皆さんこんにちは!
船の科学館に勤める学芸員(ペンネーム:アクエリアス)です。
雨模様の日々が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
9月といえば、台風や大雨が気になる季節です。
雨は、昔から人々の暮らしと深く関わり、さまざまな作品が描かれてきました。
歌川広重の「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」は、突然降り出した激しい夕立の中、足早に大橋を渡る人々の姿を描いた作品として知られています。

錦絵「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」
作:歌川広重
寸法:380×255
所蔵:船の科学館
今回は、そんな気象と災害をテーマにした作品、小沢かな氏作 マンガ『BLUE MOMENT ブルーモーメント』をご紹介します。
『BLUE MOMENT ブルーモーメント』は、2018年11月に「COMIC BRIDGE online」(KADOKAWA)で連載を開始した、気象災害に立ち向かう人々を描いたマンガです。
2024年には、山下智久さん主演でテレビドラマ化されたことも記憶に新しいのではないでしょうか。
ちなみにタイトルの「ブルーモーメント」とは、日の出前や日の入り後のわずかな時間、辺り一面が青く染まる現象のことを指します。
作品では、この美しい空を再び見ることのできる「いつもと変わらない日常」を守るため、気象のプロフェッショナルたちが災害に立ち向かいます。
■主な登場人物
○晴原柑九朗(はるはら かんくろう)
気象庁気象研究所の研究官。
通称「雲王子」と呼ばれる人気者だが、その素顔は無愛想で毒舌。
気象の知識を武器に災害へ立ち向かう。○雲田彩(くもた あや)
晴原のもとで働くことになった新人助手。
仕事はできるが、思ったことをはっきり口にする性格。
晴原とともに災害の現場に関わっていく。■あらすじ
通称「雲王子」こと気象庁気象研究所のイケメン研究官・晴原柑九朗。テレビやSNSでも人気を集める華やかな表の顔とは異なり、実は無愛想で毒舌な一面、そしてもう一つの「裏の顔」を隠し持っています。
そんな晴原のもとに、新しい助手としてやってきたのが雲田彩。晴原のもう一つの顔――自然災害から人命を守る「SDM本部(特別災害対策本部)」での活動を通して、彩もまた気象予報が「命を守る」ことにつながっていると知っていきます。
集中豪雨、河川氾濫、台風など、刻々と変わる気象を読み解きながら、一人でも多くの命を救おうと災害の最前線に立つ人々を描いた物語です。
■「天気を知る」ことが命を守る?
作品内で印象的なのが、気象の「予測」が人の命を左右する場面です。
台風がどこへ進むのか。
どのくらい雨が降るのか。
いつ危険が迫るのか。
私たちは普段何気なく気象予報を見ていますが、災害時には、その情報が避難や救助の判断につながります。
もちろん、自然は予報通りに動くとは限りません。
だからこそ、最新の情報を確認しながら、「まだ大丈夫」ではなく、危険が迫る前に備えることがなによりも大切です。
■台風は海にも大きな影響を与える
台風が接近すると、海では強い風によって高い波が発生するほか、気圧の低下や海水の「吹き寄せ」によって海面が上昇する高潮が発生することがあります。
かつて台風によって大きな海難事故となったのが、1890(明治23)年のトルコ軍艦「エルトゥールル」の遭難です。

絵画「軍艦「エルトゥールル」側面図(汽走)」
作:西村慶明
寸法:225×403
所蔵:船の科学館
日本への親善使節を乗せた「エルトゥールル」は、明治天皇への謁見などを終え、1890年9月に帰国の途につきました。
しかし、航海中に台風に遭遇し、9月16日の夜、和歌山県串本沖で強風と高波に翻弄され、岩礁に衝突して沈没しました。
600人近くが亡くなる大惨事となりましたが、遭難した乗組員に対して地元・大島村の人々が懸命な救助や看護を行い、69人が救出されました。
そして当館には、この遭難事故に関するこんな資料も残されています。


「トルコ軍艦エルトグロール号難事取扱ニ係ル日記」
寸法:225×180×5
所蔵:船の科学館
日記内には、遭難発生後の救助や対応など、当時の出来事が記録されています。
一隻の船を描いた資料と、そこで実際に起きた災害を伝える記録。
こうした資料からも、台風が海や船、そして人々にどれほど大きな影響を与えてきたのかを知ることができます。
天気を知り、危険を予測することは、陸上だけでなく、海を航海する船にとっても命に関わる大切なことなのです。
■「いつもの天気予報」を防災につなげよう!
台風や大雨そのものを止めることはできません。
でも、「いつ、どこで、どんな危険が起こりそうなのか」を知り、早めに行動することはできます。
気象庁では、台風情報のほか、大雨や洪水、暴風、波浪、高潮などについて、さまざまな防災気象情報を発表しています。
令和8年からは、防災気象情報の一部が変更され、発表される警報・注意報の名称にレベルが付加されるようになりました。
1分、1秒で救われる命があるかもしれません。
台風シーズン真っ只中の今だからこそ、身近な「気象」と「防災」について考え、改めて緊急時の対応を見直してみてはいかがでしょうか。
今回はここまで!次回をお楽しみに!
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