ハーモニー仲間と我が身未来へと [2016年11月12日(Sat)]
ドイツの詩人ツェーザル・フライシュレンの『心に太陽を持て』は、山本有三の訳で名高い。
心に太陽を持て。/あらしが ふこうと、/ふぶきが こようと、/天には黒くも、/地には争いが絶えなかろうと、/いつも、心に太陽を持て。/唇に歌を持て、/軽く、ほがらかに。/自分のつとめ、/自分のくらしに、/よしや苦労が絶えなかろうと、/いつも、くちびるに歌を持て。 信長貴富氏が詩を再構成して作曲した男女混声合唱『くちびるに歌を』を、出雲市立斐川西中学校の合唱部員たちが聞かせてくれた。全日本合唱コンクール全国大会の報告演奏会での印象深いステージだった。男子たちの多くは体育部や吹奏楽部との掛け持ちだという。女子も含め、仲間とのハーモニーを楽しみ、がっぷり四つに組む若者たちの姿を見た。頼もしい。 フランスのポール・エリュアールの詩『わたしは孤独ではない』も心に残る。これも信長貴富氏の作曲だ。レジスタンス下のフランスで祖国のため仲間と懸命に戦ったポール・エリュアールの心情があらわれている。ナチスなどに拘束されない、命をかけて自由に生きるという心情だ。 『ゴンドラの唄』(吉井勇作詞)を若い彼女らが歌うのも新鮮だった。黒沢映画「生きる」で志村喬が演ずる市民課長のあの歌だ。 いのち短し恋せよ少女(おとめ)/朱き唇褪せぬ間に/熱き血潮の冷えぬ間に/明日の月日はないものを いのち短し恋せよ少女/黒髪の色褪せぬ間に/心のほのお消えぬ間に/今日はふたたび来ぬものを 恋せよ乙女たちよ。恋して告白せよ、少年たちよ。君たちに未来はかかっている。恋することを恐れるな。恋するたびに君たちの心は開き、一歩上の地平から人生を眺める。「くちびるに歌を持て/心に太陽を持て/ひとのためにも言葉をもて」と歌った君たちだ。仲間との絆をさらに深め、もっともっと大きくなってくれたまえ。 (大文字草という名前の草花。京の送り火、大文字に似ている) |