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可能性を感じる先駆的で画期的であり世界に貢献する事業になるのでは[2026年02月02日(Mon)]
 The Asahi Shinbun SDGs ACTION2025年8月14日付け「新しい治療法のカギは「うんち」!? 食のまち・山形県鶴岡市で日本初の「つるおか献便ルーム」が始動」から、腸内細菌の力を活用し、新たな創薬の可能性をひらくスタートアップ企業・メタジェンセラピューティクス(MGTx、本社・山形県鶴岡市)。同社は、「うんち」に含まれる腸内細菌を抽出し、指定難病などの治療に応用する医療・創薬の研究開発事業に取り組む。
2025年4月には、山形県鶴岡市に「つるおか献便ルーム」を設置。市民から提供された便は、腸内細菌叢移植の研究や創薬に活用している。一連の事業について、同社CEOの中原拓氏に話を聞いた。
中原拓(なかはら・たく) バイオインフォマティクス研究者としてキャリアを始め、のちに自身が関わった研究で2008年に北海道大学発ベンチャーを製薬企業とともに創業、米国ニュージャージー州でバイオインフォマティクス責任者を約6年間務める。その後、日系大手消費財企業、米系ベンチャーキャピタル、日系ベンチャーキャピタルで新規事業・スタートアップ投資を行う。 2020年にメタジェンセラピューティクス(MGTx)を創業し、CEOとして日本のアカデミア・企業発のマイクロバイオーム医療・創薬シーズの事業化を目指して奮闘中。北海道東川町在住。札幌市バイオビジネスアドバイザーとして地元のバイオイノベーションエコシステム構築活動も行う。
「うんち」を薬に! 
研究者らがスタートアップ立ち上げ
メタジェンセラピューティクスを立ち上げた経緯を教えてください。
子どもの頃から、映画『Back to the Future』のドクのようなアクティブな科学者に憧れがあり、大学院で博士号を取ってからは、バイオインフォマティクス(生物情報科学)の研究に取り組んでいました。しかし実際に研究者になってみると、仕事は書類の作成ばかりで、憧れていた科学者の姿とは違う。
そんな時、共同研究をしていた製薬会社から、「米国でスタートアップを立ち上げないか」と誘われました。私は理屈よりも「面白そうだ」という直感が勝り、米国に渡ります。
米国では、トップクラスの研究者たちが、スタートアップという手法で研究成果を社会実装することを当たり前のように行っていました。私もそこで、バイオテックのスタートアップで約6年間の経験を積ませてもらいました。
日本に戻ってからは、大手企業の経営企画部に入り、大学のシーズなどサイエンスを用いた新規事業開発に携わることになりました。入社するとすぐに出張することになったのが、鶴岡サイエンスパーク(山形県鶴岡市)。その時に出会ったのが、慶應義塾大学先端生命科学研究所で腸内細菌の研究に取り組んでいた福田真嗣さんです。
福田さんはそれからまもなく、「腸内細菌で病気ゼロの社会を実現する」というミッションを掲げ、メタジェンというスタートアップを立ち上げます。メタジェンには、順天堂大学の医師・石川大さん、東京科学大学(旧・東京工業大学)の山田拓司さんといった、非常にレベルの高い腸内細菌研究者が集まりました。
私自身がメタジェンセラピューティクスを起こすことになったきっかけは、2018年頃、腸内細菌による創薬が米国で急速に注目が高まったことです。
その時に私は思ったんです。「もし日本で腸内細菌研究のスタートアップを立ち上げるとしたら、福田さんたちしかいないだろう」と。そこで、3人に創薬に取り組んでみないかと勧めました。
福田さんをボストンに連れていき、世界最先端の状況を見てもらって、やっと創薬をやる気になってくれました。ただし、会社をつくる条件は私が社長になることでした。いろいろ悩みましたが、最終的には私が中心となって起業することを決心しました。
私はスタートアップを経験した者として、すばらしい研究者である3人を成功させたいという一心でした。特に、順天堂大学の石川さんは、腸内細菌で患者さんを治したいという熱意あふれる人で、その思いと研究成果を社会に届けることが、MGTxの一番の使命だと考えています。
そもそも、腸内細菌で病気を治すとはどういうことでしょうか。
われわれは、腸内細菌叢移植(Fecal Microbiota Transplantation、FMT)という治療法の研究開発を通して、病気に悩む患者さんの治療に向けた事業に取り組んでいます。
