日本に寄付文化が根付くきっかけになれば[2020年12月31日(Thu)]
東洋経済2020年6月26日付け「100億円寄付を即決、ユニクロ柳井氏の「危機感」」から、「人類の課題ですよね、ウイルスとがんは。本庶先生も山中先生も、世界や日本のために一生をかけて研究されている。研究とビジネスは似ていて、われわれは世の中をよくしたいという思いでは変わらない。日本がこのまま衰退しないように頑張りたい」
6月24日、京都大学のシンボルである百周年時計台記念館のホール。ノーベル賞受賞者である同大学の本庶佑特別教授と山中伸弥教授、そして「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長という、異色の顔ぶれがそろって記者会見した。中央に座った柳井会長が語り出した言葉には、いつにもまして力がこもっていた。
京都大学はこの日、柳井会長個人から本庶氏と山中氏が取り組む研究に対し、総額100億円の寄付を受ける旨を発表した。
具体的には、本庶氏がセンター長を務めるがん免疫総合研究センターでの研究推進のために「柳井基金」を設置し、2020年から10年間、毎年5億円を寄付。山中氏に対しては、iPS細胞を安価で製造するためのプロジェクトに45億円、新型コロナウイルスの調査やワクチン開発などの研究に5億円を寄付するという。
柳井会長はこれまで東日本大震災の被災地支援や、母校・早稲田大学とUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の連携事業などに寄付を行ってきたが、100億円という寄付額は過去最大規模となる。
今回の寄付を決めた理由について柳井会長は、「この人は本当に能力がある、成果を上げられる人だな、などというのはだいたい僕の直感でわかる。本庶先生の研究は人類のためになるし、山中先生の研究に対しても以前から尊敬していたので、微力ながら援助させていただいた」と語った。
国が大学に拠出する研究費は使途が限定されるほか、予算の関係から年度を繰り越して使うことが難しい。
そのため、本庶氏は「国費は毎年の予算に左右され、長期的展望がなかなか望めない。柳井基金は10年間の展望で活用できるため、問題に安心して取り組むことができる」と言及。山中氏も「(使途などの)自由度が非常に高く、研究組織を運営していくうえでありがたい。生涯をかけて蓄えたお金を研究費にいただき、重い責任を感じている」と述べた。
寄付のきっかけは個人的な付き合いからだった。柳井会長と本庶氏はともに、山口県宇部市内の中学校と山口県立宇部高校の出身。同窓の縁もあり、2019年にはファストリの新入社員や全国の店長らが集まる場で対談が実施された。
その後2人で食事をしたとき、本庶氏から50億円程度の寄付をお願いできないかと打診があった。「多分(寄付のことを)言われるんじゃないかと思っていたので、『喜んで』とお受けした」(柳井会長)。
本庶氏への寄付を決めた柳井会長は、同じ京都大学の教授で、以前から面識のあった山中氏にも何か援助できないかと考えたという。そこで山中氏に電話で連絡を取り、本庶氏と同額を寄付する決断に至った。
「大金を”無心”する厚かましいお願いだったが快諾いただいた。寄付の文化が日本でも広まっていく呼び水になれば一層ありがたい」(本庶氏)。欧米では、企業経営者が研究支援や慈善事業などへ寄付する文化が根付いている。新型コロナウイルスへの対策でも、ツイッターの共同創業者であるジャック・ドーシー氏やアマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏らが早々に寄付する考えを表明した。
「ビジネスも研究も最終的目標は、世の中のため、人のため、そして常識を越える(ものを生み出す)ため。本当は国からもっと、本質的な課題や問題の研究に対して自由に使えるお金が出ないといけない」とも指摘した柳井会長。京大への100億円の寄付はその金額以上に、柳井会長の強いメッセージが込められている。
日本社会では残念ながらアメリカのように寄付文化が根付いていない。アメリカの場合はキリスト教だから寄付文化が根付くという話だけではないでしょう。日本社会になぜ根付かないのか考える必要があるかもしれません。今回のユニクロの柳井氏の100億円の寄付がきっかけになって大金ばかりでなく中小様々な寄付が行われるようになってほしいと願います。地方の小さな農山村で小さなNPO法人を運営している者としては財政基盤が弱く雇用しても維持するのが容易ではありません。寄付で支えてもらえればさらに雇用を増やすことが可能になるかもしれません。地方では雇用を創出することが地域を元気にすることになります。柳井氏の場合は、日本の先進的な研究に対しての国費の貧弱さを嘆いて民間人として寄付することが実現したのですが、残念なことではないでしょうか。国の将来を切り拓く可能性のある若い研究者たちを支える資金もなくなってきている日本は大丈夫でしょうか。公金の教育への投資が少な過ぎないでしょうか。優先順位として将来を担う子どもたちへの投資を増やすことが最も大事なのではないでしょうか。大学の研究を含めて教育予算を相当増額して行かなければ日本の将来は危ういのではないでしょうか。危機感を持って予算のあり方を真剣に考え直す必要に迫られているのではないでしょうか。寄付文化が当たり前のように根付いて頑張っていることを評価されて寄付する社会になってほしいと思います。
