
ハリウッドでのセクハラを機に全米、全世界へ広がった#MeToo運動。それを描いたのが『シー・セッド _その名を暴け』。超大物プロデューサーであるワインスタインが起こした数々のセクハラ。ハラスメントというには軽すぎる。性暴力事件と言うにふさわしい。
権力の座に君臨する数多の者たち。最高権力であれ、ペーペーのミニ権力者であれ、力を誇示することでしか自己の威厳を保てない哀れな者は一定程度存在する。多くは男である。暴力で脅迫し服従させようとする愚かな者たち。しかも(だからこそ、かな)密室でレイプに及び、相手に恥辱を与え、心に深い傷を残す。事が流出しそうになると、権力の力でねじ伏せようとする。セックスに依存し、下位の者を平伏させたい欲望の虜となった連中。
ともあれ、トラウマを抱える被害者たちの固まった心をニューヨーク・タイムズの記者が溶かしていく。告発を望まない女性が多かった。これ以上傷に触れられたくないと思うのは無理からぬこと。被害者には悪人ワインスタインの俎上に乗ってしまった後悔が常につきまとう。しかし賽は投げられた。ワインスタインの悪事は暴かれて、記事に共鳴した被害女性たちが声を上げた。#MeToo #MeToo #MeToo・・・拡大しワインスタインは追い詰められた。そればかりか、性被害に苦しむ世界中の女性たちが声を上げて運動は広がった。
ただ、快哉を叫ぶのは早い。記者たちがワインスタインを追っていた頃、これも性被害を連発していた大統領候補トランプは、のちに当選する。#MeTooが米国の良識を示したのは事実だが、トランプ的な魔物は日本も含め、世界に多く生息しているのだ。
今もなお性被害は頻発する。子どもたちへの加害行為も引きも切らない。自分より弱いと見るや、舌なめずりをして近寄る者たちがいる。多様性などとは言っても、両者が誠実に合意してのこと。嫌悪感を持つ相手から加えられる行為は犯罪被害でしかない。
今日は福島地裁で判決が出た。陸上自衛隊の元上司が女性隊員を格闘技で押し倒し、服の上から体を触ったなどとする裁判の結果、裁判所は3人全員に強制猥褻の罪で懲役2年、執行猶予4年を言い渡した。猥褻目的はないと主張したが退けられた。当然である。宴会での盛り上げと称して倒したあとに性行為の真似事をしたというから、調子に乗った行為がどれだけ被害者を傷つけたか、権力を鼻にかけた連中には想像が及ぶまい。他の隊員たちはその場で止めなかったのか。場の空気に染まって自分も笑って見ていた、同じ穴のムジナと化していたのやもしれぬ。
被害者は今後も重い苦痛を抱えながら生きるであろう。#MeTooの声を上げたことによって、好奇の目や嘲りを向けられる痛みを代償にして差し出された今回の判決。圧倒的多数が少数者を虐げる理不尽が許されていいはずはない。もちろん私だって、その多数派にも少数派にも属するかもしれない可能性がある。非は非、是は是として言い切れる勇気を持ちたい。