日本は「戦略的縮小」を目指すべきなのか[2025年10月17日(Fri)]
テレ朝NEWS2025年6月2日付け「人口減少危機、20年で1億人割れ? 専門家は「戦略的縮小」提唱 玉川徹が取材」から、最近、ようやく少子化問題が政治の世界でも取り上げられるようになりました。しかし、仮に少子化問題が解決したとしても、これから労働人口は減少していきます。
少子化の問題が今のままであれば、全体の人口もどんどん減少します。このままで大丈夫なのでしょうか。玉川徹氏は、危機感を持っています。
今回は、これらの問題がどれくらい深刻なのかを、人口減少対策総合研究所の河合雅司理事長に聞きました。
2040年には…約1100万人の労働人口が不足する予測も
玉川氏 「少子化は何とかすれば止まるのかというイメージを持っている方もいらっしゃるのかもしれない。人口は、これから減っていくものなんですか」
河合理事長 「減っていきます」
人口減少対策総合研究所の河合雅司理事長は、日本の人口はこれから先も減り続けていくと話します。
河合理事長 「日本人だけで見ていくと現状、大体1億2300万人ぐらい。政府の推計で見ていくと2050年に9740万人と言っている」
玉川氏 「2050年」
河合理事長 「25年後です」
玉川氏 「1億人切っちゃう?」
河合理事長 「1億人切ってくるだろう」
国立の研究機関が発表した将来人口推計では、2048年に1億人を切ります。
一方、河合理事長が2019年から5年間の日本人の出生数の実績を基に行った予測では、政府の推計よりも5年早いといいます。また、45年後の2070年には、今の半数である6220万人まで減少すると予測しています。
玉川氏 「そのペースでずっと減っていくと、一体この国に何が起こるのか具体的にイメージできない。何が起きていくんですか?」
河合理事長 「暮らしを考えていくと、先に起こるのは人手不足」
玉川氏 「労働力不足」
民間の研究機関の予測では、人口減少に伴い、2040年には日本国内でおよそ1100万人の労働人口が不足するといいます。
河合理事長が提案
「戦略的縮小」とは?
河合理事長 「これから起こっていくことの最大の危機は内需の縮小、要するに消費者不足で企業や組織が立地(維持)できなくなる。国全体として上がってくる消費税の歳入は減ってくるわけですよね。いろんな社会を形づくっていく公的サービスが、税収不足で立ち行かなくなってくるということが起こってくる」
今年1月、埼玉県八潮市で下水道管の腐食によって道路が陥没し、トラックが転落する事故が発生しました。
下水道が原因の道路陥没事故は、年間2600件を超えています。
国内にある下水道管の長さは総延長50万キロで、地球12周以上の長さ。国交省によると、それらの維持管理に30年間で38兆円かかるとみています。
また、下水道やダムを含む、道路や河川など、さまざまなインフラを維持し続けるための予防保全には、30年間でおよそ190兆円という莫大なコストが必要になるといいます。
河合理事長 「今の時代までの間、日本はかなり国土開発をして、人口密度が低いエリアができてきて、全部メンテナンスしていこうと思うと、莫大(ばくだい)な費用がかかってきて、費用対効果が合わない」
人口が減少すれば、その分税収が減り、インフラ維持の費用捻出も今まで以上に困難になることが予想されます。
玉川氏 「避けられない未来なんですよね。このままいけば」
河合理事長 「そうですね」
玉川氏 「人口が減っていくというのは。どうすればいいんですか」
河合理事長 「戦略的に縮小しようと」
玉川氏 「戦略的縮小?」
河合理事長 「縮むのはやむを得ないので、縮むなりにきちんと経済が伸びていく仕組みに変えていく」
河合理事長が提案する「戦略的に縮小する」とは、一体どういうことなのでしょうか。 河合理事長 「社会保障全体をまず縮める。国力に合った社会保障サービスの見直しをまずやるということが1つです」
玉川氏 「縮めるというのは『ここからは払うけど、ここから払わない』ということ?」
河合理事長 「(そう)だったり、高度医療を保険から外すだとか」
また河合理事長は、経済においても方針転換が必要だと指摘します。
河合理事長 「社会保障にしても、財政の均衡にしても、やはり一番の王道というのは経済成長なんです。人口が減っても経済が成長する仕組みに変えようという」
玉川氏 「そんなこと可能なんですか。人口が減らない時だって経済成長しなかった国が」
河合理事長 「海外に打って出ていくという方向へ切り替えることで、人口が減っても経済を伸ばしていける方法は多分あるんだろう」
玉川氏 「輸出ってことですか」
