「極端な思想」に陥りやすい人が世界の政治のリーダーに増えているのか[2025年09月30日(Tue)]
COURRiER2025年5月25日付け「「極端な思想」に陥りやすい人の脳はどうなっているのか? ケンブリッジ神経学者が解説」から、ポピュリスト政治家の発言や極右・極左思想、陰謀論など、偏った考え方や情報が世界中で氾濫している。なぜそうしたものに惹かれる人がいるのか、彼らの脳の構造にはどのような特徴があるのか。ケンブリッジ大学の気鋭の神経科学者で、イデオロギーと脳の関係について書いた新著が話題のレオール・ズミグロッドが解説する。
世界的に思想による分断が深まっており、まったく異なる現実を生きている人がいるのではないかと感じることすらある。
「事実そうかもしれません」と、ケンブリッジ大学の神経学者で政治心理学者のレオール・ズミグロットは言う。新著『イデオロギーに染まる脳
柔軟に思考するためのラジカルな学び』(未邦訳)でズミグロッドは、なぜ極端なイデオロギーに傾倒する人がいるのか、彼らはどのように情報を受け取り、共有しているのかを、脳科学と生物学の見地から説明している。
彼女になぜ昨今、極端なイデオロギーに染まる人が増えているのか、彼らの思考様式や脳構造の特徴などについて聞いた。
イデオロギーは「処世術」
イデオロギーとは何ですか?
世界はどのように機能しているのか、どうあるべきかについてのナラティブ(語り)です。
ここで言う世界は、人間社会、もしくは自然界を指していると考えられます。ただし、イデオロギーは単なる語りではなく、どのように考え、行動し、コミュニケーションをとるべきかについて厳格な規定を設けています。そこからの逸脱は許されず、外れた者は糾弾されます。
あなたは、「硬直した思考は魅力的に映る」と指摘しています。それはなぜだと考えていますか?
イデオロギーはこの世界を理解し、説明したいという願いを叶えてくれます。それに加え、他者とつながりたい、共同体意識を持ちたい、何かに帰属したいという欲求も満たしてくれます。
これは一種の「処世術」でもあると言えるでしょう。複雑な現実世界をやみくもに進んでいると、心がすり減ります。いちばん効率のよい生き方は、世界の成り立ちのパターンを知っておくことだと多くの人が感じているのでしょう。
イデオロギーは往々にして、「既存のルールに従って生きるのが唯一最善の方法であり、道徳的な生き方だ」と説きます。
しかしイデオロギーは、世界と直接向き合う感覚を麻痺させます。
現実世界を理解して折り合いをつける力や、信頼に足るものとそうでないものを見分ける能力を低下させます。イデオロギーがよいものだとは、私は考えていません。
記憶を捏造する人たち
あなたは著書で、特定の政治や宗教、道徳観などに固執して物事を考える「イデオロギー型思考」をする人は、信頼性に欠けると指摘しています。
1940年代、カリフォルニア大学バークレー校の心理学者エルゼ・フレンケル=ブランスウィックは数百人の子供にインタビューして、偏見と権威主義の度合いを測定しました。
調査では、ある架空の学校の新入生に関する物語を聞かせ、その後、改めてその物語の内容を子供たちに語ってもらいました。すると偏見が強く、イデオロギー的思考をする子供と、そうではないリベラルな子供の記憶には大きな違いがあることがわかりました。
リベラルな子供は、登場人物の望ましい特性と望ましくない特性の比率を正確に思い出すことができる場合が多く、彼らの記憶はもとの話に非常に忠実でした。
これとは対照的に、偏見の強い子供はもとの話から逸脱して、人種的マイノリティの登場人物に対して望ましくない特性を強調するか、捏造する傾向が見られました。
イデオロギー型思考をする子供たちの記憶には、以前から彼らが抱いていた偏見を追認する作り話が含まれていたのです。ときおり単一のフレーズや物語の細部を繰り返したり、話を語り聞かせた語り手の口調をそっくり真似したりする傾向も見られました。
イデオロギーの影響を受けやすい人ほど、理解できる情報量が少ないということですか?
