海上の上に社殿と大鳥居が立つ嚴島神社(広島県廿日市市)は、1996(平成8)年12月5日に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されました。
瀬戸内海の島を背後に、その入江の海の中に建つ社殿や大鳥居は、この時代の建築様式を今に伝える貴重な存在です。

「厳島神社」
出典:写真AC
古代より神の島として崇拝されてきた嚴島(宮島)。
593(推古元)年に地元の有力者であった佐伯鞍職(さえきくらもと)によって嚴島神社が創建されました。
平安後期には、安芸守に任じられた平清盛が、夢枕に立った老僧からの「嚴島神社を造営すれば位階を極めるであろう」という示現を受け止め、1168(仁安3)年に寝殿造りを模した社殿を造営しました。
その後、焼失や海に建つ過酷な環境下にありながら、歴代政権の庇護に支えられて、古い様式が今に伝えられています。
御祭神は、創建当時は宮島(嚴島)そのものが御神体とされていましたが、時代を経る過程で「宗像三女伸」と呼称される市杵敷島姫命(いちきしまひめのみこと)、田心姫命(たごりひめのみこと)、湍津姫命(たぎつひめのみこと)が御祭神となり、海の神・航海の神として信仰されています。
また、嚴島神社と言えば、潮が満ち引きする場所に建てられた社殿と大鳥居が有名ですが、島そのものが御神体とされていたので、島にある木を伐採し、そこに神社を建てることは恐れ多いという信仰心から、海上に創建されたと言われています。
御本社を中心に左右の回廊でつながる神社や能舞台、海の中に神々しく建つ大鳥居は、背景に広がる森林と朱塗りの社殿群が調和し、華やかで神秘的です。
現在の大鳥居は8代目にあたり、1875(明治8)年に再建されました。
楠の巨木製で、最長部の高さは16.8メートル。柱下の基礎は、千本杭と言われる松杭が打ちこまれており、その上に、柱の内部に重りを入れて、自重で海底に建っているそうです。ものすごい技術の高さですね。
2019(令和元)年から大規模保存修理工事が行われていますが、今月中(令和4年12月)に終了予定とされています。
世界遺産に登録された区域は、社殿を中心とする嚴島神社と前面の海、背後の弥山原始林(天然記念物)です。
そのうち、嚴島神社の本社本殿・幣殿・拝殿等17棟、大鳥居、五重塔、多宝塔三基からなる建造物群は、6棟が国宝、11棟3基が重要文化財に指定されています。
嚴島神社本殿各所には、奉納された数多くの絵馬が掲額されていました。その絵馬が潮風に吹き曝されて退色、破損が進行するため、江戸後期から明治にかけて、絵馬を模写縮図し、刊行本にした「嚴島絵馬鑑」や「嚴島絵馬帖」などが刊行されています。

絵図 版本「厳島絵馬鑑」
寸法:267×188
員数:5冊
所蔵:船の科学館




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