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野鳥たち飛び立て朝だフライトだ [2016年11月13日(Sun)]

fumihouse-2016-11-13T17_20_59-1-thumbnail2.jpg日曜日の未明、澄んだ夜空。オリオン座が西に傾き、しし座は南の空に見える。東天に目立つのは牛飼い座アークトゥルスと木星だ。空が白んでくると、朝霧が斐伊川から堤防にかかり、乗り越えて田んぼに低く這っているのがわかる。枯れ草を焼いた煙がたなびいて雲に同化する。雲は少しだけ東から南、西にかけて薄いのがかかる。堤防を河口に向かって歩くうちに停めた車が見えなくなった。川霧のせいだ。

マガンのモーニングフライトを見ようとクルマが何台か停まっている。アイドリング音がうるさい。ラジオをつけた者さえいる。カメラを構えてはいるが、朝の静寂において五感で野鳥を楽しむつもりはないようだ。

伯耆大山のシルエットが浮いている。切りたつ夏の積乱雲が屏風となって立ちはだかるような険しさに加え、出雲富士と言われる柔らかい稜線の両方が楽しめるのがいい。手前松江の山の端に雲がかかり浮かぶ大山の遠景は、この時間しか見られない幻影。

今朝は濃い茜色に空は染まらない。慎ましい朝の色だが、グレーから淡いトキ色、ほんのり薄い紅色やオレンジ色へ。朝が生まれていく。やがて南東の空に太陽の兆しあり。茜色の光彩が雲を金色に変えた。今朝の誕生だ。宍道湖面もきらびやかに変わる。

コハクチョウは河床で目を覚ました。クークー鳴く声が響く。全部で三百羽くらいが点在している。羽ばたいた4羽がいる。首をまっすぐ伸ばし、水面とは違うせわしなさで体を揺らして餌場に向かったのか。近くに白鷺がいる。ふだんはS字に首を曲げているのに伸びている。白鳥に影響されたのか。白鷺が飛び立った。女の字の形をしている。太宰治『人間失格』の一節を思い出したので引用する。≪背後の高い窓から夕焼けの空が見え、鷗が、「女」という字みたいな形で飛んでいました。≫

宍道湖内では鴨がクェクェガーガー騒々しい。彼らは暗いうちから群れて泳ぎ回っている。宍道湖の東方からマガンが来た。20から30羽ずつの小規模の編隊で緩いVの字を描く。編隊は次々とやってくる。マガンは白鳥に似てクークー鳴く。図体に比例して(コハクチョウよりふた周り小さい)声は白鳥より小さいが、小編隊がいくつもの飛び回るとなかなかどうして、キャーキャークークー、クワクワと賑やかだ。朝が誕生する頃が最も鳴り物入りだ。数十の編隊ごとに河口や田園の辺りを朝を起こすようにしてぐるりと旋回している。思い思いに、高く低く上に下に南に西に。への字Vの字、横一列の斜めがけ。しめて千羽は下らないマガンがいる模様。たいそうな朝のごあいさつに私はご満悦。

太陽がすっかり上ると茜の色は褪せてしまった。北山山系の風力発電の風車が白く、刈り取った田んぼに生えたひつじに朝日があたる。私の影も葦原に延びていく。マガンの編隊はさらに集まりつつあるが、多くは川面に降り立った。かしましいのは同じでも、鳴き声が斐伊川の内側にくぐもっている。強い太陽の光彩に隠されて大山のシルエットが薄く見えなくなった。朝の始まりは終わったのだ。

(冬の到来とともにシクラメンの季節がやってくる。cyclamenはギリシャ語のkiklos(円)が語源とか。そこからcycleへ。すなわち循環。冬がひと巡りしてきた)