
国会で真剣な議論して政策を決定すべきでは[2025年05月04日(Sun)]
JBpress2025年2月28日付け「【高校授業料無償化】政権維持を図る石破首相の愚行で公教育の質低下は必至、新たな“増税”につながる可能性も」から、コメ、医療に続く石破政権の「失政第3弾」
国民生活よりも政局が優先される永田町らしいニュースである。高校授業料の無償化と社会保障改革などに関する文書で自民、公明、日本維新の会が合意し、令和7年度予算の今年度内成立が確実となった。
石破茂首相率いる少数与党政権が予算成立に向けて取り込もうとしたのは、当初は「103万円の壁」撤廃を主張していた国民民主党だったはず。ところが、国民民主が「178万円」にこだわると協議は進まなくなり、与党側は首相と旧知の仲の前原誠司氏が共同代表を務める日本維新の会に急接近。維新が要求する高校授業料の無償化をのむことで決着したわけだ。
しかし、高校授業料の無償化には教育現場だけでなく各方面から反対論が続出していた。にもかかわらず政権維持のために耳を貸さなかった石破首相への失望の声はますます強まりそうだ。
2月上旬のトランプ大統領との首脳会談を乗り切ったことで、石破首相は予算成立に向けた政局運営に妙な自信を持ってしまったのだろうか。帰国後、遅すぎた備蓄米放出、高額療養費制度改悪、高校授業料無償化と立て続けに、国民生活に直結する重大政策を強行しようとしている。
いずれも1月の施政方針演説でほとんど触れられていなかったテーマである。演説には「高額療養費制度の見直しになどにより、保険料負担の抑制につなげます」との文言があったぐらい。もちろん具体的な削減額などには触れられていなかった。施政方針演説は「楽しい日本」を目指すとか、「令和の日本列島改造」を強力に推し進めるといった夢物語が中核となっていた。
その演説からわずか1カ月で決められたのが備蓄米放出、高額療養費制度改悪、そして高校授業料無償化である。
備蓄米放出をめぐっては、政策的な厚みがなく、価格が下がる保証もない。今後の農政改革の理念も見られない。高額療養費制度改悪にはがん患者団体など各方面から「受診控えで命を縮める」と猛反発が起き、自民党のスポークスマンと言われている政治評論家までもが「政治としてやってはいけない」と公言するありさまである。
そして失政第3弾が高校授業料無償化である。
国民生活は二の次、三の次の永田町らしい「事情」
自公維の合意文書案によると、高校生の就学支援金は令和7年度から保護者の所得に関係なく約320万人の高校生全員を対象に、年間11万8800円を助成(公立、私立問わず)する。
そして、令和8年度からは、私立高校生への支給額を現行の年最大39万6000円から45万7000円に引き上げると明記された(保護者の年収要件は撤廃)。7年度の予算規模は1000億円程度で、基金など一時的な財源を活用。8年度以降は4000億円程度が必要とみられ、恒久財源を検討するという。
国民民主との協議が行き詰まり、一転して維新との協議がまとまった背景にはいかにも永田町らしい事情があった。
「178万円を要求する国民民主の要求をのめば7兆円超の税収減となる。それに引き換え高校無償化は4000〜5000億円程度とはるかに少ない。もう一つの社会保障費では4兆円削減の文言はあるが時期は明記されていない。政策合意しやすい内容だったのです。 石破・前原両氏が鉄道ファンで旧知の仲であり、両者ともに党内基盤が弱いこともあって手を組みやすかった点もある」(永田町関係者)
自分たちの政権運営や党利党略が最優先で、国民生活のことなど二の次、三の次だったとみられても仕方ない。しかも高校授業料無償化がこれまた愚策ときているからどうしようもない。
授業料無償化の原資は税金だ。それを、高校生を抱えるかなり限定的な層にばらまく政策である。恩恵を受ける世帯に比べ、無関係な世帯のほうがはるかに多い。子育てを終えたばかりの世代からすれば、「今頃そんな…」と愚痴の一つもこぼしたくなるだろう。
それでも無償化を導入することで高校教育の質が向上し、「明るい日本」「楽しい日本」に結びつくというのであれば、対象外の国民、世帯もある程度は納得するだろう。しかし、現状では無償化導入は高校教育全体の質低下、私立と公立との格差拡大をもたらすとの指摘が強い。
授業料無償化を先行実施している大阪・東京の実態
