9月に入りましたが、まだまだ暑い日が続いています。
エアコンが無かった江戸時代に、人々はどのように暑さを凌いでいたのでしょうか。
今日のブログでは、江戸中期に、西洋絵画の遠近法を取り入れた「浮絵」を発展させた浮世絵師 歌川豊春(1735-1814)が、画業の初期に描いたとされる錦絵『浮絵深川永代凉之図』から、水辺の納涼を見ていきましょう。

錦絵「浮絵深川永代凉之図」
作:歌川豊春
寸法:260×400
版元:永壽堂西村屋
所蔵:船の科学館
この横大判の錦絵には、夏の夕暮れ時、隅田川(大川)の深川・永代橋付近で、船上の涼を楽しむ人々の賑わいが、奥行きを強く感じさせる構図で描かれています。
川面には、大小さまざまな船が行き交っていますが、まず目を引くのは、画面手前の大きな屋形船でしょうか。「大福」と書かれた額を掲げ、多くの人を乗せた遊山の船として描かれています。
また、屋形船・屋根船の周囲には、江戸の水上タクシーとも呼ばれた「猪牙船(ちょきぶね)」など、船頭が櫓を操る小型の川船が多数描かれ、右側の河岸には、荷物を扱う人々、客や荷物を乗せる船も着いています。
現代でも東京湾や隅田川を周遊する屋形船や納涼クルーズが親しまれていますが、江戸時代にも、風通しのよい水辺で涼をとる「川涼み」は人気の行楽でした。『浮絵深川永代凉之図』は、そんな江戸の夏の楽しみ方を今に伝えてくれています。
そして、この錦絵を出版した「永壽堂西村屋」は、後に葛飾北斎『富岳三十六景』を手がけることになる版元でもあります。江戸の人々が水辺に涼を求めた一場面を描いた錦絵は、当時の納涼文化だけでなく、浮世絵文化の広がりを今に伝える一枚でもあるのです。
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