「耕さない農業=不耕起栽培」が広がりつなぐ未来になれば[2025年12月24日(Wed)]
FRaU2025年7月27日付け「地球温暖化の緩和に…世界中で話題となっている「耕さない農業=不耕起栽培」がつなぐ未来」から、私たちの体は食べたものでできている。つまり、地球が不健康だと私たちの生存も危うくなる。では、日常のなかでできる気候変動対策ってなんだろう。環境や生態系を回復させながら空腹をおいしく満たす方法を、食に関わる人たちの対話を通して考えよう。
Part 1:土と野菜
土壌は植物の根や微生物によって、大気中の炭素(二酸化炭素)の2倍の炭素を蓄えていると言われている。しかし表土を耕すと大気中に放出されてしまう。“農耕”というように、農=耕すことだと思われてきたが、脱炭素化社会への意識が高まる今、世界中で話題となっているのが、耕さない農業=不耕起栽培である。そこで、不耕起栽培による土壌再生面積の拡大を目的としたアイスクリームブランド〈SOYSCREAM!!!〉を立ち上げ、不耕起栽培農家を支援するビジネスモデルを構築したはちいち農園と、土壌診断サービス「みんな大地」を提供しているUPDATERに話を聞いた。
UPDATER 私たちの土壌診断では、土の中の生態系の循環を現す指標として、土壌の有機物や微生物の量、菌根菌との共生状況を調べています。これまで60を超える畑を診断してきましたが、農薬や化学肥料を使用する慣行栽培の畑と、有機や不耕起栽培の畑では、存在する虫や排水性、根の張り方などが違うと感じています。例えば最近訪れた落花生の畑では、慣行栽培の畑だと短くて太い根っこがちょろっとあるだけですが、農薬や化学肥料を使用していない畑だと細かい根が張り巡らされている。そして大気中の窒素を固定する根粒菌というバクテリアも多いですね。
はちいち農園 それは栽培方法が、植物の栄養の取り方や、菌との共生の仕方に影響を与えているからですね。慣行栽培の根の張りが浅いのは、肥料によって栄養が足りていて取りにいく必要がないから。いっぽうで自然の植物は、根の菌根菌を通じてネットワークを張り巡らせ、自分の根が届かないところからも栄養を取っているんですね。
UPDATER はちいち農園さんの土が団粒構造であることもひと目でわかります。耕すとこの構造が破壊されて、水はけや通気性が悪くなることもあるんです。昨年から2回に亘って土壌を診断しましたが、炭素貯留量は地域の標準の約2倍でした。土壌が変化するには時間がかかりますが、このまま定着して増え続ければ、地球温暖化防止効果も、農業生産性もアップするはず。英国ローザムステッド農業試験場における150年を超える長期連用試験のデータを見ると、炭素貯留量はまだ増やせることがわかります。
はちいち農園 結果を見ると、土壌を可視化できて面白いですね。不耕起栽培という私たちの農法が、環境にいいとわかるのもうれしい。一般的に農家が土壌診断をするのは、過不足を知って肥料で調整したりするためですが、私たちは社会的な意味があるのか知りたくてお願いしました。土壌が再生されていくことが明白になったので、不耕起栽培にトライする農家の励みになるだろうし、そんな農家が増えるきっかけになるといいなと思っています。
UPDATER 土壌に炭素が貯留するメカニズムは、植物が光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、それが枯れると一部が土壌中で分解されにくい有機炭素になるというもの。耕さないことで表面を覆う雑草たちも、炭素を土壌に貯めてくれます。しかし土を耕耘すると好気性の微生物が活発になり、土壌の有機物の多くを分解して二酸化炭素を放出してしまう。だから不耕起栽培の面積に比例して炭素貯留量が増えるということなんです。全世界の土壌の表層の炭素量を、毎年0.4%ずつ増やすことができれば、人為的な活動による大気中への二酸化炭素の排出を相殺できるという「フォーパーミル・イニシアチブ」もそんな考え方ですね。
はちいち農園 生物多様性にも着目するべきですよね。プラネタリーバウンダリーの表を見ても、生物圏の一体性は限界を超えています。土壌の微生物や菌が多様だと、炭素の固定と分解のバランスがとれる。しかし農薬を与えると土壌の微生物の多様性が減り、炭素の貯留量も減ってしまう。