大阪維新の会の主導で、令和6年度から一部(3年生対象)で高校授業料無償化(私立の場合、保護者の所得制限なしで63万円まで無償)を先行した大阪府の実態はどうなっているのだろうか。
大阪府は令和7年度の高校入試について、1月末時点の進路希望調査を発表した。約6万5000人いる中学卒業生(見込み)のうち、全日制の公立高校希望は約3万6700人で全体の56.17%。昨年同時期に比べ3ポイントほど低くなった。
逆に私立高校を専願で希望する人は約1万9200人で29.36%。こちらは前年比3ポイントアップだ。この結果、一般選抜を行う公立高校128校のうち、なんと半数以上の72校で定員割れの可能性があると指摘されている。多くの入学生が私立に流れることで、公立の地盤沈下が進むというわけだ。
2024年度から高校授業料無償化(私立高校の場合、保護者所得制限撤廃、48万4000円を上限に支援)を実施している東京都では、都立高校の令和6年度入試で全日制高校の64校(約25%)が定員割れとなった。
これは前年と同じ比率だが、6年度は中学3年生の数が400人以上増えたにもかかわらず、都立全日制高校の募集人員は約400人も減らした。この数字のからくりで定員割れの数字が変わらなかっただけで、募集人員が例年並みの水準だったら、定員割れの校数はもっと増えたとみられている。
また、令和7年度の都立高校全日制167校の入試倍率は、前年度比0.09ポイント減の1.29倍で過去最低となった。公立離れを裏付ける数字である。
つまり、私立高校にまで授業料無償化を拡大すれば、公立高校よりも教育の質やブランドイメージが高い私立高校を志願する受験生が増える傾向が高まることが必至。公立高校の質の低下が懸念され、公立と私立の格差拡大が懸念されているのだ。
公立・私立の格差拡大、受験戦争が過熱する恐れも
もっとも無償化とはいえそれはあくまで授業料分のみである。そこでこんな指摘が出ている。
「都内の私立高校の場合、授業料以外にも入学金や施設費、その他費用などで年間納入金額は平均で、1年生で約100万円、2、3年生で約70万円かかります。
このうち無償化の対象となるのは授業料のみ。授業料が無償化されても施設費など数十万円の負担は残るため、受験選択の機会が広がるとはいえ低所得者世帯にとっては依然として授業料以外の負担がネックとなる」(教育分野に詳しいジャーナリスト)
少子化が進む中、受験生の総数が減っていくので私立間の競争も厳しくなる。そこで、教育の質向上を理由に授業料を引き上げる動きが出てきてもおかしくない。
「例えば、日本と海外の2つの高校卒業資格が得られるダブルディプロマコースの設定、1年間の留学を必須にする、プログラミング教育の充実などで、他校との差別化、充実化を図る動きです。
こうした教育の質向上を図れば当然、授業料アップにつながります。それができるブランド力のある私立校では、授業料アップで私立間の競争をクリアし一段と人気化していく。もちろん、公立との格差は広がる一方となる可能性があります」(前出のジャーナリスト)
また、高所得者層では授業料負担がなくなることで浮いた分が高校受験や大学受験のための塾費用になどに充てられ、受験競争が過熱する恐れも指摘されている。
こうしてみると。無償化に伴う「受験生の選択肢が広がる」「教育の機会が広がる」というメリットよりもはるかにデメリット、弊害の方が多いことが分かる。
受験生の親世代が無償化に賛成するのは当然だが…
実際、専門家たちの評価は厳しい。日本経済新聞と日本経済センターが行った調査(2月21日掲載/対象は47人の経済学者)では、高校授業料無償化に当たり「高校授業料に関わる家計支援の上限額は多くの私立高校をカバーできるよう引き上げるのが望ましい」との設問に対し、「そう思わない」が57%、「全くそう思わない」13%で合計70%が反対だった。
その理由としては「無償化は私立校・塾の授業料の高騰や受験戦争のさらなる過熱化を招く恐れがある」などの指摘が寄せられた。
ところが、最近の世論調査では、高校授業料無償化に賛成が相次いでいる。ANN57%、産経・FNN58.4%となっている。また共同通信社の年代別調査の結果をみると30代以下の若年層は80.9%が賛成、40─50代の中年層は67.8%が賛成、60代以上の高年層では賛成は42.6%にとどまり、反対が51.1%と過半数だった(別掲グラフ参照)。
