その1【事例報告】第3回NPOへの資金提供・助成の最適化に関する勉強会
[2008年07月28日(Mon)]
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(2)事例報告(質疑応答含む)[10:10〜11:30]
「募集要項・申請書の設計のポイントとNPOとのコミュニケーション上の工夫について」
■事例1「全労済 地域貢献助成事業(環境分野)」
ご報告者:(特)地球と未来の環境基金(EFF) 専務理事 古瀬繁範 様)
★「全労済 地域貢献助成事業(環境分野)」助成プログラムの詳細へ
ご報告に先立ち、全労済経営企画部国際課課長 高野智様より、同助成プログラムはEFFの協力を得て実施していることについて、ご説明をいただきました。
<プログラムの設計について>
一般助成枠(30万円)は、地域におけるボランティア主体の活動が対象。特別助成枠(上限100万円)は、地域で根ざしながら、全国的にも知名度・先進性があり、専従職員が1名程度の団体を想定した。
助成対象とするプログラムの「重点ポイント」を、枠で囲んで示している。「住民参加」「人とのつながり、絆が醸成されるもの」「コミュニティの再生・発展に寄与」などのキーワードで、審査基準とは少し意味合いの異なる、全労済として応援したい事業や思いを表現した。
<審査体制>
一般助成枠では、全国を4ブロックに分割し、各地域の活動や団体の状況に
知見のある中間支援組織の方を審査委員に加わってもらった。
特別助成枠は、各地域の環境パートナーシップオフィス(環境省)などの専門家で
審査委員会を構成し、専門家の意見を引き出すとともに、全労済の職員が活動に
参加するなど連携が深める可能性を持つ団体を選定した。
<審査基準、選考の進め方>
応募要項記載の審査基準に従い、評価軸を設定(08年は5つの軸で各10点満点)。
各評価軸には「どういう状況に達していれば、何点にあたるか」という基準を詳細に
定義するとともに、全体的なバランスに配慮して、各軸の重要度に基づく係数を
設けて調整している。
申請書式のどの項目を見て各評価基準を評価するかについても、対応する項目を
審査基準表に明記している。また、審査に関係しない設問は、年度毎の申請書
設計の際に削除している。
選考にあたっては、各委員が審査基準に基づく採点結果と推薦する団体を提出し、
委員全員の平均点と推薦投票数を加味しながら審議している。
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■事例2「ファイザープログラム〜心とからだのヘルスケアに関する市民活動・市民研究支援」
ご報告者:ファイザー(株)コミュニティー・リレーション部 鈴木映子 様
★「ファイザープログラム〜心とからだのヘルスケアに関する市民活動・市民研究支援」
助成プログラムの詳細はこちら
<プログラムの趣旨>
法人市民として、医薬品の提供だけでは果たすことの
できない、社会的課題の解決に取り組む市民活動に
対する助成プログラムを2000年に創設。
(特)市民社会創造ファンド(当時は日本NPOセンター)
に企画・開発をお願いし、実施・運営の助言をいただき
ながらプログラムを構築してきた。
「心とからだのヘルスケア」の領域で活躍する市民団体
による、試行的で、先駆的な市民活動および市民研究
を応援し、最長3年の継続助成、人件費・事務局運営費
も助成対象費目としていることが大きな特徴。
<応募要項・応募用紙設計のスタンス>
市民社会創造ファンドとの協働では、「応募要項」などの応募書類の言葉ひとつの
選択にも、かなりこだわって作っている。ファイザープログラムでは、申請書を
「応募企画書」と呼んでいるが、これは「申請」には「願い出る」という意味があり、
それではご応募頂く市民団体と対等ではないのでは?とのアドバイスを頂いた
ことがきっかけ。
「応募要項」や「応募企画書」については、応募頂いた団体からの「応募企画書」の
書き方など、言葉になりきらないコミュニケーションを把握し、課題があれば改善している。
また、プログラムそのものの改良は、助成の重点課題を時代に適応させるなど、
新たなプログラムを2007年度に発表した。
常に“よりよいものへ”ということを意識して、運営している。
<選考基準と応募企画書の設計について>
「選考基準」は、ファイザープログラムでは、“こういう団体をこのように応援したい”
ということとリンクしている。
したがって、選考基準は応募企画書の各設問と明確にリンクするよう設計されている。
<今後の期待について>
「選考基準」は、その助成プログラムが、こういう団体をこのように応援したいという
ことを表わしているので、市民団体の皆さんには、応募要項や応募用紙の設問をよく
読み、応募したいプログラムの意図を読み解いて、書類を書いていくようにすると
よいのでは。
また、ファイザープログラムでは、当初より人件費を助成費目としているが、
市民活動が拡がるためにも、人件費を助成できるプログラムが、もっと増えるといいな、
と期待している。
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【事例発表についての質疑応答】
Q:協働事務局体制の利点と欠点は?
