板橋区生活保護世帯の不登校調査について。[2010年09月24日(Fri)]
東京都板橋区「生活保護世帯の不登校調査」について
不登校を考える親と市民の会・沖縄 2010年9月23日
1、はじめに
最近「子どもの貧困」という言葉をよく耳にしますが、その時に伝わってくるニュアンスに何か違和感があります。
「貧困」という言葉の定義がよくわからないまま「貧困家庭に不登校が多い」とも言われます。
「貧困家庭に不登校が多い」という話は、東京都板橋区の調査という毎日新聞(2009年1月30日付)の記事が引用されているらしいということがわかりました。
その記事に書いてある内容が本当かどうか調べてみようと思い、東京都板橋区役所に公文書開示請求をすることにしました。
板橋区の職員の方とも直接電話で話すことができ、板橋区の調査について知ることができました。
板橋区の調査がどのようなものだったのかまとめてみたいと思います。
2、実際の新聞記事
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中学生不登校 生活苦も原因 保護世帯の1割 東京・板橋
【毎日新聞】2009.1.30
生活保護を受ける世帯の中学生の不登校発生率が、生活保護や就学援助を受けない中学生の4.8倍に上ることが、東京都板橋区の調査で分かった。不登校は 学校嫌いが原因とみられがちで、国も家庭の経済状況との関連を調べていない。低所得も大きな要因とわかったことを受け、都内の一部自治体は、生活保護の不登校児童生徒を支援する事業を始めた。国も背景分析や支援が求められそうだ。
就学援助は給食費などを助成する制度で、所得基準は生活保護よりやや緩い。板橋区の就学援助受給率は35%、生活保護の保護率は2.47%で、共に全国平均の倍以上だ。
板橋区は、中学生の不登校が多いため調査を実施。区立中の06年度の全生徒8844人のうち、援助を受けていないのは5267人。不登校はうち127人 で、発生率は2.41%だった。一方、生活保護を受ける中学生449人中、不登校は52人。発生率は11.58%で援助を受けない子の4.8倍に達した。
また杉並区は昨秋、生活保護を受ける中学生70人を調査。ケースワーカーが「いつも家にいる」ことから不登校と判断した中学生は6人で発生率8.6%。前年同期の区全体の不登校発生率(2.19%)の約4倍だった。
板橋区は昨秋から「貧困の再生産を防ぎ、子どもの自己実現を図る」ため、生活保護世帯で不登校の小中学生に、学習ボランティアの派遣費を年6万4000 円助成。杉並区もフリースクールの受講費と通学費で年最大約20万円を支給する。共に都の生活保護世帯自立促進事業の一環だ。
学校関係者の間では、貧困のため親が食事や洗濯の世話を怠り、生活リズムが乱れ学校に来なくなる子の存在が指摘されていた。【山本紀子】
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3、開示請求、写しの交付、そして文書執筆者との電話
2010年7月30日(金) 板橋区区政情報課にFAXにて公文書開示請求を提出。
文書の請求内容は、「生活保護世帯における不登校発生率を調査したものについて調査方法、対象、調査結果等調査の全体像がわかるもの全て」。
文書特定の参考資料として、毎日新聞記事を添付。
2010年8月2日(月) 板橋区区政情報課にて公文書請求書が受理される。
開示請求書を板橋区に提出後、板橋区区政情報課の職員の方から電話があり、「新聞記事にあるような調査は実際にはありません。請求文書として該当しそうなものはあるので、それでいいですか?
