「52ヘルツのクジラ」(英語では「52-hertz whale」)と呼ばれるクジラの固有種がいるそうです。
1980年代からその「音紋」が検出されるようになったこのクジラは「世界で最も孤独な鯨(くじら)」と言われています。
「ヘルツ」とは「hertz(Hz)」であらわされる周波数の単位のことで、「52ヘルツ」の音は、楽器チューバの最低音よりもわずかに高いそうです(といわれてもすぐにはピンときませんが...)。
くじらは鳴き声で仲間と交信しますが、「52ヘルツのクジラ」ともっとも似た回遊パターンをもつシロナガスクジラ(10〜39ヘルツ)やナガスクジラ(20ヘルツ)とは明らかに周波数が違います。
そして「52ヘルツのクジラ」の呼び掛け(鳴き声)に答える反応は記録されていないとのことです。
「仲間には聞こえない声」

書名:52ヘルツのクジラたち
著:町田そのこ
発行:中央公論新社
初版発行:2020年4月25日
「わたしね、寂しくて死にそうな時に聴く声があるんだ。」
「このクジラの声はね、誰にも届かないんだよ」
「わたしさ、あんたの呼び名をずっと考えてたんだ。だってムシなんて呼べないもん。でも今思いついた。あんたがわたしに本当の自分の名前を教えてくれるまで『52』って呼んでもいい?わたしは、あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ。いつだって聴こうとするから、だからあんたの、あんたなりの言葉で話しな。全部受け止めてあげる」
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、
母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年、
孤独ゆえに愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、
新たな魂の物語が生まれる−。
聞こえない声が届くのは届かない声を発するものにだけ、というのは悲しいけれど現実かもしれません。
クジラの鳴き声は「天使の歌声」とも称されるそうです。
「世界中にいる」52ヘルツのクジラたちの歌声を聴くことができますように。
ただ、それは悲しい歌声かもしれませんが...。
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