腸内細菌を移植したり、人の便を薬にしたりといった発想は、中国の古文書にもいくらか記述があるように、民間療法としては古くから数多く存在していました。しかし近代の西洋医学において、排せつ物は感染症の蔓延(まんえん)など公衆衛生的に人に害をもたらすものとして、排除の対象とされてきたのです。
ところが、2010年頃から「人の便が治療に使えるかもしれない」という見方が再び脚光を浴び始めます。2013年、米国の権威ある医学系雑誌『The New England Journal of Medicine』に、C.ディフィシル感染症による偽膜性腸炎という下痢などを引き起こす病気に対して、健康な人の便から取り出した腸内細菌が劇的な効果を示すという研究結果が発表されました。
この研究結果をきっかけに、世界ではC.ディフィシル感染症治療に向けた腸内細菌の薬剤開発が盛んに行われ始めます。
ところが、日本において薬剤の開発はなかなか進みませんでした。日本はC.ディフィシル感染症の患者数がそもそも少なかったことが、原因の一つとして考えられます。
順天堂大学の医師である石川さんは、以前から潰瘍(かいよう)性大腸炎の治療法の研究に取り組んでいました。そして、米国に留学していた際に行った研究の中で、潰瘍性大腸炎モデルのマウスに人間の健康な便を投与したところ、症状が改善するという結果を得ます。
つまり、腸内細菌叢移植が潰瘍性大腸炎にも有効である可能性を見いだしたのです。石川さんは人への応用も可能だと判断し、日本に帰国後、潰瘍性大腸炎に対するFMTの臨床研究を開始しました。
潰瘍性大腸炎に対して腸内細菌を使用するという点で、石川さんは世界でも先駆的に取り組んできた研究者であり、現在ではFMTの分野でメインストリームの一人として認められています。
潰瘍性大腸炎に対するFMTにいち早く着手し、研究を続けてきた石川さんのノウハウや知見を活用できるところに、腸内細菌叢の創薬事業におけるわれわれの独自性・優位性があるといえます。
「うんちをください」山形県に日本初の「献便ルーム」誕生
そのFMTを軸に、MGTxではどのような事業に取り組んでいるのでしょうか。
分離した腸内細菌の溶液を患者のおなかの中に入れるのがFMTですが、その投与方法には大きく2通りあります。
1つ目は内視鏡による投与です。内視鏡をお尻から挿入し、カメラの横の鉗子(かんし)口という穴から腸内細菌の溶液を流し込みます。これは、医療行為として医師が実施するものです。
もう1つの投与方法は、口から飲むというものです。フリーズドライした腸内細菌をカプセルに入れ、胃では溶けずに腸で溶けるように加工して投与します。こちらは薬機法上の「医薬品」として位置づけられます。
ただし、医薬品として保険適用を受けるには厚生労働省が所管する医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認を得なければならず、現在はそのための開発に取り組んでいるところです。長期的には、日本人の便で世界の患者さんを救うプロダクトを創っていきたいと考えています。
われわれは、この医療サービス事業と創薬事業の2本柱で、FMTの社会実装を進めています。
将来的には、潰瘍性大腸炎だけではなく、その他さまざまな病気に対しても適用させていきたいと考えています。FMTはパーキンソン病やがんの治療にも効果がある可能性が考えられており、MGTxが研究機関と連携して開発に取り組んでいるところです。
2025年4月、MGTxは鶴岡市に日本初となる「献便ルーム」を開設しました。設置した目的と取り組みの内容を教えてください。
FMTという治療法を進めるためには、たくさんの健康な便を集めなければなりません。海外でも研究開発のためにstool bank(腸内細菌叢バンク)というものが作られています。 そうした諸外国で行われている多くの事例を調べたり、実際にそこで働いている人たちから話を聞いたりする中で、どこの研究者も便を集める局面で苦労していることがわかりました。
便を集めることは、われわれのビジネスにおいては「原料調達」を意味します。どんなビジネスでも、原料調達の部分が不安定だと、その下流の工程が全て成り立ちません。
良質な便を、安定的かつ大量に集められる体制を作ることが、FMTの創薬事業を進める上でのセンターピンになると考えました。そうした背景から、この「つるおか献便ルーム」を作ったのです。