そうでない人に比べて情報処理の仕方が違っているのでしょうか?
イデオロギーを簡単に受け入れる人ほど、状況の変化や微妙な差異に抵抗を示すということは言えると思います。
ポピュリストの政治家リーダーが世界で増えていますが、大丈夫でしょうか。世界的に思想による分断が深まっており、まったく異なる現実を生きている人がいるのではないかと感じることすらある。イデオロギーは、世界と直接向き合う感覚を麻痺させます。現実世界を理解して折り合いをつける力や、信頼に足るものとそうでないものを見分ける能力を低下させます。イデオロギーがよいものだとは、私は考えていません。特定の政治や宗教、道徳観などに固執して物事を考える「イデオロギー型思考」をする人は、信頼性に欠ける。確かにそうかも知れません。今の世界のリーダーの中にもいますね。偏見が強く、イデオロギー的思考をする子供と、そうではないリベラルな子供の記憶には大きな違いがあることがわかりました。リベラルな子供は、登場人物の望ましい特性と望ましくない特性の比率を正確に思い出すことができる場合が多く、彼らの記憶はもとの話に非常に忠実でした。これとは対照的に、偏見の強い子供はもとの話から逸脱して、人種的マイノリティの登場人物に対して望ましくない特性を強調するか、捏造する傾向が見られました。イデオロギー型思考をする子供たちの記憶には、以前から彼らが抱いていた偏見を追認する作り話が含まれていたのです。ときおり単一のフレーズや物語の細部を繰り返したり、話を語り聞かせた語り手の口調をそっくり真似したりする傾向も見られました。イデオロギーを簡単に受け入れる人ほど、状況の変化や微妙な差異に抵抗を示すということは言えると思います。なる程理解できるような気がします。イデオロギー型思考の子どもたちが大人になるとポピュリズム政治家になってしまうのでしょうか。ポピュリズム政治家リーダーが増えることは世界にとって不幸を招く可能性が高いのではないでしょうか。政治家だけでなく世界中の人たちが民主的で平和な世界を構築するたちに力を合わせていかなければならないでしょう。
世界的に思想による分断が深まっており、まったく異なる現実を生きている人がいるのではないかと感じることすらある。
「事実そうかもしれません」と、ケンブリッジ大学の神経学者で政治心理学者のレオール・ズミグロットは言う。新著『イデオロギーに染まる脳
柔軟に思考するためのラジカルな学び』(未邦訳)でズミグロッドは、なぜ極端なイデオロギーに傾倒する人がいるのか、彼らはどのように情報を受け取り、共有しているのかを、脳科学と生物学の見地から説明している。
彼女になぜ昨今、極端なイデオロギーに染まる人が増えているのか、彼らの思考様式や脳構造の特徴などについて聞いた。
イデオロギーは「処世術」
イデオロギーとは何ですか?
世界はどのように機能しているのか、どうあるべきかについてのナラティブ(語り)です。
ここで言う世界は、人間社会、もしくは自然界を指していると考えられます。ただし、イデオロギーは単なる語りではなく、どのように考え、行動し、コミュニケーションをとるべきかについて厳格な規定を設けています。そこからの逸脱は許されず、外れた者は糾弾されます。
あなたは、「硬直した思考は魅力的に映る」と指摘しています。それはなぜだと考えていますか?
