尻屋埼(しりやさき)灯台は、まさかり形をした下北半島の東端、本州の最北東端に突出した岬に建つ白亜の灯台で、1876(明治9)年10月20日に点灯し、光を灯し続けています。
尻屋埼は、海から吹き付ける強風や波の浸食によって生まれた荒々しい断崖絶壁が続き、風光明媚な景勝地として知られていますが、太平洋と日本海の海流がぶつかる津軽海峡の潮流は激しく、船舶の座礁・遭難事故が多く発生し、昔から「船の墓場」と呼ばれ、恐れられていました。
また、尻屋埼灯台は、第二次世界大戦中1945(昭和20)年7月14日の空襲・艦砲射撃により被災し、職員1名が殉職、灯台も大きく破壊されました。
その翌年、「破壊された灯台が点灯している」との目撃が相次ぎ、村人の間では、殉職職員の霊が灯台を灯している「まぼろしの灯台」と信じられ、今も語り継がれているそうです。
尻屋埼灯台は、国の登録有形文化財をはじめ、第50回灯台記念日(平成10年11月1日)に行われた公募「灯台50選」では、人の心に残る日本の灯台50選に選ばれるほか、2006(平成18)年には、耐震性を考慮したレンガによる二重構造が歴史的土木施設として評価され「土木学会選奨土木遺産」に、2009(平成21)年には、安全な船舶航行に貢献し日本の海運業を支えていることに対して「近代化産業遺産」に、2016(平成28)年には「恋する灯台」に認定されています。
「尻屋埼灯台」 出典:写真AC
尻屋埼灯台周辺の牧草地には、4月から11月にかけて、寒立馬(かんだちめ。厳しい冬にも耐えられる大きくてたくましい体格に改良された農耕馬)が放牧されます。
海と草原、白い灯台と寒立馬の情景は珍しく、心が和みそうですね。
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