UPDATER 土壌の生物多様性は作物生産や炭素貯留だけでなく、地上の生き物たちの多様性を支えます。なので、日本の99%を占める慣行農地が一部でも減農薬や農薬を使わない農法に変わることが、地域の生物多様性を高めるうえで大切です。
はちいち農園 同じ作物だけを育てることも、土壌微生物の多様性を崩してしまいます。
だからうちでは、大豆を育てた後はいろんな草を生やしているんです。次に植えるのはまた大豆だから連作ではありますが、雑草のおかげで輪作になる。自然界にとっては雑草も野菜も区別ないですから。土を見て何を生やすか判断しますが、コントロールしすぎもよくないので難しいところ。植物は勝手に日光で光合成し、風が通れば二酸化炭素が供給され、雨で育っていく。だから私たちが行うことは、草を刈って敷き、土を肥やすというくらいで、手数をなるべく減らしながらやっていきたいと思っています。
UPDATER そうやって生産者の方々が地道に取り組まれていることを土壌診断による数値で可視化することが、その意義や目的を伝える手段の一つになれたらと思っています。これが消費者にとっても生産者を選ぶ基準になるといいなと。
選ぶだけでなく生産に関わることが必要
はちいち農園 これからは、「消費者が生産者を選ぶ」から一歩進んで「消費者も生産に関わる」ことが重要だと考えています。もう「食」は待ってる時代じゃない。生産に関わっていくと、いろいろな農業があることもわかるし、自分の選択が気候変動に関わっていることもわかってくる。特定の農家から買うということも、選ぶだけより関わりが深い。関わるほどに安心感が増すものです。作業を手伝う、一緒に作るなど関わり方の濃度に比例して、食への不安は消えていくはず。スーパーの棚からお米が消えても、常日頃関わっているわが家には届くと思える。安心感は幸福度につながります。
UPDATER はちいち農園さんのハーベストコモンズは、まさに自分が関われる生産方法ですよね。いわゆるシェア畑ではなく、みんなのコミュニティとしての畑。畑に行く頻度が決まっているわけではなく、ルールもないし、なんなら作業しなくてもいい。関与できることに対して価値を感じられるような仕組みなんですね。
はちいち農園 特に不耕起栽培は生産者と消費者の距離が近いんですよ。というのもトラクターを使わないから、手作業が多く、助けが必要になる。消費者も、種を蒔き、草を取り、収穫するといったプロセスに能動的に関わることで、共同生産者になれるわけです。体験っていうフィルターを通して知ることで、いろいろなことが腑に落ちるし、充実感もあるし、自己肯定感も上がる。自分の食べるものを自分で作るというのは命を守ること、生き方なんですよね。みんなが農家になる必要はないけれど、関わり方のバリエーションはいろいろある。〈SOYSCREAM!!!〉もその一つです。
UPDATER 食と土壌の関係、地球再生について知るきっかけにもなりますね。 はちいち農園 このシステムを構築するのに、3ヵ月ほど必死で考えました。環境のために不耕起栽培にトライする人を増やしたい。大豆は痩せた土地でも比較的育ちやすいし、マメ科の植物は根っこに共生している根粒菌が大気の窒素を使って土を育ててくれる。だからまずは大豆を育ててもらい、それを買い取ることで営農をサポートしよう、買い取った大豆を販路にのせるには何をすればいいだろう、と考えたんです。
UPDATER おいしく食べることで世界を変えられるなんて、これまでにない試みですよね。
はちいち農園 地球再生をスピードアップするためには、個人だけでなく企業が賛同してくれるとインパクトが大きくなります。例えばナチュラルコスメブランドのLUSHでは、社員の方々の福利厚生として定期購入してくれています。それによって、企業として地球再生に参加したことになる。気候変動は個人では抱えきれない大きな課題ですが、〈SOYSCREAM!!!〉は子どもでもフォーパーミル・イニシアチブに関われるポップな方法なんです。
UPDATER 不耕起栽培が拡大しそうなビジネスモデルですよね。再生土壌面積が拡大して、地球温暖化が緩和していくことを期待しています。