腸内細菌ドナーとして応募していただいた方は、事前にオンライン上で健康チェックを受けた後、病院で医師による問診、血液検査、便検査、唾液(だえき)検査などを行い、その結果に基づいて適格性判断を行います。適格と判断されたドナーの方のみ、献便ルームで便を提供いただくことになります。
便を提供いただいたドナーの方には、協力金として最大5000円分の商品券をお渡しするようにしています。わざわざ献便ルームまで足を運んできていただくことになるので、いくらかでも、そのご負担の軽減につながればと考えてのことです。
ドナーは協力金がもらえるのですね。
そのとおりです。ただ、ここで一つ懸念されるのが、売血などとの関連です。献血や臓器提供では、ドナーに対して金銭を対価として支払うことは法律で禁止されています。献血も臓器移植も、提供する人に対して体へのダメージが大きく、倫理的な問題が発生する可能性があるからです。
一方で、献便に関する法律は今のところ存在しません。そもそも、便は日々の生活で当たり前のように出るものですから、献血や臓器提供のような侵襲性はありません。
むしろ、良質な便を提供していただくため、われわれは献便に際してお酒を控えていただくなど、いくらかの食時制限を設けています。結果、ご協力いただいている皆さんからは、「献便ドナーになるために健康に気を遣うようになった」「食生活を改善するようになった」という声が聞こえるようになりました。
献便をすることで健康になるなんて、素晴らしいじゃないですか。このプロジェクトは、人の健康への意識や行動を変えるモチベーションにもなりそうだという予感があります。
鶴岡という地方都市に献便の拠点を置いたことについてはどのようにお考えですか。
2015年に初めて鶴岡に来た時から感じていたのは、食べ物が驚くほどおいしいということです。実際にこの取り組みを始めてから鶴岡の食文化について学んだり、飲食業界の方などの話を聞いたりするうちに、想定していた以上にわれわれの目指す事業に適した地域だと感じています。 というのも、腸内細菌にとっては多様な食材を摂取することが重要です。
鶴岡は山菜や根菜類が非常に豊かで、在来野菜もたくさんの種類が残っています。海の幸も豊富で、特に昆布や海藻類は腸内細菌に良い影響を与えます。
これほどの食材に恵まれた地域は非常にまれであり、多様な食文化を持っていることが鶴岡の大きな強みだと感じています。加えて、こうした食文化を守ろうとする精神文化の高さも、この地域のすごいところだと思います。
日本から世界へ「健康のおすそわけ」
MGTxでは「ヘルスシェア・コミュニティ」というコンセプトも掲げています。詳しく教えてください。 先ほど申し上げたように、私たちは便をたくさん集めたいと考えています。
事業をスケールさせるには、たくさんの方にドナーになっていただくことが重要です。
そのためには鶴岡の皆さんに、うんちに対するネガティブな認知を変えてもらう必要があります。
そこで、われわれは「自分の健康のおすそわけ」というキーワードを掲げることにしました。この言葉をフックにして、皆さんが普段から大事にしている食文化や健康的な食生活は、腸内細菌をきちんと育てる基礎となっていること、かつそれは人助けの面でも価値があるのだということを、伝えていきたいと考えています。
同じ健康活動でも、例えば筋肉トレーニングは自分のためにしかなりませんが、腸内細菌を育てれば、それをシェアすることで人の役にも立ちます。この考えを皆さんに伝えようと、「ヘルスシェア・コミュニティ」というコンセプトを設定しました。
このコンセプトを軸に、地域の食品業界の間で協業が起こったり、大学や企業が関わったりといった動きが出てくるように、食文化の中にうんちに対する新しい認識を組み込んでいきたいと考えています。
これは、いわゆるオープンイノベーションの考え方です。私たちだけでなく、大学や企業など多くの方々が関わり、住民の方に腸内細菌に関する新しい商品やサービスが提供されていく。
例えば、地元の飲食店と連携して、腸内細菌に良いメニューを作ってみる、といった取り組みもいいと思います。そうすることで、ドナー適格者への流れが強化され、便がほしいわれわれにとってもウィンウィンの関係が築かれていきます。
現在、献便は鶴岡の施設で行う必要があるため、通常は鶴岡近隣の方でなければ参加できません。しかし、例えば東京でも非常に良い腸内細菌を育んでいる方もいるわけです。
