こちらは、初代南極観測船“宗谷”です。
いよいよ8月も終わりに近づいてきました。夏休みもあと少しのところが多いのでしょうか。新学期への準備はととのいましたか?
現在“宗谷”にて開催中の「南極観測70周年特別企画」の会期も8月30日までと、残りわずかとなりましたので、この機会にぜひご来船ください。
さて、この特別企画の一環で、8月9日には“宗谷”船内で「キャロム体験会」を開催しました。多くの方にご参加いただき、とてもにぎやかで楽しい会となりました。
皆さまはこの「キャロム」(または「カロム」、英語表記:CAROM)をご存じでしょうか?どちらかというとあまりなじみのない方が多いのではないでしょうか。
あるいはビリヤードの一種を想像する方もいるかもしれませんね。
キャロムは、おはじきとビリヤードを組み合わせたようなボードゲームで、指で弾いたコマをボードの四隅の穴に入れて遊びます。
その原形は、一説には12〜13世紀ごろのエジプトにあるともいわれ、19世紀ごろに現在につながる形が成立したとされています。諸説ありますが、日本には明治末期から大正期にかけて伝わったといわれています。
このキャロムが、南極観測に赴いた“宗谷”の船内でも行われていました。
第1次南極観測から“宗谷”に積み込まれたキャロムは、コミュニケーションツールのひとつとして隊員たちに親しまれ、「南極キャロム」という独自の文化も生まれました。
狭い船内や、太陽が昇らない季節もある基地での生活は、どうしても閉塞感を伴います。そのため一部の隊員の中にはつい引きこもりがちになり、疎遠になってしまうということもありました。
だからこそ、そんな環境では隊員同士のコミュニケーションがなによりも大切だったのです。
そこで一役買ったのがこのキャロムでした。みんなでボードを囲んで笑いあう時間が隊員同士の絆を深め、ストレス発散にもなっていたそうです。

キャロムはルールがシンプルで覚えやすく、誰でも練習次第で上達できます。それでいて手に汗握る対戦が楽しめるとあって、隊員の間では麻雀や映画と並ぶ人気の娯楽でした。
船の動揺が盤面にも影響を及ぼしてゲームの局面が変わってしまう、といった偶然性も、このゲームならではの面白さだったのかもしれません。
第3次南極観測越冬隊による私家本『14人と5匹の越冬隊』(若井登・小口高編著)には、「これを(南極へ)運んだのは卓見と言うべきだ。(中略)大の大人が周りに応援団までついて応援する」とあり、隊員たちがキャロムに熱中する様子が描かれています。
また、同書には昭和基地には2組のキャロムがあること、キャロムを持ち込んだのは、のちに南極点到達を果たした村山雅美氏らの発案であることも記されています。
船や基地という狭く限られた空間で、長い時間を円滑に過ごすための工夫の一つでもあったことがうかがえますね。
第1次〜3次観測で隊長を務めた永田武氏も、キャロムファンだったそうです。
現在、国内ではとくに滋賀県彦根市に根付いた「彦根カロム」が幅広い世代に支持されて大会なども開かれています。
この彦根カロムは南極キャロムとは違うルールで行われ、ボードのデザインも全く異なります。
南極キャロムでは、コマを必ずボードの壁に当てる必要があり、難易度の高いルールとなっています。実際に初挑戦のスタッフ同士で対戦してみたところ、あまりの難しさにゲームがなかなか進みません。そのため今回の体験会では、お子様でも楽しめるようルールを簡略化して開催しました。
それでも「コマを弾いて当てる」というシンプルな動作が見た目以上に難しく、なかなか思ったとおりにいかないと苦戦する声も多く聞こえました。一方で、そんな難しさがかえって面白く、「次こそは」と奮い立って熱中する方も多いようでした。
また、南極キャロムで使われていたデザインのボードは、現在では入手が難しくなっています。
“宗谷”船内の観測隊食堂には南極観測当時使われていたと思われるキャロムボードを展示していますので、ご見学の際はぜひご覧ください。

キャロムは“宗谷”に続き、“ふじ”、初代“しらせ”にも積み込まれ、南極観測隊との関係は長く続きました。
現在、愛知県名古屋市で係留公開されている2代目の南極観測船“ふじ”の船内では、キャロムを楽しむ隊員と、その様子を観戦する隊員の光景がマネキンで展示されています。
仕事だけではなく、船内生活の一端が垣間見える楽しい展示ですね。
(南極観測船“ふじ”ホームページ: https://nagoyaaqua.jp/garden-pier/ )
南極観測というと、厳しい自然環境の中での観測や研究が注目されがちですが、隊員たち一人ひとりに日々の暮らしがあり、仲間と笑い合って息抜きをする時間がありました。キャロムは、そんな隊員たちの生活を今に伝えてくれるものの一つです。
“宗谷”をご見学の際には、観測や船に関する展示だけでなく、こうした船内生活の一コマにもぜひ目を向けてみてください。隊員たちの暮らしを少し身近に感じていただけるのではないでしょうか。
さて、2026年はわが国の南極観測70周年という記念の年です。
船の科学館 初代南極観測船“宗谷”では特別企画を開催中です!
