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身の丈に合った規模で行うマイペース型酪農がいいのでは[2025年05月15日(Thu)]
 Wedge2025年3月12日付け「輸入飼料に依存しない酪農は可能なのか?北海道・森牧場が酪農を目指す若者たちに伝えたいこと」から、ウクライナ情勢のあおりを受け、酪農家の離農が相次いでいる。輸入飼料に頼る酪農は限界だ。日本の酪農が進むべき方向とは?
「Wedge」2025年3月号に掲載されている「食料危機の正体 日本の農業はもっと強くできる」記事の内容を一部、限定公開いたします。 
朝5時30分。取材班がその牧場に到着すると、搾乳を終えた牛たちが牛舎から道を挟んだ牧草地へとゆっくりと移動し始めていた。
「晴れの日も雨の日も放牧します。今日みたいに暑い日だったら、何も言わなくても牛たちは涼しいところを選んで行くし、台風の時でも木陰で雨風を凌いでいます。放牧していても、全く問題ありません。夜なんかは固まって寝ています。牛は賢いですよ」  
こう語るのは、北海道北東部・紋別市の山あいにある「森牧場」の森秀樹さん(50歳)だ。  
取材班が訪れたのは2024年6月8日、この日の天気は快晴。朝の光が強くて、まぶしい。まるで、ヨーロッパの美しい農村を連想させる景色だった。  
ギー、ギー、ギー……。  
ひっきりなしに鳴り響く音に「何の鳴き声ですか?」と聞くと、森さんが「エゾハルゼミですよ」と教えてくれた。本州では聞くことのない独特な鳴き声だ。牧草地に足を踏み入れると、白黒模様のホルスタイン牛や茶色のブラウンスイス牛が、人間なら息が上がるほどの急斜面をぐんぐん上り、ひっきりなしに牧草を食み続けていた。  
酪農家といっても、森さんのように、自ら放牧を行う酪農家は日本全国で15・1%に過ぎない(22年度)。  
日本の酪農は「規模拡大こそが成功の証し」とされ、多くの酪農家は牛をできる限り増やそうと努力を重ねてきた。効率的に牛を管理し、乳を搾り、コストダウンを図ることを優先した結果、ほとんどの酪農家は牛舎で密飼いしているのが実情だ。  
「規模拡大のためには大規模な機械化、設備投資が必要となりますが、飼料価格はもちろんのこと、半導体不足や燃料価格高騰など様々な外的要因の影響を受けやすくなります。最近では、牛の給食センターにあたる『TMRセンター』を利用する農家も増えています。決められた飼料が配送され、それを牛の口元に配り、搾乳だけをする。これでは、酪農家ではなく搾乳家≠ナす。チャップリンの『モダンタイムス』の世界と同じだと言えるのかもしれません」
秀樹さんと妻の真紀さん(51歳)が入植したのは1998年。以来、コツコツと環境を整備し、現在は20ヘクタールの牧草地と15ヘクタールの山林で、出産経験のある15頭の経産牛と5頭の育成牛を放牧している。その特徴は、外部資材にほとんど依存していないことだ。  
「輸入飼料は一切使用していません。夏は牛たちが牧草を食み、冬は夏場に収穫した干し草を与えています。化学肥料は使用せず、牛たちの排泄物を発酵させ堆肥化し、牧草を育てます。物質循環型の放牧酪農を実践しているのです」(秀樹さん)
2種類ある牛の飼料
 牧草地に面した牛舎に入って驚いたことがある。酪農現場特有の鼻をつくような排泄物の臭いが全く感じられなかったからだ。  
「多くの農家は効率よくたくさんの乳を搾るために、牛に大量のトウモロコシを与えています。極端な例ですが、牛は消化不良で常に下痢気味なのです。うちの牛舎が臭わないのは、日中は放牧していることに加え、主なエサを牧草にしているからだと思います」  
牛の飼料は大きく分けて2種類ある。牧草や野シバなどの「粗飼料」と、トウモロコシや油粕などの穀物をさす「濃厚飼料」だ。4つの胃袋がある草食反芻動物の牛が本来食べてきたのは前者だが、高い乳量を生産するには後者が必要となる。  
「多くの酪農家は、1頭の牛に対して1日に8〜10キロの穀物を与え、40〜50リットルの乳量を得ています。うちは粗飼料を使うので、多い時でもせいぜい25〜30リットル程度です。穀物をたくさん与えるよりも乳量は少なくなりますが、その分コストは低く、経済性はよいのです」   
