日本の教育には“学び方の多様性”が求められるのでは[2026年01月26日(Mon)]
東洋経済ONLINE2025年8月12日付け「「先生だけの学校」はもう時代遅れ!? 日本の教育DXがもたらす“学び方の多様性”と"ビジネスチャンス”」から、VUCA、「人生100年時代」、AIの登場……。
技術と社会が大きく変わる今、教育界には、明治維新以来150年ぶりに大転換の波が訪れています。「誰もが学び続ける時代に求められること」を知ることが、子育てにとっても、キャリア形成にとっても大切です。
そこで、日本最大級の教育イベント創設者・大学特任准教授・学校法人理事など、さまざまな立場や役割で教育に関わる宮田純也氏が「教育の新常識」を解説します。
探究学習の実現には企業の力が重要
探究学習がオーセンティックな学びを志向しているとすれば、社会に存在するあらゆるものが学びの対象になっていくでしょう。なぜなら、教育哲学者のデューイの言葉を借りれば、「教育は人生のための準備ではない。教育は人生そのものである」からです。
生きることは探究することであり、そして探究するとき、あらゆるものから学ぶことができるのです。
このような探究学習を実現するために、企業の力が必要になることは間違いないでしょう。
自社の事業の強みや特長を活かし、さまざまな形で企業と学校が協働する多様な形態が出現しています。
企業の社会的責任(CSR)を果たすための出張授業などの取り組みは、以前からおこなわれてきましたが、教材などの製品・サービスの提供など、事業としても形態が多様化しています。
高度化する学校現場では、以前のように何でも自分たちでまかなう自前主義では立ちゆかず、私立学校は当然のこととして、文部科学省のGIGAスクール構想のように、公立においてもDXに関する予算(令和元年から3年の合計で約7000億円)がつくなど、経済的な規模も増しています。
この点で、学校教育を市場として捉えるときには、市場は大きく拡大しているといえます。つまり、事業をおこなう企業が活躍する土壌が増えているということです。
DXが進む今日において、この傾向は続いていくと考えられます。 経済産業省では、2018年度から「未来の教室〜learning innovation〜」という事業を5カ年計画で実施しています。
当初は2022年度で終了の予定でしたが、現在も延長継続されている事業です。2019年度からは、学びのSTEAM化、学びの自立化・個別最適化、新しい学習基盤づくりを3つの柱に、9つの課題とアクションを設定し、それにもとづいた主としてEdTech企業の学校進出をサポートしています。
その内容は年度によって変化しますが、「EdTech導入補助金」では全国の小学校・中学校・高校および自治体が、学校の金銭負担がない形で企業など採択された事業者の製品やサービスを無償で導入できるなど、多様な事業がおこなわれています。
文部科学省では、2023年度から100億円の予算で「⾼等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」を推進しています。
これは情報・数学などの教育を重視するカリキュラムを実施するとともに、ICTを活⽤した⽂理横断的・探究的な学びを強化する学校などに対して、そのために必要な環境整備の経費を支援するもので、公⽴・私⽴の⾼等学校などを対象に、継続校1000校には1校当たり500万円、新規採択校200校には1000万円の補助金を交付する事業となります。
学校教育の2つの転換
社会構造の転換に伴う学校教育の転換は、大きく分けると2点あります。
1つ目は、授業を中心とする教育方法の転換です。たとえば、教育DX、探究学習、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実、主体的・対話的で深い学び、キャリア教育、ファシリテーション、AI・ICTの利活用、コンピテンシーベースの授業、OECDラーニング・コンパスの浸透と推進などです。
2つ目は、教育活動を支える環境の転換です。たとえば、GIGAスクール、学校組織、教師のあり方、働き方改革、校務DXなどの浸透と推進です。
これらの転換のために、民間企業には、ネットワーク環境やPCなどの端末の提供だけでなく、校務支援サービス、教材提供、人材育成など大変多岐にわたる事業の展開が期待されています。
これからは学校と企業がさまざまな方面でパートナーとなり、一緒に学び合いながら、学校現場に新しい価値を生み出すインタラクティブな関係をつくっていくことが、より一層求められていくのではないかと推測されます。