会期は8月30日(日)までです。
▽「南極観測70周年特別企画」の詳細はこちらをご覧ください。
https://funenokagakukan.or.jp/2026/42260/
また、“宗谷”が係留されている青海地区にある3施設合同でスタンプラリーも開催中です。
海上保安庁の海洋情報資料館、TOKYOミナトリエ、初代南極観測船“宗谷”の3施設を回ってスタンプを3つ集めると、ここでしか手に入らないオリジナルグッズをプレゼントいたします。
こちらは9月30日(水)まで!
▽「青海スタンプラリー」の詳細はこちらをご覧ください。
https://funenokagakukan.or.jp/2026/42957/
それでは今回の【宗谷通信】は、ここまで!
以上、“宗谷”から整備係兼学芸員のアデリーがお伝えしました。
いよいよ8月も終わりに近づいてきました。夏休みもあと少しのところが多いのでしょうか。新学期への準備はととのいましたか?
現在“宗谷”にて開催中の「南極観測70周年特別企画」の会期も8月30日までと、残りわずかとなりましたので、この機会にぜひご来船ください。
さて、この特別企画の一環で、8月9日には“宗谷”船内で「キャロム体験会」を開催しました。多くの方にご参加いただき、とてもにぎやかで楽しい会となりました。
キャロム体験会の様子
皆さまはこの「キャロム」(または「カロム」、英語表記:CAROM)をご存じでしょうか?どちらかというとあまりなじみのない方が多いのではないでしょうか。
あるいはビリヤードの一種を想像する方もいるかもしれませんね。
キャロムは、おはじきとビリヤードを組み合わせたようなボードゲームで、指で弾いたコマをボードの四隅の穴に入れて遊びます。
その原形は、一説には12〜13世紀ごろのエジプトにあるともいわれ、19世紀ごろに現在につながる形が成立したとされています。諸説ありますが、日本には明治末期から大正期にかけて伝わったといわれています。
このキャロムが、南極観測に赴いた“宗谷”の船内でも行われていました。
第1次南極観測から“宗谷”に積み込まれたキャロムは、コミュニケーションツールのひとつとして隊員たちに親しまれ、「南極キャロム」という独自の文化も生まれました。
狭い船内や、太陽が昇らない季節もある基地での生活は、どうしても閉塞感を伴います。そのため一部の隊員の中にはつい引きこもりがちになり、疎遠になってしまうということもありました。
だからこそ、そんな環境では隊員同士のコミュニケーションがなによりも大切だったのです。
そこで一役買ったのがこのキャロムでした。みんなでボードを囲んで笑いあう時間が隊員同士の絆を深め、ストレス発散にもなっていたそうです。

「カロムに興じる 隊員食堂にて」
写真提供:島�ア満雄氏
写真提供:島�ア満雄氏
キャロムはルールがシンプルで覚えやすく、誰でも練習次第で上達できます。それでいて手に汗握る対戦が楽しめるとあって、隊員の間では麻雀や映画と並ぶ人気の娯楽でした。
船の動揺が盤面にも影響を及ぼしてゲームの局面が変わってしまう、といった偶然性も、このゲームならではの面白さだったのかもしれません。
第3次南極観測越冬隊による私家本『14人と5匹の越冬隊』(若井登・小口高編著)には、「これを(南極へ)運んだのは卓見と言うべきだ。(中略)大の大人が周りに応援団までついて応援する」とあり、隊員たちがキャロムに熱中する様子が描かれています。
また、同書には昭和基地には2組のキャロムがあること、キャロムを持ち込んだのは、のちに南極点到達を果たした村山雅美氏らの発案であることも記されています。
