出雲にある文房具えむえむでパイロット万年筆教室に参加した。無色透明の万年筆キットを組み立てて、万年筆の仕組みと手入れの仕方を学ぶというミニ講座である。
17世紀に羽ペンに金属のペン先を取り付けて耐久性を増した。19世紀になるとペン軸にインクを取り込んだfountain pen(泉のペン)が開発された。明治には直訳して「針先泉筆」と呼ばれた。やがて「萬年筆」という名訳が生まれ、今は新字体で「万年筆」。響きも字面も実にステキな言葉だ。
インクを充填しメンテナンスを定期的に行うことで、名のとおり半永久的に使用できるし、書き手の個性も生きてくる。作家に万年筆の愛好者が多いのは、筆圧が軽くてすむから疲れにくいということが大きな理由らしい。
外国産の万年筆はバランスが悪いと感じていた。欧米ではキャップを取ってペン軸だけで書く習慣。日本はキャップをペン軸にさし込んで使う。だから外国製の万年筆はさして使うとバランスが悪くて重いのだと。講座で知って目から鱗が落ちた。
「ペン先」というのは先端の丸い「ペンポイント」を含む金属部分を指すという。今までわたしは、18金などゴールドの割合が高くなるほどペンが柔らかく書きやすくなる一方でペン先が削れやすいというイメージを持っていた。
しかし、ペンポイントは固いイリジウムでできており、たとえ強い筆圧で書き続けても摩耗しにくいらしい。金素材は腐食しない。しっかり手入れすれば腐食せず使うほどに馴染むことから、ここからも萬年だ。ペン先に金が入っていると、トメやハネがしやすくタッチが柔らかく、書き手の個性も出やすい。安いペンのペン先は合金製である。
ペンポイントから「切り割り」というわれる切れこみが伸びて、「ペン芯」から補給されるインクを毛細管現象で吸い上げる。ペン芯は半透明のプラスチックで車のラジエーターのような溝構造となっており、インクの入った「カートリッジ」からインクを吸い上げてペン先に送り込む中間的なタンク。
ペン芯とペン先を重ねて「首」に差し込む。首にカートリッジの黒インクを差しいれる。中途半端な挿入だとインクが漏れる。ネジ式になった首と「ペン軸」を装着すると「胴」の部分は完成だ。キャップのベースにクリップを取り付けて「キャップ」も完成。キャップと胴はネジ式になって密封されるからペン先の乾燥を防ぐ。また、クリップが付いているので、万年筆を置いたときに転がって落ちることを防止する。
愛用の万年筆は極太。今回作ったスケルトン細字万年筆も含めて、わたしの字もなかなかじゃあないかと自己満足にひたりながら、毎日使うことにしようっと。
(我が家のダイヤモンドリリー、別名ネリネ。ショッキングピンクが雨の中でも映えている。万年筆とは全く関係はない)