蘭越町貝の館(北海道磯谷郡)では、2019年度に海洋プラスチックに関する企画展を開催しました。
その後、プラスチックに関する研究が進み、地球におけるプラスチックを含んだ「新規化学物質」が地球の許容量の閾値を超えているとされたことに伴い、今年度は、参加型の企画展「地球の限界を超えたプラスチックゴミ〜その正体を探る〜」(開催期間:2023年7月1日(土)から2023年10月31日(火))が開催されています。
「蘭越町貝の館前浜の海洋ゴミ」
画像提供:蘭越町貝の館
海洋プラスチックゴミは、プラスチックゴミとして認識されていますが、どのような特徴があるかについて追求した例はありません。海洋プラスチックゴミの特徴として、紫外線や波の摩擦等でダメージを受けて、表面積が大きくなることが知られています。表面積が多くなると、プラスチックの原料である石油由来の物質が吸着しやすい性質を持ちます。その濃度は海水中の100万倍とも言われています。
そこで、走査型電子顕微鏡を用いて、海洋から拾ったプラスチックゴミの表面の微細構造を観察します。
観察コーナー「走査型電子顕微鏡で海洋プラスチックゴミの表面を観察」
プラスチックゴミの表面構造が複雑になっていて、表面積が大きくなっていることがわかります。
表面の亀裂は漂流の過程でさらに発達し、やがて砕けて、さらに小さいプラスチックになります。このことを繰り返して、海洋プラスチックゴミはどんどん小さくなります。
「走査型顕微鏡で得られた海洋プラスチックゴミの表面構造」
プラスチックといっても、様々なプラスチックがあります。
みなさんは、海洋プラスチックゴミがどのような種類のプラスチックなのか、考えてみたことはありますか。
実は、プラスチックに特殊な光を当てて、反射した光の波長を見ることで、プラスチックの種類がわかります。
「海洋プラスチックゴミに特殊な光を当てているところ」
「特殊な光を当て、反射した光の波長」
装置に海洋プラスチックゴミを設置して分析すると、これまで「海洋プラスチックゴミ」として認識していたものの名前が、「ポリエチレン」であることが解りました。
物の名前を知ることは、とても重要なことです。
例えば、生物の場合、名前を知ることによって、初めて「認識」されます。
海洋ゴミにおいても、名前を知ることは「認識」することで、科学の入口は、認識するところから始まります。
そして、このポリエチレンの特徴について調べると、ポリエチレンから反射してきた光から、紫外線を450時間〜500時間浴びたものと特徴がよく似ていました。
500時間の紫外線を浴びた海洋ゴミは、一般的に10年間漂流したものと考えられていることから、調べた海洋ゴミは、約10年間漂流したポリエチレンであることが解りました。
「海洋プラスチックゴミでつくるアート作品コーナー」
蘭越町貝の館前浜には、場合によって、大量の海洋ゴミが漂着します。
回収した海洋ゴミや、自身で拾った海洋ゴミを使って、オリジナルのアート作品づくりも行っています。
10月28日(土)には、蘭越町・港町大照寺裏側の海岸で「海洋ごみクリーン大作戦」を実施します。
また、来館出来ない方でも、事前にQRコードから申し込み、プラスチックゴミを郵送すると、無料で種類の特定を行って貰えるそうですよ。
「プラスチックゴミ解析の申し込みフォーム」
皆さまのご参加・ご利用をお待ちしています。
船の科学館では、2015年度から全国の博物館・美術館・水族館等が行う「海の学び」の活動を支援しています。
船の科学館「海の学びミュージアムサポート」
コメント
※現在、コメントに対する返信は対応しておりません。予めご了承ください。