チグハグな彼岸に咲くか恋の花 [2015年02月28日(Sat)]
映画『地上より永遠に』(原題はFrom here to eternity)は太平洋戦争が終わって間をおかずに作られた映画だ。私には邦画題の意味が理解できなかった。なぜ「ここよりとわに」と読ませるのかわからない。
オードリーヘップバーンの「Love in the Afternoon」を「昼下りの情事」と意訳したように、客を惹こうとした日本のプロモーターの意図がみえる気もするが、軍隊という現世では添い遂げられなかった二組の男女が、天国では幸せになれますように…という願いを示しているのか? 此岸から彼岸へ、という仏教的な生命観からきたゴロをここに当てはめたようにも思える。かといって映画では二組の恋愛劇は神に祝福されるほど純粋でもないし、一人は死にはしたものの涙こぼれるほどの悲劇性はなかった。うーんわからない。よーくわかるのは、二人の女優が往年の美形女優の典型であったこと。ほれぼれする。 映画は端的に言えば、アメリカ陸軍の下士官と兵卒がそれぞれに紡ぐ恋愛劇である。アメリカ本土から遠く離れたハワイを舞台にした、いわば「彼岸」に花咲く恋物語である。ところが当事者たちにとっては苦しく身悶えする世界。「此岸」すなわち娑婆で苦しんでいる。恋愛をめぐって苦しんでいる。 兵卒プルーは信念の人だが、頑固過ぎる人。恋してひたすら恋人にまとわりつく。ストーカー的な彼を迷惑に思いつつ、彼女は母性愛も混じる愛で包容していく。かたや下士官ウォーデンはそつなく仕事をこなし上司たる大尉の受けもよい。恋の駆け引きも上手で一目惚れした大尉の妻とは、いとも簡単に相思相愛の仲となった。秘密の恋が進行すると大尉の妻が盲目的に下士官を求めたのに対し、彼は煮え切らない。 1941年12月日本軍は真珠湾に奇襲攻撃をかけたが、それは一つのエピソードとしてのみ描かれる。二組の恋愛劇は破局し、たまたまアメリカ本土へ引き上げる船上で当の女二人が偶然にも出会う。そして、もうハワイに帰ることはないわ…と思い出を反芻しながら終幕。 軍隊において色恋沙汰の余裕があるというのは、アメリカという国の余裕。軍の福利厚生は充実して物資も豊富な世界一の軍隊。となれば、向かうところ敵などない。その軍を敵に回して挑みかかるとは日本は身の程知らずだった。しかし弛緩した米軍のスキを突く日本軍の攻撃によって、アメリカ軍は一気に目を覚まされたのは確か。その後日本は完膚なきまでに打ちのめされたことは周知の事実だ。 (まだ秋も浅いころの銀杏の葉に丸まった水滴。蒸発し雲になり再び雨雪になって地上に降り注ぐ。これも半分、永遠の営み) |