若い世代や受験生の親の世代での賛成が多いという結果だ。物価高騰、実質賃金の抑制が続く中、当事者世代が無償化に賛成するのは当然かもしれない。しかし、石破首相が「安定的かつ恒久的な財源を見いだす」としている令和8年度以降の約4000億円の財源はどうやって捻出するのか。新たな増税につながる可能性も否定できない。
ただほど怖いものはない。為政者が特定の対象世代に向けて投げようとしている甘いアメを喜んで受け取っていいのだろうか。熟考したほうがいい。
国民生活よりも政局が優先される永田町らしいニュースである。高校授業料の無償化と社会保障改革などに関する文書で自民、公明、日本維新の会が合意し、令和7年度予算の今年度内成立が確実となった。石破茂首相率いる少数与党政権が予算成立に向けて取り込もうとしたのは、当初は「103万円の壁」撤廃を主張していた国民民主党だったはず。ところが、国民民主が「178万円」にこだわると協議は進まなくなり、与党側は首相と旧知の仲の前原誠司氏が共同代表を務める日本維新の会に急接近。維新が要求する高校授業料の無償化をのむことで決着したわけだ。国民のことを考えて政策を推進するのではなく政権維持のために政局を動かしていいのでしょうか。備蓄米放出をめぐっては、政策的な厚みがなく、価格が下がる保証もない。今後の農政改革の理念も見られない。高額療養費制度改悪にはがん患者団体など各方面から「受診控えで命を縮める」と猛反発が起き、自民党のスポークスマンと言われている政治評論家までもが「政治としてやってはいけない」と公言するありさまである。そして失政第3弾が高校授業料無償化である。自公維の合意文書案によると、高校生の就学支援金は令和7年度から保護者の所得に関係なく約320万人の高校生全員を対象に、年間11万8800円を助成(公立、私立問わず)する。そして、令和8年度からは、私立高校生への支給額を現行の年最大39万6000円から45万7000円に引き上げると明記された(保護者の年収要件は撤廃)。7年度の予算規模は1000億円程度で、基金など一時的な財源を活用。8年度以降は4000億円程度が必要とみられ、恒久財源を検討するという。国会で真剣な審議をしないで予算を通すために野党と上手に組む手法を繰り返して日本の政治は大丈夫なのでしょうか。大阪府は令和7年度の高校入試について、1月末時点の進路希望調査を発表した。約6万5000人いる中学卒業生(見込み)のうち、全日制の公立高校希望は約3万6700人で全体の56.17%。昨年同時期に比べ3ポイントほど低くなった。逆に私立高校を専願で希望する人は約1万9200人で29.36%。こちらは前年比3ポイントアップだ。この結果、一般選抜を行う公立高校128校のうち、なんと半数以上の72校で定員割れの可能性があると指摘されている。多くの入学生が私立に流れることで、公立の地盤沈下が進むというわけだ。2024年度から高校授業料無償化(私立高校の場合、保護者所得制限撤廃、48万4000円を上限に支援)を実施している東京都では、都立高校の令和6年度入試で全日制高校の64校(約25%)が定員割れとなった。これは前年と同じ比率だが、6年度は中学3年生の数が400人以上増えたにもかかわらず、都立全日制高校の募集人員は約400人も減らした。この数字のからくりで定員割れの数字が変わらなかっただけで、募集人員が例年並みの水準だったら、定員割れの校数はもっと増えたとみられている。また、令和7年度の都立高校全日制167校の入試倍率は、前年度比0.09ポイント減の1.29倍で過去最低となった。公立離れを裏付ける数字である。「無償化は私立校・塾の授業料の高騰や受験戦争のさらなる過熱化を招く恐れがある」教育費の負担を軽減することは容認されるかもしれませんが、教育のあり方を真剣に考えているのか疑問があるのでしょう。私立高校進学者が増えるだけで公立高校が廃校に追い込まれる状況になったらどうするのでしょうか。高校教育をより良い方向にしていくというよりは、公立高校だけでなく私立高校も苦境に追いこまれることはないのでしょうか。ただほど怖いものはない。為政者が特定の対象世代に向けて投げようとしている甘いアメを喜んで受け取っていいのだろうか。熟考したほうがいい。政権が進める政策がある世代に偏ってしまえば国民は納得できないのではないでしょうか。政権維持だけのために国民の不満が募るようなことになれば政権を維持できなくなる可能性があるのではないでしょうか。
