ギターの譜読みをする。未経験曲の楽譜から音符を拾っていく。ギターは6弦。同じ音程でも複数のフレットで音を取れる。1弦開放音のミだと、2、3、4弦で同じ音が出る。押さえる場所が違う上に、音質はそれぞれ異なるので、和音の運指や前後を考慮して左手指の場合分けをしなければならない。右も同様で、親指、人差し指、中指、薬指を使い分けて音を出す。運指が書いてない楽譜も多くて選択肢が多い。難儀する。
新曲に挑戦し始めた。フェルナンド・ソルの練習曲作品番号29-13。番号だけだと無機質だが、終始アルペジオ(分散和音)の響きが心を打つ。リズムは一定で装飾もないが、慈愛に満ちたメロディと和音の流れに胸が震える。そんな演奏をすればの話だが・・。
近頃新曲の譜読みをする際に、最終小節からさかのぼっている。最終小節でジャ〜ン。次は一つ前の小節を加えて、ポロポロ・ジャ〜ンとやる。暗譜することも、難しいフレーズを習熟する過程も、全て後ろからやっていく。すると暗譜も早い、仕上げも上手くいくように思う。
後ろからやり始めると、早く前に行きたくてたまらないからだ。曲の始まりは馴染みがあり、最初のサビもここにあることが多い。弾きたいけれど我慢の子。初めから練習してしまうと途中でつらくなる。中程から終わりにかけての感動的なサビに行き着くと、そこは同時に難しい。譜読みも難しくて難儀する。進歩の度合いが落ちて、場合によっては投げ出してしまう。終わりからやると難しい箇所はすでに克服しているから、前へ前へと進んでいける。
後ろから譜読みし、繰り返し練習を重ねると楽譜をよく読むことになり、暗譜するのも早くなる。本番で上がってしまってどこを弾いているか分からない、前に戻ってやり直すしかない、といったパニック状態を避けることもできるようだ。
もちろん後ろからばかり練習は出来ない。当然曲は第1小節から始まる。最初から弾いていかざるを得ない。トータルしてみれば、後ろから練習するのと、初めからするのは半々となる。それでちょうどいい。よくあるのが、半分くらいまでは調子いいが、途中からシドロモドロ。詰まって固まって音楽が止まってしまう演奏がある。前からしか練習しなかったことの弊害で、後ろは練習不足なのだ。
さあ今夜もまた、後ろから譜読みを始めよう。早くソルのオーパス29-13を暗譜して、優しさに溢れた演奏をしたいと願う。
(マンリョウの実も慈愛に満ちた輝きで、冬の寂しい道端を照らしてくれる)