船や基地という狭く限られた空間で、長い時間を円滑に過ごすための工夫の一つでもあったことがうかがえますね。
第1次〜3次観測で隊長を務めた永田武氏も、キャロムファンだったそうです。
現在、国内ではとくに滋賀県彦根市に根付いた「彦根カロム」が幅広い世代に支持されて大会なども開かれています。
この彦根カロムは南極キャロムとは違うルールで行われ、ボードのデザインも全く異なります。
南極キャロムでは、コマを必ずボードの壁に当てる必要があり、難易度の高いルールとなっています。実際に初挑戦のスタッフ同士で対戦してみたところ、あまりの難しさにゲームがなかなか進みません。そのため今回の体験会では、お子様でも楽しめるようルールを簡略化して開催しました。
それでも「コマを弾いて当てる」というシンプルな動作が見た目以上に難しく、なかなか思ったとおりにいかないと苦戦する声も多く聞こえました。一方で、そんな難しさがかえって面白く、「次こそは」と奮い立って熱中する方も多いようでした。
また、南極キャロムで使われていたデザインのボードは、現在では入手が難しくなっています。
“宗谷”船内の観測隊食堂には南極観測当時使われていたと思われるキャロムボードを展示していますので、ご見学の際はぜひご覧ください。
観測隊食堂で展示中のキャロムボード
キャロムは“宗谷”に続き、“ふじ”、初代“しらせ”にも積み込まれ、南極観測隊との関係は長く続きました。
現在、愛知県名古屋市で係留公開されている2代目の南極観測船“ふじ”の船内では、キャロムを楽しむ隊員と、その様子を観戦する隊員の光景がマネキンで展示されています。
仕事だけではなく、船内生活の一端が垣間見える楽しい展示ですね。
(南極観測船“ふじ”ホームページ: https://nagoyaaqua.jp/garden-pier/ )
キャロムに興じる隊員のマネキン展示
撮影協力:公益財団法人名古屋みなと振興財団 南極観測船“ふじ”
撮影:船の科学館
撮影協力:公益財団法人名古屋みなと振興財団 南極観測船“ふじ”
撮影:船の科学館
南極観測というと、厳しい自然環境の中での観測や研究が注目されがちですが、隊員たち一人ひとりに日々の暮らしがあり、仲間と笑い合って息抜きをする時間がありました。キャロムは、そんな隊員たちの生活を今に伝えてくれるものの一つです。
“宗谷”をご見学の際には、観測や船に関する展示だけでなく、こうした船内生活の一コマにもぜひ目を向けてみてください。隊員たちの暮らしを少し身近に感じていただけるのではないでしょうか。
さて、2026年はわが国の南極観測70周年という記念の年です。
船の科学館 初代南極観測船“宗谷”では特別企画を開催中です!
会期は8月30日(日)までです。
▽「南極観測70周年特別企画」の詳細はこちらをご覧ください。
https://funenokagakukan.or.jp/2026/42260/
また、“宗谷”が係留されている青海地区にある3施設合同でスタンプラリーも開催中です。
海上保安庁の海洋情報資料館、TOKYOミナトリエ、初代南極観測船“宗谷”の3施設を回ってスタンプを3つ集めると、ここでしか手に入らないオリジナルグッズをプレゼントいたします。
こちらは9月30日(水)まで!
▽「青海スタンプラリー」の詳細はこちらをご覧ください。
https://funenokagakukan.or.jp/2026/42957/
それでは今回の【宗谷通信】は、ここまで!
以上、“宗谷”から整備係兼学芸員のアデリーがお伝えしました。
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