国民生活よりも政局が優先される永田町らしいニュースである。高校授業料の無償化と社会保障改革などに関する文書で自民、公明、日本維新の会が合意し、令和7年度予算の今年度内成立が確実となった。
石破茂首相率いる少数与党政権が予算成立に向けて取り込もうとしたのは、当初は「103万円の壁」撤廃を主張していた国民民主党だったはず。ところが、国民民主が「178万円」にこだわると協議は進まなくなり、与党側は首相と旧知の仲の前原誠司氏が共同代表を務める日本維新の会に急接近。維新が要求する高校授業料の無償化をのむことで決着したわけだ。
しかし、高校授業料の無償化には教育現場だけでなく各方面から反対論が続出していた。にもかかわらず政権維持のために耳を貸さなかった石破首相への失望の声はますます強まりそうだ。
2月上旬のトランプ大統領との首脳会談を乗り切ったことで、石破首相は予算成立に向けた政局運営に妙な自信を持ってしまったのだろうか。帰国後、遅すぎた備蓄米放出、高額療養費制度改悪、高校授業料無償化と立て続けに、国民生活に直結する重大政策を強行しようとしている。
いずれも1月の施政方針演説でほとんど触れられていなかったテーマである。演説には「高額療養費制度の見直しになどにより、保険料負担の抑制につなげます」との文言があったぐらい。もちろん具体的な削減額などには触れられていなかった。施政方針演説は「楽しい日本」を目指すとか、「令和の日本列島改造」を強力に推し進めるといった夢物語が中核となっていた。
その演説からわずか1カ月で決められたのが備蓄米放出、高額療養費制度改悪、そして高校授業料無償化である。
備蓄米放出をめぐっては、政策的な厚みがなく、価格が下がる保証もない。今後の農政改革の理念も見られない。高額療養費制度改悪にはがん患者団体など各方面から「受診控えで命を縮める」と猛反発が起き、自民党のスポークスマンと言われている政治評論家までもが「政治としてやってはいけない」と公言するありさまである。
そして失政第3弾が高校授業料無償化である。
国民生活は二の次、三の次の永田町らしい「事情」
自公維の合意文書案によると、高校生の就学支援金は令和7年度から保護者の所得に関係なく約320万人の高校生全員を対象に、年間11万8800円を助成(公立、私立問わず)する。
そして、令和8年度からは、私立高校生への支給額を現行の年最大39万6000円から45万7000円に引き上げると明記された(保護者の年収要件は撤廃)。7年度の予算規模は1000億円程度で、基金など一時的な財源を活用。8年度以降は4000億円程度が必要とみられ、恒久財源を検討するという。
国民民主との協議が行き詰まり、一転して維新との協議がまとまった背景にはいかにも永田町らしい事情があった。
「178万円を要求する国民民主の要求をのめば7兆円超の税収減となる。それに引き換え高校無償化は4000〜5000億円程度とはるかに少ない。もう一つの社会保障費では4兆円削減の文言はあるが時期は明記されていない。政策合意しやすい内容だったのです。 石破・前原両氏が鉄道ファンで旧知の仲であり、両者ともに党内基盤が弱いこともあって手を組みやすかった点もある」(永田町関係者)
自分たちの政権運営や党利党略が最優先で、国民生活のことなど二の次、三の次だったとみられても仕方ない。しかも高校授業料無償化がこれまた愚策ときているからどうしようもない。
授業料無償化の原資は税金だ。それを、高校生を抱えるかなり限定的な層にばらまく政策である。恩恵を受ける世帯に比べ、無関係な世帯のほうがはるかに多い。子育てを終えたばかりの世代からすれば、「今頃そんな…」と愚痴の一つもこぼしたくなるだろう。
それでも無償化を導入することで高校教育の質が向上し、「明るい日本」「楽しい日本」に結びつくというのであれば、対象外の国民、世帯もある程度は納得するだろう。しかし、現状では無償化導入は高校教育全体の質低下、私立と公立との格差拡大をもたらすとの指摘が強い。
授業料無償化を先行実施している大阪・東京の実態
大阪維新の会の主導で、令和6年度から一部(3年生対象)で高校授業料無償化(私立の場合、保護者の所得制限なしで63万円まで無償)を先行した大阪府の実態はどうなっているのだろうか。
