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トレモロに水滴流れ異郷かな [2020年08月05日(Wed)]

fumihouse-2020-08-05T06_04_47-1-thumbnail2.jpg名曲『アルハンブラの想い出』。これを独奏すると、イベリア半島に花開いたイスラムの栄光が感じられる。正確に言えば栄華の跡である。フランシスコ・タレガが120年以上も前にここを訪れて着想を得た。

ギリシャとローマの文明が滅び、西洋キリスト社会が暗黒に転じたあと、文明技術の精髄を継承し発展させたのはイスラム文明である。やがてヨーロッパがルネサンスを経て反転攻勢にかかる。一方でイスラム社会は宗教的原理主義が強烈となり文明は衰退する。両者の力関係が逆転するのが、アルハンブラ要塞のあるグラナダ(スペインの地中海寄り)が陥落した頃と言える。それが15世紀末。イベリア半島全体を支配していたイスラム教徒であったが、アフリカや中東の砂漠地帯にまで追われた。脱出した者にとってアルハンブラは望郷の象徴となった。

クラシックギターのトレモロ奏法で ミーレ ドーレミー と続く単調のメロディは、故郷を追われた者の無念さと滅びの哀愁を醸す。タレガはアルハンブラに旅して、追われし者たちの「想い出」や「思い入れ」に感じ入ったのかもしれない。

トレモロは薬指(指記号a)、中指(指記号m)、人差し指(指記号i)で一つの弦を高速で弾いてメロディとし、親指(指記号p)はバス声部と伴奏和音を奏でる。pamiの4連符の繰り返しが最後まで続く。トレモロで途切れない噴水の粒々を表現したのだという。時おり入る装飾音が実にメルヘンチックで、細やかで幻想的な彫刻や装飾美も映し出されている。

トレモロの繰り返しはどんな意味があるのか。城が滅びたあとも水の流れ、噴水の飛沫が途絶えない。精緻なイスラムの土木建築技術が素晴らしかったことの証を表現した、とわたしは見る。繁栄は永久に続きそうに思えるのだ。

タレガが見たアルハンブラは、今のように観光客が寄せる世界遺産ではない。荒廃していたのではないだろうか。タレガは、異教徒が七百年もの間支配した、兵どもが夢の跡のアルハンブラに寄せて、繁栄が途絶えてしまった寂寥を描いた。自分個人の「想い出」というより時代の「情念」を表現した。宮殿と風景の美しさのみならず、歴史も含めた全てを包含して「情緒」をメロディに残したに違いない。

タレガは世にあるすべての栄枯盛衰、建設と破壊、諸行無常の様々を感じたのかもしれない。人が人を征服し支配する。殺し合いを経て生まれる憎しみの連鎖。それも過去の遺物となって、今ここに超然として存在するアルハンブラ。そうした叙情を見事に歌いきったのだと思う。

(アルハンブラ宮殿にはこんな花が似合いそう。スパラキシス・トリカラー。別名は水仙文目というそうな)