酔うしずる甘美器に宵が更け [2020年10月31日(Sat)]
【しずる】
美しい日本語である。漢字で書くと垂る。木の枝などに積もった雪が滑り落ちることだ。 しずる器で冷酒を飲む。しずるの文字にふさわしい。ラッパ型で口広の陶器製の酒器にトクトクと冷酒を注ぐ。すると角の注ぎ口から酒が溢れ出る。受けのお猪口にこぼれて落ちる。店によってはお猪口も溢れて受け皿もいっぱいになるまで入れて豪快だ。一合少々の日本酒を手酌で飲むのにふさわしい。 雪がずり落ちるわけではないが、注いだ酒が流れて盃を満たす様子は、なんとなく〈しずる〉。デザインもなかなかのもの。かといって、しずる器を買ってきて毎晩晩酌する気にはならないけれど。 (雌しべも雄しべも、しずりそうな百日草) |