生活保護の受給世帯は現在164万世帯で史上最多を更新しています。先日小田原市で事件がありました。生保の担当職員が不適切なジャンパーを着て生保受給世帯を訪問していたというのです。
ジャンパーには黒地に「HOGO NAMENNA(保護なめんな)」と記されており、漢字の悪にバッテンがついています。「我々は正義。不正を見つけたら追及する。私たちをだまして不正によって利益を得ようとするなら、彼らはクズだ」という意味の英文で不正受給を非難しているそうです。小田原市は使用を禁止し、担当部長らを処分しました。
市長はホームページで次のように詫びています。
≪生活保護を受ける方々のお気持ちを傷つけ、市民の皆さんとの信頼関係を大きく損ねてしまいました。(中略)市民のいのちや暮らしを守るべき市職員として配慮を欠いた不適切な行為であり、許されるものではありません≫
ほんとうに「生活保護を受ける方々のお気持ちを傷つけ」たのでしょうか。不正受給者が市役所でワーカー相手に起こした数年前の暴行事件をきっかけに、課員の気持ちを束ねるため揃えたジャンパーだといいます。
わたしは、生保の不正受給をしたことのある者、現に実行している者、不正をしようとしている者へのメッセージだと思うのです。正当な受給者を非難してはいません。誰に詫びよというのでしょうか。ケースワーカーは生保申請者や受給者に対し生殺与奪の権限を持っています。広い日本ですから中には勘違いしたワーカーもいて、受給者や申請者にたいして威圧的に接する輩もいることでしょうが、不正受給に対して断固とした態度をとることは間違ってはいません。
ただ思うのです。生活保護制度は資産の保有を認めていません。貯金、生命保険、土地、自動車など金目のものは売って生活費にあてなければならない。仕事で得た収入があれば保護基準額から差し引かれる。生活費を支援してくれる親族があれば援助を求めねばならない。生保以外の給付がある場合はそれを優先する。要は大変なんです。自活しようとする意欲や環境をそいでいくのです。
わたしは、ベーシック・インカム制度が有望だと思いますね。国民すべてに対し最低限の現金を支給するのです。赤ちゃんから年寄りまで全て一律で、収入の多寡を問いません。もっと収入が欲しければ懸命に働けばよい。それで十分ならば生活費の安い地方に移住する選択肢もあります。
かつての社会主義のように働く意欲や経済競争力をなくすという非難もありますが、無理な残業などしなくてすみますし、社会貢献活動なども盛んになるでしょう。ブラック企業や非正規雇用からも解放されやすくなります。全国民に無条件らで支給するわけですから、生保をはじめとした社会保障の多くは(年金は別かもしれない)不要となって行政コストは大幅に下がります。
フィンランドでは試験的に導入されるということですし、オランダのユトレヒトではすでに始まっています。日本でもマニフェストに取り入れた政党もありますから、まんざらおかしな話ではないと思うのです。
(久々の豪雪?で山陰線は機能不全。倒木、信号故障、踏切の自動車脱輪で朝からトラブル続き。足止めをくらっている。出雲の積雪は30センチ余り)