それから、板橋区が学習ボランティアの派遣の助成をしているのではなく、それは東京都の事業です。」とのこと。
2010年8月9日付 写しの交付の決定と写しの送付
該当する文書として公開されたのは、「不登校対策プロジェクトチーム 平成19年度まとめの一部。
不登校児童・生徒と貧困 生活保護世帯の不登校児童・生徒への支援」というA4サイズ3枚の文書。
開示された3ページの文書の中に、調査方法・対象・対象の抽出方法・調査期間・場所・誰がなど通常調査報告書等に記載されているようなものの記載はない。
2010年9月17日 報告書執筆者本人である板橋福祉事務所池谷さんと電話で話す。
<池谷さんの話>
・板橋区の教育委員会で「不登校対策プロジェクトチーム」が作られ、そのチームの報告書の中の「不登校と生活保護」という部分を社会福祉事務所が割り当てられ、執筆したもの。
・この板橋区の調査は、学術的な調査ではなく学術的な発表を目的にしていない。
行政が施策を立てる時にだいたいの傾向を見るために調べてみたもの。
厳密な調査は求めていない。
また、不登校についての分析をしたものではない。
・「不登校」全体に焦点を当てているのではなく、生活保護世帯の中の不登校にどんな手立てができるかということを考えたもの。
「不登校」全体の話をしているのではない。
・「生活保護・準要保護等児童・生徒数の中の不登校数」は教員がカウントした。
生活保護・準要保護の対象者以外に経済状況が困窮している家庭とそのうちの不登校児童・生徒数も教員がカウントした。
・この中での「不登校」とは「学校内での進級判定会議の議題に載った児童・生徒」のことで、文科省定義の「年間30日以上の長期欠席のうちの不登校」ではない。
・「進級判定会議」とは、不登校の児童・生徒が進級・卒業できるかどうかを話し合う会議。
不登校をしていても、教員が進級判定会議に該当しないと判断したら、会議にかけられず「不登校」の数に入らない。
・表1「平成18年度 板橋区小中学校不登校児童生徒の現状」と表2「平成18年度板橋区要保護、準要保護別人数」とで、小・中ともに全児童・生徒数は一致していないことについては、おおよその傾向を見るためのものなので、数字は一致していなくてもいい。
4、まとめ
「調査をした」という言葉から、「正確に調査したもの」と思い込みやすいですが、板橋区の調査は正確性を問わず、ざっくりとした結果さえ出せればいいというものでした。
特に教員がカウントしたものを元にされていることで、実態が正確に把握されているのか疑問が残ります。
にもかかわらず、文書の最後の方に「なぜ、貧困世帯に不登校児童・生徒が多いのか、その原因を解明する必要もある」という文章が載っています。
正確とは言えない調査からこの結論を導き出せるでしょうか。
板橋区では、生活保護世帯の約9割は不登校になっていないのですから。
でも、不登校の原因は家庭の経済的困窮だと思っている人たちからすると「やっぱりそうだった」と思いたいので、板橋区の調査は記者発表され、やっぱり同じように思っている記者によって記事にされたのだと思われます。
そしてその記事はまたまた経済的困窮と不登校を結びつけたいと思っている人たちに引用されていったのではないでしょうか。
義務教育である小・中学校では、進級判定会議が開かれるかどうかに関係なく、又出席日数に関係なく子どもたちは進級・卒業できています。
そして、現実には家庭の経済環境に関係なく、子どもたちは不登校をしています。
今回、池谷さんから直接お話を聞いて、板橋福祉事務所の方も真剣に仕事をされているのはわかりました。
ただ、新聞に書かれたことで、記事の内容が一人歩きして行き、様々な人の思惑がからんで様々なところで引用されてしまったことには、当事者側からすると迷惑な話です。
困っている人に対する手立てを考えて、それが実行され困り度がなくなっていく、ただそれだけを考えればいいことで、余計な解釈は必要ないと思います。
5、最後に
板橋区の調査について、できる限り事実に即して誤解の無いように書くよう努めました。
