那智の滝に着き、今からはちょっと山を上がるだけの予定だし、ひでちゃん乾杯しよ〜とビールを探す私。
バス終点の土産物屋にビールがあったのには何よりで、時間も時間だったけど閉まってるお店がたくさんだった。コロナの影響だろう。コロナ本当につらい。
乾杯してゆっくり歩き出したい私だったが、ひでちゃんはタイムスケジュールをいつも気にしていた。そこでは乾杯しなかったのが本当に良かった。
私は世話になって亡くなってしまった熊野古道の活動家だったある人の仏壇に置いてもらえるような物を青岸渡寺で必ず買いたいと考えていたので寺が閉まる前に到着しなければならないしで。
野宿地も下見もできてなかったし、予定地まではっきりしたかかる時間も正確にわからないでいたから、まずは青岸渡寺に行こう!と。

ひでちゃんが一番時間がないのがわかってくれている。
参道もなかなかきつい上り。

まずは記念撮影。

大雲取越は一番高いところで標高800メートルぐらいだろうか。でも今いる地点でもかなり標高はあるから、私らの地域の山登りの標高の感じかたとはちょっとちがうね。ちなみに大雲取山は965メートルとなっている。この大雲取越えでは二つか三つの峠があるね。
なので大雲取峠と言っていた私は間違いで、大雲取越となっている。
青岸渡寺では何とか時間に間に合ってよい物を買うことができた。
次は那智大社だ。ひでちゃんを撮影してたら巫さんが歩いてきた。神々しい瞬間だった。

夕暮れ迫り不安になるが、今から野宿地まで急坂を上がらなくてはならない。
さあ、今からが本番だ。

歩き出す。

私はここから気持ちの上で意識していた。この場所ではまたお母さんの腹の中にいるんだと。野宿地で生まれるのだと。なんだかね〜どうでもよいよ〜と思われると思うが、大雲取越は今までの人生と決めていた。なぜそう考えたかと言うと、老いていく自分が悔しいやらなさけないやらで、どう受け止めてよいかモンモンとしている年頃だからだ。
いっその事、これまでの人生に区切りをつけたいと。そして次の小雲取越は新しい人生で、お年寄りの自分を受け入れていきたいと…。
なんだかこんなことを言いたくもないんだけど、生まれたからには死んでいくのは世の習い。
致し方なく候うえ…。
私の考えてることなんてまあそんなもん(笑)。
この上りがかなり辛かった。不意討ちをくらった感あった。まあ産道だから致し方なく。苦しい。
でも飲まずにきたお陰で、素晴らしい夕日に出会えた。

夕日に向かってオギャー!だ。今、私は生まれたのだ。すぐさま乾杯〜となったのは言うまでもない(笑)。
夕日の素晴らしい写真はまたのちほど。
次はテント設営だ。夕日の沈むのは待ってはくれない。人生と同じだ。
ひでちゃんは普段からファミリーキャンプしているからでもあるが、本当手際よくテントを立てる。私はアタフタ。でもこれまでのバックパッカーでは半分は夜の設営なので私だけは?その分気分は楽だったのは申し訳ない。

私はカップラーメンとパン。料理好きひでちゃんはなんか作ってる。私はしばらくこのメニューばっか。今はパンをもう食べたくなくなった(笑)。

いよいよ那智のお山の夜が来る。ある意味?怖い。
まあ寝た者勝かと、お互い疲れからもあり8時過ぎた頃には寝てた。
私は緊張からかどうかはわからないけれど、すぐの11時ぴったりに目が覚めた。
「那智のお山〜ひでちゃんのいびきで怖さもやわらぐ〜」なんて詩を考えていたら、私のテントの頭の方で、グオゥと何かが鳴いた。ひでちゃんのいびきとは明らかに違う!。するとまたグオゥと。ひでちゃん!なんかおるじょ〜と叫ぶ私。直ぐにクマスプレーを手に持ちこわごわヘッドライトを点けてテントの外へ。何も居ないと言うよりヘッドライトでは光が足りない。ひでちゃんにバクチクならすわ〜と二発鳴らしてテントに戻った。
そうなったら、さらに寝れない。耳をすませていると、同じような声が遠くに聞こえたのでちょっと安心していたら、また近くに聞こえたように思いで聴こえだしたので、今度はバクチクを連発鳴らし。ババババッーンと。
3時ぐらいに今度はワォーンと遠吠えが何回か聞こえた。ひでちゃん〜那智のお山はオオカミおるな〜と言う私。

寝てるのだか起きてるのだかわからない状態が朝まで。もちろん二人して寝不足。
でも迫る難所に張りつめていた二人だった。
イノシシがたくさんいるのは状況からわかっていたので、まあイノシシだと思うが、あの声はブタ系の声には思えない。
トラ系かと。また、あの遠吠え、野犬だと思うが実に神々しくも聞こえた。
恐るべし那智のお山…。
つづく〜(⌒0⌒)/
by 理事長