不耕起栽培 土壌を耕さずに農作物を育てる農法。農作業に必要な燃料削減、生物保全などのメリットがある。リジェネラティブ(環境再生型)農業の代表的な手法の一つ。有機農法と組み合わせることが多いが、アメリカの大規模農場では、除草剤を使用し、遺伝子組み換え作物で収穫物を守ることも多い。
菌根菌 植物の根に共生する糸状菌の一種。菌糸を広く伸ばし、土の中の養分、特にリンを吸収し、植物に供給する。一方、根からは光合成の産物である炭素化合物が菌根菌へ供給される。肥料によるリン酸過多や農薬の影響があると、生息しにくい。
根粒菌 エンドウやクローバーなどマメ科植物の根に共生し、根粒を形成するバクテリアの一種。大気中の窒素をアンモニアに変換し(窒素固定という)、共生する植物に供給する。土壌改良に役立つ。 団粒構造 土中の微生物が有機物を分解したときに糊状の粘着物質を出し、土の粒子をまとめることで発達する。土の中に多くの隙間(孔隙)ができ、そこに空気や水が入り込み、微生物がすみやすい環境になる。通気性や保水性、排水性に優れている。
フォーパーミル・イニシアチブ 地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」を採択した、2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)の際に、フランス政府主導で始まった取り組み。
プラネタリーバウンダリー 地球の壊滅的変化を回避するためには、気候、水環境、生態系など地球の環境容量を代表する9つのプラネタリーシステムが本来持つレジリエンス(回復力)の限界(臨界点)がどこにあるかを知ることが重要であるという考え方。
はちいち農園 神奈川県茅ヶ崎市にて、衣川木綿さん・晃さん夫妻が営む不耕起栽培、環境再生型有機農業の農園。地域内での契約販売のほか、ビーガンフードブランド〈81 SWEETS&DELI〉や、豆乳のアイスクリームブランド〈SOYSCREAM!!!〉の運営も手がけている。
UPDATER 再生可能エネルギー事業会社として2011年に設立(旧みんな電力)。電力トレーサビリティを商用化した再エネ事業「みんな電力」は、国内トップクラスのプラットフォーム。2021年よりソーラーシェアリングや土壌診断などによる土壌再生事業「みんな大地」を開始。
土壌は植物の根や微生物によって、大気中の炭素(二酸化炭素)の2倍の炭素を蓄えていると言われている。しかし表土を耕すと大気中に放出されてしまう。“農耕”というように、農=耕すことだと思われてきたが、脱炭素化社会への意識が高まる今、世界中で話題となっているのが、耕さない農業=不耕起栽培である。なる程そうなんですね。農薬や化学肥料を使用する慣行栽培の畑と、有機や不耕起栽培の畑では、存在する虫や排水性、根の張り方などが違うと感じています。農薬や化学肥料を使用していない畑だと細かい根が張り巡らされている。そして大気中の窒素を固定する根粒菌というバクテリアも多いですね。自然の植物は、根の菌根菌を通じてネットワークを張り巡らせ、自分の根が届かないところからも栄養を取っているんですね。耕さないことで表面を覆う雑草たちも、炭素を土壌に貯めてくれます。しかし土を耕耘すると好気性の微生物が活発になり、土壌の有機物の多くを分解して二酸化炭素を放出してしまう。だから不耕起栽培の面積に比例して炭素貯留量が増えるということなんです。全世界の土壌の表層の炭素量を、毎年0.4%ずつ増やすことができれば、人為的な活動による大気中への二酸化炭素の排出を相殺できるという「フォーパーミル・イニシアチブ」もそんな考え方ですね。農薬を与えると土壌の微生物の多様性が減り、炭素の貯留量も減ってしまう。同じ作物だけを育てることも、土壌微生物の多様性を崩してしまいます。だからうちでは、大豆を育てた後はいろんな草を生やしているんです。次に植えるのはまた大豆だから連作ではありますが、雑草のおかげで輪作になる。自然界にとっては雑草も野菜も区別ないですから。土を見て何を生やすか判断しますが、コントロールしすぎもよくないので難しいところ。植物は勝手に日光で光合成し、風が通れば二酸化炭素が供給され、雨で育っていく。だから私たちが行うことは、草を刈って敷き、土を肥やすというくらいで、手数をなるべく減らしながらやっていきたいと思っています。勉強になりますね。これからは、「消費者が生産者を選ぶ」から一歩進んで「消費者も生産に関わる」ことが重要だと考えています。