• もっと見る

今日の海の日

毎月9日はクジラの日。2023(令和5)年2月9日は、第一次世界大戦時のドイツ潜水艦(鉄のクジラ)の絵葉書をご紹介します。

潜水艦は色と形状がクジラに似ていることから「鉄のクジラ」と言われています。

2月9日のクジラの日では、船の科学館が所蔵する「潜水艦の絵葉書」の中から、第一次世界大戦(Word WarT:略称WWT)で旧日本海軍が鹵獲(ろかく)したドイツ帝国海軍潜水艦の絵葉書をご紹介します(注)。

いきなり「鹵獲」という聞きなれない言葉が出てきました。
「鹵獲」とは「戦いに勝って、敵の軍用品などをぶんどること。」(新明解国語辞典より)です。

最近では朝日新聞DIGITALで「ウクライナ、戦車の半数超をロシアから鹵獲か 練度低いロシアの失敗」(2022年10月7日)と使われた例があります。

ご紹介する絵葉書に写る潜水艦は、日本海軍が鹵獲し、戦利品として持ち帰ったものです。

(絵葉書にはキャプションが添えられていますが読みづらいので写真の下に転記します。)

20000307Cドイツ潜水艦.jpg

寸法(mm):90×140

海上の魔王トシテ全世界ヲ震駭セシメタル獨逸潜水艦(横須賀海軍鎮守府検閲済)

20000310Cドイツ潜水艦.jpg

寸法(mm):92×141

海上の魔王トシテ全世界ヲ震駭セシメタル獨逸潜水艦(横須賀海軍鎮守府検閲済)

20000308Cドイツ潜水艦.jpg

寸法(mm):92×141

戦利逸獨潜水艦 水上馬力六〇〇 長サ一七五呎 幅員一八呎六吋 備砲四一吋一門 魚雷發射管一九七吋六門

20000311Cドイツ潜水艦.jpg

寸法(mm):91×140

戦利獨逸潜水艦 水上馬力二〇〇〇 長サ二〇三呎六吋 幅員二一呎二寸 備砲四一吋一門 機雷六門 魚雷發射管一九七吋 各舷一門 船尾一門

20000309Cドイツ潜水艦.jpg

寸法(mm):91×141

魔王ノ正体大戦中兇暴の限リヲ盡し我艦船ヲ悩マシタル獨逸潜水艦(横須賀海軍鎮守府検閲済)

20000312Cドイツ潜水艦.jpg

寸法(mm):91×140

魔王ノ正体大戦中兇暴の限リヲ盡し我艦船ヲ悩マシタル獨逸潜水艦(横須賀海軍鎮守府検閲済)


日本海軍の戦果を国内で宣伝する意味合いもあったようで大量につくられました。
白黒写真に色をつけた着色写真です。

現代の潜水艦と比較すると甲板が大きく、船首形状が水上船舶のようになっています。
潜航航続能力は未発達で、水上航行速力が重視されていたためです。

鹵獲した戦利潜水艦7隻は全艦日本に回航されました。
全艦ともダメージが大きく、とても日本まで回航できないだろうと言われていたにもかかわらず全艦回航に成功したことから、各国の海軍関係者から称賛されたそうです。

そして各艦は詳細に研究され、特に一枚目の写真と二枚目の写真左のU-125は、後の日本潜水艦開発に大きな影響を与えました。

地中海の守り神

WWT開戦後、ドイツ帝国海軍は連合国に対し潜水艦による無制限襲撃を宣言しました。

この宣言は連合国側を震え上がらせ、連合国の一員であるイギリスは日英同盟に基づき、日本に協力を求めました。

この時に地中海に派遣された第二特務艦隊はマルタ島を基地とし、連合国軍輸送船団を保護する任務に当たります。同隊のめざましい活躍は各国から高い評価を受け「地中海の守り神」と称されました。

一方、同隊の駆逐艦「榊」は1917(大正6)6月11日にドイツ潜水艦(U-boat)の攻撃により大破し、上原艦長(当時少佐。戦死後中佐に昇進)以下59名が戦死しています。

マルタ島にある英連邦軍墓地内には、「榊」の戦死者59名と戦病死者12名を加えた71名の慰霊碑がに建てられています。

「海の守り神」の活躍で日本は列強各国と肩を並べることになりますが、その陰には尊い犠牲があったことを忘れてはいけません。

マルタ島にある日本人墓地

この日本人墓地には1921年に当時皇太子だった昭和天皇も訪れ、戦没者を慰霊しています。
また、2017(平成29)年5月27日に同墓地を慰霊のため訪問した安倍首相(当時)は次の談話を発表しています。

「ムスカット首相との会談に先立ち、旧日本海軍戦没者墓地を訪問しました。そこで日本海軍が、1917年に日英同盟の下、マルタを拠点に地中海で活動した際の、71名の戦没者の方を慰霊いたしました。同墓地には1921年に当時皇太子だった昭和天皇も訪れ、戦没者を慰霊されています。100年前の地中海において、私たちの先人は、病院船を守り、沈没寸前の客船から多くの看護師を助けるなどして、大いなる尊敬を、英国を始めとする各国から勝ち得ました。私は、当時の先人の活躍に思いを馳せつつ、現代において、国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、国際社会の平和と安定に一層貢献していく、その決意を新たにしました。」

引用:外務省ホームページ

この慰霊碑を守り続けている同地の方々に感謝の意を表するとともに、世界が緊張状態にある現在、平和の礎を築いた先達の思いを受け継いでいかなければならないでしょう。

そして、「鹵獲」という言葉は、忘れてはいけないけれども現在進行形で使われるのではなく、過去を語る時に必要な言葉として受け継がれてほしいと切に願います。

(注)船の科学館ホームページの「船の科学館 収蔵物データベース」でこの絵葉書を検索する場合は【キーワード】に「絵葉書 ドイツ潜水艦 」(絵葉書の後に「半角スペース」)と入れてください。

あわせて読みたいおススメの記事

この記事をシェアする

投稿者:うっちー カテゴリー:船・潜水艦 コメント:0

コメント

※現在、コメントに対する返信は対応しておりません。予めご了承ください。

サイト内検索

カレンダー

  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  

このブログについて