あとは、読んでくださった皆様で判断していただき、適切な議論をされますよう願っています。
板橋区区政情報課の担当者様、板橋福祉事務所池谷様のご協力をいただきました。
ここに感謝申し上げます。
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不登校児童・生徒と貧困 生活保護世帯の不登校児童・生徒への支援」というA4サイズ3枚の文書。 ↓
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不登校を考える親と市民の会・沖縄 2010年9月23日
1、はじめに
最近「子どもの貧困」という言葉をよく耳にしますが、その時に伝わってくるニュアンスに何か違和感があります。
「貧困」という言葉の定義がよくわからないまま「貧困家庭に不登校が多い」とも言われます。
「貧困家庭に不登校が多い」という話は、東京都板橋区の調査という毎日新聞(2009年1月30日付)の記事が引用されているらしいということがわかりました。
その記事に書いてある内容が本当かどうか調べてみようと思い、東京都板橋区役所に公文書開示請求をすることにしました。
板橋区の職員の方とも直接電話で話すことができ、板橋区の調査について知ることができました。
板橋区の調査がどのようなものだったのかまとめてみたいと思います。
2、実際の新聞記事
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中学生不登校 生活苦も原因 保護世帯の1割 東京・板橋
【毎日新聞】2009.1.30
生活保護を受ける世帯の中学生の不登校発生率が、生活保護や就学援助を受けない中学生の4.8倍に上ることが、東京都板橋区の調査で分かった。不登校は 学校嫌いが原因とみられがちで、国も家庭の経済状況との関連を調べていない。低所得も大きな要因とわかったことを受け、都内の一部自治体は、生活保護の不登校児童生徒を支援する事業を始めた。国も背景分析や支援が求められそうだ。
就学援助は給食費などを助成する制度で、所得基準は生活保護よりやや緩い。板橋区の就学援助受給率は35%、生活保護の保護率は2.47%で、共に全国平均の倍以上だ。
板橋区は、中学生の不登校が多いため調査を実施。区立中の06年度の全生徒8844人のうち、援助を受けていないのは5267人。不登校はうち127人 で、発生率は2.41%だった。一方、生活保護を受ける中学生449人中、不登校は52人。発生率は11.58%で援助を受けない子の4.8倍に達した。
また杉並区は昨秋、生活保護を受ける中学生70人を調査。ケースワーカーが「いつも家にいる」ことから不登校と判断した中学生は6人で発生率8.6%。前年同期の区全体の不登校発生率(2.19%)の約4倍だった。
板橋区は昨秋から「貧困の再生産を防ぎ、子どもの自己実現を図る」ため、生活保護世帯で不登校の小中学生に、学習ボランティアの派遣費を年6万4000 円助成。杉並区もフリースクールの受講費と通学費で年最大約20万円を支給する。共に都の生活保護世帯自立促進事業の一環だ。
学校関係者の間では、貧困のため親が食事や洗濯の世話を怠り、生活リズムが乱れ学校に来なくなる子の存在が指摘されていた。【山本紀子】
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3、開示請求、写しの交付、そして文書執筆者との電話
2010年7月30日(金) 板橋区区政情報課にFAXにて公文書開示請求を提出。
文書の請求内容は、「生活保護世帯における不登校発生率を調査したものについて調査方法、対象、調査結果等調査の全体像がわかるもの全て」。
文書特定の参考資料として、毎日新聞記事を添付。
2010年8月2日(月) 板橋区区政情報課にて公文書請求書が受理される。
開示請求書を板橋区に提出後、板橋区区政情報課の職員の方から電話があり、「新聞記事にあるような調査は実際にはありません。請求文書として該当しそうなものはあるので、それでいいですか?