学校教育ではオーセンティックな学びを探究学習で実施し、さらにそのサイクルを回し続けることで、学習者は学び方を習得していきます。これが、今後の人生を歩むうえでの学びの土台を形成し、自律的に学び、自立して人生を歩むコンピテンシーを身につけることが期待されています。
探究学習の導入は、すでに決められて与えられた目標やゴールに向かう収束型の学習観から、さまざまな価値観や目標を自ら生成し、発散する教育という発散型の学習観への転換だといえるでしょう。
世界の教育改革はどこに向かっているか
ここまで日本の教育改革について見てきましたが、少し視点を変えて世界の流れを確認してみましょう。
キーワードになるのは「PISA」です。この言葉は聞いたことがなくても、PISAで日本の学力が世界で何位だったのかという報道に触れたことのある方は多いのではないかと思います。
PISA(Programme for International Student Assessment)は、OECD(経済協力開発機構)が3年に一度、OECD加盟国および参加を希望した国・地域の15歳を対象に実施する学力到達度調査です。
「何を知っているか」という従来の学力ではなく、「何ができるか」を明らかにする調査という点に特徴があります。
3年に一度の調査で日本のスコアが上下すると、注目が集まります。最近では2022年におこなわれました。そこでは日本は「科学的リテラシー」が2位、「読解力」が3位、「数学的リテラシー」が5位と、3分野すべての順位が世界トップレベルでした。
PISAの結果は、世界各国の教育政策に大きな影響を与えるものであり、世界の教育政策を理解する際に、OECDの動きを把握することは必須といえます。
PISAの結果は一般に報道などで広く認知されていますが、学校教育の今後を概観するうえでは、OECDが2019年に公表した「OECDラーニング・コンパス2030」について理解を深めることが大切です。
「ラーニング・コンパス」は「学びの羅針盤」と訳されます。子どもが先生の指示などに盲目的・受動的に従うのではなく、自らVUCA時代という未知の社会を自ら歩み進むとき、方向性を示すものです。
拙編著『SCHOOL SHIFT』のなかで田中茂範氏は、教育のねらいは「世界を変革できるように学びを方向づける(Learning to transform the world)」ことであり、子どもが「不確実な状況のなかで自らをナビゲイトしながら、人生を切り開くこと、そして、個人のウェルビーイングだけでなく地球全体のウェルビーイングに向けて他の人々と協働して考え行動することが求められる」と解説しています。
そのために最も重要な力が「エージェンシー」です。
これは「目標を設定し、責任を持って、主体的に行為することによってよい変化を起こす力」です。
生徒自身のエージェンシー(生徒エージェンシー)を高めながら、ほかの人々と共同して行為するためのエージェンシー(共同エージェンシー)を高め、両者を相互作用させていくことが重要だと考えられています。
世界標準の教育目標
ラーニング・コンパスにおける教育の目標はウェルビーイングの実現だと掲げられています。OECDの定義によれば、ウェルビーイングとは「生徒が幸福で充実した人生を送るために必要な、心理的・認知的・社会的・身体的な働きと潜在能力」のことです。
学校教育は何のためにあるのか。そう問われたら、日本では教育基本法による「人格の完成」となります。これは、世界の標準で言えば「ウェルビーイングの実現」に対応するものだといえるでしょう。
そして、いま日本の学校教育もそのような世界的な教育改革の潮流のなかで発展を遂げつつあります。令和5〜9年度に実行される教育振興基本計画には、「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」が掲げられているのです。
理想の教育に唯一の正解はない
フィンランドの教育が日本で注目されるようになったのは、2003年と2006年におこなわれたPISAのすべての分野で1位、あるいは2位を取ったからです。
日本では「学力世界一のフィンランド」として興味を持たれたといえます。北欧の小国がなぜ世界で1位を取れたのか、その驚きがフィンランドの教育について注目するきっかけになりました。
詰め込み教育ではないことをはじめ、フィンランドと日本では、学校観、学習観、ひいては社会観や人生観まで異なっているため、いまもなおその教育は注目されています。
