日本はこれからどうしていくのか、世界が参考にできるのか[2025年12月23日(Tue)]
COURRiER2025年7月26日付け「人口減少の“先頭集団”を走る日本の大規模データから世界が学ぶべき重要な教訓」から、人口増加が環境問題の原因だとすれば、人口減少は自然環境の回復につながるのだろうか。話はそう単純ではないようだ。世界のなかでも人口減少の“先頭集団”を走る日本の各地で集められた生物多様性データと地域の人口や土地の利用などを比較して見えてきたこととは?
英シェフィールド大学の日本研究者ピーター・マタンルと日本の学者たちが貴重な共同研究の成果を簡潔に解説する。
1970年以降、世界の野生生物の73%が失われている一方で、世界人口は倍増して、80億人を突破した。
これは偶然ではない。人口増加が生物多様性を壊滅的に減少させていることは研究で示されている。
その一方で、人類史は転換点を迎えてもいる。国連は、2050年までに85ヵ国の人口が減少すると予測している。その大半は、欧州とアジアの国々だ。2100年までに、人口は世界的に減少していく。この傾向は環境にとってはよいことだという意見もある。
2010年、日本はアジアで初めて人口減少しはじめた国となった。韓国、中国、台湾がそのすぐあとに続いている。2014年、イタリアが南欧で初めて人口減少しはじめ、それにスペイン、ポルトガルなどが続いている。
日本とイタリアは、「人口減少の先駆け国」と呼ばれている。それぞれの地域で人口減少ゆえに起こりうる結果を理解する先駆者としての役割を担っているからだ。
人口減少は環境の再生に資するかもしれないとの仮定に基づき、われわれはヤン・リや藤田卓との共同研究で、日本が「人口減少の恩恵」を受けているのか、あるいはそうでないのかを調べてきた。
2003年以来、大勢の市民科学者たちが、日本政府の「モニタリングサイト1000」事業のために生物多様性データを収集してきた。
このようにして日本全国158地点で収集された多種多様な生物種の膨大な観察記録(確認された個体総数は150万以上)を、われわれは分析の対象とした。こうした地点は、雑木林や農業地帯、都市近郊部にあった。
われわれはこれらの観察記録と、現地の人口、土地の利用、地表温度の変化を、5〜20年の期間で比較した。
学術誌「ネイチャー・サステイナビリティ」に掲載されたわれわれの研究には、鳥、チョウ、ホタル、カエルなどの動物や、2922種の自生・外来植物が含まれている。対象となった場所は1990年代以降、これまでにない人口減少に直面してきた。
データベースの規模、場所の選択、そして東北アジアでの人口減少“先進国”たる日本の位置づけゆえに、われわれの研究はこの分野では最大規模である。
日本はチョルノービリではない
生物多様性は、われわれが研究した地域のほとんどで、人口の増減にかかわらず、減少しつづけていた。
人口が一定に保たれているところでのみ、生物多様性はより安定している。だが、こうした地域の人口も高齢化し、ほどなく減少するので、生物多様性をすでに失いつつある地域に近づいていくことにはなる。
突然の危機(原発事故)により、ほぼ全住民が避難を余儀なくされ、野生生物が驚異的な復活を見せたチョルノービリとは違って、日本の人口減少は徐々に進んできた。日本では、機能している地域共同体のなかで、土地の利用がまばらに変化していくのだ。
大半の農地は耕作地のままだが、一部は使われなくなったり、放置されたりしている。
都市開発のために売却されたり、意図的に田園風景へと変えられたりしているところもある。そのため、生物多様性が増すような、広範囲にわたる植物の成長が自然に続いていかず、かといって人工的な植林もできない状況にある。
こうした地域では、人間が生態系の持続可能性に責任を持っている。田んぼの水張りや田植え、稲刈り、果樹園や雑木林の管理、家屋の維持など、伝統的な農業や季節ごとの風習が、生物多様性を維持するためには大切なのだ。
したがって、人口減少は自然破壊につながりかねない。増え広がる生物種もあるが、それらは外来種である場合も多く、また別の問題を生んでいる。たとえば、強力な草がはびこり、かつては湿っていた田んぼが干上がったり詰まったりしてしまうなどだ。
空き家や廃屋、あまり使われていないインフラ、法的な問題(複雑な相続法や土地税、地方自治体の行政能力の不足、高くつく取り壊しや廃棄の費用など)が事態を複雑にしている。
空き家の数は、日本の住宅戸数の15%近くにまで増加しているにもかかわらず、新居は飽くことなく建てつづけられている。2024年には79万戸以上が建てられたが、これは日本の人口分布や家族構成が変わりつつあることも一因だ。
こうした状況に、道路や、ショッピングモール、スポーツ施設、駐車場、コンビニも加味しなければならない。あれやこれやで、人は減っていても、野生生物が生息するための場所はそこまでないということになるのだ。