6月24日、京都大学のシンボルである百周年時計台記念館のホール。ノーベル賞受賞者である同大学の本庶佑特別教授と山中伸弥教授、そして「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長という、異色の顔ぶれがそろって記者会見した。中央に座った柳井会長が語り出した言葉には、いつにもまして力がこもっていた。
京都大学はこの日、柳井会長個人から本庶氏と山中氏が取り組む研究に対し、総額100億円の寄付を受ける旨を発表した。
具体的には、本庶氏がセンター長を務めるがん免疫総合研究センターでの研究推進のために「柳井基金」を設置し、2020年から10年間、毎年5億円を寄付。山中氏に対しては、iPS細胞を安価で製造するためのプロジェクトに45億円、新型コロナウイルスの調査やワクチン開発などの研究に5億円を寄付するという。
柳井会長はこれまで東日本大震災の被災地支援や、母校・早稲田大学とUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の連携事業などに寄付を行ってきたが、100億円という寄付額は過去最大規模となる。
今回の寄付を決めた理由について柳井会長は、「この人は本当に能力がある、成果を上げられる人だな、などというのはだいたい僕の直感でわかる。本庶先生の研究は人類のためになるし、山中先生の研究に対しても以前から尊敬していたので、微力ながら援助させていただいた」と語った。
国が大学に拠出する研究費は使途が限定されるほか、予算の関係から年度を繰り越して使うことが難しい。
そのため、本庶氏は「国費は毎年の予算に左右され、長期的展望がなかなか望めない。柳井基金は10年間の展望で活用できるため、問題に安心して取り組むことができる」と言及。山中氏も「(使途などの)自由度が非常に高く、研究組織を運営していくうえでありがたい。生涯をかけて蓄えたお金を研究費にいただき、重い責任を感じている」と述べた。
寄付のきっかけは個人的な付き合いからだった。柳井会長と本庶氏はともに、山口県宇部市内の中学校と山口県立宇部高校の出身。同窓の縁もあり、2019年にはファストリの新入社員や全国の店長らが集まる場で対談が実施された。
その後2人で食事をしたとき、本庶氏から50億円程度の寄付をお願いできないかと打診があった。「多分(寄付のことを)言われるんじゃないかと思っていたので、『喜んで』とお受けした」(柳井会長)。
本庶氏への寄付を決めた柳井会長は、同じ京都大学の教授で、以前から面識のあった山中氏にも何か援助できないかと考えたという。そこで山中氏に電話で連絡を取り、本庶氏と同額を寄付する決断に至った。
「大金を”無心”する厚かましいお願いだったが快諾いただいた。寄付の文化が日本でも広まっていく呼び水になれば一層ありがたい」(本庶氏)。欧米では、企業経営者が研究支援や慈善事業などへ寄付する文化が根付いている。新型コロナウイルスへの対策でも、ツイッターの共同創業者であるジャック・ドーシー氏やアマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏らが早々に寄付する考えを表明した。
「ビジネスも研究も最終的目標は、世の中のため、人のため、そして常識を越える(ものを生み出す)ため。本当は国からもっと、本質的な課題や問題の研究に対して自由に使えるお金が出ないといけない」とも指摘した柳井会長。京大への100億円の寄付はその金額以上に、柳井会長の強いメッセージが込められている。
日本社会では残念ながらアメリカのように寄付文化が根付いていない。アメリカの場合はキリスト教だから寄付文化が根付くという話だけではないでしょう。日本社会になぜ根付かないのか考える必要があるかもしれません。今回のユニクロの柳井氏の100億円の寄付がきっかけになって大金ばかりでなく中小様々な寄付が行われるようになってほしいと願います。地方の小さな農山村で小さなNPO法人を運営している者としては財政基盤が弱く雇用しても維持するのが容易ではありません。寄付で支えてもらえればさらに雇用を増やすことが可能になるかもしれません。地方では雇用を創出することが地域を元気にすることになります。柳井氏の場合は、日本の先進的な研究に対しての国費の貧弱さを嘆いて民間人として寄付することが実現したのですが、残念なことではないでしょうか。国の将来を切り拓く可能性のある若い研究者たちを支える資金もなくなってきている日本は大丈夫でしょうか。公金の教育への投資が少な過ぎないでしょうか。優先順位として将来を担う子どもたちへの投資を増やすことが最も大事なのではないでしょうか。大学の研究を含めて教育予算を相当増額して行かなければ日本の将来は危ういのではないでしょうか。危機感を持って予算のあり方を真剣に考え直す必要に迫られているのではないでしょうか。寄付文化が当たり前のように根付いて頑張っていることを評価されて寄付する社会になってほしいと思います。