もう「食」は待ってる時代じゃない。生産に関わっていくと、いろいろな農業があることもわかるし、自分の選択が気候変動に関わっていることもわかってくる。特定の農家から買うということも、選ぶだけより関わりが深い。関わるほどに安心感が増すものです。作業を手伝う、一緒に作るなど関わり方の濃度に比例して、食への不安は消えていくはず。スーパーの棚からお米が消えても、常日頃関わっているわが家には届くと思える。安心感は幸福度につながります。確かに消費者と生産者の協働事業になればいいですね。いわゆるシェア畑ではなく、みんなのコミュニティとしての畑。畑に行く頻度が決まっているわけではなく、ルールもないし、なんなら作業しなくてもいい。関与できることに対して価値を感じられるような仕組みなんですね。特に不耕起栽培は生産者と消費者の距離が近いんですよ。というのもトラクターを使わないから、手作業が多く、助けが必要になる。消費者も、種を蒔き、草を取り、収穫するといったプロセスに能動的に関わることで、共同生産者になれるわけです。体験っていうフィルターを通して知ることで、いろいろなことが腑に落ちるし、充実感もあるし、自己肯定感も上がる。自分の食べるものを自分で作るというのは命を守ること、生き方なんですよね。みんなが農家になる必要はないけれど、関わり方のバリエーションはいろいろある。地球再生をスピードアップするためには、個人だけでなく企業が賛同してくれるとインパクトが大きくなります。例えばナチュラルコスメブランドのLUSHでは、社員の方々の福利厚生として定期購入してくれています。それによって、企業として地球再生に参加したことになる。気候変動は個人では抱えきれない大きな課題ですが、〈SOYSCREAM!!!〉は子どもでもフォーパーミル・イニシアチブに関われるポップな方法なんです。土壌を耕さずに農作物を育てる農法。農作業に必要な燃料削減、生物保全などのメリットがある。リジェネラティブ(環境再生型)農業の代表的な手法の一つ。有機農法と組み合わせることが多いが、アメリカの大規模農場では、除草剤を使用し、遺伝子組み換え作物で収穫物を守ることも多い。大変共感できます。日本国内はもちろんですが、世界中に広がっていかないでしょうか。子どもたちのためにも子どもたち自身が農業に携わっていくことができるような仕組みづくりが必要なのではないでしょうか。
Part 1:土と野菜
土壌は植物の根や微生物によって、大気中の炭素(二酸化炭素)の2倍の炭素を蓄えていると言われている。しかし表土を耕すと大気中に放出されてしまう。“農耕”というように、農=耕すことだと思われてきたが、脱炭素化社会への意識が高まる今、世界中で話題となっているのが、耕さない農業=不耕起栽培である。そこで、不耕起栽培による土壌再生面積の拡大を目的としたアイスクリームブランド〈SOYSCREAM!!!〉を立ち上げ、不耕起栽培農家を支援するビジネスモデルを構築したはちいち農園と、土壌診断サービス「みんな大地」を提供しているUPDATERに話を聞いた。
UPDATER 私たちの土壌診断では、土の中の生態系の循環を現す指標として、土壌の有機物や微生物の量、菌根菌との共生状況を調べています。これまで60を超える畑を診断してきましたが、農薬や化学肥料を使用する慣行栽培の畑と、有機や不耕起栽培の畑では、存在する虫や排水性、根の張り方などが違うと感じています。例えば最近訪れた落花生の畑では、慣行栽培の畑だと短くて太い根っこがちょろっとあるだけですが、農薬や化学肥料を使用していない畑だと細かい根が張り巡らされている。そして大気中の窒素を固定する根粒菌というバクテリアも多いですね。
はちいち農園 それは栽培方法が、植物の栄養の取り方や、菌との共生の仕方に影響を与えているからですね。慣行栽培の根の張りが浅いのは、肥料によって栄養が足りていて取りにいく必要がないから。いっぽうで自然の植物は、根の菌根菌を通じてネットワークを張り巡らせ、自分の根が届かないところからも栄養を取っているんですね。