1970年以降、世界の野生生物の73%が失われている一方で、世界人口は倍増して、80億人を突破した。これは偶然ではない。人口増加が生物多様性を壊滅的に減少させていることは研究で示されている。その一方で、人類史は転換点を迎えてもいる。国連は、2050年までに85ヵ国の人口が減少すると予測している。その大半は、欧州とアジアの国々だ。2100年までに、人口は世界的に減少していく。2010年、日本はアジアで初めて人口減少しはじめた国となった。韓国、中国、台湾がそのすぐあとに続いている。2014年、イタリアが南欧で初めて人口減少しはじめ、それにスペイン、ポルトガルなどが続いている。日本とイタリアは、「人口減少の先駆け国」と呼ばれている。それぞれの地域で人口減少ゆえに起こりうる結果を理解する先駆者としての役割を担っているからだ。日本の人口減少は徐々に進んできた。日本では、機能している地域共同体のなかで、土地の利用がまばらに変化していくのだ。大半の農地は耕作地のままだが、一部は使われなくなったり、放置されたりしている。都市開発のために売却されたり、意図的に田園風景へと変えられたりしているところもある。そのため、生物多様性が増すような、広範囲にわたる植物の成長が自然に続いていかず、かといって人工的な植林もできない状況にある。こうした地域では、人間が生態系の持続可能性に責任を持っている。田んぼの水張りや田植え、稲刈り、果樹園や雑木林の管理、家屋の維持など、伝統的な農業や季節ごとの風習が、生物多様性を維持するためには大切なのだ。したがって、人口減少は自然破壊につながりかねない。増え広がる生物種もあるが、それらは外来種である場合も多く、また別の問題を生んでいる。たとえば、強力な草がはびこり、かつては湿っていた田んぼが干上がったり詰まったりしてしまうなどだ。空き家や廃屋、あまり使われていないインフラ、法的な問題(複雑な相続法や土地税、地方自治体の行政能力の不足、高くつく取り壊しや廃棄の費用など)が事態を複雑にしている。空き家の数は、日本の住宅戸数の15%近くにまで増加しているにもかかわらず、新居は飽くことなく建てつづけられている。2024年には79万戸以上が建てられたが、これは日本の人口分布や家族構成が変わりつつあることも一因だ。こうした状況に、道路や、ショッピングモール、スポーツ施設、駐車場、コンビニも加味しなければならない。あれやこれやで、人は減っていても、野生生物が生息するための場所はそこまでないということになるのだ。空き家が増え続けているのに新築住宅が増え続けるという矛盾するような住宅政策は間違っているのではないでしょうか。野生生物に限らず住んでいる人たちにとって日本は厳しい未来が待ち受けているのかもしれません。国民は覚悟ができているでしょうか。そうでなければ声を上げて一人ひとりが住み易い社会を実現する努力をしなければならないでしょう。
英シェフィールド大学の日本研究者ピーター・マタンルと日本の学者たちが貴重な共同研究の成果を簡潔に解説する。
1970年以降、世界の野生生物の73%が失われている一方で、世界人口は倍増して、80億人を突破した。
これは偶然ではない。人口増加が生物多様性を壊滅的に減少させていることは研究で示されている。
その一方で、人類史は転換点を迎えてもいる。国連は、2050年までに85ヵ国の人口が減少すると予測している。その大半は、欧州とアジアの国々だ。2100年までに、人口は世界的に減少していく。この傾向は環境にとってはよいことだという意見もある。
2010年、日本はアジアで初めて人口減少しはじめた国となった。韓国、中国、台湾がそのすぐあとに続いている。2014年、イタリアが南欧で初めて人口減少しはじめ、それにスペイン、ポルトガルなどが続いている。
日本とイタリアは、「人口減少の先駆け国」と呼ばれている。それぞれの地域で人口減少ゆえに起こりうる結果を理解する先駆者としての役割を担っているからだ。
人口減少は環境の再生に資するかもしれないとの仮定に基づき、われわれはヤン・リや藤田卓との共同研究で、日本が「人口減少の恩恵」を受けているのか、あるいはそうでないのかを調べてきた。
2003年以来、大勢の市民科学者たちが、日本政府の「モニタリングサイト1000」事業のために生物多様性データを収集してきた。
このようにして日本全国158地点で収集された多種多様な生物種の膨大な観察記録(確認された個体総数は150万以上)を、われわれは分析の対象とした。こうした地点は、雑木林や農業地帯、都市近郊部にあった。
われわれはこれらの観察記録と、現地の人口、土地の利用、地表温度の変化を、5〜20年の期間で比較した。
学術誌「ネイチャー・サステイナビリティ」に掲載されたわれわれの研究には、鳥、チョウ、ホタル、カエルなどの動物や、2922種の自生・外来植物が含まれている。対象となった場所は1990年代以降、これまでにない人口減少に直面してきた。
データベースの規模、場所の選択、そして東北アジアでの人口減少“先進国”たる日本の位置づけゆえに、われわれの研究はこの分野では最大規模である。
日本はチョルノービリではない