2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻や物流システムの混乱、世界的な気候変動などにより、多くの酪農家に不可欠なトウモロコシなどの穀物や化学肥料の輸入価格は高騰している(下記図)。農林水産省によると、酪農の経営コストに占める飼料費の割合は全国平均で約5割を占め、飼料供給量の8割を占める濃厚飼料の自給率は13%だ。酪農家の経営が苦しいことは想像に難くない。  
生乳の増産と安定供給、そして、高齢化による離農対策のため、農水省はこれまでも手を打ってきた。その一つが14年に開始された「畜産クラスター事業」だ。牛舎の新増設や搾乳ロボットなど大型機械の導入など、酪農家の新規投資を補助の対象とし、規模拡大を後押ししてきた。農政の旗振りのもと、大型の設備投資を行い、現在の高コストな生産構造がつくられた。そう聞くと、酪農家が被害者意識を持っても不思議ではないように思える。しかし、森さんは農家の側にも責任の一端があるという。
「最終的に設備投資の判断をしたのは酪農家自身です。過去にも08年のリーマンショックや10年のグレインショックがあり、穀物価格は上がったことがあります。しかし、喉元過ぎれば熱さを忘れるで、歴史から何も学んでいません。都合が悪くなった時に、国に補填してほしいというのは無責任ではないでしょうか」
身の丈に合った規模で行うマイペース型酪農
 森牧場の酪農スタイルは「マイペース型酪農」といわれている。これは放牧を基本とし、化学肥料や濃厚飼料などの外部資源の投入を最小限に抑える経営手法だ。  
秀樹さんは大規模な酪農経営を訝しんでいた大学時代に、先輩に連れられて見学に行った道東の中標津町の牧場で、三友盛行さんが提唱する「マイペース型酪農」に出会い、衝撃を受けた。
「マイペースとは、酪農をのんびりやるという意味ではありません。農政に振り回されず、自分たちの頭で考え、経済効率の追求よりも身の丈に合った規模で酪農を行うことです。経費が圧倒的に少ないため、小規模なのに逆に利益が上がります」(秀樹さん)  
小規模経営の酪農家の多くは生乳だけでなく、チーズやバターなどの乳製品を製造・加工・販売するなど、酪農を基盤にした6次産業化を行うケースが多い。生乳だけでは十分な収益を得ることができないと考えられているからだ。しかし、森牧場は業界が決めた乳価に従い、ホクレン(北海道の農協)に全量を出荷している。  
「森牧場に見学にきた若者は『この規模の酪農は、6次産業化して付加価値をつけないと経済性がないと思っていた』と驚きます。付加価値の高い特殊な製品づくりは、簡単には真似できません。他の酪農家と同じ乳価で出荷しても生計が成り立つことを示せれば、様々な人がこの酪農に希望を持てると思います」  
実際に、大規模の酪農経営が経済性を生んでいないことは数字でも証明されている。  
下図は、マイペース型酪農と、道内のある農協(注・A農協とする)の平均の経営比較だ。マイペース型酪農の草地面積と経産牛頭数、出荷乳量は横ばいである半面、A農協では多泌乳と規模拡大が同時並行的に進行していることが分かる。それに伴い飼料代の上昇が顕著だ。TMRセンターを利用している農家は実質的に搾乳以外を全て外注していることを意味する。その結果、収入は増えるものの、支出や資金返済がそれ以上に増え、手元に残るお金はマイペース型よりも少ない。23年にいたっては手取りが1割ほどだ。  
大規模型を志向する酪農家にも、現状を変えたいと思っている人は少なくない。だからこそ、放牧型の酪農でも生計が成り立つことを知ることこそが重要だという。  
「私自身も大学時代にマイペース型酪農に出会っていなかったらと思うと、ぞっとします。酪農の面白さは、仔牛を経産牛に育て、エサを自分で収穫し、搾乳し、糞尿を生産物として畑に返し、牧草を育てる。この一連の過程全てにかかわれることです。酪農を志す多くの若者に、放牧型酪農の魅力を知ってもらいたいですね」DSC00376.JPG