UPDATER はちいち農園さんの土が団粒構造であることもひと目でわかります。耕すとこの構造が破壊されて、水はけや通気性が悪くなることもあるんです。昨年から2回に亘って土壌を診断しましたが、炭素貯留量は地域の標準の約2倍でした。土壌が変化するには時間がかかりますが、このまま定着して増え続ければ、地球温暖化防止効果も、農業生産性もアップするはず。英国ローザムステッド農業試験場における150年を超える長期連用試験のデータを見ると、炭素貯留量はまだ増やせることがわかります。
はちいち農園 結果を見ると、土壌を可視化できて面白いですね。不耕起栽培という私たちの農法が、環境にいいとわかるのもうれしい。一般的に農家が土壌診断をするのは、過不足を知って肥料で調整したりするためですが、私たちは社会的な意味があるのか知りたくてお願いしました。土壌が再生されていくことが明白になったので、不耕起栽培にトライする農家の励みになるだろうし、そんな農家が増えるきっかけになるといいなと思っています。
UPDATER 土壌に炭素が貯留するメカニズムは、植物が光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、それが枯れると一部が土壌中で分解されにくい有機炭素になるというもの。耕さないことで表面を覆う雑草たちも、炭素を土壌に貯めてくれます。しかし土を耕耘すると好気性の微生物が活発になり、土壌の有機物の多くを分解して二酸化炭素を放出してしまう。だから不耕起栽培の面積に比例して炭素貯留量が増えるということなんです。全世界の土壌の表層の炭素量を、毎年0.4%ずつ増やすことができれば、人為的な活動による大気中への二酸化炭素の排出を相殺できるという「フォーパーミル・イニシアチブ」もそんな考え方ですね。
はちいち農園 生物多様性にも着目するべきですよね。プラネタリーバウンダリーの表を見ても、生物圏の一体性は限界を超えています。土壌の微生物や菌が多様だと、炭素の固定と分解のバランスがとれる。しかし農薬を与えると土壌の微生物の多様性が減り、炭素の貯留量も減ってしまう。
UPDATER 土壌の生物多様性は作物生産や炭素貯留だけでなく、地上の生き物たちの多様性を支えます。なので、日本の99%を占める慣行農地が一部でも減農薬や農薬を使わない農法に変わることが、地域の生物多様性を高めるうえで大切です。
はちいち農園 同じ作物だけを育てることも、土壌微生物の多様性を崩してしまいます。
だからうちでは、大豆を育てた後はいろんな草を生やしているんです。次に植えるのはまた大豆だから連作ではありますが、雑草のおかげで輪作になる。自然界にとっては雑草も野菜も区別ないですから。土を見て何を生やすか判断しますが、コントロールしすぎもよくないので難しいところ。植物は勝手に日光で光合成し、風が通れば二酸化炭素が供給され、雨で育っていく。だから私たちが行うことは、草を刈って敷き、土を肥やすというくらいで、手数をなるべく減らしながらやっていきたいと思っています。
UPDATER そうやって生産者の方々が地道に取り組まれていることを土壌診断による数値で可視化することが、その意義や目的を伝える手段の一つになれたらと思っています。これが消費者にとっても生産者を選ぶ基準になるといいなと。
選ぶだけでなく生産に関わることが必要
はちいち農園 これからは、「消費者が生産者を選ぶ」から一歩進んで「消費者も生産に関わる」ことが重要だと考えています。もう「食」は待ってる時代じゃない。生産に関わっていくと、いろいろな農業があることもわかるし、自分の選択が気候変動に関わっていることもわかってくる。特定の農家から買うということも、選ぶだけより関わりが深い。関わるほどに安心感が増すものです。作業を手伝う、一緒に作るなど関わり方の濃度に比例して、食への不安は消えていくはず。スーパーの棚からお米が消えても、常日頃関わっているわが家には届くと思える。安心感は幸福度につながります。
UPDATER はちいち農園さんのハーベストコモンズは、まさに自分が関われる生産方法ですよね。いわゆるシェア畑ではなく、みんなのコミュニティとしての畑。畑に行く頻度が決まっているわけではなく、ルールもないし、なんなら作業しなくてもいい。関与できることに対して価値を感じられるような仕組みなんですね。