そうした方々に向けて、鶴岡の豊かな食文化の中で1〜2週間滞在しながら献便をしていただく「ドナーツーリズム」というアイデアも、将来的に検討したいと思っています。
MGTxの取り組みは、現在どの位置にあり、今後どういった流れになるでしょうか。
創薬事業に関しては、まず便を集める部分と、集めた便で薬を作る部分があります。薬を作る部分については、今のところ順調に進んでいます。原料を集める献便ルームも多くの方に来ていただいており、鶴岡に開設して本当によかったと思っています。
同時に、鶴岡の皆さんにもっと私たちを理解していただき、「腸内細菌っていいよね」という機運が生まれるといいですね。献便が一つの文化となり、鶴岡の食文化・精神文化に組み込まれていってほしいという希望があります。
世界中の潰瘍性大腸炎やパーキンソン病の方々に薬を届けるとなると、私の計算上50から100ぐらいの献便ルームが必要になります。「鶴岡は、いい腸内細菌が育つ地域」というブランドが定着すれば、献便という文化が他の地域にも広がっていくだろうと期待しています。
腸内細菌の創薬事業におけるセンターピンは原料調達であり、それをできるのは、食文化・精神文化の豊かな日本だと信じています。世界中の患者さんに日本の腸内細菌を届けるため、まずはここ鶴岡から、この創薬事業の仕組みをしっかりと作り上げていきたいと考えています。DSC00759.JPG

 2025年4月には、山形県鶴岡市に「つるおか献便ルーム」を設置。市民から提供された便は、腸内細菌叢移植の研究や創薬に活用している。鶴岡サイエンスパーク(山形県鶴岡市)。その時に出会ったのが、慶應義塾大学先端生命科学研究所で腸内細菌の研究に取り組んでいた福田真嗣さんです。福田さんはそれからまもなく、「腸内細菌で病気ゼロの社会を実現する」というミッションを掲げ、メタジェンというスタートアップを立ち上げます。メタジェンには、順天堂大学の医師・石川大さん、東京科学大学(旧・東京工業大学)の山田拓司さんといった、非常にレベルの高い腸内細菌研究者が集まりました。鶴岡市の先見性はすごいですね。腸内細菌叢移植(Fecal Microbiota Transplantation、FMT)という治療法の研究開発を通して、病気に悩む患者さんの治療に向けた事業に取り組んでいます。腸内細菌を移植したり、人の便を薬にしたりといった発想は、中国の古文書にもいくらか記述があるように、民間療法としては古くから数多く存在していました。しかし近代の西洋医学において、排せつ物は感染症の蔓延(まんえん)など公衆衛生的に人に害をもたらすものとして、排除の対象とされてきたのです。ところが、2010年頃から「人の便が治療に使えるかもしれない」という見方が再び脚光を浴び始めます。2013年、米国の権威ある医学系雑誌『The New England Journal of Medicine』に、C.ディフィシル感染症による偽膜性腸炎という下痢などを引き起こす病気に対して、健康な人の便から取り出した腸内細菌が劇的な効果を示すという研究結果が発表されました。腸内細菌叢移植が潰瘍性大腸炎にも有効である可能性を見いだしたのです。石川さんは人への応用も可能だと判断し、日本に帰国後、潰瘍性大腸炎に対するFMTの臨床研究を開始しました。 潰瘍性大腸炎に対して腸内細菌を使用するという点で、石川さんは世界でも先駆的に取り組んできた研究者であり、現在ではFMTの分野でメインストリームの一人として認められています。潰瘍性大腸炎に対するFMTにいち早く着手し、研究を続けてきた石川さんのノウハウや知見を活用できるところに、腸内細菌叢の創薬事業におけるわれわれの独自性・優位性があるといえます。将来的には、潰瘍性大腸炎だけではなく、その他さまざまな病気に対しても適用させていきたいと考えています。FMTはパーキンソン病やがんの治療にも効果がある可能性が考えられており、MGTxが研究機関と連携して開発に取り組んでいるところです。FMTという治療法を進めるためには、たくさんの健康な便を集めなければなりません。海外でも研究開発のためにstool bank(腸内細菌叢バンク)というものが作られています。 そうした諸外国で行われている多くの事例を調べたり、実際にそこで働いている人たちから話を聞いたりする中で、どこの研究者も便を集める局面で苦労していることがわかりました。便を集めることは、われわれのビジネスにおいては「原料調達」を意味します。