A(古瀬様):
メリットは、資金提供者の気持ちをEFFとして学ぶ点が多く、企業の人にNPOが
どのような視線で映っているかが良く見え、それを踏まえた提案ができる点。
審査の上では、一般の意識からの乖離がないことが大切で、市民感覚で申請書を見て、
わからないものはわからないと言ってもらえることは、実は非常に重要。
A(鈴木様):
企業側の思いを込めながら、専門的知見から効率的に審査体制を確立できる点が良い。
現在は、市民活動への助成する意義を社内にいかに浸透させていくか、審査のノウハウ
を社員にどう伝え、引き継ぐかが課題。
Q:ファイザーのプログラムでは上限を300万円に設定されているが、
適正な規模の助成がきているか?上限の設定と金額査定のあり方は?
A(鈴木様):
300万円を少し切る金額での申請が多い。
ただし、選考委員会で、プロジェクトの内容を検討して、「プロジェクトの規模を半分にして
応募金額の半額で助成したいと思うが、いかがですか?」と応募団体に照会することも
あるので、応募金額どおりでない助成もある。
A(古瀬様):
7割が満額での申請。申請額が小さすぎるものには助成を出しにくい。
どう伝えたらいいのかは、悩んでいるところ。
100万円が上限の場合、金額査定で不適切な費目をカットして50万以下になるような
場合は、助成しないというスタンス。
Q:不採択の際はどのような伝え方、フォローをしているか?
A(古瀬様):
EFFが事務局を努める助成プログラムの中には、不採択通知は、定型の書式を送付する
とともに、審査委員会で出た論点を盛り込んで、かなり詳細なメッセージを個別に
フィードバックし、総評を公表しているものがある。
Q:人件費への助成について、事業の継続性の判断、助成終了後の課題への認識は?
A(鈴木様):
人件費への助成は、最初から必要と感じ設定してきた。
人件費があることでちゃんとした活動ができ、寄付や支援が集まるという、良い循環を
もたらしたい。
助成が切れた後も続くかどうか考えるよりも、(団体にとっての)選択肢を用意しておき、
とにかく助成してみようというスタンス。
A(古瀬様):
人件費への助成は、ヒアリングをして個別に判断している。
人件費が事業費の補填にならないかの判断は、それが投資なのか、経費なのかに
ついての見極めが必要で、団体の発展や活動維持のための投資になると判断できるか
どうかと思う。
(川北):
定常的な経費としての人件費の補填は良くないが、一方で基盤強化のための投資的な
人件費支援はもっとあってもいいのではないか。
短期集中的にNPOで働きたい人材を獲得したり、プログラムオフィサーを育てるため
などの投資は必要と考える。
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→(3)グループディスカッション (4)質疑応答はこちら
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(2)事例報告(質疑応答含む)[10:10〜11:30]
「募集要項・申請書の設計のポイントとNPOとのコミュニケーション上の工夫について」
■事例1「全労済 地域貢献助成事業(環境分野)」
ご報告者:(特)地球と未来の環境基金(EFF) 専務理事 古瀬繁範 様)
★「全労済 地域貢献助成事業(環境分野)」助成プログラムの詳細へ
ご報告に先立ち、全労済経営企画部国際課課長 高野智様より、同助成プログラムはEFFの協力を得て実施していることについて、ご説明をいただきました。
<プログラムの設計について>
一般助成枠(30万円)は、地域におけるボランティア主体の活動が対象。特別助成枠(上限100万円)は、地域で根ざしながら、全国的にも知名度・先進性があり、専従職員が1名程度の団体を想定した。
助成対象とするプログラムの「重点ポイント」を、枠で囲んで示している。「住民参加」「人とのつながり、絆が醸成されるもの」「コミュニティの再生・発展に寄与」などのキーワードで、審査基準とは少し意味合いの異なる、全労済として応援したい事業や思いを表現した。
<審査体制>
一般助成枠では、全国を4ブロックに分割し、各地域の活動や団体の状況に
知見のある中間支援組織の方を審査委員に加わってもらった。
特別助成枠は、各地域の環境パートナーシップオフィス(環境省)などの専門家で
審査委員会を構成し、専門家の意見を引き出すとともに、全労済の職員が活動に
参加するなど連携が深める可能性を持つ団体を選定した。
<審査基準、選考の進め方>
応募要項記載の審査基準に従い、評価軸を設定(08年は5つの軸で各10点満点)。
各評価軸には「どういう状況に達していれば、何点にあたるか」という基準を詳細に
定義するとともに、全体的なバランスに配慮して、各軸の重要度に基づく係数を
設けて調整している。
申請書式のどの項目を見て各評価基準を評価するかについても、対応する項目を
審査基準表に明記している。また、審査に関係しない設問は、年度毎の申請書
設計の際に削除している。
選考にあたっては、各委員が審査基準に基づく採点結果と推薦する団体を提出し、
委員全員の平均点と推薦投票数を加味しながら審議している。
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■事例2「ファイザープログラム〜心とからだのヘルスケアに関する市民活動・市民研究支援」
