毎月9日は「クジラの日」(※)。
潜水艦は「てつのくじら」とも言われています。
ということで、潜水艦を舞台にした読み物をご紹介します。
ストーリー
舞台となるのは、神奈川県横須賀市。
米軍横須賀基地で桜まつりが行われている真っ最中、巨大ザリガニの大群が海の底から出現した。
海上自衛隊潜水艦「きりしお」は米軍横須賀基地内にある海上自衛隊潜水艦埠頭に停泊中。巨大ザリガニに囲まれ出航不能になり川邊艦長は、乗員に全員退去を命令する。
「きりしお」乗員は米軍基地敷地を退避中に逃げ遅れた13人の子どもたちと遭遇、彼らを保護した川邊艦長と実習幹部夏木三尉と冬原三尉は逃げ場を失い、やむなく「きりしお」へ退避することを決断する。
しかし、子どもたちと部下の艦内退避を優先した川邊艦長は惨死。
敬愛する艦長を目の前で惨殺された夏木と冬原は、子どもたちのせいで艦長を失ったと思う自分たちをひどい奴と思いながらも、その子どもたちを守り、艦内で耐え抜く。
両親を事故で亡くし、失語症になった弟翔とともに艦内に閉じ込められた森生望は、無骨で口も悪いが思いやりのある夏木が次第に気になり始めるが、夏木はこの子がいなければ川邊艦長は死なずに済んだ、と思った自分を許すことができない。
立てこもった潜水艦内の夏木、冬原、子どもたちの運命は?
自衛隊は出動するのか
巨大ザリガニが出現し、米軍横須賀基地、海上自衛隊の潜水艦、横須賀市沿岸部を巨大ザリガニが襲撃するという「非常識事態」に機動隊が出動するも小火器では対抗できず、隊員の損耗は時間とともに激しくなる。
しかし自衛隊が出動できるのは「防衛出動」か「災害出動」。
米軍基地内でも蠢く巨大ザリガニは自衛隊が殲滅するのか、それとも米軍が日本国内で展開するのか...。
舞台を地図で見てみると
横須賀に住んでいる方には必要ないと思いますが、地図を見てみるだけでも本作が単なるエンターテイメント小説とは思えなくなってきます。
本作で襲撃してくるのは巨大ザリガニですが、「これが〇〇だったら」と想像すると、背筋が冷たくなってきます。
いろいろな役割の人がそれぞれの立場で
特オチを恐れる報道陣に平等に情報を与えて沈静させる定時記者会見(後略)。
ベストを尽くした結果死んでも叩く奴がいる。それが自衛隊に務めるということだ。
つくづく補給科は偉大だ、心配しなくても時間になればきちんと毎回違う飯が、しかも旨いのがでてくる。
次に同じようなことがあったら今より巧くやれるようになる。そのために最初に蹴つまずくのが俺たちの仕事なんだ。
どの場面で誰が発する言葉なのかは読んでのお楽しみです。
有川浩の作品
作者の有川浩(ありかわひろ。現在は「有川ひろ」と表記を変更)は、本作を「大人のライトノベル」と言っています。
「ライトノベル作家」と自称していますが、著作を見ると「社会派」と評される側面を併せ持つことに違和感は感じないと思います。
映画化された作品
「阪急電車」「図書館戦争」「県庁おもてなし課」など
テレビドラマ化された作品
「フリーター家を買う」「空飛ぶ広報室」「三匹のおっさん」など
なお、本作「海の底」は「塩の街」「空の中」とあわせて自衛隊三部作と言われています。
作品名:海の底
著 者:有川浩
発 行:角川文庫
初 版:2009(平成21)年4月25日
※「クジラの日」とは、鯨食の普及促進を目的として、日本捕鯨協会や大日本水産会など計25団体が1993(平成5)年に制定しました。
コメント
※現在、コメントに対する返信は対応しておりません。予めご了承ください。