しかし、フィンランドは近年、PISAの点数と順位を落としています。かつては「学力世界一」だったフィンランド国内でも、現在は学力をめぐる論争が起こっており、学校教育のあり方が模索されています。
たとえば、世界的に著名なフィンランドの教育学者パシ・サルベリ氏は、PISAはあくまで測定器であり、それ自体が目的ではないとコメントしています。
フィンランドの教育はウェルビーイングの実現を学校教育の土台に据え、あくまで学力はひとつの尺度・結果だと捉えたうえで、ウェルビーイングの実現という大きな目標に向けて改革を進めながら試行錯誤しているように見受けられます。やはり理想の教育に唯一の正解はないのです。
私たちも、目先のテストの結果に惑わされず、ウェルビーイングという高次の観点でこれからの時代に合った学びや学校教育のあり方について考え、挑戦を重ねていくことが必要ではないでしょうか。
教育界には、明治維新以来150年ぶりに大転換の波が訪れています。「誰もが学び続ける時代に求められること」を知ることが、子育てにとっても、キャリア形成にとっても大切です。そうは言っても改革の機運が高まっていると言えるでしょうか。生きることは探究することであり、そして探究するとき、あらゆるものから学ぶことができるのです。このような探究学習を実現するために、企業の力が必要になることは間違いないでしょう。高度化する学校現場では、以前のように何でも自分たちでまかなう自前主義では立ちゆかず、私立学校は当然のこととして、文部科学省のGIGAスクール構想のように、公立においてもDXに関する予算(令和元年から3年の合計で約7000億円)がつくなど、経済的な規模も増しています。授業を中心とする教育方法の転換です。たとえば、教育DX、探究学習、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実、主体的・対話的で深い学び、キャリア教育、ファシリテーション、AI・ICTの利活用、コンピテンシーベースの授業、OECDラーニング・コンパスの浸透と推進などです。教育活動を支える環境の転換です。たとえば、GIGAスクール、学校組織、教師のあり方、働き方改革、校務DXなどの浸透と推進です。これらの転換のために、民間企業には、ネットワーク環境やPCなどの端末の提供だけでなく、校務支援サービス、教材提供、人材育成など大変多岐にわたる事業の展開が期待されています。これからは学校と企業がさまざまな方面でパートナーとなり、一緒に学び合いながら、学校現場に新しい価値を生み出すインタラクティブな関係をつくっていくことが、より一層求められていくのではないかと推測されます。確かにその通りで企業の協力が必要になってきているでしょう。最も重要な力が「エージェンシー」は「目標を設定し、責任を持って、主体的に行為することによってよい変化を起こす力」です。生徒自身のエージェンシー(生徒エージェンシー)を高めながら、ほかの人々と共同して行為するためのエージェンシー(共同エージェンシー)を高め、両者を相互作用させていくことが重要だと考えられています。ラーニング・コンパスにおける教育の目標はウェルビーイングの実現だと掲げられています。OECDの定義によれば、ウェルビーイングとは「生徒が幸福で充実した人生を送るために必要な、心理的・認知的・社会的・身体的な働きと潜在能力」のことです。学校教育は何のためにあるのか。そう問われたら、日本では教育基本法による「人格の完成」となります。これは、世界の標準で言えば「ウェルビーイングの実現」に対応するものだといえるでしょう。詰め込み教育ではないことをはじめ、フィンランドと日本では、学校観、学習観、ひいては社会観や人生観まで異なっているため、いまもなおその教育は注目されています。PISAはあくまで測定器であり、それ自体が目的ではないとコメントしています。フィンランドの教育はウェルビーイングの実現を学校教育の土台に据え、あくまで学力はひとつの尺度・結果だと捉えたうえで、ウェルビーイングの実現という大きな目標に向けて改革を進めながら試行錯誤しているように見受けられます。やはり理想の教育に唯一の正解はないのです。私たちも、目先のテストの結果に惑わされず、ウェルビーイングという高次の観点でこれからの時代に合った学びや学校教育のあり方について考え、挑戦を重ねていくことが必要ではないでしょうか。フィンランドの教育のあり方は大変参考になるでしょう。日本の教育は学習指導要領に縛られ過ぎているのではないでしょうか。子どもたちの人格形成はもちろんですが、子どもたち一人ひとりの個性を尊重して才能を伸ばすことができるように教育基本法、学習指導要領に縛られない多様な教育のあり方を模索しなければ世界の中で取り残されることになってしまわないでしょうか。