ご報告者:ファイザー(株)コミュニティー・リレーション部 鈴木映子 様
★「ファイザープログラム〜心とからだのヘルスケアに関する市民活動・市民研究支援」
助成プログラムの詳細はこちら
<プログラムの趣旨>
法人市民として、医薬品の提供だけでは果たすことの
できない、社会的課題の解決に取り組む市民活動に
対する助成プログラムを2000年に創設。
(特)市民社会創造ファンド(当時は日本NPOセンター)
に企画・開発をお願いし、実施・運営の助言をいただき
ながらプログラムを構築してきた。
「心とからだのヘルスケア」の領域で活躍する市民団体
による、試行的で、先駆的な市民活動および市民研究
を応援し、最長3年の継続助成、人件費・事務局運営費
も助成対象費目としていることが大きな特徴。
<応募要項・応募用紙設計のスタンス>
市民社会創造ファンドとの協働では、「応募要項」などの応募書類の言葉ひとつの
選択にも、かなりこだわって作っている。ファイザープログラムでは、申請書を
「応募企画書」と呼んでいるが、これは「申請」には「願い出る」という意味があり、
それではご応募頂く市民団体と対等ではないのでは?とのアドバイスを頂いた
ことがきっかけ。
「応募要項」や「応募企画書」については、応募頂いた団体からの「応募企画書」の
書き方など、言葉になりきらないコミュニケーションを把握し、課題があれば改善している。
また、プログラムそのものの改良は、助成の重点課題を時代に適応させるなど、
新たなプログラムを2007年度に発表した。
常に“よりよいものへ”ということを意識して、運営している。
<選考基準と応募企画書の設計について>
「選考基準」は、ファイザープログラムでは、“こういう団体をこのように応援したい”
ということとリンクしている。
したがって、選考基準は応募企画書の各設問と明確にリンクするよう設計されている。
<今後の期待について>
「選考基準」は、その助成プログラムが、こういう団体をこのように応援したいという
ことを表わしているので、市民団体の皆さんには、応募要項や応募用紙の設問をよく
読み、応募したいプログラムの意図を読み解いて、書類を書いていくようにすると
よいのでは。
また、ファイザープログラムでは、当初より人件費を助成費目としているが、
市民活動が拡がるためにも、人件費を助成できるプログラムが、もっと増えるといいな、
と期待している。
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【事例発表についての質疑応答】
Q:協働事務局体制の利点と欠点は?
A(古瀬様):
メリットは、資金提供者の気持ちをEFFとして学ぶ点が多く、企業の人にNPOが
どのような視線で映っているかが良く見え、それを踏まえた提案ができる点。
審査の上では、一般の意識からの乖離がないことが大切で、市民感覚で申請書を見て、
わからないものはわからないと言ってもらえることは、実は非常に重要。
A(鈴木様):
企業側の思いを込めながら、専門的知見から効率的に審査体制を確立できる点が良い。
現在は、市民活動への助成する意義を社内にいかに浸透させていくか、審査のノウハウ
を社員にどう伝え、引き継ぐかが課題。
Q:ファイザーのプログラムでは上限を300万円に設定されているが、
適正な規模の助成がきているか?上限の設定と金額査定のあり方は?
A(鈴木様):
300万円を少し切る金額での申請が多い。
ただし、選考委員会で、プロジェクトの内容を検討して、「プロジェクトの規模を半分にして
応募金額の半額で助成したいと思うが、いかがですか?」と応募団体に照会することも
あるので、応募金額どおりでない助成もある。
A(古瀬様):
7割が満額での申請。申請額が小さすぎるものには助成を出しにくい。
どう伝えたらいいのかは、悩んでいるところ。
100万円が上限の場合、金額査定で不適切な費目をカットして50万以下になるような
場合は、助成しないというスタンス。
Q:不採択の際はどのような伝え方、フォローをしているか?
A(古瀬様):
EFFが事務局を努める助成プログラムの中には、不採択通知は、定型の書式を送付する
とともに、審査委員会で出た論点を盛り込んで、かなり詳細なメッセージを個別に
フィードバックし、総評を公表しているものがある。
Q:人件費への助成について、事業の継続性の判断、助成終了後の課題への認識は?
A(鈴木様):
人件費への助成は、最初から必要と感じ設定してきた。
人件費があることでちゃんとした活動ができ、寄付や支援が集まるという、良い循環を
もたらしたい。
助成が切れた後も続くかどうか考えるよりも、(団体にとっての)選択肢を用意しておき、
とにかく助成してみようというスタンス。
A(古瀬様):
人件費への助成は、ヒアリングをして個別に判断している。
人件費が事業費の補填にならないかの判断は、それが投資なのか、経費なのかに
ついての見極めが必要で、団体の発展や活動維持のための投資になると判断できるか
どうかと思う。
(川北):
定常的な経費としての人件費の補填は良くないが、一方で基盤強化のための投資的な
人件費支援はもっとあってもいいのではないか。
短期集中的にNPOで働きたい人材を獲得したり、プログラムオフィサーを育てるため
などの投資は必要と考える。
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