河合理事長 「そうです。海外のマーケットが欲しいものを高く売っていく。それも少ない労働力で。生産性向上です」
GDPに対する貿易額の割合を見ると日本はおよそ35%で、経済の多くが国内消費で成り立っています。
一方、ドイツはおよそ60%と貿易の割合が高くなっています。
輸出額から輸入額を引いた貿易収支を見てみると、去年、日本は5兆円以上の赤字ですが、ドイツは39兆円以上の黒字。GDPでも2023年以降、日本はドイツに抜かれています。
河合理事長は、日本は海外の増加する需要を取りに行くことで、経済成長を目指すべきだと主張します。
人口を集約…新たな街づくり
もう一つ、河合理事長が提案するのは、人口減少に合わせた「新たな街づくり」です。玉川氏 「人口が地方で減っている状況があるとしたら、どうすればいい?」
河合理事長 「集約するしかない。色々なサービスが立地しうる程度の人口規模を維持しないといけない」
内閣府の試算では、スーパーや病院、銀行、介護施設、百貨店など通常の生活に必要なあらゆるサービスを維持するためには、30万人程度の人口規模が必要だといいます。
玉川氏 「どこかに集約するって、具体的にどうすればいい?」
河合理事長 「最後の最後まで残る交通インフラ、現実的なものは高速道路。高速道路のサービスエリアとかパーキングエリアとかインターチェンジでも構わないんですけど、こういう所に地域の人口集約をして、そこにすべてのインフラを集めていく。その周辺に、役所機能とか病院機能だとか、色んなものを集約したオアシスのように」
玉川氏 「確実に人口が減少していくっていう未来が分かっていて、そこから逆算して今何をやるかって考えなきゃいけない」
河合理事長 「なので本当は、短期で困っているような状況が出てきたところへの政策を議論する場、10年・20年先の社会のために、今から仕込まないといけない政策を作って検討する場っていうのは分けてやっていく必要があるんだろう」
政権は厳しい指摘をしてくれる専門家の意見を尊重して参考にしないのでしょうか。「日本人だけで見ていくと現状、大体1億2300万人ぐらい。政府の推計で見ていくと2050年に9740万人と言っている」河合理事長が2019年から5年間の日本人の出生数の実績を基に行った予測では、政府の推計よりも5年早いといいます。また、45年後の2070年には、今の半数である6220万人まで減少すると予測しています。国の予測は楽観的に見ているでしょう。それに対して専門家は客観的に予測できるでしょう。「暮らしを考えていくと、先に起こるのは人手不足」「労働力不足」民間の研究機関の予測では、人口減少に伴い、2040年には日本国内でおよそ1100万人の労働人口が不足するといいます。海外から日本で一緒に働いてくれる人を求めるしかないでしょう。「戦略的に縮小する」とは、「社会保障全体をまず縮める。国力に合った社会保障サービスの見直しをまずやるということが1つです」「縮めるというのは『ここからは払うけど、ここから払わない』ということ?」「(そう)だったり、高度医療を保険から外すだとか」経済においても方針転換が必要だと指摘します。「社会保障にしても、財政の均衡にしても、やはり一番の王道というのは経済成長なんです。人口が減っても経済が成長する仕組みに変えようという」まさに大きな発想転換ですね。「海外に打って出ていくという方向へ切り替えることで、人口が減っても経済を伸ばしていける方法は多分あるんだろう」「輸出ってことですか」「そうです。海外のマーケットが欲しいものを高く売っていく。それも少ない労働力で。生産性向上です」GDPに対する貿易額の割合を見ると日本はおよそ35%で、経済の多くが国内消費で成り立っています。日本は海外の増加する需要を取りに行くことで、経済成長を目指すべきだと主張します。人口減少に合わせた「新たな街づくり」です。「集約するしかない。色々なサービスが立地しうる程度の人口規模を維持しないといけない」スーパーや病院、銀行、介護施設、百貨店など通常の生活に必要なあらゆるサービスを維持するためには、30万人程度の人口規模が必要だといいます。「最後の最後まで残る交通インフラ、現実的なものは高速道路。高速道路のサービスエリアとかパーキングエリアとかインターチェンジでも構わないんですけど、こういう所に地域の人口集約をして、そこにすべてのインフラを集めていく。その周辺に、役所機能とか病院機能だとか、色んなものを集約したオアシスのように」奇抜というか今まで考えられていなかったような発想とアイデアですね。「なので本当は、短期で困っているような状況が出てきたところへの政策を議論する場、10年・20年先の社会のために、今から仕込まないといけない政策を作って検討する場っていうのは分けてやっていく必要があるんだろう」確かに短期的な視点と中長期的な視点が必要ですね。![IMG_1402[1].JPG](/genkijuku/img/IMG_14025B15D-thumbnail2.JPG)
