NPO法人ファザーリング・ジャパンの川島高之理事の講演を聴く機会に恵まれた。元祖イクボス。さらりと語られたが、スーパーを感じさせなくても実に超絶した方である。
イクボスとは自分でも育児家事に責任を持ち、部下の育児を助け、部下も自分も高められる(育自)ボスのこと。もちろん組織の成果達成に強い責任感をもつ。滅私奉公はもう終わり、優しいだけの上司、権利を主張するだけの部下も違うと強調された。なぜイクボスなのか。時代の変化から自ずと導き出されるという。
経済成長(高い ⇒ 低い)、人口(増加 ⇒ 減少)こうした180度変わった時代にあっては、
右肩上がり/単純 ⇒ 前例や成功体験が通用せず、
大量生産とモノ消費/成果は時間に比例 ⇒ 少量多品種とコト消費/時間に比例せず、
年功序列と終身雇用/長時間労働が美徳 ⇒ 転職と副業/残業多いのはカッコ悪く、
ど根性と気合い/金太郎飴が右向け右 ⇒ 承認と成長/多様な人材と自主性が求められ、
軍隊式経営/オレ様型上司 ⇒ フラット型経営/共感型上司が必要となる。
Life(自分ごと)とWork(しごと)とSocial(社会ごと)。三つの「ごと」すべては本業であるべきだ。人生は1回、だから3倍楽しもうと楽しげに語られた。三ごとは効果が相乗され、視野は拡大し、発想力や集中力は増す。生活者視点がわかり、マネジメント能力、コミュニケーション能力、段取り力、多様性など多くの力が獲得できる。
結果として笑顔が増え、働く意欲は高まり、健康になる。ワークライフバランスをとるために福利厚生を充実させることは、福祉ではなく、経営戦略であり成果に直結すると。
管理職の皆さんも、やりたくても封印してきたことを思い切って実行してみてほしいと。他人事ではなく自分事としてやりたいことに本気になる。忙しい今こそやりたいことを見つけるチャンスだと訴えられた。働き方改革は上司のためにある。モーレツ昭和型の経営陣と権利主張型の部下に挟まれた中間職の悲哀からつぶれないためにも改革しようと。
「子育ては期間限定の特権」─ こんな名言も聞かれた。子どもは常に今が旬だと思ったほうがいい。しないと後悔する。わたしもこの気持ちよーくわかる。
速効性はないけれど、漢方薬のように、日々のストレッチのように、自身を健康にしていくのが真の働き方改革だと、講師に励ましていただいた。わたしも地道にやっていきたい。
(松江の仕事人はたぐいまれな良き環境にあると、講師に誉めていただいた。ならばそれを生かそうと。その日の宍道湖は静かに青く美しかった)