はちいち農園 特に不耕起栽培は生産者と消費者の距離が近いんですよ。というのもトラクターを使わないから、手作業が多く、助けが必要になる。消費者も、種を蒔き、草を取り、収穫するといったプロセスに能動的に関わることで、共同生産者になれるわけです。体験っていうフィルターを通して知ることで、いろいろなことが腑に落ちるし、充実感もあるし、自己肯定感も上がる。自分の食べるものを自分で作るというのは命を守ること、生き方なんですよね。みんなが農家になる必要はないけれど、関わり方のバリエーションはいろいろある。〈SOYSCREAM!!!〉もその一つです。
UPDATER 食と土壌の関係、地球再生について知るきっかけにもなりますね。 はちいち農園 このシステムを構築するのに、3ヵ月ほど必死で考えました。環境のために不耕起栽培にトライする人を増やしたい。大豆は痩せた土地でも比較的育ちやすいし、マメ科の植物は根っこに共生している根粒菌が大気の窒素を使って土を育ててくれる。だからまずは大豆を育ててもらい、それを買い取ることで営農をサポートしよう、買い取った大豆を販路にのせるには何をすればいいだろう、と考えたんです。
UPDATER おいしく食べることで世界を変えられるなんて、これまでにない試みですよね。
はちいち農園 地球再生をスピードアップするためには、個人だけでなく企業が賛同してくれるとインパクトが大きくなります。例えばナチュラルコスメブランドのLUSHでは、社員の方々の福利厚生として定期購入してくれています。それによって、企業として地球再生に参加したことになる。気候変動は個人では抱えきれない大きな課題ですが、〈SOYSCREAM!!!〉は子どもでもフォーパーミル・イニシアチブに関われるポップな方法なんです。
UPDATER 不耕起栽培が拡大しそうなビジネスモデルですよね。再生土壌面積が拡大して、地球温暖化が緩和していくことを期待しています。
不耕起栽培 土壌を耕さずに農作物を育てる農法。農作業に必要な燃料削減、生物保全などのメリットがある。リジェネラティブ(環境再生型)農業の代表的な手法の一つ。有機農法と組み合わせることが多いが、アメリカの大規模農場では、除草剤を使用し、遺伝子組み換え作物で収穫物を守ることも多い。
菌根菌 植物の根に共生する糸状菌の一種。菌糸を広く伸ばし、土の中の養分、特にリンを吸収し、植物に供給する。一方、根からは光合成の産物である炭素化合物が菌根菌へ供給される。肥料によるリン酸過多や農薬の影響があると、生息しにくい。
根粒菌 エンドウやクローバーなどマメ科植物の根に共生し、根粒を形成するバクテリアの一種。大気中の窒素をアンモニアに変換し(窒素固定という)、共生する植物に供給する。土壌改良に役立つ。 団粒構造 土中の微生物が有機物を分解したときに糊状の粘着物質を出し、土の粒子をまとめることで発達する。土の中に多くの隙間(孔隙)ができ、そこに空気や水が入り込み、微生物がすみやすい環境になる。通気性や保水性、排水性に優れている。
フォーパーミル・イニシアチブ 地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」を採択した、2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)の際に、フランス政府主導で始まった取り組み。
プラネタリーバウンダリー 地球の壊滅的変化を回避するためには、気候、水環境、生態系など地球の環境容量を代表する9つのプラネタリーシステムが本来持つレジリエンス(回復力)の限界(臨界点)がどこにあるかを知ることが重要であるという考え方。
はちいち農園 神奈川県茅ヶ崎市にて、衣川木綿さん・晃さん夫妻が営む不耕起栽培、環境再生型有機農業の農園。地域内での契約販売のほか、ビーガンフードブランド〈81 SWEETS&DELI〉や、豆乳のアイスクリームブランド〈SOYSCREAM!!!〉の運営も手がけている。
UPDATER 再生可能エネルギー事業会社として2011年に設立(旧みんな電力)。電力トレーサビリティを商用化した再エネ事業「みんな電力」は、国内トップクラスのプラットフォーム。2021年よりソーラーシェアリングや土壌診断などによる土壌再生事業「みんな大地」を開始。