それから、板橋区が学習ボランティアの派遣の助成をしているのではなく、それは東京都の事業です。」とのこと。
2010年8月9日付 写しの交付の決定と写しの送付
該当する文書として公開されたのは、「不登校対策プロジェクトチーム 平成19年度まとめの一部。
不登校児童・生徒と貧困 生活保護世帯の不登校児童・生徒への支援」というA4サイズ3枚の文書。
開示された3ページの文書の中に、調査方法・対象・対象の抽出方法・調査期間・場所・誰がなど通常調査報告書等に記載されているようなものの記載はない。
2010年9月17日 報告書執筆者本人である板橋福祉事務所池谷さんと電話で話す。
<池谷さんの話>
・板橋区の教育委員会で「不登校対策プロジェクトチーム」が作られ、そのチームの報告書の中の「不登校と生活保護」という部分を社会福祉事務所が割り当てられ、執筆したもの。
・この板橋区の調査は、学術的な調査ではなく学術的な発表を目的にしていない。
行政が施策を立てる時にだいたいの傾向を見るために調べてみたもの。
厳密な調査は求めていない。
また、不登校についての分析をしたものではない。
・「不登校」全体に焦点を当てているのではなく、生活保護世帯の中の不登校にどんな手立てができるかということを考えたもの。
「不登校」全体の話をしているのではない。
・「生活保護・準要保護等児童・生徒数の中の不登校数」は教員がカウントした。
生活保護・準要保護の対象者以外に経済状況が困窮している家庭とそのうちの不登校児童・生徒数も教員がカウントした。
・この中での「不登校」とは「学校内での進級判定会議の議題に載った児童・生徒」のことで、文科省定義の「年間30日以上の長期欠席のうちの不登校」ではない。
・「進級判定会議」とは、不登校の児童・生徒が進級・卒業できるかどうかを話し合う会議。
不登校をしていても、教員が進級判定会議に該当しないと判断したら、会議にかけられず「不登校」の数に入らない。
・表1「平成18年度 板橋区小中学校不登校児童生徒の現状」と表2「平成18年度板橋区要保護、準要保護別人数」とで、小・中ともに全児童・生徒数は一致していないことについては、おおよその傾向を見るためのものなので、数字は一致していなくてもいい。
4、まとめ
「調査をした」という言葉から、「正確に調査したもの」と思い込みやすいですが、板橋区の調査は正確性を問わず、ざっくりとした結果さえ出せればいいというものでした。
特に教員がカウントしたものを元にされていることで、実態が正確に把握されているのか疑問が残ります。
にもかかわらず、文書の最後の方に「なぜ、貧困世帯に不登校児童・生徒が多いのか、その原因を解明する必要もある」という文章が載っています。
正確とは言えない調査からこの結論を導き出せるでしょうか。
板橋区では、生活保護世帯の約9割は不登校になっていないのですから。
でも、不登校の原因は家庭の経済的困窮だと思っている人たちからすると「やっぱりそうだった」と思いたいので、板橋区の調査は記者発表され、やっぱり同じように思っている記者によって記事にされたのだと思われます。
そしてその記事はまたまた経済的困窮と不登校を結びつけたいと思っている人たちに引用されていったのではないでしょうか。
義務教育である小・中学校では、進級判定会議が開かれるかどうかに関係なく、又出席日数に関係なく子どもたちは進級・卒業できています。
そして、現実には家庭の経済環境に関係なく、子どもたちは不登校をしています。
今回、池谷さんから直接お話を聞いて、板橋福祉事務所の方も真剣に仕事をされているのはわかりました。
ただ、新聞に書かれたことで、記事の内容が一人歩きして行き、様々な人の思惑がからんで様々なところで引用されてしまったことには、当事者側からすると迷惑な話です。
困っている人に対する手立てを考えて、それが実行され困り度がなくなっていく、ただそれだけを考えればいいことで、余計な解釈は必要ないと思います。
5、最後に
板橋区の調査について、できる限り事実に即して誤解の無いように書くよう努めました。
あとは、読んでくださった皆様で判断していただき、適切な議論をされますよう願っています。
板橋区区政情報課の担当者様、板橋福祉事務所池谷様のご協力をいただきました。
ここに感謝申し上げます。
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不登校児童・生徒と貧困 生活保護世帯の不登校児童・生徒への支援」というA4サイズ3枚の文書。 ↓
![]() 2009itabasikuchousa.pdf |
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