府としては自分たちの政策を承認してもらうための分科会だったのかもしれませんが、予想外に異論を唱えるようになって困惑していることでしょう。疑問に思うのはどうして正々堂々と一堂に会して多くの国民が視聴する中で政権、与党、野党、オリンピック・パラリンピック関係者、分科会代表者、医療専門家、マスメディア、国民などが本音でじっくり議論して結論を得る努力をしないのでしょうか。議論は時間がかかるから嫌なのでしょうか。義務教育段階から議論する習慣が付いていないことが要因なのでしょうか。いよいよ政治が責任を持って判断、決断しなければならないでしょう。日本では検証して問題があったら責任を明確にするということを行っていないのではないでしょうか。日本だけの問題ではないかもしれませんが、官民ともに疎かにしてきたのではないでしょうか。それが日本の直面している現実かもしれません。明るい未来を展望するとすれば事業を行うことや政策を遂行する際には失敗したら責任を明確にすることと検証して分析して改善していくようにしなければならないでしょう。