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そうなんだ君はどこ行くどこ行った [2026年04月04日(Sat)]

fumihouse-2026-04-04T14_06_47-1-thumbnail2.jpg城山三郎に『そうか、もう君はいないのか』という手記がある。多くの経済小説、歴史小説を生みだした作家が、亡き妻のことを書き綴ったものだ。

≪あっという間の別れ、という感じが強い。癌とわかってから四ヶ月、入院してから二ヶ月と少し。四歳年上の夫としては、まさか容子が先に逝くなどとは、思いもしなかった。
 もちろん、容子の死を受け入れるしかない、とは思うものの、彼女はもういないのかと、ときおり不思議な気分に襲われる≫

残された者から吐き出される切ない言葉だ。伴侶を亡くした寂寥感が伝わってくる。亡き妻への深い愛情と同時に悲痛な叫びでもある。田村正和主演でテレビドラマを観たことがある。

​先月母がグループホームに入居した。父は同じような気持ちでいることであろう。ホームに行けば会えるけれども、生活の場が変わった。「そうか、もう君はいないのか」なのだ。隣に妻がいない現実を突きつけられる父は、傍目にも寂しそうに見える。

もちろん私もだ。定位置だった椅子に母が座っていない不思議さ。声が聞こえてこない寂しさ(自分から声を上げることはほとんどなかったが)に、もう母はいないことを思い知る。

(しだれ桜が咲いている。しなだれたまま落ち込むのか、上を向いて前に進むのか)