少子化の問題が今のままであれば、全体の人口もどんどん減少します。このままで大丈夫なのでしょうか。玉川徹氏は、危機感を持っています。
今回は、これらの問題がどれくらい深刻なのかを、人口減少対策総合研究所の河合雅司理事長に聞きました。
2040年には…約1100万人の労働人口が不足する予測も
玉川氏 「少子化は何とかすれば止まるのかというイメージを持っている方もいらっしゃるのかもしれない。人口は、これから減っていくものなんですか」
河合理事長 「減っていきます」
人口減少対策総合研究所の河合雅司理事長は、日本の人口はこれから先も減り続けていくと話します。
河合理事長 「日本人だけで見ていくと現状、大体1億2300万人ぐらい。政府の推計で見ていくと2050年に9740万人と言っている」
玉川氏 「2050年」
河合理事長 「25年後です」
玉川氏 「1億人切っちゃう?」
河合理事長 「1億人切ってくるだろう」
国立の研究機関が発表した将来人口推計では、2048年に1億人を切ります。
一方、河合理事長が2019年から5年間の日本人の出生数の実績を基に行った予測では、政府の推計よりも5年早いといいます。また、45年後の2070年には、今の半数である6220万人まで減少すると予測しています。
玉川氏 「そのペースでずっと減っていくと、一体この国に何が起こるのか具体的にイメージできない。何が起きていくんですか?」
河合理事長 「暮らしを考えていくと、先に起こるのは人手不足」
玉川氏 「労働力不足」
民間の研究機関の予測では、人口減少に伴い、2040年には日本国内でおよそ1100万人の労働人口が不足するといいます。
河合理事長が提案
「戦略的縮小」とは?
河合理事長 「これから起こっていくことの最大の危機は内需の縮小、要するに消費者不足で企業や組織が立地(維持)できなくなる。国全体として上がってくる消費税の歳入は減ってくるわけですよね。いろんな社会を形づくっていく公的サービスが、税収不足で立ち行かなくなってくるということが起こってくる」
今年1月、埼玉県八潮市で下水道管の腐食によって道路が陥没し、トラックが転落する事故が発生しました。
下水道が原因の道路陥没事故は、年間2600件を超えています。
国内にある下水道管の長さは総延長50万キロで、地球12周以上の長さ。国交省によると、それらの維持管理に30年間で38兆円かかるとみています。
また、下水道やダムを含む、道路や河川など、さまざまなインフラを維持し続けるための予防保全には、30年間でおよそ190兆円という莫大なコストが必要になるといいます。
河合理事長 「今の時代までの間、日本はかなり国土開発をして、人口密度が低いエリアができてきて、全部メンテナンスしていこうと思うと、莫大(ばくだい)な費用がかかってきて、費用対効果が合わない」
人口が減少すれば、その分税収が減り、インフラ維持の費用捻出も今まで以上に困難になることが予想されます。
玉川氏 「避けられない未来なんですよね。このままいけば」
河合理事長 「そうですね」
玉川氏 「人口が減っていくというのは。どうすればいいんですか」
河合理事長 「戦略的に縮小しようと」
玉川氏 「戦略的縮小?」
河合理事長 「縮むのはやむを得ないので、縮むなりにきちんと経済が伸びていく仕組みに変えていく」
河合理事長が提案する「戦略的に縮小する」とは、一体どういうことなのでしょうか。 河合理事長 「社会保障全体をまず縮める。国力に合った社会保障サービスの見直しをまずやるということが1つです」
玉川氏 「縮めるというのは『ここからは払うけど、ここから払わない』ということ?」
河合理事長 「(そう)だったり、高度医療を保険から外すだとか」
また河合理事長は、経済においても方針転換が必要だと指摘します。
河合理事長 「社会保障にしても、財政の均衡にしても、やはり一番の王道というのは経済成長なんです。人口が減っても経済が成長する仕組みに変えようという」
玉川氏 「そんなこと可能なんですか。人口が減らない時だって経済成長しなかった国が」
河合理事長 「海外に打って出ていくという方向へ切り替えることで、人口が減っても経済を伸ばしていける方法は多分あるんだろう」
玉川氏 「輸出ってことですか」
河合理事長 「そうです。海外のマーケットが欲しいものを高く売っていく。それも少ない労働力で。生産性向上です」