土壌は植物の根や微生物によって、大気中の炭素(二酸化炭素)の2倍の炭素を蓄えていると言われている。しかし表土を耕すと大気中に放出されてしまう。“農耕”というように、農=耕すことだと思われてきたが、脱炭素化社会への意識が高まる今、世界中で話題となっているのが、耕さない農業=不耕起栽培である。なる程そうなんですね。農薬や化学肥料を使用する慣行栽培の畑と、有機や不耕起栽培の畑では、存在する虫や排水性、根の張り方などが違うと感じています。農薬や化学肥料を使用していない畑だと細かい根が張り巡らされている。そして大気中の窒素を固定する根粒菌というバクテリアも多いですね。自然の植物は、根の菌根菌を通じてネットワークを張り巡らせ、自分の根が届かないところからも栄養を取っているんですね。耕さないことで表面を覆う雑草たちも、炭素を土壌に貯めてくれます。しかし土を耕耘すると好気性の微生物が活発になり、土壌の有機物の多くを分解して二酸化炭素を放出してしまう。だから不耕起栽培の面積に比例して炭素貯留量が増えるということなんです。全世界の土壌の表層の炭素量を、毎年0.4%ずつ増やすことができれば、人為的な活動による大気中への二酸化炭素の排出を相殺できるという「フォーパーミル・イニシアチブ」もそんな考え方ですね。農薬を与えると土壌の微生物の多様性が減り、炭素の貯留量も減ってしまう。同じ作物だけを育てることも、土壌微生物の多様性を崩してしまいます。だからうちでは、大豆を育てた後はいろんな草を生やしているんです。次に植えるのはまた大豆だから連作ではありますが、雑草のおかげで輪作になる。自然界にとっては雑草も野菜も区別ないですから。土を見て何を生やすか判断しますが、コントロールしすぎもよくないので難しいところ。植物は勝手に日光で光合成し、風が通れば二酸化炭素が供給され、雨で育っていく。だから私たちが行うことは、草を刈って敷き、土を肥やすというくらいで、手数をなるべく減らしながらやっていきたいと思っています。勉強になりますね。これからは、「消費者が生産者を選ぶ」から一歩進んで「消費者も生産に関わる」ことが重要だと考えています。もう「食」は待ってる時代じゃない。生産に関わっていくと、いろいろな農業があることもわかるし、自分の選択が気候変動に関わっていることもわかってくる。特定の農家から買うということも、選ぶだけより関わりが深い。関わるほどに安心感が増すものです。作業を手伝う、一緒に作るなど関わり方の濃度に比例して、食への不安は消えていくはず。スーパーの棚からお米が消えても、常日頃関わっているわが家には届くと思える。安心感は幸福度につながります。確かに消費者と生産者の協働事業になればいいですね。いわゆるシェア畑ではなく、みんなのコミュニティとしての畑。畑に行く頻度が決まっているわけではなく、ルールもないし、なんなら作業しなくてもいい。関与できることに対して価値を感じられるような仕組みなんですね。特に不耕起栽培は生産者と消費者の距離が近いんですよ。というのもトラクターを使わないから、手作業が多く、助けが必要になる。消費者も、種を蒔き、草を取り、収穫するといったプロセスに能動的に関わることで、共同生産者になれるわけです。体験っていうフィルターを通して知ることで、いろいろなことが腑に落ちるし、充実感もあるし、自己肯定感も上がる。自分の食べるものを自分で作るというのは命を守ること、生き方なんですよね。みんなが農家になる必要はないけれど、関わり方のバリエーションはいろいろある。地球再生をスピードアップするためには、個人だけでなく企業が賛同してくれるとインパクトが大きくなります。例えばナチュラルコスメブランドのLUSHでは、社員の方々の福利厚生として定期購入してくれています。それによって、企業として地球再生に参加したことになる。気候変動は個人では抱えきれない大きな課題ですが、〈SOYSCREAM!!!〉は子どもでもフォーパーミル・イニシアチブに関われるポップな方法なんです。土壌を耕さずに農作物を育てる農法。農作業に必要な燃料削減、生物保全などのメリットがある。リジェネラティブ(環境再生型)農業の代表的な手法の一つ。有機農法と組み合わせることが多いが、アメリカの大規模農場では、除草剤を使用し、遺伝子組み換え作物で収穫物を守ることも多い。大変共感できます。日本国内はもちろんですが、世界中に広がっていかないでしょうか。子どもたちのためにも子どもたち自身が農業に携わっていくことができるような仕組みづくりが必要なのではないでしょうか。



