
レジリエンスとは、しなやかな生き方。たとえ落ち込んでも立ち直り、学びに変換できる力。「マイナス妄想で自滅。常に他人の目が気になり、やたらと自分を責める」という日本的な空気に縛られた気遣いとは対局にある。
長年の養護教諭の経験を元にパワフルに起業し、保健室の先生たちを奮い立たせるコーチングでもって教育界に一石を投じる方の講演を聴いた。桑原朱美氏、ハートマッスルトレーニングジム代表取締役。題して、『しなやかな心を育てよう〜レジリエンスを高めるヒント』。出雲一中PTAが主催され、対象は大人と全校生徒であった。
仲のいい誰かに挨拶をした…反応がなかった…無視された?…胸が痛む…わたしのこと嫌いなの?…ご機嫌斜めな原因はわたしがつくったの?…みんながわたしを嫌ってる? いろんな疑心暗鬼を生じて心は揺れる。
氏はこうおっしゃった。鋼鉄でできた鉄人ではなくて、柔らかく受け止めるベイマックスになろうよ。そんな神経質になることはないよ。単に気がつかなかっただけかもしれないし、過去は過去、執着せずにこれからうまくいく方法を考えようよ。未来の希望に目を向けよう、と。
声がいい。聞き取りやすく柔らかい一方で、強調すべきところはキチッと言い切る。中学生に受け入れやすい話題と親しみのある言葉遣いでスッと心に入りつつも、礼節をわきまえた言動がある。保護者にとっても琴線に触れる話題がたくさんあって退屈させない。
講演の冒頭部分で生徒のレスポンスがほとんどない場面でも、サラッと受け流して次にいく。まさにレジリエンスな姿を実践されていた。実はパワポ資料に修正ミスがあって、本人は恐縮して謝罪されたのであるが、ほんの数秒。その後になんら影響はなかった。お見事なり!
反省とは懺悔し顔を下に向け続けることではない(集団ヒステリーのように話題の人を叩くマスコミとネット人は、「反省」する姿を強要していると私は思う)。シマッタと思った瞬間で反省は終わり。長くても10秒。今と未来へ意識を向けようと、氏はおっしゃった。
脳は不器用である。一つのことに囚われてしまうと同時に存在する情報を見落とす性質がある。「焦点化の原則」という。過去に焦点を当てず、未来に向けてどうしたらうまくいくかに焦点をとどめよと。捜し物をするときの秘訣が披露された。「ナイ!ナイ!ナイ」と言わない。「○○を見つける!」と存在する前提で念じて意識を向けると、脳は焦点化して見つけ出してくれる。
脳の主語は「わたし」だけ。他人を褒めると自分が褒められたように錯覚する。だから全部自分に返ってくることを忘れてはいけないと。反対の究極が「人を呪わば穴二つ」。憎み嫌い呪うことで相手を殺せても、負のエネルギーは自分に返ってきて共に死す。
自己肯定感を高めて、自分を多面的に見ていこう。いろいろな側面をもつのが人間、だから人間だ、と達観するのが自己肯定感の意味するところと氏は締められた。彼女はわたしの同級生。数十年ぶりの再会に心が躍った。親しみのある中にもキリッとした声がいい。高校生の面影をそのまま残して、終了後の会話が弾んだ。
(リンゴは食べて食べてと主張する。買って持ち帰り食べるかどうかは、わたし次第。開店日のプラント斐川にて)