GDPに対する貿易額の割合を見ると日本はおよそ35%で、経済の多くが国内消費で成り立っています。
一方、ドイツはおよそ60%と貿易の割合が高くなっています。
輸出額から輸入額を引いた貿易収支を見てみると、去年、日本は5兆円以上の赤字ですが、ドイツは39兆円以上の黒字。GDPでも2023年以降、日本はドイツに抜かれています。
河合理事長は、日本は海外の増加する需要を取りに行くことで、経済成長を目指すべきだと主張します。
人口を集約…新たな街づくり
もう一つ、河合理事長が提案するのは、人口減少に合わせた「新たな街づくり」です。玉川氏 「人口が地方で減っている状況があるとしたら、どうすればいい?」
河合理事長 「集約するしかない。色々なサービスが立地しうる程度の人口規模を維持しないといけない」
内閣府の試算では、スーパーや病院、銀行、介護施設、百貨店など通常の生活に必要なあらゆるサービスを維持するためには、30万人程度の人口規模が必要だといいます。
玉川氏 「どこかに集約するって、具体的にどうすればいい?」
河合理事長 「最後の最後まで残る交通インフラ、現実的なものは高速道路。高速道路のサービスエリアとかパーキングエリアとかインターチェンジでも構わないんですけど、こういう所に地域の人口集約をして、そこにすべてのインフラを集めていく。その周辺に、役所機能とか病院機能だとか、色んなものを集約したオアシスのように」
玉川氏 「確実に人口が減少していくっていう未来が分かっていて、そこから逆算して今何をやるかって考えなきゃいけない」
河合理事長 「なので本当は、短期で困っているような状況が出てきたところへの政策を議論する場、10年・20年先の社会のために、今から仕込まないといけない政策を作って検討する場っていうのは分けてやっていく必要があるんだろう」
政権は厳しい指摘をしてくれる専門家の意見を尊重して参考にしないのでしょうか。「日本人だけで見ていくと現状、大体1億2300万人ぐらい。政府の推計で見ていくと2050年に9740万人と言っている」河合理事長が2019年から5年間の日本人の出生数の実績を基に行った予測では、政府の推計よりも5年早いといいます。また、45年後の2070年には、今の半数である6220万人まで減少すると予測しています。国の予測は楽観的に見ているでしょう。それに対して専門家は客観的に予測できるでしょう。「暮らしを考えていくと、先に起こるのは人手不足」「労働力不足」民間の研究機関の予測では、人口減少に伴い、2040年には日本国内でおよそ1100万人の労働人口が不足するといいます。海外から日本で一緒に働いてくれる人を求めるしかないでしょう。「戦略的に縮小する」とは、「社会保障全体をまず縮める。国力に合った社会保障サービスの見直しをまずやるということが1つです」「縮めるというのは『ここからは払うけど、ここから払わない』ということ?」「(そう)だったり、高度医療を保険から外すだとか」経済においても方針転換が必要だと指摘します。「社会保障にしても、財政の均衡にしても、やはり一番の王道というのは経済成長なんです。人口が減っても経済が成長する仕組みに変えようという」まさに大きな発想転換ですね。「海外に打って出ていくという方向へ切り替えることで、人口が減っても経済を伸ばしていける方法は多分あるんだろう」「輸出ってことですか」「そうです。海外のマーケットが欲しいものを高く売っていく。それも少ない労働力で。生産性向上です」GDPに対する貿易額の割合を見ると日本はおよそ35%で、経済の多くが国内消費で成り立っています。日本は海外の増加する需要を取りに行くことで、経済成長を目指すべきだと主張します。人口減少に合わせた「新たな街づくり」です。「集約するしかない。色々なサービスが立地しうる程度の人口規模を維持しないといけない」スーパーや病院、銀行、介護施設、百貨店など通常の生活に必要なあらゆるサービスを維持するためには、30万人程度の人口規模が必要だといいます。「最後の最後まで残る交通インフラ、現実的なものは高速道路。高速道路のサービスエリアとかパーキングエリアとかインターチェンジでも構わないんですけど、こういう所に地域の人口集約をして、そこにすべてのインフラを集めていく。その周辺に、役所機能とか病院機能だとか、色んなものを集約したオアシスのように」奇抜というか今まで考えられていなかったような発想とアイデアですね。「なので本当は、短期で困っているような状況が出てきたところへの政策を議論する場、10年・20年先の社会のために、今から仕込まないといけない政策を作って検討する場っていうのは分けてやっていく必要があるんだろう」確かに短期的な視点と中長期的な視点が必要ですね。