 「晴れの日も雨の日も放牧します。今日みたいに暑い日だったら、何も言わなくても牛たちは涼しいところを選んで行くし、台風の時でも木陰で雨風を凌いでいます。放牧していても、全く問題ありません。夜なんかは固まって寝ています。牛は賢いですよ」すごく賢いのですね。牧草地に足を踏み入れると、白黒模様のホルスタイン牛や茶色のブラウンスイス牛が、人間なら息が上がるほどの急斜面をぐんぐん上り、ひっきりなしに牧草を食み続けていた。酪農家といっても、森さんのように、自ら放牧を行う酪農家は日本全国で15・1%に過ぎない(22年度)。放牧を行う酪農家が少ないのですね。日本の酪農は「規模拡大こそが成功の証し」とされ、多くの酪農家は牛をできる限り増やそうと努力を重ねてきた。効率的に牛を管理し、乳を搾り、コストダウンを図ることを優先した結果、ほとんどの酪農家は牛舎で密飼いしているのが実情だ。「規模拡大のためには大規模な機械化、設備投資が必要となりますが、飼料価格はもちろんのこと、半導体不足や燃料価格高騰など様々な外的要因の影響を受けやすくなります。最近では、牛の給食センターにあたる『TMRセンター』を利用する農家も増えています。決められた飼料が配送され、それを牛の口元に配り、搾乳だけをする。これでは、酪農家ではなく搾乳家≠ナす。チャップリンの『モダンタイムス』の世界と同じだと言えるのかもしれません」酪農家でなく搾牛家ですか。牛にとっては搾牛されるだけでは嫌でしょう。コツコツと環境を整備し、現在は20ヘクタールの牧草地と15ヘクタールの山林で、出産経験のある15頭の経産牛と5頭の育成牛を放牧している。その特徴は、外部資材にほとんど依存していないことだ。「輸入飼料は一切使用していません。夏は牛たちが牧草を食み、冬は夏場に収穫した干し草を与えています。化学肥料は使用せず、牛たちの排泄物を発酵させ堆肥化し、牧草を育てます。物質循環型の放牧酪農を実践しているのです」牛は気持ちよく育っていくのでしょう。牧草地に面した牛舎に入って驚いたことがある。酪農現場特有の鼻をつくような排泄物の臭いが全く感じられなかったからだ。「多くの農家は効率よくたくさんの乳を搾るために、牛に大量のトウモロコシを与えています。極端な例ですが、牛は消化不良で常に下痢気味なのです。うちの牛舎が臭わないのは、日中は放牧していることに加え、主なエサを牧草にしているからだと思います」牛の飼料は大きく分けて2種類ある。牧草や野シバなどの「粗飼料」と、トウモロコシや油粕などの穀物をさす「濃厚飼料」だ。4つの胃袋がある草食反芻動物の牛が本来食べてきたのは前者だが、高い乳量を生産するには後者が必要となる。「多くの酪農家は、1頭の牛に対して1日に8〜10キロの穀物を与え、40〜50リットルの乳量を得ています。うちは粗飼料を使うので、多い時でもせいぜい25〜30リットル程度です。穀物をたくさん与えるよりも乳量は少なくなりますが、その分コストは低く、経済性はよいのです」消費者は健康的な牛からの牛乳を飲みたいのではないでしょうか。森牧場の酪農スタイルは「マイペース型酪農」といわれている。これは放牧を基本とし、化学肥料や濃厚飼料などの外部資源の投入を最小限に抑える経営手法だ。「マイペースとは、酪農をのんびりやるという意味ではありません。農政に振り回されず、自分たちの頭で考え、経済効率の追求よりも身の丈に合った規模で酪農を行うことです。経費が圧倒的に少ないため、小規模なのに逆に利益が上がります」小規模経営の酪農家の多くは生乳だけでなく、チーズやバターなどの乳製品を製造・加工・販売するなど、酪農を基盤にした6次産業化を行うケースが多い。生乳だけでは十分な収益を得ることができないと考えられているからだ。しかし、森牧場は業界が決めた乳価に従い、ホクレン(北海道の農協)に全量を出荷している。自然体での身の丈に合った酪農がいいですね。大規模型を志向する酪農家にも、現状を変えたいと思っている人は少なくない。だからこそ、放牧型の酪農でも生計が成り立つことを知ることこそが重要だという。酪農の面白さは、仔牛を経産牛に育て、エサを自分で収穫し、搾乳し、糞尿を生産物として畑に返し、牧草を育てる。この一連の過程全てにかかわれることです。酪農を志す多くの若者に、放牧型酪農の魅力を知ってもらいたいですね」放牧型酪農を目指す人が増えればいいですね。農業、酪農、林業、漁業に従事する人が減り続けている日本がより良い変革の時期を迎えることを願っています。DSC00375.JPG
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