大阪府は令和7年度の高校入試について、1月末時点の進路希望調査を発表した。約6万5000人いる中学卒業生(見込み)のうち、全日制の公立高校希望は約3万6700人で全体の56.17%。昨年同時期に比べ3ポイントほど低くなった。
逆に私立高校を専願で希望する人は約1万9200人で29.36%。こちらは前年比3ポイントアップだ。この結果、一般選抜を行う公立高校128校のうち、なんと半数以上の72校で定員割れの可能性があると指摘されている。多くの入学生が私立に流れることで、公立の地盤沈下が進むというわけだ。
2024年度から高校授業料無償化(私立高校の場合、保護者所得制限撤廃、48万4000円を上限に支援)を実施している東京都では、都立高校の令和6年度入試で全日制高校の64校(約25%)が定員割れとなった。
これは前年と同じ比率だが、6年度は中学3年生の数が400人以上増えたにもかかわらず、都立全日制高校の募集人員は約400人も減らした。この数字のからくりで定員割れの数字が変わらなかっただけで、募集人員が例年並みの水準だったら、定員割れの校数はもっと増えたとみられている。
また、令和7年度の都立高校全日制167校の入試倍率は、前年度比0.09ポイント減の1.29倍で過去最低となった。公立離れを裏付ける数字である。
つまり、私立高校にまで授業料無償化を拡大すれば、公立高校よりも教育の質やブランドイメージが高い私立高校を志願する受験生が増える傾向が高まることが必至。公立高校の質の低下が懸念され、公立と私立の格差拡大が懸念されているのだ。
公立・私立の格差拡大、受験戦争が過熱する恐れも
もっとも無償化とはいえそれはあくまで授業料分のみである。そこでこんな指摘が出ている。
「都内の私立高校の場合、授業料以外にも入学金や施設費、その他費用などで年間納入金額は平均で、1年生で約100万円、2、3年生で約70万円かかります。
このうち無償化の対象となるのは授業料のみ。授業料が無償化されても施設費など数十万円の負担は残るため、受験選択の機会が広がるとはいえ低所得者世帯にとっては依然として授業料以外の負担がネックとなる」(教育分野に詳しいジャーナリスト)
少子化が進む中、受験生の総数が減っていくので私立間の競争も厳しくなる。そこで、教育の質向上を理由に授業料を引き上げる動きが出てきてもおかしくない。
「例えば、日本と海外の2つの高校卒業資格が得られるダブルディプロマコースの設定、1年間の留学を必須にする、プログラミング教育の充実などで、他校との差別化、充実化を図る動きです。
こうした教育の質向上を図れば当然、授業料アップにつながります。それができるブランド力のある私立校では、授業料アップで私立間の競争をクリアし一段と人気化していく。もちろん、公立との格差は広がる一方となる可能性があります」(前出のジャーナリスト)
また、高所得者層では授業料負担がなくなることで浮いた分が高校受験や大学受験のための塾費用になどに充てられ、受験競争が過熱する恐れも指摘されている。
こうしてみると。無償化に伴う「受験生の選択肢が広がる」「教育の機会が広がる」というメリットよりもはるかにデメリット、弊害の方が多いことが分かる。
受験生の親世代が無償化に賛成するのは当然だが…
実際、専門家たちの評価は厳しい。日本経済新聞と日本経済センターが行った調査(2月21日掲載/対象は47人の経済学者)では、高校授業料無償化に当たり「高校授業料に関わる家計支援の上限額は多くの私立高校をカバーできるよう引き上げるのが望ましい」との設問に対し、「そう思わない」が57%、「全くそう思わない」13%で合計70%が反対だった。
その理由としては「無償化は私立校・塾の授業料の高騰や受験戦争のさらなる過熱化を招く恐れがある」などの指摘が寄せられた。
ところが、最近の世論調査では、高校授業料無償化に賛成が相次いでいる。ANN57%、産経・FNN58.4%となっている。また共同通信社の年代別調査の結果をみると30代以下の若年層は80.9%が賛成、40─50代の中年層は67.8%が賛成、60代以上の高年層では賛成は42.6%にとどまり、反対が51.1%と過半数だった(別掲グラフ参照)。
