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地方の過疎地の状況はこれからの日本の縮図かもしれない[2025年09月22日(Mon)]
 Yahooニュース2025年5月22日付け「ドキュメンタリー映画『能登デモクラシー』が映し出したこの国の民主主義の縮図」から、5月17日から東京・ポレポレ東中野、大阪第七藝術劇場を始め全国公開されているのが、石川テレビ製作の『能登デモクラシー』だ。監督を務めた五百旗頭幸男さんは石川テレビドキュメンタリー制作部のディレクターだ。その五百旗頭さんにこの作品について話を聞いた。
地方にこそこの国の縮図が見える
五百旗頭さんは2020年にチューリップテレビを辞めて石川テレビに入社し、ドキュメンタリーを作ってきたわけですね。
五百旗頭 もともと石川テレビは僕が入社する10年前ぐらいまで赤井朱美さんという女性の名物ディレクターがおられたんです。一時代を築かれた方で、賞をいっぱいとっていて、「ドキュメンタリーの石川テレビ」と言われた時代があったんです。その方が辞められてからなかなか結果が出てなくて、僕は入社した時に、そこを立て直してほしいと言われました。ドキュメンタリーの専門部署があるのが石川テレビの特徴ですが、専門部署といっても僕と部長の2人なんです。
報道のルーティンの仕事はやってないわけですか?
五百旗頭 入社した当初はやってたんですが、すぐ前作『裸のムラ』の制作に入ったので、そこからはずっとドキュメンタリー一本です。『裸のムラ』は番組を作ってその後すぐ映画になったのですが、その後、今度は『能登デモクラシー』の取材に入りました。この作品も2024年5月にテレビ番組として放送し、今回、映画になったのです。
『能登デモクラシー』は、ローカルにおけるデモクラシーのあり方を通してこの国の民主主義について考えてみようという作品だと思いますが、そのテーマ設定は早い段階からしていたのですか?
五百旗頭 僕はローカル局の人間なので、ローカルを題材、テーマにするしかないというのは物理的な条件としてあります。ただ、地方にこそ、この国の縮図だったり、いま国全体で起きている問題だったり、そういうものが見えると思っています。過疎に関しては、中央より地方の方が進んでいるわけです。しかも穴水は、完全に人口減少の最終段階で、お年寄りも若い人たちも共に減っている。ある意味、東京とか都会の20年30年先を行っているわけです。そこを見つめればこの国の未来が見えるという、そういった視点で制作しました。
テレビと違って映画は全国の人たちが観るわけで、穴水の状況を、東京の人たちがどう観るか興味深いですね。
五百旗頭 東京とか、大都市の人たちが奥能登の穴水町で起こっている、民主主義の崩壊やそこから変わっていこうとするところ、あとはメインの被写体である滝井元之さんの地味で平凡な取り組みをどう受けとめるかですね。
 滝井さんについて言えば、今のSNSとかネット空間に生きる人たちからしたら退屈と思われるようなことをコツコツ積み上げていった先に、住民同士の深い信頼関係がある。ネット空間のアテンションエコノミーに影響を受けてる世の中の人たちが、これをどう受け止めるか、すごく気になります。
オールドメディアとの批判と記者としての原点
滝井さんは『紡ぐ』という手書きの新聞を作って地域で配布しているわけですが、「手書き」というのがすごいですね。
五百旗頭 手書きで、しかもそれを自分の足で仮設住宅に届けて、自分の声とともに手渡しているんです。何でもネットで済ませる時代にあって、全部アナログだし、そこに身体性が伴っている。あの地域で信頼関係を築くためには、そこに自分の身体が伴っていることが大切なのかと改めて感じました。
 もともと滝井さんは学校の先生をされていたので、学級通信を書かれていた。また組合活動をされてたこともあって、書くのが早いんです。びっくりするのが、全部書き切った後に「やっぱこれダメだ」と言って捨てるんですよ。途中で書き直せばいいのに、全部書き切った後に「やっぱり納得いかん」と、一から書き直す。
 僕は記者としての原点みたいなものを滝井さんの中に見ました。今はコスパ重視で即効性が求められてますが、メディアが市民との信頼関係を築くことは一朝一夕にはいかない。そこがすごくいま見失われかけてると思うんです。
 去年は兵庫県知事選挙や他の選挙も含めて、僕たちはオールドメディアとくくられて批判されているじゃないですか。そういう状況をすごく意識しながらこの作品の取材も進めたし、最終的な編集においても意識せざるを得なかったですね。今のこの国の問題が穴水町にはいくつも詰まっていると思います。