どんなビジネスでも、原料調達の部分が不安定だと、その下流の工程が全て成り立ちません。良質な便を、安定的かつ大量に集められる体制を作ることが、FMTの創薬事業を進める上でのセンターピンになると考えました。そうした背景から、この「つるおか献便ルーム」を作ったのです。明確な考えと取り組みですね。便を提供いただいたドナーの方には、協力金として最大5000円分の商品券をお渡しするようにしています。わざわざ献便ルームまで足を運んできていただくことになるので、いくらかでも、そのご負担の軽減につながればと考えてのことです。献便に関する法律は今のところ存在しません。そもそも、便は日々の生活で当たり前のように出るものですから、献血や臓器提供のような侵襲性はありません。むしろ、良質な便を提供していただくため、われわれは献便に際してお酒を控えていただくなど、いくらかの食時制限を設けています。結果、ご協力いただいている皆さんからは、「献便ドナーになるために健康に気を遣うようになった」「食生活を改善するようになった」という声が聞こえるようになりました。献便をすることで健康になるなんて、素晴らしいじゃないですか。このプロジェクトは、人の健康への意識や行動を変えるモチベーションにもなりそうだという予感があります。協力者が増えやすいよく考えられた仕組みですね。2015年に初めて鶴岡に来た時から感じていたのは、食べ物が驚くほどおいしいということです。実際にこの取り組みを始めてから鶴岡の食文化について学んだり、飲食業界の方などの話を聞いたりするうちに、想定していた以上にわれわれの目指す事業に適した地域だと感じています。 というのも、腸内細菌にとっては多様な食材を摂取することが重要です。鶴岡は山菜や根菜類が非常に豊かで、在来野菜もたくさんの種類が残っています。海の幸も豊富で、特に昆布や海藻類は腸内細菌に良い影響を与えます。これほどの食材に恵まれた地域は非常にまれであり、多様な食文化を持っていることが鶴岡の大きな強みだと感じています。加えて、こうした食文化を守ろうとする精神文化の高さも、この地域のすごいところだと思います。鶴岡市は選ばれた理想的な地域だったのですね。住民の健康維持ためにも大変良かったのではないでしょうか。われわれは「自分の健康のおすそわけ」というキーワードを掲げることにしました。この言葉をフックにして、皆さんが普段から大事にしている食文化や健康的な食生活は、腸内細菌をきちんと育てる基礎となっていること、かつそれは人助けの面でも価値があるのだということを、伝えていきたいと考えています。同じ健康活動でも、例えば筋肉トレーニングは自分のためにしかなりませんが、腸内細菌を育てれば、それをシェアすることで人の役にも立ちます。この考えを皆さんに伝えようと、「ヘルスシェア・コミュニティ」というコンセプトを設定しました。このコンセプトを軸に、地域の食品業界の間で協業が起こったり、大学や企業が関わったりといった動きが出てくるように、食文化の中にうんちに対する新しい認識を組み込んでいきたいと考えています。世界に誇り得る住民のための活動であり事業になっていくのではないでしょうか。鶴岡の豊かな食文化の中で1〜2週間滞在しながら献便をしていただく「ドナーツーリズム」というアイデアも、将来的に検討したいと思っています。鶴岡の皆さんにもっと私たちを理解していただき、「腸内細菌っていいよね」という機運が生まれるといいですね。献便が一つの文化となり、鶴岡の食文化・精神文化に組み込まれていってほしいという希望があります。世界中の潰瘍性大腸炎やパーキンソン病の方々に薬を届けるとなると、私の計算上50から100ぐらいの献便ルームが必要になります。「鶴岡は、いい腸内細菌が育つ地域」というブランドが定着すれば、献便という文化が他の地域にも広がっていくだろうと期待しています。腸内細菌の創薬事業におけるセンターピンは原料調達であり、それをできるのは、食文化・精神文化の豊かな日本だと信じています。世界中の患者さんに日本の腸内細菌を届けるため、まずはここ鶴岡から、この創薬事業の仕組みをしっかりと作り上げていきたいと考えています。可能性が広がっていき波及効果も期待できるでしょう。近い将来世界中から評価されるような事業に成長してしているのではないでしょうか。DSC00758.JPG
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