イデオロギーはこの世界を理解し、説明したいという願いを叶えてくれます。それに加え、他者とつながりたい、共同体意識を持ちたい、何かに帰属したいという欲求も満たしてくれます。
これは一種の「処世術」でもあると言えるでしょう。複雑な現実世界をやみくもに進んでいると、心がすり減ります。いちばん効率のよい生き方は、世界の成り立ちのパターンを知っておくことだと多くの人が感じているのでしょう。
イデオロギーは往々にして、「既存のルールに従って生きるのが唯一最善の方法であり、道徳的な生き方だ」と説きます。
しかしイデオロギーは、世界と直接向き合う感覚を麻痺させます。
現実世界を理解して折り合いをつける力や、信頼に足るものとそうでないものを見分ける能力を低下させます。イデオロギーがよいものだとは、私は考えていません。
記憶を捏造する人たち
あなたは著書で、特定の政治や宗教、道徳観などに固執して物事を考える「イデオロギー型思考」をする人は、信頼性に欠けると指摘しています。
1940年代、カリフォルニア大学バークレー校の心理学者エルゼ・フレンケル=ブランスウィックは数百人の子供にインタビューして、偏見と権威主義の度合いを測定しました。
調査では、ある架空の学校の新入生に関する物語を聞かせ、その後、改めてその物語の内容を子供たちに語ってもらいました。すると偏見が強く、イデオロギー的思考をする子供と、そうではないリベラルな子供の記憶には大きな違いがあることがわかりました。
リベラルな子供は、登場人物の望ましい特性と望ましくない特性の比率を正確に思い出すことができる場合が多く、彼らの記憶はもとの話に非常に忠実でした。
これとは対照的に、偏見の強い子供はもとの話から逸脱して、人種的マイノリティの登場人物に対して望ましくない特性を強調するか、捏造する傾向が見られました。
イデオロギー型思考をする子供たちの記憶には、以前から彼らが抱いていた偏見を追認する作り話が含まれていたのです。ときおり単一のフレーズや物語の細部を繰り返したり、話を語り聞かせた語り手の口調をそっくり真似したりする傾向も見られました。
イデオロギーの影響を受けやすい人ほど、理解できる情報量が少ないということですか?
そうでない人に比べて情報処理の仕方が違っているのでしょうか?
イデオロギーを簡単に受け入れる人ほど、状況の変化や微妙な差異に抵抗を示すということは言えると思います。
ポピュリストの政治家リーダーが世界で増えていますが、大丈夫でしょうか。世界的に思想による分断が深まっており、まったく異なる現実を生きている人がいるのではないかと感じることすらある。イデオロギーは、世界と直接向き合う感覚を麻痺させます。現実世界を理解して折り合いをつける力や、信頼に足るものとそうでないものを見分ける能力を低下させます。イデオロギーがよいものだとは、私は考えていません。特定の政治や宗教、道徳観などに固執して物事を考える「イデオロギー型思考」をする人は、信頼性に欠ける。確かにそうかも知れません。今の世界のリーダーの中にもいますね。偏見が強く、イデオロギー的思考をする子供と、そうではないリベラルな子供の記憶には大きな違いがあることがわかりました。リベラルな子供は、登場人物の望ましい特性と望ましくない特性の比率を正確に思い出すことができる場合が多く、彼らの記憶はもとの話に非常に忠実でした。これとは対照的に、偏見の強い子供はもとの話から逸脱して、人種的マイノリティの登場人物に対して望ましくない特性を強調するか、捏造する傾向が見られました。イデオロギー型思考をする子供たちの記憶には、以前から彼らが抱いていた偏見を追認する作り話が含まれていたのです。ときおり単一のフレーズや物語の細部を繰り返したり、話を語り聞かせた語り手の口調をそっくり真似したりする傾向も見られました。イデオロギーを簡単に受け入れる人ほど、状況の変化や微妙な差異に抵抗を示すということは言えると思います。なる程理解できるような気がします。イデオロギー型思考の子どもたちが大人になるとポピュリズム政治家になってしまうのでしょうか。ポピュリズム政治家リーダーが増えることは世界にとって不幸を招く可能性が高いのではないでしょうか。政治家だけでなく世界中の人たちが民主的で平和な世界を構築するたちに力を合わせていかなければならないでしょう。



