網漁具には、定置網・刺し網・落とし網のように、網自体は動かさずに魚を待つものや、曳網(ひきあみ)・地引き網・巻き網のように、漁具を動かして魚を網の中に入れるものなどがありますが、日本で最初に船尾トロール方式(漁船で大きな網を曳いて魚を取る漁法)が採用された船をご存じでしょうか。
その船は、昭和30(1955)年6月8日に進水した東京水産大学(現・東京海洋大学)の船尾トロール型練習船「海鷹丸」(2代目)でした。
絵葉書「練習船「海鷹丸」進水記念」
寸法:97×158
所蔵:船の科学館
船尾トロール船は、船尾にスリップウェイ(斜路)とアーチ型滑車架台が設けられ、袋状に広げた網を曳きながら漁獲します。
イラスト「船尾トロール」
所蔵:船の科学館
昔のトロール船(船側トロール船)は、船側で網を操作するため、船が網の上に乗ることを避けるために常に風上側で揚げなければならず、荒天時に起きる船体の揺れも大きな支障になっていました。
そうしたことから、船尾トロール方式が欧州で考案され、昭和29(1954)年に建造された「フェアトライ」(スコットランド)が始まりとされています。「フェアトライ」は魚を三枚におろして冷凍するまでの設備を備えた大型船だったそうです。
そして、近年の曳網は、ウミガメの混獲や、漁獲対象より小さい魚を獲らないように、編み目を大きくしたり、網の途中に外に出られる箇所を設けたり、工夫が施されています。
ところで、練習船「海鷹丸」(2代目)は、初代南極観測船「宗谷」の第1次南極観測の随伴船として同行した船でもありました。
「宗谷」が初めて南極観測を行うにあたり、「宗谷」1隻では不安があり「海鷹丸」が随伴船に選ばれたのです。
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