技術と社会が大きく変わる今、教育界には、明治維新以来150年ぶりに大転換の波が訪れています。「誰もが学び続ける時代に求められること」を知ることが、子育てにとっても、キャリア形成にとっても大切です。
そこで、日本最大級の教育イベント創設者・大学特任准教授・学校法人理事など、さまざまな立場や役割で教育に関わる宮田純也氏が「教育の新常識」を解説します。
探究学習の実現には企業の力が重要
探究学習がオーセンティックな学びを志向しているとすれば、社会に存在するあらゆるものが学びの対象になっていくでしょう。なぜなら、教育哲学者のデューイの言葉を借りれば、「教育は人生のための準備ではない。教育は人生そのものである」からです。
生きることは探究することであり、そして探究するとき、あらゆるものから学ぶことができるのです。
このような探究学習を実現するために、企業の力が必要になることは間違いないでしょう。
自社の事業の強みや特長を活かし、さまざまな形で企業と学校が協働する多様な形態が出現しています。
企業の社会的責任(CSR)を果たすための出張授業などの取り組みは、以前からおこなわれてきましたが、教材などの製品・サービスの提供など、事業としても形態が多様化しています。
高度化する学校現場では、以前のように何でも自分たちでまかなう自前主義では立ちゆかず、私立学校は当然のこととして、文部科学省のGIGAスクール構想のように、公立においてもDXに関する予算(令和元年から3年の合計で約7000億円)がつくなど、経済的な規模も増しています。
この点で、学校教育を市場として捉えるときには、市場は大きく拡大しているといえます。つまり、事業をおこなう企業が活躍する土壌が増えているということです。
DXが進む今日において、この傾向は続いていくと考えられます。 経済産業省では、2018年度から「未来の教室〜learning innovation〜」という事業を5カ年計画で実施しています。
当初は2022年度で終了の予定でしたが、現在も延長継続されている事業です。2019年度からは、学びのSTEAM化、学びの自立化・個別最適化、新しい学習基盤づくりを3つの柱に、9つの課題とアクションを設定し、それにもとづいた主としてEdTech企業の学校進出をサポートしています。
その内容は年度によって変化しますが、「EdTech導入補助金」では全国の小学校・中学校・高校および自治体が、学校の金銭負担がない形で企業など採択された事業者の製品やサービスを無償で導入できるなど、多様な事業がおこなわれています。
文部科学省では、2023年度から100億円の予算で「⾼等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」を推進しています。
これは情報・数学などの教育を重視するカリキュラムを実施するとともに、ICTを活⽤した⽂理横断的・探究的な学びを強化する学校などに対して、そのために必要な環境整備の経費を支援するもので、公⽴・私⽴の⾼等学校などを対象に、継続校1000校には1校当たり500万円、新規採択校200校には1000万円の補助金を交付する事業となります。
学校教育の2つの転換
社会構造の転換に伴う学校教育の転換は、大きく分けると2点あります。
1つ目は、授業を中心とする教育方法の転換です。たとえば、教育DX、探究学習、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実、主体的・対話的で深い学び、キャリア教育、ファシリテーション、AI・ICTの利活用、コンピテンシーベースの授業、OECDラーニング・コンパスの浸透と推進などです。
2つ目は、教育活動を支える環境の転換です。たとえば、GIGAスクール、学校組織、教師のあり方、働き方改革、校務DXなどの浸透と推進です。
これらの転換のために、民間企業には、ネットワーク環境やPCなどの端末の提供だけでなく、校務支援サービス、教材提供、人材育成など大変多岐にわたる事業の展開が期待されています。
これからは学校と企業がさまざまな方面でパートナーとなり、一緒に学び合いながら、学校現場に新しい価値を生み出すインタラクティブな関係をつくっていくことが、より一層求められていくのではないかと推測されます。