生物多様性は、われわれが研究した地域のほとんどで、人口の増減にかかわらず、減少しつづけていた。
人口が一定に保たれているところでのみ、生物多様性はより安定している。だが、こうした地域の人口も高齢化し、ほどなく減少するので、生物多様性をすでに失いつつある地域に近づいていくことにはなる。
突然の危機(原発事故)により、ほぼ全住民が避難を余儀なくされ、野生生物が驚異的な復活を見せたチョルノービリとは違って、日本の人口減少は徐々に進んできた。日本では、機能している地域共同体のなかで、土地の利用がまばらに変化していくのだ。
大半の農地は耕作地のままだが、一部は使われなくなったり、放置されたりしている。
都市開発のために売却されたり、意図的に田園風景へと変えられたりしているところもある。そのため、生物多様性が増すような、広範囲にわたる植物の成長が自然に続いていかず、かといって人工的な植林もできない状況にある。
こうした地域では、人間が生態系の持続可能性に責任を持っている。田んぼの水張りや田植え、稲刈り、果樹園や雑木林の管理、家屋の維持など、伝統的な農業や季節ごとの風習が、生物多様性を維持するためには大切なのだ。
したがって、人口減少は自然破壊につながりかねない。増え広がる生物種もあるが、それらは外来種である場合も多く、また別の問題を生んでいる。たとえば、強力な草がはびこり、かつては湿っていた田んぼが干上がったり詰まったりしてしまうなどだ。
空き家や廃屋、あまり使われていないインフラ、法的な問題(複雑な相続法や土地税、地方自治体の行政能力の不足、高くつく取り壊しや廃棄の費用など)が事態を複雑にしている。
空き家の数は、日本の住宅戸数の15%近くにまで増加しているにもかかわらず、新居は飽くことなく建てつづけられている。2024年には79万戸以上が建てられたが、これは日本の人口分布や家族構成が変わりつつあることも一因だ。
こうした状況に、道路や、ショッピングモール、スポーツ施設、駐車場、コンビニも加味しなければならない。あれやこれやで、人は減っていても、野生生物が生息するための場所はそこまでないということになるのだ。
1970年以降、世界の野生生物の73%が失われている一方で、世界人口は倍増して、80億人を突破した。これは偶然ではない。人口増加が生物多様性を壊滅的に減少させていることは研究で示されている。その一方で、人類史は転換点を迎えてもいる。国連は、2050年までに85ヵ国の人口が減少すると予測している。その大半は、欧州とアジアの国々だ。2100年までに、人口は世界的に減少していく。2010年、日本はアジアで初めて人口減少しはじめた国となった。韓国、中国、台湾がそのすぐあとに続いている。2014年、イタリアが南欧で初めて人口減少しはじめ、それにスペイン、ポルトガルなどが続いている。日本とイタリアは、「人口減少の先駆け国」と呼ばれている。それぞれの地域で人口減少ゆえに起こりうる結果を理解する先駆者としての役割を担っているからだ。日本の人口減少は徐々に進んできた。日本では、機能している地域共同体のなかで、土地の利用がまばらに変化していくのだ。大半の農地は耕作地のままだが、一部は使われなくなったり、放置されたりしている。都市開発のために売却されたり、意図的に田園風景へと変えられたりしているところもある。そのため、生物多様性が増すような、広範囲にわたる植物の成長が自然に続いていかず、かといって人工的な植林もできない状況にある。こうした地域では、人間が生態系の持続可能性に責任を持っている。田んぼの水張りや田植え、稲刈り、果樹園や雑木林の管理、家屋の維持など、伝統的な農業や季節ごとの風習が、生物多様性を維持するためには大切なのだ。したがって、人口減少は自然破壊につながりかねない。増え広がる生物種もあるが、それらは外来種である場合も多く、また別の問題を生んでいる。たとえば、強力な草がはびこり、かつては湿っていた田んぼが干上がったり詰まったりしてしまうなどだ。空き家や廃屋、あまり使われていないインフラ、法的な問題(複雑な相続法や土地税、地方自治体の行政能力の不足、高くつく取り壊しや廃棄の費用など)が事態を複雑にしている。空き家の数は、日本の住宅戸数の15%近くにまで増加しているにもかかわらず、新居は飽くことなく建てつづけられている。2024年には79万戸以上が建てられたが、これは日本の人口分布や家族構成が変わりつつあることも一因だ。こうした状況に、道路や、ショッピングモール、スポーツ施設、駐車場、コンビニも加味しなければならない。あれやこれやで、人は減っていても、野生生物が生息するための場所はそこまでないということになるのだ。空き家が増え続けているのに新築住宅が増え続けるという矛盾するような住宅政策は間違っているのではないでしょうか。野生生物に限らず住んでいる人たちにとって日本は厳しい未来が待ち受けているのかもしれません。国民は覚悟ができているでしょうか。そうでなければ声を上げて一人ひとりが住み易い社会を実現する努力をしなければならないでしょう。



