夏本番を迎え、海へ出かける人が増える季節になりました。
日本では、風景や自然、文化などさまざまなテーマで「100選」が選定されていますが、その一つが「日本の渚100選」です。
「日本の渚100選」は、国民の祝日「海の日」の施行を記念して、平成8(1996)年7月10日に、全国の美しい海岸や渚を後世に引き継ぐ目的で、日本の渚百選中央委員会によって選定・発表されました。
島国の日本は、39都道府県が海に面し、総延長3万3,889キロメートルもの長い海岸線を有しているので、「渚」と聞くと、海と砂浜を思い浮かべる方が多いかも知れませんが、河川や湖などの波が打ち寄せるところも「渚」に含まれ、全国の美しい海岸や湖畔が選ばれています。

絵画「なぎさの静寂」
作:佐藤幹児
寸法:460×540
所蔵:船の科学館
さて、海の入り口「渚」は、漁業や潮干狩り、海藻採取、海上交通など、昔から人々の生活と深く結びつき、その周辺には集落や港が発達してきました。
今回は、魚が渚近くまで回遊してくる習性を利用した「地引網漁」を通して、人と海との関わりを見ていきましょう。
「日本の渚100選」に選ばれている「九十九里浜」は、千葉県東部に広がる日本最大級の砂浜海岸で、江戸時代から遠浅な地形を活かした「イワシの地引網漁」が盛んで、繁栄をもたらしました。
イワシの水揚げは「千両万両引き上げる」と唄われるほど活況を呈し、イワシ漁がもたらした豊かな経済と独自の地方文化は「いわし文化」と呼ばれました。

絵葉書「鰯漁」
寸法:89×141
所蔵:船の科学館
次にご紹介するのは、昭和40年代初期、九十九里浜南部で使われた片手地曳船で、後にエンジン付に改造された最末期の木造船です。
「片手地曳網漁」は、多くの労力と資材を必要とした二艘立ての大地曳網漁に代わって発達した漁法で、1隻でイワシやアジなどの魚群を取り囲むように網を入れ、最後に陸上から網を引き寄せることで省力化を図った漁法で、特に九十九里浜が有名でした。
やがて沖合の揚繰網漁が主流になると「片手地曳網漁」は衰退し、今日では観光として残るのみとなっています。

「九十九里木造漁船」
漁船の寸法:長さ13.33m、全幅2.25m、深さ0.85m
写真:船の科学館
人々は昔から「渚」を通じて海の恵みを受け取ってきました。
九十九里浜周辺では、地引網漁を体験できるイベントが催されています。夏休みの思い出づくりに参加してみてはいかがでしょうか。
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