学校教育ではオーセンティックな学びを探究学習で実施し、さらにそのサイクルを回し続けることで、学習者は学び方を習得していきます。これが、今後の人生を歩むうえでの学びの土台を形成し、自律的に学び、自立して人生を歩むコンピテンシーを身につけることが期待されています。
探究学習の導入は、すでに決められて与えられた目標やゴールに向かう収束型の学習観から、さまざまな価値観や目標を自ら生成し、発散する教育という発散型の学習観への転換だといえるでしょう。
世界の教育改革はどこに向かっているか
ここまで日本の教育改革について見てきましたが、少し視点を変えて世界の流れを確認してみましょう。
キーワードになるのは「PISA」です。この言葉は聞いたことがなくても、PISAで日本の学力が世界で何位だったのかという報道に触れたことのある方は多いのではないかと思います。
PISA(Programme for International Student Assessment)は、OECD(経済協力開発機構)が3年に一度、OECD加盟国および参加を希望した国・地域の15歳を対象に実施する学力到達度調査です。
「何を知っているか」という従来の学力ではなく、「何ができるか」を明らかにする調査という点に特徴があります。
3年に一度の調査で日本のスコアが上下すると、注目が集まります。最近では2022年におこなわれました。そこでは日本は「科学的リテラシー」が2位、「読解力」が3位、「数学的リテラシー」が5位と、3分野すべての順位が世界トップレベルでした。
PISAの結果は、世界各国の教育政策に大きな影響を与えるものであり、世界の教育政策を理解する際に、OECDの動きを把握することは必須といえます。
PISAの結果は一般に報道などで広く認知されていますが、学校教育の今後を概観するうえでは、OECDが2019年に公表した「OECDラーニング・コンパス2030」について理解を深めることが大切です。
「ラーニング・コンパス」は「学びの羅針盤」と訳されます。子どもが先生の指示などに盲目的・受動的に従うのではなく、自らVUCA時代という未知の社会を自ら歩み進むとき、方向性を示すものです。
拙編著『SCHOOL SHIFT』のなかで田中茂範氏は、教育のねらいは「世界を変革できるように学びを方向づける(Learning to transform the world)」ことであり、子どもが「不確実な状況のなかで自らをナビゲイトしながら、人生を切り開くこと、そして、個人のウェルビーイングだけでなく地球全体のウェルビーイングに向けて他の人々と協働して考え行動することが求められる」と解説しています。
そのために最も重要な力が「エージェンシー」です。
これは「目標を設定し、責任を持って、主体的に行為することによってよい変化を起こす力」です。
生徒自身のエージェンシー(生徒エージェンシー)を高めながら、ほかの人々と共同して行為するためのエージェンシー(共同エージェンシー)を高め、両者を相互作用させていくことが重要だと考えられています。
世界標準の教育目標
ラーニング・コンパスにおける教育の目標はウェルビーイングの実現だと掲げられています。OECDの定義によれば、ウェルビーイングとは「生徒が幸福で充実した人生を送るために必要な、心理的・認知的・社会的・身体的な働きと潜在能力」のことです。
学校教育は何のためにあるのか。そう問われたら、日本では教育基本法による「人格の完成」となります。これは、世界の標準で言えば「ウェルビーイングの実現」に対応するものだといえるでしょう。
そして、いま日本の学校教育もそのような世界的な教育改革の潮流のなかで発展を遂げつつあります。令和5〜9年度に実行される教育振興基本計画には、「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」が掲げられているのです。
理想の教育に唯一の正解はない
フィンランドの教育が日本で注目されるようになったのは、2003年と2006年におこなわれたPISAのすべての分野で1位、あるいは2位を取ったからです。
日本では「学力世界一のフィンランド」として興味を持たれたといえます。北欧の小国がなぜ世界で1位を取れたのか、その驚きがフィンランドの教育について注目するきっかけになりました。
詰め込み教育ではないことをはじめ、フィンランドと日本では、学校観、学習観、ひいては社会観や人生観まで異なっているため、いまもなおその教育は注目されています。
しかし、フィンランドは近年、PISAの点数と順位を落としています。かつては「学力世界一」だったフィンランド国内でも、現在は学力をめぐる論争が起こっており、学校教育のあり方が模索されています。