 ただ一方で、穴水町には分断は起きてないんですよ。民主主義の崩壊が見えたし、いろんな問題は孕んでるんだけど、民主主義が再生する素地みたいなのは穴水町には残っている。その辺も含めてこの国の今を生きる人たちが穴水町をどう見るか、どう思うか、そこはすごく注目してます。
滝井さん夫妻については、テレビ版の時からいろんな反応が出ていたのですね。
五百旗頭 テレビ版を放送した後、穴水町内で滝井さんご夫妻には好意的な反応が圧倒的に多かったのです。滝井さんがこれまでずっとコツコツやってきた活動がいかに信頼されていたかということがよくわかりました。滝井さんの活動を知らなかった方々も番組で観て応援したいとなった方が多かったと思います。
大事な家族を守り切れているのかという視点も
映画の中で、奥さんの順子さんがなかなかいいポジションですね。
五百旗頭 順子さんは重要な登場人物で、初めて会った時に「この人は絶対必要だ」と思いました。7匹の猫も含めてですね。最初取材は拒否されたんですが、順子さんを描くことによって、僕が特に意識したのは、滝井さんはすごくリスペクトされるべきことをやられているのですが、一方で取材者としては、滝井さんに対する引いた視点もあるわけです。
 それは何かというと、震災の時もそうですし、災害など大きなことが起こった時に、いつも順子さんが滝又集落の自宅で独りぼっちで取り残されているんです。僕たちが取材に行くと、不安感や恐怖心、孤独な思いをぶつけてくれたので、痛いほど順子さんの気持ちは伝わりました。滝井さんは町を変えるため、町の民主主義を取り戻すために、すごく大切なことをやられているんだけど、一方で、一番大事なはずの家族を守り切れてるのか、という視点です。そこに矛盾が孕んでいると思ったので、隠さずに描こうと思いました。当然それは滝井さんも葛藤があってやられていることなんですが、自分が作り手としてこんなふうに滝井さんを見ているというのは、ちゃんと表現として入れたいという思いはありました。
 あと順子さんに関して重要なのは、いま常識や倫理、これまで当たり前にあったものが失われている世の中にあって、さりげなくいつも「ありがとう」という言葉をかけてくれる。それをずっと見ていて、これまで当たり前にあったものでこれからもそこにあり続けてほしいと、すごく尊いものに感じたんです。
 大胆な行動を起こす人や強い言葉を吐く人が今、注目されているんですけど、世の中ですごく大事なことって、平凡で地味で退屈なこと、ずっとそこにあり続け、これからもあり続けてほしい、そういったものをどう表現するか考えました。その1つが、順子さんの描き方に現れているかなと思います。
順子さんは、最初取材は拒否されたのですね。
五百旗頭 カメラ取材は嫌だとは言われたんですけど、当初から僕たちが取材に来ること自体は喜んでいただいてました。限界集落で1人で過ごす時間が多いじゃないですか。カメラマンと音声マンと僕の3人で行って午前中から取材に入ったら、「お昼ご飯食べていきなさい」と言われるんです。そこでいろいろ料理を振る舞ってくれて、それを僕らは遠慮せずいただいてたんです。
 そういったこともすごく順子さんにとっては嬉しかったみたいです。取材者としては断るべきだと最初は思ってたんですけど、順子さんが限界集落でどういった気持ちでおられるかすごく伝わってきてたので、そこは喜んでお受けすることにしました。カメラマンが結構大食いで、お代わりすると順子さんはすごく喜んでくれました。
民主主義の崩壊から再生へ
『能登デモクラシー』という映画のタイトルは、「ノットデモクラシー」という意味も含めていると話されていますね。
五百旗頭 もともとは、「過疎デモクラシー」とか、「田舎デモクラシー」みたいなイメージだったんです。でも「震災」があったので、「能登」というキーワードが必要だなと思い始めました。取材の始まりが民主主義の否定を見たところから始まっているので、「ノットデモクラシー」とか「ノートゥデモクラシー」とかいう意味もかけています。
昨年放送したテレビ版と今回の映画はどこが違うのですか。
五百旗頭 もともと最初は石川県穴水町を舞台に過疎と民主主義≠ニいうテーマで取材を始めて、民主主義の崩壊というところが見えてきたのですが、そこまでがテレビ版のテーマでした。映画版に関しては、そこからさらに民主主義の崩壊から再生へ転じる部分が入って、というところです。番組版では、民主主義の再生というところまでは描けていませんでした。
テレビ版の地元の反応はどうでしたか?