若い世代や受験生の親の世代での賛成が多いという結果だ。物価高騰、実質賃金の抑制が続く中、当事者世代が無償化に賛成するのは当然かもしれない。しかし、石破首相が「安定的かつ恒久的な財源を見いだす」としている令和8年度以降の約4000億円の財源はどうやって捻出するのか。新たな増税につながる可能性も否定できない。
ただほど怖いものはない。為政者が特定の対象世代に向けて投げようとしている甘いアメを喜んで受け取っていいのだろうか。熟考したほうがいい。
国民生活よりも政局が優先される永田町らしいニュースである。高校授業料の無償化と社会保障改革などに関する文書で自民、公明、日本維新の会が合意し、令和7年度予算の今年度内成立が確実となった。石破茂首相率いる少数与党政権が予算成立に向けて取り込もうとしたのは、当初は「103万円の壁」撤廃を主張していた国民民主党だったはず。ところが、国民民主が「178万円」にこだわると協議は進まなくなり、与党側は首相と旧知の仲の前原誠司氏が共同代表を務める日本維新の会に急接近。維新が要求する高校授業料の無償化をのむことで決着したわけだ。国民のことを考えて政策を推進するのではなく政権維持のために政局を動かしていいのでしょうか。備蓄米放出をめぐっては、政策的な厚みがなく、価格が下がる保証もない。今後の農政改革の理念も見られない。高額療養費制度改悪にはがん患者団体など各方面から「受診控えで命を縮める」と猛反発が起き、自民党のスポークスマンと言われている政治評論家までもが「政治としてやってはいけない」と公言するありさまである。そして失政第3弾が高校授業料無償化である。自公維の合意文書案によると、高校生の就学支援金は令和7年度から保護者の所得に関係なく約320万人の高校生全員を対象に、年間11万8800円を助成(公立、私立問わず)する。そして、令和8年度からは、私立高校生への支給額を現行の年最大39万6000円から45万7000円に引き上げると明記された(保護者の年収要件は撤廃)。7年度の予算規模は1000億円程度で、基金など一時的な財源を活用。8年度以降は4000億円程度が必要とみられ、恒久財源を検討するという。国会で真剣な審議をしないで予算を通すために野党と上手に組む手法を繰り返して日本の政治は大丈夫なのでしょうか。大阪府は令和7年度の高校入試について、1月末時点の進路希望調査を発表した。約6万5000人いる中学卒業生(見込み)のうち、全日制の公立高校希望は約3万6700人で全体の56.17%。昨年同時期に比べ3ポイントほど低くなった。逆に私立高校を専願で希望する人は約1万9200人で29.36%。こちらは前年比3ポイントアップだ。この結果、一般選抜を行う公立高校128校のうち、なんと半数以上の72校で定員割れの可能性があると指摘されている。多くの入学生が私立に流れることで、公立の地盤沈下が進むというわけだ。2024年度から高校授業料無償化(私立高校の場合、保護者所得制限撤廃、48万4000円を上限に支援)を実施している東京都では、都立高校の令和6年度入試で全日制高校の64校(約25%)が定員割れとなった。これは前年と同じ比率だが、6年度は中学3年生の数が400人以上増えたにもかかわらず、都立全日制高校の募集人員は約400人も減らした。この数字のからくりで定員割れの数字が変わらなかっただけで、募集人員が例年並みの水準だったら、定員割れの校数はもっと増えたとみられている。また、令和7年度の都立高校全日制167校の入試倍率は、前年度比0.09ポイント減の1.29倍で過去最低となった。公立離れを裏付ける数字である。「無償化は私立校・塾の授業料の高騰や受験戦争のさらなる過熱化を招く恐れがある」教育費の負担を軽減することは容認されるかもしれませんが、教育のあり方を真剣に考えているのか疑問があるのでしょう。私立高校進学者が増えるだけで公立高校が廃校に追い込まれる状況になったらどうするのでしょうか。高校教育をより良い方向にしていくというよりは、公立高校だけでなく私立高校も苦境に追いこまれることはないのでしょうか。ただほど怖いものはない。為政者が特定の対象世代に向けて投げようとしている甘いアメを喜んで受け取っていいのだろうか。熟考したほうがいい。政権が進める政策がある世代に偏ってしまえば国民は納得できないのではないでしょうか。政権維持だけのために国民の不満が募るようなことになれば政権を維持できなくなる可能性があるのではないでしょうか。