たとえば、世界的に著名なフィンランドの教育学者パシ・サルベリ氏は、PISAはあくまで測定器であり、それ自体が目的ではないとコメントしています。
フィンランドの教育はウェルビーイングの実現を学校教育の土台に据え、あくまで学力はひとつの尺度・結果だと捉えたうえで、ウェルビーイングの実現という大きな目標に向けて改革を進めながら試行錯誤しているように見受けられます。やはり理想の教育に唯一の正解はないのです。
私たちも、目先のテストの結果に惑わされず、ウェルビーイングという高次の観点でこれからの時代に合った学びや学校教育のあり方について考え、挑戦を重ねていくことが必要ではないでしょうか。
教育界には、明治維新以来150年ぶりに大転換の波が訪れています。「誰もが学び続ける時代に求められること」を知ることが、子育てにとっても、キャリア形成にとっても大切です。そうは言っても改革の機運が高まっていると言えるでしょうか。生きることは探究することであり、そして探究するとき、あらゆるものから学ぶことができるのです。このような探究学習を実現するために、企業の力が必要になることは間違いないでしょう。高度化する学校現場では、以前のように何でも自分たちでまかなう自前主義では立ちゆかず、私立学校は当然のこととして、文部科学省のGIGAスクール構想のように、公立においてもDXに関する予算(令和元年から3年の合計で約7000億円)がつくなど、経済的な規模も増しています。授業を中心とする教育方法の転換です。たとえば、教育DX、探究学習、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実、主体的・対話的で深い学び、キャリア教育、ファシリテーション、AI・ICTの利活用、コンピテンシーベースの授業、OECDラーニング・コンパスの浸透と推進などです。教育活動を支える環境の転換です。たとえば、GIGAスクール、学校組織、教師のあり方、働き方改革、校務DXなどの浸透と推進です。これらの転換のために、民間企業には、ネットワーク環境やPCなどの端末の提供だけでなく、校務支援サービス、教材提供、人材育成など大変多岐にわたる事業の展開が期待されています。これからは学校と企業がさまざまな方面でパートナーとなり、一緒に学び合いながら、学校現場に新しい価値を生み出すインタラクティブな関係をつくっていくことが、より一層求められていくのではないかと推測されます。確かにその通りで企業の協力が必要になってきているでしょう。最も重要な力が「エージェンシー」は「目標を設定し、責任を持って、主体的に行為することによってよい変化を起こす力」です。生徒自身のエージェンシー(生徒エージェンシー)を高めながら、ほかの人々と共同して行為するためのエージェンシー(共同エージェンシー)を高め、両者を相互作用させていくことが重要だと考えられています。ラーニング・コンパスにおける教育の目標はウェルビーイングの実現だと掲げられています。OECDの定義によれば、ウェルビーイングとは「生徒が幸福で充実した人生を送るために必要な、心理的・認知的・社会的・身体的な働きと潜在能力」のことです。学校教育は何のためにあるのか。そう問われたら、日本では教育基本法による「人格の完成」となります。これは、世界の標準で言えば「ウェルビーイングの実現」に対応するものだといえるでしょう。詰め込み教育ではないことをはじめ、フィンランドと日本では、学校観、学習観、ひいては社会観や人生観まで異なっているため、いまもなおその教育は注目されています。PISAはあくまで測定器であり、それ自体が目的ではないとコメントしています。フィンランドの教育はウェルビーイングの実現を学校教育の土台に据え、あくまで学力はひとつの尺度・結果だと捉えたうえで、ウェルビーイングの実現という大きな目標に向けて改革を進めながら試行錯誤しているように見受けられます。やはり理想の教育に唯一の正解はないのです。私たちも、目先のテストの結果に惑わされず、ウェルビーイングという高次の観点でこれからの時代に合った学びや学校教育のあり方について考え、挑戦を重ねていくことが必要ではないでしょうか。フィンランドの教育のあり方は大変参考になるでしょう。日本の教育は学習指導要領に縛られ過ぎているのではないでしょうか。子どもたちの人格形成はもちろんですが、子どもたち一人ひとりの個性を尊重して才能を伸ばすことができるように教育基本法、学習指導要領に縛られない多様な教育のあり方を模索しなければ世界の中で取り残されることになってしまわないでしょうか。