五百旗頭 特に穴水町の反響が大きくて、しかも村社会ですから、何かしら悪い反応が起こるかなと思ってたんです。滝井さんに対する誹謗中傷や攻撃が起こる可能性も危惧してましたし、石川テレビに対して批判的なメールや電話があるかなと思ってたんです。でも実際は全くなくて、滝井さんに対しては非常に好意的な声が寄せられました。それは嬉しい誤算で、そういう反応が大きかったので「映画にしよう」となっていったのです。
穴水湾に浮かぶ漁業用の「ボラ待ちやぐら」が四季折々、とても印象的に描かれていて、あの編集には多くの人が評価を寄せていますね。
五百旗頭 あれは完全にメタファーカットで、番組版の時にも入れたかったんだけど、四季折々のもので撮り切れてなかったので使ってなかったんです。ただ、編集マンと「映画にする時は絶対入れたいな」と言ってて、しかも、滝井さんが『紡ぐ』の中でも言ってるわけです。だからすごく重要なカットになるなっていうのは分かってたので、映画の時は狙いに行きました。
 ともあれ『能登デモクラシー』は、この国の多くの人たちに観てもらいたい作品ですね。DSC00426.JPG

 『能登デモクラシー』は、ローカルにおけるデモクラシーのあり方を通してこの国の民主主義について考えてみようという作品だと思います。地方にこそ、この国の縮図だったり、いま国全体で起きている問題だったり、そういうものが見えると思っています。過疎に関しては、中央より地方の方が進んでいるわけです。しかも穴水は、完全に人口減少の最終段階で、お年寄りも若い人たちも共に減っている。ある意味、東京とか都会の20年30年先を行っているわけです。そこを見つめればこの国の未来が見えるという、そういった視点で制作しました。確かに首都圏、大都市圏よりも先を言っているという意味でもこれからの縮図になり得るでしょう。滝井さんについて言えば、今のSNSとかネット空間に生きる人たちからしたら退屈と思われるようなことをコツコツ積み上げていった先に、住民同士の深い信頼関係がある。ネット空間のアテンションエコノミーに影響を受けてる世の中の人たちが、これをどう受け止めるか、すごく気になります。滝井さんは『紡ぐ』という手書きの新聞を作って地域で配布しているわけですが、「手書き」というのがすごいですね。手書きで、しかもそれを自分の足で仮設住宅に届けて、自分の声とともに手渡しているんです。何でもネットで済ませる時代にあって、全部アナログだし、そこに身体性が伴っている。あの地域で信頼関係を築くためには、そこに自分の身体が伴っていることが大切なのかと改めて感じました。もともと滝井さんは学校の先生をされていたので、学級通信を書かれていた。また組合活動をされてたこともあって、書くのが早いんです。びっくりするのが、全部書き切った後に「やっぱこれダメだ」と言って捨てるんですよ。途中で書き直せばいいのに、全部書き切った後に「やっぱり納得いかん」と、一から書き直す。アナログは失われるどころかしっかり残るかもしれません。穴水町には分断は起きてないんですよ。民主主義の崩壊が見えたし、いろんな問題は孕んでるんだけど、民主主義が再生する素地みたいなのは穴水町には残っている。震災の時もそうですし、災害など大きなことが起こった時に、いつも順子さんが滝又集落の自宅で独りぼっちで取り残されているんです。僕たちが取材に行くと、不安感や恐怖心、孤独な思いをぶつけてくれたので、痛いほど順子さんの気持ちは伝わりました。滝井さんは町を変えるため、町の民主主義を取り戻すために、すごく大切なことをやられているんだけど、一方で、一番大事なはずの家族を守り切れてるのか、という視点です。そこに矛盾が孕んでいると思ったので、隠さずに描こうと思いました。当然それは滝井さんも葛藤があってやられていることなんですが、自分が作り手としてこんなふうに滝井さんを見ているというのは、ちゃんと表現として入れたいという思いはありました。あと順子さんに関して重要なのは、いま常識や倫理、これまで当たり前にあったものが失われている世の中にあって、さりげなくいつも「ありがとう」という言葉をかけてくれる。それをずっと見ていて、これまで当たり前にあったものでこれからもそこにあり続けてほしいと、すごく尊いものに感じたんです。大胆な行動を起こす人や強い言葉を吐く人が今、注目されているんですけど、世の中ですごく大事なことって、平凡で地味で退屈なこと、ずっとそこにあり続け、これからもあり続けてほしい。そうですね。平凡で地味で退屈なことがあり続ける社会が大事なのかもしれません。DSC00416.JPG
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