墨田区堤通にある「隅田川神社」は、水難や火難除けで知られる水神社で、水運業者や地元住民等から信仰されています。
神社の創建年代は不詳ですが、治承(1177-1180)の頃には、源頼朝が関東下向の折に、この地で暴風雨に遭い、祈願したことが伝えられており、毎年6月15日の例大祭には、神輿渡御が行われるほか、隅田川まつりが盛大に開催されています。
「隅田川神社」が建つ地は、かつては隅田川の終点で、鬱蒼とした森が広がっていたため「水神の森」「水神宮」と呼ばれたり、増水が起きても沈まなかったことから「浮島の宮」と呼ばれたりしていましたが、明治5(1872)年に隅田川神社と改称されました。
錦絵「名所江戸百景 隅田川水神の森真崎」(復刻版)
作:歌川広重
寸法:395×267
所蔵:船の科学館
ところで、歌川広重(初代)は、名所江戸百景(1856-1858)の中で「隅田川水神の森真崎」を描いています。
向島から水神の森と隅田川の対岸の真崎を望んだ風景は、手前に大きく描かれた八重桜が印象的ですが、川面には帆船や筏船、手前には渡船場への道、松林の中には「隅田川神社」の鳥居が描かれています。
川岸にあった鎮守の森は、戦後の開発によって100メートルほど移転し、現在地に鎮座しています。神社の社殿は、元治1(1864)年に再建されたもので、昨年(令和6年)10月、希少な神社建築として墨田区指定有形文化財に指定されています。
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